腎移植外来フォローアップマニュアル

  • ページ数 : 296頁
  • 書籍発行日 : 2024年2月
  • 電子版発売日 : 2024年11月16日
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内容

今後増加していく腎移植数に対して,臨床現場で使用できるマニュアルが必要である。対象は,腎移植施設の移植外来を担当している移植外科医,移植内科医,腎臓内科医,移植後1 年以降の安定した腎移植患者をフォローする可能性がある非移植施設の腎臓内科医である。 このマニュアルが,腎移植患者の長期予後,もっと広く考えてCKD患者の長期予後に役立てば幸いである。

序文

はじめに

腎移植は末期腎不全の理想的な治療法であり,維持透析と比較して,生活の質を改善し,死亡リスクを低下させる。免疫抑制薬の目覚ましい進歩により,移植腎生着年数は長くなり,腎移植が禁忌である末期腎不全患者はほとんどいない。しかし移植腎機能を維持するために生涯内服が必要な免疫抑制薬は,感染症,悪性腫瘍の進行を早め,重症化しやすい。また腎移植で腎不全からの脱却により進行しにくくなる心血管疾患は,腎不全の腎外病変として移植前から合併していることも多い。急性拒絶反応がコントロールできる時代になったからこそ,腎移植後外来フォローの仕方により,患者予後は大きく変わる。

腎移植患者を対象にしたエビデンスは少ないため,ガイドラインの推奨グレードは低い。腎移植外来フォローについて,腎移植センターごとで異なっていることがしばしばある。ハイボリュームセンターはそれでよいが,腎移植臨床を少しハンドリングできるようになった腎臓内科医や,腎移植臨床に全くかかわったことがない腎臓内科医にとっては困ったことである。腎移植外来フォローに最も近いところに位置する腎臓内科医であるが,同時に他人からの臓器を体内へ維持し,免疫抑制薬を生涯継続していかなければいけない。腎炎などの治療で免疫抑制療法に慣れているとはいえ,ステロイドに追加して,カルシニューリン阻害薬と代謝拮抗薬を併用する維持免疫抑制療法を長期内服していくという免疫抑制療法は経験がないはずである。命にかかわるような感染症を見逃す危険性がある。腎機能もダイナミックに改善する移植後は,CKD から別人になったと判断してフォローを始めるのがよい。今後増加していく腎移植数に対して,臨床現場で使用できるマニュアルが必要である。対象は,腎移植施設の移植外来を担当している移植外科医,移植内科医,腎臓内科医,移植後1 年以降の安定した腎移植患者をフォローする可能性がある非移植施設の腎臓内科医である。

このマニュアルが,腎移植患者の長期予後,もっと広く考えてCKD 患者の長期予後に役立てば幸いである。


ごとう内科・腎移植内科クリニック,日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院 移植内科
後藤憲彦

目次

A 腎移植後の疑問

01 腎移植後の疑問……後藤 憲彦

   Q&A……余西 洋明

B 免疫抑制薬のモニタリング

01 免疫抑制薬のモニタリング……西沢慶太郎

C 移植腎機能障害

01 移植腎機能障害……西沢慶太郎

D 感染症

01 General concept……後藤 憲彦

02 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:中枢神経感染症……伊藤 健太

03 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:肺炎……伊藤 健太

04 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:皮膚軟部組織感染症……伊藤 健太

05 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:下痢……伊藤 健太

06 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:ピロリ菌感染,除菌の方法……伊藤 健太

07 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:尿路感染症……伊藤 健太

08 症状のある部位に応じた鑑別診断と治療:性行為感染症……伊藤 健太

09 腎移植後に問題となる病原体:サイトメガロウイルス……後藤 憲彦

10 腎移植後に問題となる病原体:Epstein-Barrウイルス……後藤 憲彦

11 腎移植後に問題となる病原体:水痘・帯状疱疹ウイルス……後藤 憲彦

12 腎移植後に問題となる病原体:BKウイルスとJCウイルス……後藤 憲彦

13 腎移植後に問題となる病原体:ニューモシスチス肺炎……後藤 憲彦

14 腎移植後に問題となる病原体:アデノウイルス……後藤 憲彦

15 腎移植後に問題となる病原体:B型肝炎ウイルス(C型肝炎ウイルス)……後藤 憲彦

16 腎移植後に問題となる病原体:結核菌……後藤 憲彦

17 腎移植後に問題となる病原体:非結核性抗酸菌……後藤 憲彦

18 腎移植後に問題となる病原体:COVID-19……二村 健太

19 ワクチン……伊藤 健太

20 家族が感染症になった時の対応……伊藤 健太

21 感染症に対する指導……伊藤 健太

   Column 腎移植外来におけるスマートフォンアプリケーションの活用……余西 洋明

E 癌

01 癌……西平 守邦

F 心血管疾患

01 General concept……後藤 憲彦

02 冠動脈疾患……後藤 憲彦

03 心不全……後藤 憲彦

04 心房細動……後藤 憲彦

05 深部静脈血栓症……後藤 憲彦

06 末梢血管疾患……余西 洋明

07 脳血管疾患……余西 洋明

08 リスク因子管理:高血圧……谷澤 雅彦

09 リスク因子管理:脂質異常症……中村 祐貴

10 リスク因子管理:尿酸……南  真人

11 リスク因子管理:フレイル,食事,運動……谷澤 雅彦

12 リスク因子管理:血糖/糖尿病……磯部 伸介

G 造血

01 白血球減少……阿部 哲也

02 腎移植後貧血……辻田  誠

03 腎移植後赤血球増多症……辻田  誠

04 血小板減少……阿部 哲也

H 骨代謝

01 骨代謝……余西 洋明

I 電解質異常

01 高カリウム血症……二村 健太

02 低ナトリウム血症……二村 健太

03 電解質異常(カルシウム,リン,iPTH)……二村 健太

04 代謝性アシドーシス……二村 健太

J 透析再導入時の対応

01 透析再導入時の対応……豊田麻理子

K 婦人科的問題

01 婦人科的問題……後藤 憲彦


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書籍情報

  • ISBN:9784885637445
  • ページ数:296頁
  • 書籍発行日:2024年2月
  • 電子版発売日:2024年11月16日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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