小児末期腎不全の臨床

  • ページ数 : 338頁
  • 書籍発行日 : 2024年3月
  • 電子版発売日 : 2024年11月14日
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商品情報

内容

本書は,自施設のスタッフや関係者の協力を得て,歴史的動向も加味した国内外の知見を踏まえながら主に1984 年以降の自施設での経験をもとに「小児末期腎不全の臨床」としてまとめたものです。網羅的な教科書ではありませんが,本書がほんの少しでも小児末期腎不全診療の参考になり,現在もなお末期腎不全,透析,腎移植に悩み苦しんでいる患者さんとご家族に還元されれば,このうえない幸せです。

序文

序文


本邦における小児末期腎不全診療は1965年に遡ります。黎明期(1965 ~1985年前後)の末期腎不全小児は死を免れてなんとか延命でき,腎移植が成功すれば一部の患者さんは社会復帰できるようになりました。しかし,課題は多く,小児末期腎不全患者さんは,日々をなんとか生きていくのが精一杯の状態でした。

発展途上期(1985年前後~ 2005年前後)のepoch-makingな事項としては,① 1984年にCAPDが保険適用,② 1986年にシクロスポリン,1996年にタクロリムス,2000年にミコフェノール酸モフェチル,2001年にバシリキシマブが保険適用,③ 1990年に透析患者,1994年に保存期腎不全患者にエリスロポエチンが保険適用,④ 1994年以降に血液浄化関連機器(持続的血液浄化装置や低膜面積血液浄化器,小児用ダブルルーメンカテーテルなど)が臨床応用,⑤1997年に骨端線閉鎖を伴わない慢性腎不全における低身長に成長ホルモンが保険適用などがあげられ,小児末期腎不全患者さんの延命のみを考える時代は完全に過ぎ去りました。現在の治療目標は,重篤な腎外合併症がなければ,健常児と遜色なく心身ともに健やかに育てることであり,保存期腎不全の時期から,こども達の生涯にわたる腎不全治療計画を立てることが肝要です。しかし,2006年前後から現在までの現状をみると,怠薬,1歳未満の透析導入患者さんの生命予後はいまだ不良,新規薬剤の多くは小児に未承認,就労支援やメンタルケアが必要,2000年に発売された中性腹膜透析液も腹膜劣化のリスクがあるなど,解決すべき課題は山積しています。

本書は,自施設のスタッフや関係者の協力を得て,歴史的動向も加味した国内外の知見を踏まえながら主に1984年以降の自施設での経験をもとに「小児末期腎不全の臨床」としてまとめたものです。網羅的な教科書ではありませんが,本書がほんの少しでも小児末期腎不全診療の参考になり,現在もなお末期腎不全,透析,腎移植に悩み苦しんでいる患者さんとご家族に還元されれば,このうえない幸せです。


服部 元史

目次

執筆者一覧

序文

目次

小児末期腎不全診療のエッセンス

1.本邦における小児末期腎不全診療の歩み

2.本邦における小児末期腎不全患者の概要

コラム 日本小児腎臓病学会統計調査委員会:設立の経緯と活動状況

3.腎代替療法の選択と導入

4.重度の知的障害者と腎代替療法

コラム 腎代替療法の見合わせと共同意思決定(shared decision making:SDM)

5.合併症と管理

1)腎性貧血

コラム 小児腎性貧血治療とHIF-PH阻害薬

2)成長障害

6.栄養:乳幼児の栄養管理と心血管疾患の合併予防

コラム 特殊ミルクの注意点

7.生命予後

コラム 1歳未満の新生児・乳児の維持透析(Infant dialysis)

8.社会的,精神的・心理的アウトカム

9.怠薬(服薬ノンアドヒアランス)

10.慢性腎臓病の移行期医療

コラム プレコンセプションケア

小児腎代替療法のポイント

1.腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)

1)腹膜腔・腹膜の解剖生理

2)腹膜透析の血液浄化理論

3)腹膜透析で注意を要する患者

4)腹膜透析カテーテル留置後の合併症

5)腹膜透析の留意点

6)出口部・トンネル感染,腹膜炎

7)腹膜劣化(腹膜透析液と腹膜病理)

2.血液透析(hemodialysis:HD)

1)本邦における小児体外循環血液浄化療法(特に急性血液浄化)の歩み

2)バスキュラーアクセス:ダブルルーメンカテーテル挿入の実際と留意点

3)新生児・乳幼児に対する血液透析の留意点(技術的側面)

4)血液透析(HD)と血液透析濾過(hemodiafiltration:HDF)

コラム 小児の血液透析濾過(HDF)

コラム 小児の在宅血液透析

3.腎移植

1)本邦における小児腎移植の臨床的背景と移植成績

2)小児ABO血液型不適合生体腎移植の治療成績と今後の展開

3)本邦における小児献腎移植の歩みと動向

コラム イスタンブール宣言

4)腎移植前評価

 ①ドナーの適応と検査

 ②レシピエントの適応と検査

コラム 腎移植前評価で著明な心機能低下を認めた患者

コラム 心房中隔欠損症における奇異性脳塞栓

コラム 遺伝性異常フィブリノゲン血症による凝固異常

5)腎移植の術直前・術中・術直後管理

6)腎移植後の外科的合併症

7)腎移植後感染症

 ①サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)

 ②EBウイルス(Epstein-Barr virus:EBV)

 ③BKポリオーマウイルス(BK polyomavirus:BKPyV)

コラム その他のウイルス感染症(アデノウイルス,水痘)

 ④ニューモシスチス肺炎

 ⑤細菌感染症

8)Banff分類

コラム Plasma cell-rich acute rejection

コラム 抗ドナーHLA抗体(DSA)とnon-HLA抗体

9)髄放線障害

10)腎移植後の悪性腫瘍:自施設での経験

小児末期腎不全をきたす疾患:疾患概要と視点(viewpoint)

1.先天性腎尿路異常(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)

1)原因遺伝子の同定

2)腎外合併症

3)先天性腎尿路生殖器異常

4)下部尿路障害:腎移植の留意点

2.糸球体疾患

1)フィンランド型先天性ネフローゼ症候群:固有腎摘出の考え方

2)WT1関連腎症(Denys-Drash症候群とFrasier症候群):腎摘,性腺摘出の考え方

3)巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomerulosclerosis:FSGS)

 ①病因分類と臨床病理像

コラム 日本発の大発見,FSGSの原因遺伝子NUP107

コラム Pierson症候群原因遺伝子LAMB2病的バリアントにおける蛋白尿発症の新しい機序

 ②病因の鑑別診断

 ③腎移植後再発と抗ネフリン抗体

4)Epstein症候群:腎代替療法導入時の留意点と対処法

3.Ciliopathy(繊毛病)

1)常染色体潜性多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD):肝腎移植または腎移植の選択

コラム 常染色体潜性多発性囊胞腎(ARPKD):高血圧による心不全

2)小児の常染色体顕性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD):very-early onset(VEO)症例を含めて

コラム ADPKD:慢性的な背部痛と注意欠如・多動症(ADHD)

3)Joubert症候群:腎代替療法の選択

4.尿細管間質性疾患

1)Lowe症候群:長期予後

2)尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis:RTA):診断と管理

コラム 尿路結石の家族歴を有する遠位尿細管性アシドーシス:早期診断の重要性

5.全身性疾患

1)STEC-HUS(志賀毒素産生性腸管出血性大腸菌感染症関連溶血性尿毒症症候群):診断と治療の要点

コラム 赤痢菌が産生する志賀毒素と腸管出血性大腸菌が産生する志賀毒素

2)非典型溶血性尿毒症症候群(atypical hemolytic uremic syndrome:aHUS):血漿治療と抗補体治療

コラム 診断基準から診療ガイド作成まで

3)ANCA関連血管炎(anti-neutrophil cytoplasmic antibody-associated vasculitis:AAV):腎移植の成績

4)原発性高シュウ酸尿症(primary hyperoxaluria:PH)の診断と治療-肝腎複合移植と先行的肝移植

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書籍情報

  • ISBN:9784885637452
  • ページ数:338頁
  • 書籍発行日:2024年3月
  • 電子版発売日:2024年11月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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