序

本書は2018 年に発刊した「リハビリテーション職種のマネジメント」の続編となります。おかげさまで前著書は多くの方にご愛読いただき、リハビリテーション（以下、リハビリ）の現場における「マネジメント」の必要性を改めて著者として感じました。その後、リハビリの現場におけるより詳細な「マネジメント」の在り方を解説してほしいとたくさんの方より声をいただきました。本書では前著書より「マネジメント」の項目を増やし、より詳細に「マネジメント」の在り方や手法を解説しました。

近年のリハビリの現場では診療報酬・介護報酬改定や社会情勢の変化により適切なマネジメントの実施が期待されています。

　・診療報酬・介護報酬改定に伴う報酬算定ルールの変更

　・リハビリ職種の採用、人材育成、離職防止など人事対応

　・患者、利用者の集客に伴う経営の安定化

　・リハビリ医療を通じた適切なアウトカムの獲得

　・リハビリ職種のキャリアデザインの実施

　・がんリハ、ウィメンズヘルス、産業リハなど新しいリハ分野の出現

　・Z 世代の新卒リハビリ職種と他世代の既卒リハビリ職種との価値観の違いなどリハビリ現場には課題が山積しております。

これらの課題を解決するために「マネジメント」が必要となります。しかし、筆者のリハビリ部門へのコンサルティング業を通じた経験から、「マネジメント」の必要性は理解しているものの、「マネジメント」の在り方や具体的な手法を知らないために、「マネジメント」の実施が不十分になっているリハビリ現場がほとんどであると言って過言ではありません。

また、時折、「マネジメントを実施しています」と自信をもって述べるリハビリ職種の方に出会うことがありますが、その実態を確認してみると「日々のリハビリ現場の臨床をトラブルが起こることなく業務を動かすこと」だけに終始しており、先に述べたリハビリ現場に山積する課題の解決に向き合った取り組みはなされていないことがほとんどです。筆者はリハビリの現場には「マネジメント」らしきことは取り組まれているが、「マネジメント」が経営や運営に良い影響を与えるほどの結果を組織にもたらすことができていないと考えています。

そこで、本書では「結果を出せるリハビリ部門をつくること」に焦点を当て、必要とされる「マネジメント」について解説をしました。従来から行われている「日々のリハビリ現場の臨床をトラブルが起こることなく業務を動かすこと」から脱却し、「リハビリ現場に山積する課題を解決し、リハビリ部門の経営・運営を改善し、リハビリ職種も幸せになる」ことを目指した「マネジメント」の在り方や手法について解説をしました。また、本書では、多くのイラストを用いて「マネジメント」について解説しておりますので、「マネジメント」の初心者にとっても読みやすいものとなっております。

読者の皆さんには一つでも多くの「マネジメント」を実践していただき、よりよいリハビリ部門の組織づくりを実現していただければ本望です。

2024年7月

高木　綾一