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- Let's ケーススタディ 脳卒中リハビリテーション 『日常生活』を視野に入れた介入の考え方
商品情報
内容
本書は脳卒中患者の行動特性や行動分析をテーマにし、臨床でのケーススタディを中心に実践的なアプローチを提供する内容です。
第1章では、姿勢調整のメカニズムや姿勢制御、適切な姿勢筋緊張を維持するための情報とは何かを解説しています。第2章では動作分析を中心に寝返りから歩行までを解説、第3章では臨床で必ず直面する課題を中心としてケーススタディを解説し、生活に活かす片麻痺介入の考え方を提示しています。
序文
Prologue
脳は不思議な臓器です.身体全体の重さに占める割合はù~ù.ü%程度しかないのに,エネルギー消費量は約øÿ%にも上るといわれます.脳卒中や脳挫傷など脳にダメージを受けると重篤な運動障害が出現するばかりか,高次脳機能といわれる「言語・認知・記憶」等もうまく機能しなくなり,日常生活を円滑に過ごすことに障害が生じます.
脳疾患の後遺症がある人は,外見で確認できる「上下肢の麻痺」以上の暮らしづらさを抱えていると思われます.
脳疾患による障害の全体像は,脳の可塑性によっても変化するため,複雑に絡み合っています.その全体像を見て,確認して,解釈するには,膨大な知識と臨床経験が必要でしょう.脳疾患に対応する治療・リハビリテーション技術はいまだ確立しているとはいえないため,日々試行錯誤の連続です.
試行錯誤ができるためには,「実験的な思考」「仮説を設定できる力」が必要です.
また,その前提として,相当量の勉強をした上で,対象者の思考・行動のパターン,生活環境や生活歴,家族構成など広範な視点をもち,対象者本人がどのような「人生経験を歩まれてきたか」まで思いをはせられる,療法士の「人間性」にまで評価の素養が要求されます.
しかし,私たちリハビリテーション専門職は,研究者のような実証的思考方法のトレーニングをほとんど受けていませんし,医師のインターンのように専門的な経験を経る養成期間は対象疾患の多彩さに比べてあまりにも短いのが実情です.
本書は,現場に出てまだ日が浅く,上述のような点で悩む療法士諸氏に向けて,まさに現場で悩ましいいくつかの事例を用いながら,脳疾患後の後遺症を抱える患者のリハビリテーションについて解説しようというものです.特に,実経験の中でまさに試行錯誤を豊富に重ね,臨床の知見を集積させてきた筆者の「思考パターン」「評価手段の選択法」「介入技術」などを伝えようという趣旨でデザインされました.書籍における擬似体験は,実体験には遠く及びませんが,それでも他者の体験を知ることが「実験的な思考ができる力」「仮説を設定できる力」を導く場合もおおいにありえます.
第1・2章はその前提を解説する章です.
第1章ではまず,「姿勢」という現象について説明します.教科書にも「運動とは姿勢が時間的に連続して変化したもの」とあるように※,日常生活動作の困難を理解するには,「姿勢保持とその変化」を理解し解釈する必要があります.姿勢は,運動力学的側面に限らず,対象の方の感情も表現しています.「麻痺側からの感覚情報をどのように知覚し認識しているか」「それを非麻痺側の感覚情報とどのように統合し出力しているか」「統合されないとしたら,どのような困難が生じているか」が姿勢という「形」になって表れるのです.つまり,「姿勢という『形』は対象者の状況を知るツール」だということです.
そのため,本書ではまず,「姿勢」について1章を割きました.脳疾患後遺症による動きづらい動作について,「なぜその動きが難しいのか」を考えるためには,姿勢という現象について深く理解しておくことが必要だと理解するからです.
次の第ù 章では,脳卒中の後遺症,主に片麻痺者における行動分析を総論的に説明しています.「ヒトの日常生活動作」には,「運動・行動・行為」という側面があります.脳と身体がその動作をどのようにコントロールし出力するかという運動システムの概念で,片麻痺者の「日常生活動作」を分解して理解し,「片麻痺者の多くに認められる現象」を押さえておけば,臨床経験者がよく使う「トップダウンの直観」が理解できるようになります.このように,片麻痺者の行動分析を総論的・横断的に落とし込んでおくことで,臨床経験が浅くてもプロフェッショナルな仕事を遂行できると考えています.
第3章は,リハビリテーションの現場で多く使われる「動作練習」を,どのような視点で用いるか,具体的なケースを用いて解説します.脳卒中後の臨床現場で多く認められる「基本動作」「上肢機能」「歩行」「高次脳機能」の課題に分けて,現象とその解釈,解決方法を例示することで,先に述べた「先輩療法士の思考経路」を把握し,若手の悩みを解決する方向性が示せたらと考えています.
この本は,現在,多くの療法士が勤務している回復期リハビリテーションの現場をイメージして執筆しました.
回復期医療は,どのような状態の脳卒中片麻痺者であれ平等に医療的リハビリテーションを受けることのできる医療制度です.そこで経験豊富な療法士に担当してもらえるかどうかで,対象の方のその後の人生が変わってしまうといっても過言ではありません.
しかし,現状は卒業後すぐの若手が担当する場合が多いと思われます.
職場の年齢層が満遍なく配置されていれば,諸先輩方に指導を仰ぎ,若手であっても一定レベルの医療を提供することは可能でしょうが,現実はそうもいきません.
できるだけ良質の医療サービスが受けられ,患者さんが退院後の人生設計を前向きに考えられるためにも,この書籍が回復期で大いに活かされることを期待しています.
また,こうした状況下に置かれたご本人や, それを支える看護・介護職,ご家族などにも読みこなせる程度まで平易な表現を心がけていますので,ぜひ手に取って活かしていただけたらと考えています.
2024年11月
リハビリスタジオWill Labo
作業療法士山田稔
目次
第1章 姿勢調整のメカニズム
1 「姿勢」とは何か
2 姿勢制御と随意運動の制御機構
3 感覚から作られる「身体図式」と姿勢制御
4 随意運動のための姿勢保持と神経系システム
5 積極的な感覚情報から行われる姿勢調整
6 脳卒中後遺症による片麻痺者の姿勢制御
・Column
適切な姿勢緊張を維持するための情報―視覚と高低差への恐怖
肌理の変化と視覚情報
第2章 脳卒中後片麻痺者への介入のための基礎知識
1 行動分析① 寝返り
2 行動分析② 座位姿勢
3 行動分析③ 起き上がり
4 行動分析④ 立ち上がり
5 行動分析⑤ 歩行
6 麻痺上肢側への介入
・Column
動作分析の視点
片麻痺者の運動誤学習
身体図式と内部モデル
第3章 臨床 de ケーススタディ 日常生活に活かす脳卒中後片麻痺者への介入の考え方
1 麻痺側下肢が浮き上がる立ち上がりを姿勢調整から評価する
2 「とりあえず歩ける」以上に歩行効率を上げる
3 誤学習した歩行パターンを感覚を使って修正する
4 麻痺側肩関節の亜脱臼を注意機能を使って改善する
5 見失っている感覚情報を探して起き上がりやすくする
6 麻痺側上肢に注意を向け潜在能力を引き出す
7 前頭葉症状による介入困難をリフレーミングする
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書籍情報
- ISBN:9784895908337
- ページ数:152頁
- 書籍発行日:2024年11月
- 電子版発売日:2024年11月29日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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