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臨牀消化器内科 Vol.40 No.1 特集「上部消化管内視鏡を見直す-基本から応用まで」
商品情報
内容
序文
―本特集を企画するにあたって―
本邦におけるがん死亡数の2023年推計値は,約39万6千人で死因の第1位であり,最近では総死亡の約3割を占める.予測がん罹患数は約103万4千人で,部位別では胃癌約13万人,食道癌約2万7千人,口腔・咽喉頭癌約2万9千人と,上部消化管がんだけで18%を占める1).また,NDB( National Database)オープンデータによれば2022年度に早期悪性腫瘍粘膜下層剝離術(ESD)の算定件数は胃で約4万9千件,食道で約1万3千件であり2),本邦で普及している検診やサーベイランス上部消化管内視鏡検査により多くの早期がんが発見されており,ますますその重要性は増している.
ヘリコバクターピロリ菌(Helicobacter pylori;H. pylori)除菌治療の普及や,衛生環境の改善,食事の変化などにより消化管がんの発生頻度や種類が変わりつつある.除菌治療が保険適用となった2000年当時,内視鏡観察の重点は胃が中心で,20枚撮りのフィルムに収めるため,食道・十二指腸は各1枚,残りはすべて胃の撮影にあてていた.早期の食道癌が見つかることはまれであり,ましてや咽喉頭領域を消化器内科医が観察するという発想もなかった.今日では,画像ファイリングシステムの普及で内視鏡枚数は制限なく撮影できるようになった.疾患に関しては,H. pylori関連の古典的な胃癌症例は減少傾向で,従来注目されていなかった胃底腺型腺癌や腺窩上皮型腫瘍が注目されている.また,咽喉頭癌・食道扁平上皮癌・Barrett腺癌が増加傾向であり,胃だけでなく各臓器における早期がんの特徴や内視鏡診断について内視鏡医が学ぶべきことは日々増えている.
内視鏡機器の開発に関しても大きな変化がある.長らく白色光(±色素)観察が基本とされるなか,いかに見落としなく系統的に観察し,病変を拾い上げ,良悪性の鑑別からがんの範囲診断および深達度診断まで行う内視鏡診断を偉大な先輩方が確立してきた.一方で,そのような診断法は一種の名人芸でもあり,そのレベルにまで内視鏡医を育てるには多くの症例と時間がかかる.さまざまな画像強調内視鏡の開発や解像度の著しい改善,そして近年の人工知能(AI)を利用した内視鏡診療は,効率的な観察や内視鏡医全体のレベルアップ,若手の育成に役立つことが期待される.
今回の特集では,上部消化管内視鏡の基本を押さえつつ,新しい機器・技術に柔軟に対応した現代に合った内視鏡観察の最新の知見とポイントについて,qualityindicatorから臓器別の工夫,そしてAI診断の役割まで取り上げている.本特集が上部消化管内視鏡診療の知識の整理と同時にupdateにつながり,日常臨床に役立つものと信じている.
東京大学医学部附属病院光学医療診療部
角嶋 直美
文献・参考URL(2024年8月現在)
1) がんの統計2024:公益財団法人がん研究振興財団 国立がん研究センターがん情報サービスホームページ ganjoho.jp
2) 第9回NDBオープンデータ.厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/
目次
【特集目次】「上部消化管内視鏡を見直す-基本から応用まで」
巻頭言/角嶋 直美
1.上部消化管内視鏡のquality indicator とは?/魚住 健志,関口 正宇 他
2.咽・喉頭領域における腫瘍性病変の拾い上げから質的診断まで/石山晃世志
3.食道腫瘍性病変の拾い上げ診断-非拡大観察において/飯塚 敏郎
4.食道腫瘍性病変の質的診断/谷 泰弘,石原 立
5.食 道非腫瘍性疾患の拾い上げ診断から質的診断まで-逆流性食道炎・好酸球性食道炎・Barrett 食道・薬剤性/腐食性食道炎・食道カンジダ症・食道静脈瘤/北村 陽子 他
6.食道胃接合部領域における腫瘍性病変の拾い上げから質的診断まで/栗林 志行 他
7.胃腫瘍性病変の拾い上げ診断-非拡大観察について/濱本 英剛 他
8.胃腫瘍性病変の質的診断/三角 宜嗣,野中 康一
9.胃非腫瘍性疾患の拾い上げ診断から質的診断まで/長尾宗一郎,森田 周子 他
10.十二指腸病変の拾い上げ診断から質的診断まで/赤澤 陽一,上山 浩也 他
11.上部消化管内視鏡スクリーニングにおけるAI の役割/松村 倫明 他
12.上部消化管腫瘍の質的診断におけるAI の役割/貝瀬 満 他
13.内 視鏡で消化管運動機能を診る―内視鏡的内圧測定統合システム(EPSIS)について/西川 洋平 他
〔新連載〕 ◆ 見落とし症例から学ぶ胃癌内視鏡検査 連載を始めるにあたって/山本 頼正
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書籍情報
- ISBN:9784004004001
- ページ数:128頁
- 書籍発行日:2024年12月
- 電子版発売日:2024年12月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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