特集にあたって

医療の高度化，地域包括ケアの推進，医療提供体制の変化に伴い，外来看護の役割は拡大し，その重要性は周知のこととなっています。外来看護師が実践している看護の内容は，患者情報の収集とアセスメント，スクリーニング（要支援患者の抽出），入退院支援，在宅療養支援，療養指導，相談対応，治療継続支援，地域連携支援など多岐にわたります。

外来における看護の課題として，専門的な看護ケアを提供できる体制整備と人材育成があげられています。外来は，1948年に制定された医療法では人員配置標準を患者30人あたり1人となっていましたが，2021年の実態調査1） では看護職配置人数が患者の中央値15.4人あたり1人となっており，近年は手厚い配置がされていることが明らかになりました。

小児医療においては，医療的ケア児の増加，成人移行期医療の推進，家族の養育能力の問題，こどもの虐待など，看護師が担う役割は膨大です。外来看護師の現状として，対象患者は年齢・疾患ともに幅広く，成長・発達を理解したうえで疾患や治療の専門的知識と看護ケアの技術を身に付けることは容易ではありません。看護師経験がある人でも，外来で看護実践力を発揮できるようになるまでには数年かかります。また，多くの施設では外来看護師の入れ替わりがあり，外来看護の質の維持・向上に向けて人材を育成していくことが課題と考えます。

小児診療の外来看護師からは「人手が足りない」「時間が取れない」という声が聞こえてきます。このような状況においても，看護業務の工夫や調整をして人手を確保し，外来受診のタイミングという限られた時間のなかで，看護ニーズのある患者・家族に巧みな技を用いて実践しています。外来看護師はあらゆる健康レベルの患者に対応するジェネラリストであるといえ，一方で専門性が高い疾患管理や医療的ケアの指導を行うスペシャリストでもあります。

このように外来看護師には多様な看護ケアの技術（技）を身に付けて，その時々の状況を見極めて行動するという実践力があります。しかし，その実践力に自身では気づいていないことが多いです。これはそもそも外来看護をどのように学び，実践力を磨いているかを言語化する機会が少ないことが原因と考えられます。施設によっては外来看護師の教育プログラムがあり，計画的・段階的に看護業務や看護ケアが習得できるように取り組んでいますが，多くの施設では，on the job training（OJT）で現場の先輩看護師が個別に教育していると思います。

本特集は，可視化されにくい外来看護師の教育に焦点を当てたいという思いから企画しました。こどもを診療している外来において，新入職者や異動者の教育の実際と，外来看護師の技をどのように引き継いでいるかを紹介するため，診療所・病院・療育施設の方，専門的な看護ケアの実践者の方に執筆いただきました。また，こどもの外来看護を基礎教育でどのように学ぶか，学生実習を受け入れる外来側では現任教育にどのような影響があるかについても触れたいと思います。

本特集が外来看護師の人材育成を考える一冊となることを願っています。

黒田光恵
自治医科大学とちぎ子ども医療センター外来／小児看護専門看護師

【文　献】

1）　日本看護協会：地域包括ケア推進のための外来における看護職の役割把握調査事業報告書．令和3年度厚生労働省看護職員確保対策特別事業，2022．https://www.nurse.or.jp/nursing/home/publication/pdf/report/2022/r3_role4resources.pdf（2024年最終アクセス）