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- カラーアトラス疣贅治療考
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内容
序文
従来,疣贅の原因はウイルスであると単純かつ簡単に教えられ,学生にも教えてきた.しかしながら,最近のウイルス学,就中HPV(ヒト乳頭腫ウイルス)研究の急速な進歩は,分子生物学,遺伝子レベルでの研究成果,また幹細胞に関する新知見などとも相俟って,正に驚異的な進歩を遂げつつある.
その今日に至る過程の中で,自他共に許す舵取り役の一人である江川清文先生と,初めてお目に掛かったのは1984年,筆者が荒尾龍喜・熊本大学名誉教授から日本皮膚科学会熊本地方会などで講演にお招きを頂いた折であった.その翌年,癌研究会癌研究所ウイルス腫瘍部(当時,吉田光昭部長)への内地留学が決まって上京された際,私が所属していた東京医科歯科大学へお見えになり,初めてゆっくりお話しする機会を得ることが出来た.当時,話が進むうちに,柔和な人柄から受けていた印象とは異なり,既に確固として,また夢と希望に満ちて,HPV研究のスタートが切られていることを知った.そして,その4 年後には,この領域の国際的泰斗,DKFZ(ドイツ癌研究センター)所長,H.zurHausen博士の下への留学という一大転機を迎えられた.そして,20年余に及ぶ豊富な症例に基づいた研究は,HPV60,63,65型感染封入体疣贅,更には同88,95型の発見へと結び付いた.また,外傷に伴う表皮の真皮内迷入説で長年説明されてきた足底粉瘤の発症メカニズムに,HPV感染によるエクリン汗管の類表皮化生説の提唱など,その後の業績の数々はご承知のとおりである.
このたびの企画を知り,筆者はエールを贈った一人である.HPVを包括的に網羅し,広領域における治療法などを,斯界の先輩,また現在第一線でご活躍中で,かつ際立った実績をお持ちの諸先生を分担執筆にお迎え出来たことは,この上ない喜びと拝察する.本書が「いぼ」に関する最先端の情報,そしてHost-HPV relationship,EBMに基づいた実践的治療法の選択など,日常診療に必携の書としてご推薦申し上げたい.
最後に,編著者の真摯な意図をお汲み頂いた医歯薬出版株式会社,出版に向けて諸事万端ご尽力下さった板橋辰夫氏に深謝申し上げます.
2005年10月
佐藤 吉昭
目次
序章 実践的疣贅治療書発想のこと(江川清文)
第1章 いぼ(疣贅)の診断
1 病因と病態(江川清文)
2 診断と鑑別診断
1 いぼの基本病型(典型像)と非典型像および臨床鑑別診断(江川清文)
2 病理組織学的鑑別診断(本田由美)
3 ウイルス検出のための検体処理(江川清文)
3 ウイルス性疣贅(イボ)は癌化する?(三石 剛)
4 HPVと子宮頸癌(笹川寿之)
第2章 いぼ(疣贅)の治療
1 疣贅治療総論(江川清文)
2 疣贅の自然消退現象(田上八朗)
3 プラセボ効果(新村眞人)
4 いぼ治療各論─理論と基本手技─
1 物理的治療法
a.外科的治療(石原 剛)
b-1.凍結療法─綿球法(水嶋淳一)
b-2.凍結療法─スプレー法(水嶋淳一)
b-3.凍結療法─ディスク法(清水順也)
c.電気乾固法(城野昌義)
d.炭酸ガスレーザー療法(レパヴー・アンドレ)
e.光線力学的療法(photodynamic therapy:PDT)(中瀬古裕乃,松本義也)
f.超音波メス(塚本克彦)
g.いぼ剥ぎ法(江川清文)
2 化学的治療法
a.サリチル酸外用(大熊守也)
b.モノクロル酢酸外用(岡崎美知治)
c.グルタラール(グルタルアルデヒド)外用(宿輪哲生)
d.フェノール外用(江川清文)
e.エタノール湿布(江川清文)
3 薬理学的治療法
a.ブレオマイシン局所注射(東儀君子)
b.フルオロウラシル(5-FU)外用(本田まりこ)
c.レチノイド内服(江川清文)
d.ポドフィリン外用(本田まりこ)
e.ビダラビン外用(角田寿之)
f.尿素軟膏外用(東 禹彦)
g.活性型ビタミンD3外用(江川清文)
4 免疫学的治療法
a-1.接触免疫療法(DNCB,DPCP,SADBE)(大石 空)
a-2.接触免疫療法─実例にみる3つの作用機序(江川清文)
b.イミキモド(imiquimod)外用(萩原正則)
c.精製ツベルクリン局所注射(本庄三知夫)
d.インターフェロン(IFN)局所注射(本田まりこ)
e.OK-432皮下注射・局所注射(乾 重樹)
f.ヨクイニンエキス内服(谷口彰治)
g.シメチジン内服(江川清文)
h.非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)内服(高垣謙二)
i.ビスコクラウリン・アルカロイド(セファランチンィ)内服(前田 学)
5 疣贅の漢方治療(前田 学)
6 灸療法(鹿島眞人)
7 痛くない民間療法:いちじくの乳液(latex)(伊藤 仁)
第3章 病型・病態別いぼ治療法の選択
1 いぼ治療のEBM(幸野 健)
2 症例提示による治療法の検討
a.尋常性疣贅(1)指背の孤立疹─凍結療法(江川清文)
b.尋常性疣贅(2)手掌の難治例─レチノイド内服(江川清文)
c.尋常性疣贅(3)免疫不全患者指腹のドーナツ疣贅─フルオロウラシル(5-FU)外用(江川清文)
d.指状疣贅(1)成人の頸部単発例─凍結療法(江川清文)
e.指状疣贅(2)アトピー性皮膚炎患児顔面の多発例─ヨクイニンエキス内服+凍結療法(江川清文)
f.指状疣贅(3)アトピー性皮膚炎患児顔面の多発例─ヨクイニン内服+ビダラビン軟膏外用(江川清文)
g.足底疣贅(1)成人踵部に散在する孤立疹─電気乾固法(江川清文)
h.足底疣贅(2)成人足底のモザイク疣贅─グルタラール外用(江川清文)
i.足底疣贅(3)免疫不全患者足底のモザイク疣贅─フェノール外用(江川清文)
j.足底疣贅(4)免疫不全患者踵部の重症モザイク疣贅─活性型ビタミンD3外用(江川清文)
k.足底疣贅(5)免疫不全患者踵部のモザイク疣贅─エタノール湿布(江川清文)
l.足底疣贅(6)小児の再発性足底疣贅─サリチル酸絆創膏貼付(江川清文)
m.ミルメシア(1)QOLを著しく障害する成人足底例─外科的切除(江川清文)
n.ミルメシア(2)SLE患児多発例─凍結療法+活性型ビタミンD3外用(江川清文)
o.爪囲・爪下疣贅(1)QOLを障害する多指多発難治例─レチノイド内服(江川清文)
p.爪囲・爪下疣贅(2)成人女性単発例─グルタラール外用+シメチジン内服(江川清文)
q.爪囲・爪下疣贅(3)成人女性単発例─フェノール外用(江川清文)
r.爪囲・爪下疣贅(4)子供の手指多発例─接触免疫療法(江川清文)
s.爪囲・爪下疣贅(5)子供の難治例─グルタラール外用(江川清文)
t.爪囲・爪下疣贅(6)免疫不全患者の難治例─エタノール湿布(江川清文)
u.扁平疣贅 成人下腿の難治例─活性型ビタミンD3外用(江川清文)
第4章 尖圭コンジローマの治療
1 性感染症としての尖圭コンジローマ(本田まりこ)
2 男性患者治療の特徴(野尻明弘)
3 女性患者治療の特徴(田代浩徳)
4 肛門部患者治療の特徴(高野正博)
5 症例提示による治療法の検討
a.亀頭の尖圭コンジローマ─凍結療法(江川清文)
b.亀頭~陰茎包皮の尖圭コンジローマ重症例─凍結療法+シメチジン内服(江川清文)
c.亀頭~陰茎包皮の尖圭コンジローマ─グルタラール外用(中村猛彦)
d.陰茎包皮の再発性尖圭コンジローマ─電気乾固(野尻明弘)
e.陰茎包皮の尖圭コンジローマ─活性型ビタミンD3外用(江川清文)
f.腟入口~会陰の尖圭コンジローマ─炭酸ガスレーザー療法(田代浩徳)
g.妊婦腟前庭の尖圭コンジローマ─炭酸ガスレーザー療法(田代浩徳)
h.妊婦腟の尖圭コンジローマ─炭酸ガスレーザー療法(田代浩徳)
i.肛門部の尖圭コンジローマ重症例─凍結療法+シメチジン内服(江川清文)
j.肛門部の尖圭コンジローマ─いぼ剥ぎ法(江川清文)
k.肛門部の尖圭コンジローマ─尿素軟膏外用(東 禹彦)
l.小児肛門部の尖圭コンジローマ─ヨクイニンエキス内服(山田義貴)
m.小児肛門部の尖圭コンジローマ─凍結療法(江川清文)
n.小児尿道口の尖圭コンジローマ─ポドフィリン外用(本田まりこ)
6 ボーエン様丘疹症の治療(石地尚興)
第5章 特殊な病型・病態のいぼ治療
1 幼児小児のための"痛くない"疣贅治療(今川一郎)
2 免疫不全患者のいぼ治療(石地尚興)
3 疣贅状表皮発育異常症の治療(川瀬正昭)
第6章 みずいぼ(伝染性軟属腫)の診断と治療
1 病因・病態と臨床像(江川清文)
2 治療をめぐる論争(江川清文)
3 みずいぼ治療のEBM(幸野 健)
4 みずいぼ治療法
1 みずいぼ取り─痛みを少なくする工夫(江川清文)
2 ポピドンヨード・サリチル酸絆創膏法(大熊守也)
3 硝酸銀ぺースト法(新関寛二)
4 その他のみずいぼ治療法(江川清文)
本書に記載された薬剤
院内製剤,自家調剤を要する薬剤
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書籍情報
- ISBN:9784263205693
- ページ数:272頁
- 電子版発売日:2011年5月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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