1型糖尿病 治療・ケアのエッセンス

  • ページ数 : 288頁
  • 書籍発行日 : 2018年2月
  • 電子版発売日 : 2019年4月19日
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商品情報

内容

日本の大規模治療施設の1型糖尿病の治療・ケアの50年にわたる経験のエッセンスがここに!

●1型糖尿病の治療は,合併症の予防とQOL維持を目的に厳密な治療管理が原則であり,子どもから高齢者まで長期のライフステージに沿い患者の一生に寄りそう医療,合併症を防ぐ専門的医療の連携体制が求められています.
●東京女子医科大学糖尿病センターでは,小児科から内科まで,科を超えた一貫した専門医教育と連携によって,シームレスに1型糖尿病診療を行っています.本書では,同センターが,これまで培ってきた1型糖尿病のノウハウを一冊にまとめました.
●本書では,単にガイドライン的な記載に留まらず,糖尿病センターでのデータを提示し,実際どのような治療をしているかを詳しく紹介しています.加えて,平田幸正初代センター長が具現化した小児科から内科領域の“シームレスな診療”構想について,その40年後のアウトカムを提示しています.

序文

はじめに

人類の歴史を変えた医薬品の中にかならず入るのがインスリンです.1921年にバンチング先生と医学生ベストが夏の8週間の実験でインスリンを発見したといわれます.2年後にはこの発見がノーベル賞受賞対象となりました.

これはとりもなおさず,インスリンの発見がいかに人類にとって大きな福音であったことを示す確かな証拠といえましょう.

ノーベル賞受賞年の1923年には,早くも日本でもインスリン製剤が糖尿病小児に使用されたことが学会雑誌に報告されています.しかし,広く入手可能となったのは1950年後半とのことです.

よって,1921年以前は,海外でも日本でも1型糖尿病は不治の病と考えられていました.以下は余談として記したいのですが,東京女子医科大学糖尿病センター開設者であり初代所長の平田幸正は,昔,「疫痢」と呼んでいた子どもの病気が1型糖尿病ではなかったかと思うのだが......と,あるときふとおっしゃったことがいまも耳に残っています.

東京女子医科大学糖尿病センターは,1975年7月に,初代所長平田幸正(当時50歳)のもとに,その一歩を踏み出しました.平田幸正所長はインスリン発見の4年後に生まれておられますので,日本の糖尿病の診療の進歩とともに医師としての人生を歩まれ,最終的に東京女子医科大学糖尿病センターを開設されたともいえましょう.

平田所長は九州大学講師時代,米国から帰国後の1969年,福岡で第1回の小児糖尿病サマーキャンプを開催し,以後キャンプで子どもたちと寝食を共にしました.インスリン注射でしか生活できない1型糖尿病患者さんに,米国ではすでにそうであるように,在宅で注射できるようにしてあげたい,陰で注射するのではなく堂々と厚生省が許可した手技のもとに注射する公認化にもっていかねばならない,と思われたのでした.その後に赴任した鳥取の地でも,サマーキャンプを立ち上げ,子どもたちとやはり寝食を共にされました.子どもたちと寝食を共にした主任教授は後にも先にも平田先生だけでしょう.

平田所長の長年の夢は,上記のインスリン自己注射の公認化*でした.といいますのも,その時代は,注射という行為は医師のみ,および医師の指導のもとでの看護師のみしか許可されていませんでした.インスリン自己注射の公認化は1981年に実現されました.

平田所長の1型糖尿病に対する理解と願望は,小児から成人,熟年になっても,もちろん老年になっても,一貫した糖尿病治療が受けられるようにという理念の東京女子医科大学糖尿病センターとして昇華しました.小児科から内科に転科するというのは,医療側のリクツです.患者さんが望んだリクツではありません.

平田所長は,後に第二代所長に就任される大森安惠先生と共に,小児であれ,成人であれ,妊婦さんであれ,合併症で困っている患者さんであれ,どんな患者さんでも,困っておられる患者さんを助ける東京女子医科大学糖尿病センターを着実に構築されていきます.どんな糖尿病患者さんでも助ける,これが糖尿病センターのポリシーとなりました.大森先生は,今でいうところのサブスペシャリティ外来として妊娠外来を早くに立ち上げられて,糖尿病女性の出産を可能にしました.全国から多くの糖尿病女性が受診されることとなり,チーム医療という概念をとり入れ,妊娠外来,計画妊娠という言葉が定着することとなりました.妊娠外来に引き続いて,次々とサブスペシャリティ外来が立ち上がり,糖尿病センターはその充実化に邁進していくことになります.

歴代のセンター長は多くのことを医局員に望まれました.この本は,糖尿病センターのポリシーに則って,医局員が,特に1型糖尿病,そしてとりまく諸々の治療やケアにどのように対峙してきたか,対峙しているかを記したものです.


1型糖尿病の道しるべとなれば幸甚に存じます.


平成29年9月吉日 内潟 安子

目次

はじめに

推薦文

略語一覧

I 1型糖尿病のシームレスな診療体制の構築

1.東京女子医科大学糖尿病センターの1型糖尿病治療の歴史と現在―小児思春期発症1型糖尿病を中心に

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターのポリシー

(2) 東京女子医科大学糖尿病センター開設前に発足していた糖尿病妊娠グループ

(3) 30 歳未満発症発見1型糖尿病患者の診療と研究から

2.東京女子医科大学糖尿病センターに通院歴をもつインスリン治療50 年の1型糖尿病患者の様相

(1) 臨床的特徴

(2) 糖尿病の管理

(3) 糖尿病合併症

(4) 糖尿病以外の罹病疾患

II 1型糖尿病診療の基本・エッセンス

3.わが国および東京女子医科大学糖尿病センターにおける1型糖尿病の疫学・サブタイプ

(1) 1型糖尿病の診断基準は?

(2) 1型糖尿病の現状は?(1型糖尿病の疫学)

(3) 東京女子医科大学糖尿病センターでの1型糖尿病患者の頻度は?

(4) 病型診断の難しい1型糖尿病症例は? 2型糖尿病ではなかったのか?

4.1型糖尿病の遺伝因子

(1) 1型糖尿病は遺伝するか?

(2) 1型糖尿病に関連する遺伝子にはどのようなものがあるか?

5.1型糖尿病の膵島関連自己抗体

(1) 1型糖尿病でみられる膵島関連自己抗体とは何か?

(2) 1型糖尿病の膵島関連自己抗体にはどのようなものがあるか?

(3) 膵島関連自己抗体の解釈はどのようにするのか? 膵島関連自己抗体の測定で1型糖尿病は診断できるのか?

6.1型糖尿病の臨床検査

(1) 内因性インスリン分泌を評価する測定法は?

(2) 血糖コントロール指標の検査内容は?

(3) 血糖日内変動を把握するための検査は?

7.1型糖尿病と誤診しやすい糖尿病

(1) 1型糖尿病と誤診されやすい糖尿病は?

(2) MODYはどのように診断されるのか?

(3) MIDDはどのように診断されるのか?

8.糖尿病の遺伝子診断と個別化医療

(1) 遺伝子診断のメリットは?

(2) 遺伝子検査はどのように進めるのか?

9.1型糖尿病の脂質異常

(1) 1型糖尿病における脂質異常症の重要性および管理目標は?

(2) 1型糖尿病の脂質異常症の診療上の注意点は?

(3) 1型糖尿病におけるHDL-Cの意義とは?

10.1型糖尿病に併発する他の自己免疫疾患

(1) 1型糖尿病との合併が報告される他の自己免疫疾患は?

(2) 自己免疫疾患の併発に関連する疾患感受性遺伝子は?

(3) 他の自己免疫疾患併発例の診療上の注意点は?

11.糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の病態と診断

(1) DKAの病態とは?

(2) DKAを疑うべき症状は?

(3) DKAの診断に向けた検査は?

(4) 患者への説明,起こりうる合併症は?

12.糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の治療

(1) 輸液,電解質補正をどのように行うのか?

(2) DKAのインスリンの量や投与方法はどのように決めるのか?

(3) DKA治療後はどのようなことに気をつけるか?

(4) 再発予防において重要な対策は?

III 1型糖尿病診療のクリニカルパール

13.治療

 1 強化インスリン療法のうちMDI,CSII,SAPをどのように選択しているか

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実際

(2) 実際の治療とそのアウトカム

(3) 臨床のクリニカルパール

 2 その他の付加的治療(内服薬)の国内外での現状

(1) 治療薬別にみた一般的な作用機序:1型糖尿病における治療の可能性と実臨床での経験

 3 移植療法(膵島移植,膵臓移植)

(1) 東京女子医科大学における脾臓移植の経験

(2) 実際の治療とそのアウトカム

 4 再生医療―今後の展望

(1) 実際の治療とそのアウトカム

14.食事・食べかたをどう指導するか

(1) 1型糖尿病患者の適正摂取エネルギー量をどうとらえるか

(2) 栄養指導の注意点

(3) 症例

15.摂食障害(過食症を含む)とそのケア

(1) 摂食障害とは

(2) 糖尿病への摂食障害の併発(特に1型糖尿病における)

(3) なぜ1型糖尿病の若い女性患者に摂食障害が多いのか

(4) 臨床のクリニカルパール:摂食障害を併発した糖尿病患者の治療

16.1型糖尿病の運動療法

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける1型糖尿病患者の運動の実態

(2) 運動療法の基本

(3) 運動療法にあたっての留意点

(4) 症例:1型糖尿病患者の運動(マラソン)施行の一例

17.低血糖(無自覚性低血糖・重症低血糖)

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(2) 実際の治療とそのアウトカム

18.不妊治療と1型糖尿病

(1) 不妊治療

(2) 不妊治療と糖尿病

(3) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける経験

19.妊娠・出産に向かう1型糖尿病の網膜症

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの経験

(2) 実際の治療とそのアウトカム

20.特殊状況下での対応

 1 シックデイ

(1) 実際の治療とそのアウトカム

(2) 臨床のクリニカルパール

 2 周術期血糖コントロール

(1) 実際の治療とそのアウトカム:周術期血糖コントロール目標

(2) 症例

 3 グルココルチコイド(ステロイド)治療

(1) 実際の治療とそのアウトカム:1型糖尿病患者のグルココルチコイド(ステロイド)治療

(2) 症例

21.慢性血管合併症

 1 1型糖尿病患者における糖尿病神経障害の現状

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターの1型糖尿病患者における糖尿病神経障害の現状

(2) 実際の診断

(3) 臨床のクリニカルパール

 2 網膜症の予測と管理

(1) 大規模研究の結果

(2) 東京女子医科大学糖尿病センターでの研究:メタボリックメモリーによる攪乱を除外するための試み

(3) 網膜症の予測と管理

 3 腎症

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける実態

(2) 糖尿病性腎症の症期分類とCKDステージ分類

(3) 腎症の治療

(4) 今後の課題

 4 透析療法(血液透析,腹膜透析)

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける透析導入患者の実態

(2) 糖尿病患者における透析療法の疫学

(3) 実際の治療とそのアウトカム

 5 腎移植

(1) わが国における腎移植の現状

(2) 当院における糖尿病患者に対する腎移植の経験

 6 大血管障害

  A. 冠動脈疾患

(1) 1型糖尿病と冠動脈疾患の実態

(2) 1型糖尿病における冠動脈疾患発症予防

(3) 冠動脈疾患のスクリーニング

  B. 脳卒中

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける脳卒中による入院糖尿病患者の実態

(2) 1型および2型糖尿病患者における脳卒中の疫学

(3) 実際の治療とそのアウトカム

  C. 末梢動脈疾患

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(2) 実際の治療とそのアウトカム

(3) 症例

22.他の併発症

 1 骨粗鬆症

(1) 概要

(2) 実際の治療とそのアウトカム

 2 うつ

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(2) 実際の治療とそのアウトカム

 3 がん

(1) 糖尿病におけるがんの現状

(2) 東京女子医科大学糖尿病センターのデータ

(3) 1型糖尿病の実診療におけるがんのスクリーニング

(4) 臨床のクリニカルパール

 4 認知症

(1) 認知症の現状

(2) 認知症の診療

(3) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(4) 症例

23.支援・チーム医療

 1 療養指導

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの療養指導の実際

(2) 実際の療養指導とそのアウトカム

(3) 臨床のクリニカルパール

 2 幼児期,学童期,思春期,更年期の患者への医療者としての対応

(1) 成人の1型糖尿病患者さんへの対応

(2) 主治医としての対応

 3 患者会・グループミーティング "1型糖尿病患者とのグループミーティングから見えてくること"

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターにおける若い糖尿病患者さんとのグループミーティング(GM)の実際

(2) 若い糖尿病患者さんとのGMの役割

 4 運転免許

(1) 道路交通法について

(2) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(3) 実際の治療とそのアウトカム

 5 小児糖尿病サマーキャンプの歴史と現在,未来の紹介

(1) 日本の小児糖尿病サマーキャンプの開始

(2) 現在の小児糖尿病サマーキャンプ

(3) 将来の小児糖尿病サマーキャンプ

24.健診でみのがさない1型糖尿病

(1) 東京女子医科大学糖尿病センターでの実態

(2) 現在行われている健康診断から発見される1型糖尿病

(3) 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)の病態と診断基準

(4) 症例

まとめ

25.1型糖尿病の予後は改善されたか

(1) 対象および方法

(2) 結果

(3) 1型糖尿病の予後が改善しているか

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書籍情報

  • ISBN:9784263236529
  • ページ数:288頁
  • 書籍発行日:2018年2月
  • 電子版発売日:2019年4月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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