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腎生検病理診断取扱い規約
日本腎病理協会 , 日本腎臓学会腎病理標準化委員会 (編集) / 金原出版
商品情報
内容
序文
序
腎臓病は、新しい国民病ともいわれるほど有病率が高く、しばしば進行性で腎機能低下に至る。同時に脳心血管病のリスクともなりうることから、総じて国民の健康寿命延伸の重大な阻害要因と認識されるに至っている。原因は実に多様であり、とくに全身病に併発することが多い。
腎臓病は尿異常や腎機能低下によって慢性腎炎症候群、急性腎障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)などと臨床診断はされるが、それだけでは治療の根拠となる原因や病態はほとんどわからないため腎生検を行う。すなわち、腎生検は腎臓病診断のゴールドスタンダードである。
腎生検病理診断の目的は、既存の疾患分類のどれに相当するかを判断することに加えて、臓器障害としての病因的背景と形態学的所見から組織障害を読み取り、臨床病態を説明することである。したがって、診断医は病理学ならびに臨床腎臓病学に対する幅広い知識を要する。一方で、これらの判断にはバイアスがかかりやすく、診断の向上には診断過程の標準化が必要とされてきた。
本書は、疾患別の病理解説書にはない腎生検病理診断の体系と実践を初学者でも理解できる「規約」として2つの特色を持つ。まず、腎臓病の分類を病因論から理解するために、日本腎生検レジストリーの新分類に沿って編集した。次に診断標準化のために診断アルゴリズムなどを用いて診断過程をできるだけ明瞭化し、国際腎病理協会による最新の病変の定義と診断フォーマット、国際分類を掲載した。これによって病理組織標本から抽出した多くの所見を病理診断として統合し、病態を解釈することで腎臓病を全身病としてとらえ、臨床の現場に生きた情報として還元できるようになるであろう。腎生検病理診断には臨床医からの細かな情報が非常に重要であるが、本書の利点はその前提に基づいていることを強調しておきたい。
本書の執筆は、日々腎生検診断に携わる日本腎病理協会の多くの腎病理医が担当した。したがって、記載内容は実践的であり、診断のコツなども随所に書かれている。一方で個々が用いる異なった用語や表記法を、「規約」として統一するために膨大な編集作業を要した。各執筆者に加えて、日本腎臓学会腎病理標準化委員会の作成委員と、この編集作業に多大な貢献をされた益澤尚子先生、佐賀信之先生に深謝したい。
本書は初版である。これまで腎臓病の概念や分類は時代とともに変わってきた。腎臓病の診断に質量分析や遺伝子検査が大きな意味を持ってきているが、病態を推定するための病理形態学の重要性は、それらを補完する意味で益々重要になってくるであろう。本書が今後改訂を重ね、それぞれの時代の要請に応える規約に進化し、腎生検病理診断にかかわる多くの方に利用され、実臨床に還元できる腎疾患の診断規約となることを望む。
なお,本書の出版に際して賛同し,煩雑な作業を引き受けて下さった,文光堂関係者に謝意を表します.
平成31年3月
日本腎病理協会代表世話人
筑波大学医学医療系 腎・血管病理学教授
長田 道夫
日本腎臓学会理事長
川崎医科大学 腎臓・高血圧内科教授
柏原 直樹
目次
総論
検体の取り扱い
腎生検病理診断の構築と報告書の記載項目
病変の定義と糸球体の傷害パターン
蛍光抗体法診断の実際
電子顕微鏡診断の実際
各論
IgA腎症/IgA糸球体腎炎
微小変化型ネフローゼ症候群
巣状分節性糸球体硬化症
膜性腎症
膜性増殖性糸球体腎炎
C3腎症
血管炎症候群(ANCA 関連血管炎/抗糸球体基底膜病/IgA血管炎)
膠原病関連腎症
感染関連腎炎
高血圧性腎硬化症/動脈硬化性腎硬化症
糖尿病性腎症
血栓性微小血管症
脂質関連腎症
単クローン性免疫グロブリン(M 蛋白)関連腎症/類縁疾患
クリオグロブリン血症性糸球体腎炎/血管炎
Organoid 構造を伴う沈着物による糸球体症
アミロイドーシス
遺伝性腎疾患
尿細管間質疾患
移植腎病変(抗体関連型拒絶反応/細胞性拒絶反応)
その他の腎炎疾患
組織分類
IgA腎症―Oxford分類、日本腎臓学会組織学的重症度分類
紫斑病性腎炎(IgA血管炎)―ISKDC分類
ループス腎炎―ISN/RPS分類
巣状分節性糸球体硬化症―コロンビア分類
糖尿病性腎症―RPS分類
ANCA関連血管炎―EUVAS国際分類
移植腎Banff分類(Banff2017)
巻末資料
診断アルゴリズム
日本腎生検レジストリー(J―RBR)
参考
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書籍情報
- ISBN:9784307050524
- ページ数:211頁
- 書籍発行日:2019年6月
- 電子版発売日:2019年12月27日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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