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神戸大学感染症内科版TBL~問題解決型ライブ講義 集中!5日間 (第1版)

  • ページ数 : 444頁
  • 書籍発行日 : 2013年3月
  • 電子版発売日 : 2013年9月27日
4,950
(税込)
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商品情報

内容

m3.com電子書籍でも大好評の岩田健太郎氏の著書。

2012年6月、神戸大学医学部4年生を対象にTeam Based Learning方式で行われた感染症講義を臨場感そのままに「ライブ的にノリノリに楽しく学べるチュートリアル」を目指して書籍化。

プロが厳選した臨床解決問題に学生が挑む。本当の問題解決とはなにか? 対話形式のメソッドでその答えを見出していく。感染症の知識はもちろんのこと、臨床推論の方法や検査の価値判断、教科書の選びかたなど役立つトピックが満載。教える立場から教わる立場まで、学生、研修医、指導医におすすめの1冊。

序文

みなさん,こんにちは。岩田健太郎です。本書を手にとっていただき,感謝しています。

本書は2012年6月に神戸大学の医学部4年生に行われた1週間のTBL,Team Based Learningをもとにしたライブ講義です。実際に行われたTBLを録音し,これを金原出版の中立稔生さんに文字起こししてもらい(英語の部分とかも多くて,ご苦労をお掛けしました),さらに「文章」として再構成したものです。

学生や患者のプライバシーに配慮して,内容を改めたところもあります。それと,「言葉遣い」はだいぶ変えています。コロキアルな言葉は,文字で読む言葉とは全然違います。いくら(二葉亭四迷以来)口語体と文語体が融合したからといって,両者は同じではありません。

今回とくに文字起こしして気がついたんですけど,ぼくは同じフレーズを繰り返す癖があるようです。それは授業の場では「重要事項の強調」として許容範囲なのかもしれませんが,書物上ではややうっとうしい表現となります。

というわけで,文字起こしをした文章は校正においてかなりイジることになりました。しゃべったことを文字起こしして本にするなんて,楽するんじゃねえよ,と思っておいでの方もいるかも知れませんが,実はとても大変なんですよ,ほんと。

2008年にぼくが神戸大学に異動した時,4年生はproblem basedlearning(PBL),別名チュートリアルを行っていました。しかし,これを見学したぼくは全然よいとは思いませんでした。真面目な学生の間でも評判が悪かったです。

学生は教官たちにPBLを見直すよう要求しました。彼らはPBL改善を要求し,後に感染症内科が行ったTBLも評価し,これを医学教育学会に発表しました。


・佐藤直行ら:学生・教員が共に創るチュートリアル教育 より良い医学教育を目指して.医学教育41Suppl:p111(2010.07会議録)

・國谷有里:臨床実習に資するチュートリアル・臨床前教育の模索 学生・教員が共に創る医学教育(第2期).医学教育42Suppl:p119(2011.07会議録)

・浅井真理恵:TBLアンケート調査から見たPBL・TBL教育の現状と可能性 学生・教員が共に創る医学教育/第3期.医学教育43Suppl:p97(2012.07.会議録)


で,感染症内科は独自のコンセプトでTBLを導入することに決めました。

外科などいくつかの科は,伝統的な講義形式に戻しました。ま,確かに「虫垂炎の手術のしかた」とかは,素人が不毛な話し合いをやるよりも「こうやるんだ」と教えてもらうほうがはるかに効率が良いに決まっています。

PBLで特に問題を感じた点は2つあります。

1つは,「学生が自主的に勉強して,臨床感染症という学問領域について妥当な理解を得られる」という信憑にぼくが共感しなかったことです。その懸念は,本書をお読みいただければ実に正しかったことが分かります。自主学習をしてきた学生は最初からトンチンカンな理解で,基本的なコンセプトを理解せずに見当違いな学習をやっていました。それは「だれか」が是正しなければならない致命的な誤謬でした。

2つめは,チューターです。ぼくは,その「だれか」にチューターがなれるとは思えませんでした。

感染症診療を自学自習で学ぶことは可能か。はい,可能です。しかし,そのためには膨大な努力と感性,そして妥当なテキストと出会う「運」が必要です(日本で出ている感染症のテキストは玉石混淆だからです)。神戸大学のチューターになるような世代のドクターはほとんど,学生時代や研修医時代にきちんとした臨床感染症の教育を受けていません。もしかしたら,きちんとした臨床医学の教育すら受けていないかもしれません。彼らすべてが膨大な努力と感性と「運」を持っていて,妥当な感染症教育を学生に提供できると信じるほど,ぼくはお人好しにはなれませんでした。

そういうわけで,学生にはぼくたち感染症のプロが教える以外に選択肢はないと思いました。その必然的な結果として,「みんな集めてまとめてやる」TBLしかありえなかったのです。ぼくにとって,TBLは(日本の医学教育者がやりがちな)「今アメリカで流行している手法」だから取り入れたのではなく,「それしか選択肢がなかった」という後ろ向きの選択だったのでした。

TBLとは,「ある特殊なやりかたで協力して行う学習で,特定された個人学習とグループ作業,そしてその場で受けるフィードバックの流れがある。これによって学生がお互いに築きあげるモチベーションの枠組みを作るのだ。準備をしてからクラスに参加し,議論に参加するのだ」とMichaelSweetさんは定義しています。

定義は(ほとんどの定義がそうであるように)わかりづらいですが,要するに学生が主体的に学習していくことをその特徴としているようです。オーセンティックなTBLは事前学習,iRAT,tRATと呼ばれる事前テスト(individual readiness assurance test,team readiness assurancetest),テストの間違いを検討,ミニレクチャー,問題解決,発表......という流れを取ることが多いようです(//www.teambasedlearning.org/starting)。

でも,ぼくはこのようなアメリカ式の,教科書的なTBLにはあまり感心しませんでした。実際にTBLに関するワークショップにも参加したのですが,なんというか,せっかくのライブ感が失われてしまっているような残念な印象を受けたのです。

ある医学教育系の学会に参加した時も,TBLに関する発表で概ね学生の評判が悪かったのを見て,「やっぱりなあ」と思ったものです。言うならば,脂身など,毒々しくも美味しい部分を取ってしまった秋刀魚のようなものです。

やっぱり「秋刀魚は目黒に限る」のです。

TBLの「チームで学ぶ」「みんなで学ぶ」「自主的に学ぶ」というコンセプトは面白いと思ったのですが,つまらない(とぼくが感じたこと)をそのまま残して,オーセンティックにやることは好みませんでした。なので,コアなコンセプトは残しましたが,iRAT,tRATみたいなものは全部やめました。学生に予習も求めませんでした。

では,その「目黒の秋刀魚」はどのようなものであったか。これは本書をお読みいただければわかります。

本書をお読みになった方は,ぼくがひたすらしゃべりまくって,学生はほとんど発言する機会がないかのような印象をお持ちかもしれません。でも,実は学生は各グループでの話し合いの時間を十全に与えられており,それは本書の内容には反映されていません。そんなわけで,学生もグループ内でたくさん話し合ったり,あるいは自主学習的な時間をたっぷりとっていることはご理解ください。

さて,TBLを受けた学生の評価はどうなったのか。ぼくは「あえて」今回,正式な評価作業を学生に課しませんでした。アンケートもとらなかったし,試験もレポートも課していません(もっとも,アンケートは6年生達が自主的にとって,上述の学会発表に至りました)。それじゃ,学生の成長が吟味できてないじゃん?と疑義を唱える方もおいでかもしれません。

その疑義に対する答えも,本書に込められています。まずはお読みになってください。

「目黒の秋刀魚」同様,ウンチクよりも,まずは食べてみなくてはね。

目次

6月18日(月)1日目

第1講

・なぜTBLか,PBLの問題はどこにあるのか

・シラバスなんて要らない!

・診断とは?病気とは?

・病気は恣意的な規定

・治療が変われば診断も変わる

・「潜在結核」という病気

・精神科疾患は個性?

・昔の病気は「露骨」だった

・病気でなかったものが病気になる日本

・尿酸値が高いと治療なのか?

・無症候性細菌尿は治療すべきか?

・微生物と現象と病気そのもの

・病気の時間性

・89歳,女性。2週間前から体が痛い

・体中が痛いおばあちゃん

・病気が不安なおばあちゃん

・「なにかあったら」どうするか

第2講

・レポ-トとプロセス評価

・「検査をする」という選択肢

・検査を選ぶポイント

・感染症の診断プロセス

・微生物は治療の対象ではない

・時間情報の得方

・長いスパンの感染症─例外を考える

・微生物の見つけ方

・感染臓器の見極め方

・痛みの話

・解剖学的なアプロ-チ

・血液検査のピットフォ-ル

・コッホの原則

・感染経路が大事

・そのトキソプラズマは,どこから?

・臨床で役立つ感染経路の整理法

第3講

・食品関係者の検便?

・「可能性は否定できない」という思考停止

・20歳男性,頭痛と発熱

・オッカムの剃刀

・システム・レビュ-をしよう

・髄膜炎を疑ったら─首の診察法1.

・仮説生成に基づく問診と診察

・喉の診察法

・破傷風とは

・首の診察法2.

・リンパ節腫脹の鑑別

・ストレスと発熱

・薬物中毒の知識

・インフルエンザの診断

・HIV感染症とsexual activity

・全身性エリテマト-デス(SLE)とは

・副鼻腔炎の診察

6月19日(火)2日目

・急性副鼻腔炎の診断プロセス

・『PubMed』の使い方

・病気のシ-ズナリティをみる

・病気を解剖学的に考える

・急性副鼻腔炎の治療戦略

・慢性副鼻腔炎とはなにか

・いい教科書の条件

・急性副鼻腔炎の診断にCTは必要か?

・急性副鼻腔炎に抗菌薬は使うべきか?

・頭痛,発熱の鑑別

6月20日(水)3日目

第1講

・尤度比とアナログな医学の世界,そして重症度

・HIV検査のピットフォ-ル

・診断アルゴリズムとゲシュタルト

・なぜ,論文を読むのか?

・論文の構成

・MethodsはPECOでみる

・上手な発表,そしてエラ-

第2講

・ゲシュタルト診断とは

・エビデンスの「レベル」とは

・ビタミンEは心臓に良いか?

・階層は,本当に階層か?

・83歳男性。発熱,腰痛

・問診の仕方,病歴のとり方

・薬剤歴から導く診断

・頻度と程度の重みづけ

第3講

・結核性椎体炎の発生機序

・結核性椎体炎の診断

・結核性椎体炎の治療戦略

・発熱と腰痛の鑑別疾患

・わからないときは『エポケ-』

・臨床医学のゲ-ム理論

6月21日(木)4日目

第1講

・ポパ-の反証主義

・Nの数は大事か?

・シミュレ-ショントレ-ニングの方法

・ツ反,QFTの検証

・ツ反とQFTとはなにか?

・QFTの使いどころ

・検査の価値判断

第2講

・いよいよ英語で症例

・バイタルサインと意識状態の見方

・検査値と基準値の考え方

・カンジダ感染症の基礎知識

・皮疹の原因は......?

・免疫抑制のパタ-ン

第3講

・ニュ-モシスチス肺炎の疫学とリスクファクタ-

・ニュ-モシスチス肺炎の臨床症状と診断

・ヘルペスウイルス感染症の基礎知識

・ニュ-モシスチス肺炎の画像診断と次の手

・ニュ-モシスチス肺炎とステロイド

6月22日(金)5日目

第1講

・メタ分析の扱い方

・UpToDateの使い方

・ニュ-モシスチス肺炎の予防法とその対象

・AIDS関連ニュ-モシスチス肺炎とNon-HIVニュ-モシスチス肺炎の違い

第2講

・TBL最後のケ-ス1.─症例提示

第3講

・TBL最後のケ-ス2.─鑑別疾患の吟味と検討

・そして,診断は......

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書籍情報

  • ISBN:9784307101608
  • ページ数:444頁
  • 書籍発行日:2013年3月
  • 電子版発売日:2013年9月27日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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