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- 医者になってどうする!
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内容
序文
医学部を目指す受験生が増えていると聞く。いきなりで申し訳ないが、医療現場で働いている私から言わせてもらえれば、「なぜこんなに辛くて割に合わない仕事に就きたいと思うのか」と感じる。日々厳しい医療を続けていると、多くの受験生に医師を目指して欲しいと思う反面、「こんな職業はやめておけ」とアドバイスしたくもなる。
今、医療は本当の危機に瀕している。医師不足による医療者の疲弊や患者の受け入れ拒否、医療事故などが日々報道されている。そんな状況を受験生が知ってか知らぬかは、私は知らないが、彼らに対して「すばらしくやりがいのある仕事だから医師を目指せ」とは、無責任に言えない。
私の周りの子供を持つ大学病院勤務医師たちに、「自分の息子(娘)を医師にしたいと思うか ?」と尋ねると、ほぼ全員が、「本人がなりたいと願うのなら止めはしないが、積極的に医師にしようとは思わない」と答える。今の医療情勢を反映した、子を持つ親の微妙な気持ちだと思う。
現役の大学病院勤務医師たちは自分の仕事に誇りを持っている。日々、必死に医療を支えている。だから、自分が医師になったことに対して後悔はしていないし、前向きに取り組む姿勢を示している。自分は何とか頑張れる。しかし、「最愛のわが子に同じ職を継がせたいか」と問われた場合には、そこにはある種の迷いが生ずる。医師になんかさせないで、もっと効率よく収入が得られて、余裕のある暮らしのできる職業を選択させたいと考えている。
自動車や電化製品など製造業の栄えた時代が衰退していくように、時代は常に流動している。動力としての石油を、クリーンエネルギーに変換しなければ製造品は売れない時代に突入した。医療界においても、これまでの自信と威厳とに充ちた時代は終焉を迎えつつある。いつの時代にも憧れの職業にランクインされていた医師という職業に暗雲が立ち込めている。
これからの時代を生き抜く医師は、医療の現実を見据えて、常に進化・発展していかなければならない。私はこれまでに数冊の著書を執筆してきた。医療の現実を伝え、それによって医療者の取るべき行動について持論を説いてきた。そのメッセージを伝える対象においてきた人物は、第一線で働く現場医師であったり、患者を含む一般国民であったり、政治家や厚生労働省(厚労省)役人であったりした。医療者にはエールを送り、国民には医療の現状を直視してもらい、国や行政には私の思いを伝え、少しでも明るい医療に変換されることを願っていた。
最近考えることは何か ? 医療環境を変えていくためのもっとも強い胆力は、医師を目指している若い君たちである。医学部受験生や現役医大生たちを対象に伝えなければならないことがある。
正直なことを言うと、私は何となく医師になった。色覚機能に異常を持つ私にとって、身体的なハンデが医療に興味を抱かせた部分は確かにあったが、「小さい頃からの夢を目標に、努力を重ねて医師になった」などとは口が裂けても言えない。学費のことでは両親に随分苦労をかけた。だからかもしれないが、この数年間は「自分が何のために医師になったのか ? これから何ができるのか ?」ということを常に考えている。紆余曲折し、綱渡りでここまで医療をやってきた自分だからこそ伝えられることがあるような気がする。
近頃、心の荒んだ医師をときにみかける。疲弊し、荒廃し、破綻しかけている医療現場をみる機会も増えた。「救急の患者なんて待たせておけばいい。どうせたいしたことないのだから、待たされることで患者も来なくなればいい」と言っていた医師に憤りを感じたこともあったが、今はその気持ちが十分に理解できる。その一言に医療の現実のすべてが集約されている。
私自身、「患者のためだけを考えて医療をやってきたか」と尋ねられれば、下を向くしかない。むしろ、どちらかと言えば、自分のためにやってきた部分が大きい。しかし、その都度多くの人から支えられ、何とか気持ちを奮い立たせ、ここまで医師としての仕事を続けてきた。サイエンスを忘れない心と患者の笑顔を糧に、怒濤の日々を犬かきで泳いでいる。
医師として頼りないと思われるかもしれないが、患者からは逆に生きる勇気をもらったこともある。そのことを忘れない医師でありたいと願っている。感謝の気持ちを持ち続けられる人間でありたいと考えている。これから医師を目指す君たちにメッセージを伝えるとともに、自分自身も何のために医師を続けているのかをもう一度問い直したい。
本書は医師になるためのマニュアル本ではない。むしろ、受験テクニックについては何も述べられていない。
もう一度言うが、私には医師になりたい確かな動機はなかった。しかし、高校生のある時期からどうしても医師になりたいと思っていた。医学部に入るためには、医師になりたいという気持ちに勝るものはないし、「こういう理由で医師になれ」などと他人から強要されるものでもない。正直、医師を目指したいという一念に尽きる。その気持ちをどう維持していくかなどは、自分で考えることだ。現役の大学病院勤務医師が今、何を考え、どう立ち振る舞っているかを理解し、諸君らが何かを感じてくれればそれでいい。医療のリアルを知ってもらうことが目的である。
社会に出ること、とりわけ医師になるということは、世間の荒波の中に飛び込むということである。その相手は人間すべてである。将来の医師像を思い描くヒントになれば、本書の意義は達成されたことになる。試験勉強の合間にでもゆっくりお読みいただければ嬉しい。そして、読後どのような感想を持ったとしても、医師になりたい気持ちの中に、何かしらの感慨が得られたのならば著者冥利につきるというものである。
目次
はじめに
第一章 医療の現実を知れ!
まず私というもの?医師になる前の心構えを問う
医師のジレンマ
医療事故を知れ!
医学教育の現実を知っておけ!
サービス業化される医療
医療の危機管理能力
医療問題の主犯は私たちである!
書類作成のための医療
なぜ急患の受け入れを断るの ?
第二章 医師を目指すには ?
医学部を諦めるな!
医学部合格を目指して
医学部の勉強は難しいのか ?
医学部で求められること
やりがいのある仕事って ?
医学・医療の学び方
恋愛から学べ!!
医学部の志望動機を問い直せ!
医学部人気の裏側
医師にならない選択肢
受験生は何を考えたらいいのか ?
第三章 医師とは ?
まずは自分のために医師になれ!
医師たらしめるコツ
世の仕組みを変える医師の感性
選別される患者と医師
臨床医と研究医の違いは ?
女医の増える時代
ネット社会の医療
医者のクールダウン
医者の唯一の取り得
第四章 これからの医療の流れ
医師の流れ
研修医は何を考え、どうすべきか ?
医療に向かっていくには ?
病気を診て人を診ず
医療ドラマが大流行り
医師を選んだ理由を再度問う
医療界格差
自分を探り当てろ!
日本の医療が如何にあるべきか!
おわりに
僕は医者になって楽しむ-「医者になってどうする!」を読んで森田 知宏
カバー装画佐藤 秀峰
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書籍情報
- ISBN:9784498009943
- ページ数:238頁
- 電子版発売日:2011年5月10日
- 判:B6判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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