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- ICUハンドブック[改訂2版]
商品情報
内容
ICUで必要とされる実践的な知識、指針、データなどを図表や箇条書きで分かりやすく紹介して、好評を博した書の改訂第2版です。現場で遭遇する様々な症候の対処法や各手技、ポイントや注意点などが一目瞭然で、自信を持ってICUに勤務するための心強い1冊。
序文
ICUハンドブック改訂2版に寄せて
第1版が出てからもう6年経ったんですねぇ.......そのためもあり,中外医学社さんから改訂の話をいただき,難産の末にようやく第2版の上梓となりました.執筆者の皆さん,ありがとうございました.そして第2版が出ることをひそかに期待していた(!?)これからICUでの勤務・研修を予定しているたくさんの(!?)若手医師の皆さん,お待たせしました.
2色刷りになったり,新たな項目を設けたり,かなり大胆に改訂しました.第1版からこの本の執筆をお願いしている旧知のSK先生が,編集・執筆を手掛けて大人気を博しているY社のあの本を意識していないといえば嘘になりますが,それに比べると平易になっています.覚えられる量は限られているので,どうしても理解してほしいことはできるだけ短い文書で少なくしたいのと,覚えなければならないことは必ず頭に入れる必要がある,と感じるからです.
執筆者はベテランに(もちろん期待の若手も交じっています),そしてハンドブックの内容は最新のものに変わりましたが,若い先生方がICUで働くための心構えは変わっていません.その熱い心は,第1版の序にすべて書き込んであります.暇なときに読んでみてください.
2012年初夏
外勤当直明けの関東労災病院救急科医局にて
三宅康史
初版の序
今年もまた,医師国家試験を合格した卒後臨床研修医の皆さんが,不安とやる気を胸に続々と入ってきました.私も大学附属病院の救急部の門を叩いた時を思い出します.あの頃は,学生時代に将来にわたってやるべき道を決め,前もって入局する医局に話を聞きに行って納得し(あるいは騙されて!?),医師国家試験合格の挨拶に行けば,「じゃあ早速明日から来て」,と"お客さん"から一気に最下層の医局員に転落です.そんな現実に目を丸くしながらも,ようやく医師となって色々な経験ができる喜びと,こんな私に患者さんの体に"無事に"メスを入れたり,一晩中寝ずに"正しい"集中治療ができるんだろうか,と不安を感じつつ...やるしかないと腹をくくって飛び込んだような気がします.
確かに色々やりました.外傷患者が担ぎこまれて,初めての気管挿管も,なにやらよく見えない声門に向かってエイヤッ,と押し込めば,オオッ,左右差なく前胸部がうまく上がっているではありませんか! ところが,しばらくして,その患者の状態が急変.低酸素血症がどんどん進行,脈も微弱になってきました.気管挿管はうまく入ったはずなのに....その時,上位医師から「この棒を右胸壁から心臓に向かってまっすぐ挿せ!」と硬い芯棒付の透明なチューブを渡され,「それでは,患者が死んでしまう!」と心で慄(おのの)きながらも,ブスリと挿せば,ドレーンからは勢いよくドドーッと大量の血液が噴出....やっぱりやってしまった,と思う間に,呼吸パターンと酸素化は改善し,出血も一段落.緊張性気胸と大量血胸の診断と胸腔ドレーンの挿入術を知るのは,患者の状態が一段落してからでした.
そんな手に汗握る経験をしながらも,私を含め5人の同期の研修医たちと少しずつ救急医らしくなっていく日々での楽しみといえば,上位の先生や同期たちと当直業務をこなしボロボロになって一晩頑張った翌朝です.何かと言えば,登院してきた元気な先生方に患者の申し送りも早々に,「お疲れサンでした!!」と医局の隅で当直者みんなで囲むインスタントラーメンの鍋と一杯ずつのビールのことです(当時だから許されたのでしょうか,それとも当時でも許されない所業なのでしょうか...).
附属病院での研修中,患者管理について研修医同士で考え,調べた知識を持ち寄り,熱く討論しました.治療方針でぶつかって反目したり,嫌な仕事を押し付けあって上の先生から叱られたりもしましたが,一人では決してできない重症患者を集中治療により救命するには,連続する24時間を互いにカバーしあって目を光らせ,管理を引き継ぎながら協力する必要があります.さもないと自分の寝る時間もなくなり,どんどん疲弊して,ついには気が付かない間に患者の変化を見落とし,最後には手遅れになってしまいます.そういう意味で,指導医はもちろんのこと,信頼できる同僚が必要です.彼らのピンチ(=すなわち患者もピンチ)には,帰宅やデートを今宵は諦めて泊り込むくらいの気概を見せましょう.映画『Black Hawk Down』(2001年リドリー・スコット監督)に出てくるDELTA Forceのフート軍曹(エリック・バナ)にその姿をダブらせることができます.海兵隊である主人公達が死地を切り抜けなんとか基地内へ帰還し,互いの無事を称え合いホッとしている隣で,彼は紛争地域に残った戦友を救出するために,装備を充填しサンドイッチを口にほおばりながら,再び戦火の中へ戻っていきます.任務への忠誠か,戦地の友情か,そもそも死と隣り合わせの極限状態が好きなのか,それはわかりませんが,絶望的な戦場で待つ身(それは同期の研修医でも,患者でもその家族でも)にとっては,誰であろうと心強いことに変わりはありません.
少し救急医として自信のついたその年の暮れに,突然公立病院の脳外科兼救命救急センター(ICU)への出向が決まりました.大晦日に仕事が終わって医局でこぢんまりと送別会をしてもらい,その足で医学書や着替え,洗面セットを車の後部座席に詰め込んで,新しい病院に向かいました.初めて会った当直の先生(救急と脳外科合わせて一人で当直中)と年越しそばを食べて御屠蘇を頂き,そのまま新任地での研修が始まりました.大学病院との大きな違いは,患者さんの多さに対して医師の数が少ないこと(常勤4人に研修医は私1人,ベッドは脳外科病棟40床+ICU6床+救急病棟)と,市中病院という看板(大学病院のようになんでも許されるといった権威がないこと)でした.よく知らないことをベテランであるかのように看護師さんに指示して,それが間違いであった時に向けられる白い目,意識のあるくも膜下出血の術前の患者に,痛み止めも打たず鎖骨下から中心静脈路を挿入しようとして失敗し大目玉を食らったり,慢性硬膜下血腫を何度か経験のあった穿頭術で手術し,術後に大きな急性硬膜外血腫を作って再手術になったり....少しあった自信もすっかり削られて,手前味噌で覚えた生半可な知識や技量では,一人ですべてをやらねばならぬ時には,何の役にも立たない頼りないものであったことをここで痛感しました.自分のものと思っていたすべては,チーム医療の中でチェックされ,リカバリーされながら機能していたということです.
急患が次から次へと押し寄せてくるその公立病院では,上級医でさえ昼飯を食う暇もなく,外来に,検査に,手術に,病棟管理に駆けずり回っている状況なのに,重要な仕事がほとんど何もできない自分を悔しく思った毎日でした.夜中の手術では,「全員が倒れるわけには行かない.ここからは我々でやっておく.お前は明日の回診頼むから先に寝ておけ」と,一番下の私が最初に当直ベッドへ向かわされる始末.重症患者で手が足りなくなってもお呼びが掛からないようでは,それは「ラッキー!」でもなんでもなく,ただ必要とされていない証拠.早く信頼されるスタッフに成長し,周りから求められるような存在になりたいと思う気持ちが,日々の研修のエネルギーになっていたようです.さて,ここでまた映画の話です.『U-boat』(1981年ウォルフガング・ペーターセン監督)に出てくる機関長(クラウス・ヴェンネマン)は,敵駆逐艦の爆雷攻撃で損傷し深度計の針が振り切れるまで深く沈んだ潜水艦(確か220m超えてた)を,主人公の海軍報道部記者が「来るんじゃなかった」と後悔しながらベッドで泣き寝している間に,機関長にしかできないトラブルを一つ一つ直して,最後の再浮上のチャンスを作ります.その姿は,ここは自分がやるしかないというプロフェッショナルとしての職業意識そのものです.警察官,消防士,パイロットなども含め,ヒトの命を預かる職業では,こういう姿勢が培われます.頼りにされた場面で,持てる技量を生かし,全力を挙げて自分にしかできない働きができた時には,この仕事を選んでよかったと,疲れてはいても心地よい後味を残してくれるものです.それがあるから,明日忙しいのがわかっていても,きっとまた病院へ出て行く気になるんでしょうね.
この本は,今,病院の中でまさにそういう頼りにされている先生方にお願いして執筆していただいています.エビデンスと彼らの経験が組み合わさって,ICU管理に必要な重要事項をコンパクトに濃縮しています.必要なところを斜め読み,いや読むというよりパッと見渡して,応急処置用として役立ててください.実際の症例に当たった時に,この本でまず全体像を理解し,気になったところや,怪しいところは鵜呑みにせず,もっと知りたいところは,患者を受け持っている間に,自分でもう一度成書や論文を検索して確かめてください.熱いうちに症例で確認しながら勉強することが,その症例の経験を自分のものにし,スキームとテクニックを身に付ける最も良い方法だと思います.
分担執筆者の皆さんのお陰でこんなに厚い本になりました.最初はノートっていう名前のハズだったのが,ハンドブックへ昇格しました.中外医学社の荻野さん,上村さん,始まりから終わりまでホントお世話になりました.ここだけの話,初めてのメールのやりとりの時には,変換すると虫害医学社だったんですから...スミマセンm(_)m.
2006年 3月
三宅康史
目次
1.ICU 入室当日の情報収集・診断・治療の進め方〔内科重症化〕
1.初期対応の概観
2.ABC アプローチ
3.原因検索・根本治療
4.チェックポイント
2.ICU 入室当日の情報収集・診断・治療の進め方〔術後 ICU〕
1.術後 ICU 入室患者の情報収集の要点
2.必要な身体所見
3.必要な採血計画その他
4.必要な検査の進め方
5.プロブレムリストの作成
6.アセスメントの組み立て
7.術後 ICU 入室患者のプレゼンテーション
8.患者家族へ説明のポイント
3.新しい BLS,ACLS,PALS(G2010 準拠)
1.主な変更点
2.BLS(Basic Life Support)の概要
3.ACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)の概要
4.PALS(Pediatric Advanced Life Support)の概要
5.日本で受講できる初期診療教育コースの実際
4.呼吸生理
1.ICU において必要な呼吸生理学的知識とは
2.呼吸生理を理解するために必要な記号と略号
3.ガス交換過程
4.換気過程
5.呼吸不全
1.呼吸不全
2.呼吸療法
3.気道確保
4.気管挿管とその方法
5.気管切開
6.輪状甲状靱帯切開
7.ALI/ARDS
8.ALI/ARDS の治療
6.人工呼吸器
1.人工呼吸の適応
2.VCV(volume control ventilation)
3.PCV(pressure control ventilation)
4.PSV(pressure support ventilation)
5.新しい呼吸モード: APRV,BIPAP,PAV
6.人工呼吸器関連肺炎(VAP)
7.NPPV の適応
8.NPPV の使用方法
9.離脱(ウィーニング)
7.ショックの種類とその評価
1.ショックの分類
2.ショックの対策
8.心原性ショック
1.診断
2.検査
3.原因
4.鑑別診断
5.治療法
6.使用薬剤
7.心筋梗塞の診断
8.心筋梗塞の治療
9.不安定狭心症・非 ST 上昇型 ACS の診断
10.不安定狭心症・非 ST 上昇型 ACS の治療
11.弁膜症
12.その他: 急性大動脈解離,大動脈瘤破裂
13.その他: 心筋炎(劇症型心筋炎)
14.その他: 心筋症
15.急性肺血栓塞栓症
9.不整脈
1.緊急治療が必要な不整脈
2.不整脈の症状
3.不整脈の診断○1: 頻脈性不整脈
4.不整脈の診断○2: 徐脈性不整脈
5.不整脈の治療○3: 急性心停止
6.不整脈の治療○4: 頻脈性不整脈
7.不整脈の治療○5: 徐脈性不整脈
8.緊急ペーシングの適応
9.体外式経皮ペーシングの使用法
10.経静脈ペーシングの挿入法
11.緊急ペーシングの設定方法
12.ペーシングの合併症
13.直流通電法の適応
14.除細動器の使用方法と注意点
10.PCPS と IABP: 適応と管理,離脱
1.IABP と PCPS
2.IABP(intraaortic balloon pumping)
3.PCPS(percutaneous cardiopulmonary support)
11.輸液
1.輸液(点滴)の目的
2.薬剤投与ルートの選択
3.1 日に必要とされる水分量
4.輸液の体内分布
5.末梢輸液
6.静脈栄養法
7.実際の輸液管理
8.水分・血清 Na 異常の原因・症状・治療
9.その他の必要な知識
12.栄養管理
1.1 日必要カロリー量の決定
2.投与ルート
3.経管栄養の適応
4.経管栄養の種類とその適応
5.合併症
6.PEG(経皮的内視鏡的胃瘻造設術)
7.TPN(total parenteral nutrition)の作り方
8.その他の栄養点滴 PPN(peripheral parenteral nutrition)
9.栄養評価法○1
10.栄養評価法○2
13.感染管理
1.ICU における感染管理
2.感染源の同定方法
3.塗抹鏡顕検査と培養検査
4.感受性検査の解釈
5.抗菌薬治療の方法(empiric therapy)
6.抗菌薬の選択(SSI の予防)
7.抗菌薬の選択(呼吸器感染症)
8.抗菌薬の選択(腹腔内感染症)
9.抗菌薬の選択(尿路感染症)
10.抗菌薬の中止および変更のタイミング
11.使用に注意を要する抗菌薬(適正使用のために)
12.infection control の実際,ICD の役割
14.頭蓋内圧亢進・重症脳障害・脳低温療法
1.患者治療の流れ
2.頭蓋内圧の亢進する病態
3.診断
4.血液・生理学的検査
5.初期治療
6.重症頭部外傷における脳蘇生の実際
7.脳卒中の内科的治療
8.重症頭部外傷における内科的治療の管理目標
9.外科的治療(脳室ドレナージ含む)
10.頭蓋内圧測定術
11.脳低温療法
12.脳低温療法の導入前準備
13.脳低温療法の導入
14.脳低温療法の維持
15.脳低温療法の復温
16.脳低温療法で特に注意すべき点
15.腎障害と血液浄化療法
1.腎機能の評価・正常値
2.AKI と CKD
3.AKI の分類,鑑別と原因
4.AKI の治療と ICU 管理
5.CKD
6.血液浄化療法とその適応
7.バスキュラーアクセス
8.CHDF
9.PMX-DHP
10.ECUM
16.肝不全
1.血液検査正常値
2.症状
3.原因
4.検査
5.診断
6.重症度分類
7.救命治療(肝不全治療)
8.集中治療の実際
9.肝移植の適応
10.予後
17.急性膵炎
1.診断
2.基本治療
3.特殊治療
18.中枢神経障害
1.意識障害の判定法
2.神経所見の取り方
3.頭部 CT の読み方 ○1 正常
4.頭部 CT の読み方 ○2 異常
5.脳梗塞
6.経動脈的/経静脈的血栓溶解療法の実際
7.脳内出血
8.くも膜下出血
9.髄膜炎
10.痙攣のコントロール
19.特殊感染症・敗血症・DIC
1.破傷風
2.劇症型溶血性レンサ球菌感染症 toxic shock like syndrome(TSLS)
3.電撃性紫斑病
4.ガス壊疽
5.SARS(severe acute respiratory syndrome,重症急性呼吸器症候群)
6.敗血症の定義
7.敗血症の診断
8.敗血症の治療
9.播種性血管内凝固症候群
10.播種性血管内凝固症候群(DIC)の診断
11.播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療
20.血糖値異常
1.低血糖の原因
2.低血糖の治療
3.高血糖の原因
4.糖尿病患者において生命に関わる高血糖性の緊急合併症
5.DKA と HHS の治療
21.ICU でみられる精神科的問題
1.ICU での精神科的評価
2.精神科がみる意識障害
3.不穏
4.自殺企図症例
5.患者を管理するうえでの必要な法的知識
22.鎮静・鎮痛
1.鎮痛・鎮静の必要性
2.鎮静を始める前に
3.鎮静の評価法
4.鎮痛スケール
5.鎮静薬
6.鎮痛薬
7.硬膜外ブロック
8.鎮痛・鎮静のピットフォール
9.せん妄について
23.ICU で必要な手技
1.盲目的経鼻挿管
2.輪状甲状靱帯穿刺・切開
3.気管切開
4.中心静脈路確保
5.観血的動脈圧測定法
6.気管支ファイバースコープ
7.胸腔ドレーン挿入
8.肺動脈カテーテル(Swan-Ganz カテーテル)
9.Sengstaken-Blakemore(S-B)チューブ挿入
10.イレウス管挿入
11.FAST(focused assessment with sonography for trauma)
24.ICU に関連した諸問題
1.医師としての基本的姿勢の重要性
2.医師の職務心得(職務規定)
3.卒後臨床研修制度の中の重症患者管理
4.ICU での患者管理の実際
5.チーム医療
6.コンサルテーション
7.感染管理
8.リスクマネージメント(セーフティマネージメント)
9.有害事象発生時の対応
10.院内暴力の対応の基本
11.救急医療の質の評価(標準化)
12.インフォームドコンセント
13.自己決定権
14.集中治療における終末期
15.救命救急/集中治療領域における終末期のあり方
16.守秘義務と個人情報保護法
17.集中治療専門医
18.救急専門医と指導医
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書籍情報
- ISBN:9784498015234
- ページ数:644頁
- 書籍発行日:2012年7月
- 電子版発売日:2013年1月19日
- 判:B6判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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