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- 脳血行再建術 2版
商品情報
内容
多くの脳神経外科医に利用され教科書として評価が高かった初版から16年、待望の第2版が登場!高い技術的安定性と確実性をめざして、時代の変化にも揺るがないテクニックのすべてを精緻に解説した、脳神経外科医必読の一冊。
序文
改訂にあたって
この度,本書「脳血行再建術」の大幅な改訂を行った.本書の初版は,2000 年に発刊された.従って,16 年ぶりの改訂となった.この16 年間で,筆者らの初版時の小さな望みを遥かに超え,本書は,脳血行再建の外科技術の代表的な教科書として,望外に多くの後輩に利用され,教科書として評価されたことを耳にしている.この点に関して,改めて,本書を企画して下さった中外医学社,そして,愛用してくれた多くの読者に感謝申し上げる.
改訂に際しては,第一に,何よりも改訂の必要性に関して,関係者の間で十分に検討を行った.初 版の序文に書いたように,外科の技術は,一旦,確立すると,日進月歩というような速度で変化するものではなく,頻繁な改訂は本来不要である.教科書は,改定は必要であるが,本質的でない小さな個人的なこだわりや些末なことをいちいち追加すべきではない.また,公的な教科書レベルを出版するもの側としては,意義のある改訂を目指すことは,社会的責務であり,趣味的な出版とは一線を画すべきものである.
こうしたことを熟慮して,なお,本書の大幅な改訂を必要とした一番に大きな理由は,「血行再建 術」を取り囲む状況が,この15 年間に大きく変化したことにある.「脳血行再建」の技術的な進歩という点では,根底を揺るがすような革新はなかった.また,この15 年間の間に,脳血行再建術の適応である脳主幹動脈の狭窄・閉塞による慢性的脳虚血に対する適応が確立された.しかし,このことにより,皮肉にも,結果として,血行再建術の適応範囲は極めて限定されることになった.
また,一方で,治療困難な動脈瘤の外科治療では,失敗の許されない血行再建が絶対的要件となり,そうした治療が完全に完遂できることが,「普通」の脳外科医に要求されるようになった.言い換えると,安全な動脈瘤治療を行うために必須の技術として,「脳血行再建術」は,必要不可欠のものとなった.また,頸動脈の狭窄病変に対する血管内外科治療の進歩は,外科治療(内頸動脈血栓内膜剝離術,CEA)の必要性を減ずることはなかったが,外科治療の非常に高い治療成績を要求することになった.
すなわち,通常の血行再建術の母数が減る中で,実際に行われる血行再建術の現場では,高い技術 的安定性と確実性が要求されるようになった.これは,本来,一定程度の学習効果を前提とする外科治療の技術にとって,大きなハードルとなった.
本改訂では,こうした脳血行再建術を取り囲む状況を考慮して,特に以下の3 点について大幅な改 訂・追記を行った.
①基礎的な技術習得のための記載(Chapter 1, 2)
②脳動脈瘤治療のためのバイパス技術の記述(Chapter 6, 8)
③脳血行再建に必要な脳循環の知識の要点(Chapter 9)
などである.また,静脈再建は,教科書に記載される内容ではないと判断し,今回は,動脈の脳血行再建に絞り込んだ.
技術の発展は,ある意味,外科医にとっては,過酷な状況を生み出す.例えば,腹部一般外科領域 においても,手術器具・器機の進歩により,内視鏡下手術やダビンチ手術が,従来の開腹術を圧倒するようになった.これにより,開腹術の経験値の極めて少ない外科医が,いきなり内視鏡下手術の治療の責任者となることが起こった.
外科の安全な技術の成熟には,当然のことながら,長い試行錯誤の醸成期間が必要であったし,こ れからも必要である.それは,時間スケールで見ると,10 年単位以上の年余にわたるものであり,外科医のライフサイクルの観点から見ても,複数世代が必要である,しかし,いったん確立すると,その先端技術は独走することになる.その結果,それを学ぶ若い外科医は,その醸成に至った試行錯誤の歴史を追体験できない事態が起こる.実際には,その追体験を望んでも,実際の臨床現場には,その場そのものすら失われてしまう.すなわち,技術の進歩は,教育における重要な歴史的段階をスキップすることを強要することになる.これは,外科技術の急激な発展が,個々の外科医の教育課程 の中で,再現されないという本質的な問題を意味している.
脳血行再建術は,この間,大きな技術的パラダイムシフトはなかったという点では幸福であった.しかし,血管内外科治療成績の急速な向上と適応の拡大は,脳血行再建においても,同様の大きな変革が起こる可能性は決して低くない.
本書が,そうした先人の外科医の地道な研鑽のステップを忠実に再現し,その上に基礎力と応用力 のある脳神経外科医の教科書として,さらに一段と高いレベルのものとなることを目指した.そして,どんなに新しい技術が導入されても,基本揺るがない外科技術のバイブルとなることと確信している.
平成28年3月26日
北海道大学大学院医学研究科脳神経外科教授
寳金 清博
目次
Chapter 1 血管吻合の基本
1 バイパス手術の分類
2 バイパスに必要な基本的技術
Chapter 2 基本練習と理論
1 トレーニングの意義
2 予備的練習
3 実践的練習
4 手術の実践
Chapter 3 中大脳動脈・前大脳動脈領域に対する血行再建術
1 浅側頭動脈-中大脳動脈バイパス手術
2 その他の特殊なバイパス
3 前大脳動脈への血行再建
Chapter 4 椎骨動脈領域に対する血行再建術
1 STA‒SCA 吻合術(浅側頭動脈‒上小脳動脈吻合術)
2 錐体骨先端部削除の活用
3 後大脳動脈再建
4 OA‒PICA 吻合術(後頭動脈‒後下小脳動脈吻合術)
Chapter 5 もやもや病に対する血行再建術
1 間接的血行再建とは
2 間接的血行再建単独による治療
3 複合血行再建術
Chapter 6 Radial artery graft を用いたhigh flow bypass
1 橈骨動脈の解剖
2 手術手順
Chapter 7 内頸動脈血栓内膜剝離術(CEA)
1 頸部の血管外科に必要な表面解剖
2 頸部の血管外科に必要な深部解剖
3 手術手順
4 術後のトラブル回避
Chapter 8 脳動脈瘤手術のためのアシストバイパス
1 幅広の中大脳動脈瘤に対するアシストバイパス
2 中大脳動脈瘤に対するアシストバイパスから分岐血管alteration への移行
3 Radial artery による腕挙げアシストバイパス
Chapter 9 脳血行再建術に必要な脳循環動態の知識
1 もやもや病
2 脳動脈瘤手術のアシストバイパス
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書籍情報
- ISBN:9784498029514
- ページ数:200頁
- 書籍発行日:2016年4月
- 電子版発売日:2017年11月10日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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