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脳卒中の神経リハビリテーション 新しいロジックと実践

  • ページ数 : 338頁
  • 書籍発行日 : 2017年9月
  • 電子版発売日 : 2018年3月30日
9,680
(税込)
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商品情報

内容

自律的に考え能動的に行動できる“真のリハビリテーション実践力”が身に付く!

新時代の脳卒中リハビリテーションを目指す森之宮病院の「理念」と「実践の技」をまとめた決定版!成功へと導く知識と思考パターンが学べます。

序文

1990年頃,私が大学病院で神経内科とリハビリテーション科を兼任するようになったとき,リハビリテーション医学に関して何がわかっているのかを調べ始めて愕然とした.Archives of Neurologyという神経学の主要雑誌にControversies in Neurology(神経学における争点)というコーナーがある.そのなかで脳卒中に対する集中リハは機能予後を改善するかどうかという論争がなされていたからだ〔Reding M, McDowell F.(Cornell University). Focused stroke rehabilitation programs improve outcome. Arch Neurol. 1989;46:700-1. vs. Dobkin B.(UCLA). Focused stroke rehabilitation programs do not improve outcome. Arch Neurol. 1989;46:701-3).そんな基本的なこともはっきりしないままリハビリテーションが行われている,世界的な現状に驚いたわけである.


そのころのもう1つの動きが神経リハビリテーションの創生であった.1990年Fletcher McDowell先生を会長に米国でAmerican Society of Neurorehabilitation(ASNR)が誕生した.90年代初頭にPETを用いた研究から脳卒中患者の機能回復が,損傷脳の可塑性に依存することが臨床的にはじめて明らかになった.これはポジティブな驚きであった


90年代半ばになって,欧州を中心に脳卒中ユニットにおける脳卒中に特化した早期からの多角的チームアプローチが患者の日常生活動作や歩行を改善することに関して世界的なコンセンサスが得られるようになった.是非,そのような場で働いてみたいと1994年に「脳卒中に対する集中リハビリテーションは機能予後を改善する」立場であったCornell大学のMike Reding先生のもとで30床の脳卒中リハビリテーション病棟の管理を2年間担当した.こんな優れたリハビリテーション環境は日本ではなかなか実現できないなと思っていたら,2000年に本邦に回復期リハビリテーション病棟が誕生した.2017年には同病棟は8万床にまで増加し,日本の医療体制に定着した.


一方,神経リハビリテーションは脳機能画像や神経生理学的手法も脳科学の基礎研究と並行して飛躍的に進歩し,麻痺した手足を制御する脳の観点から,具体的にどういう介入を行えばよいか検証することが可能になった.これは現在の脳卒中リハビリテーションの一番のトピックスである.実際,ASNRの公式学会誌であるNeurorehabilitation and Neural Repairは2006年よりリハビリテーション分野の学術誌27誌のインパクトファクターのトップに躍り出た.大きな流れとして間違いないのは,世界で最もすばらしいリハビリテーション医療を,システムとしても介入内容(context)としても提供できるチャンスがわれわれには与えられているという事実であろう.


この一冊は脳卒中のリハビリテーションに携わる医師をはじめとした専門職の方々が,単に知識を得ることを目的としていない.事実,ここに紹介された方法論のみでリハビリテーションが完結するわけではない.日々行われているリハビリテーション医療の現状を理解するとともに神経リハビリテーションの基盤となる知識や考え方を得ていただき,次世代の神経リハビリテーションを臨床的かつ科学的に創造する一助となれば幸いである.


2017年7月

宮井 一郎

目次

I 新しいロジック篇

1.脳卒中後の機能回復の神経機構

A.運動麻痺の出現の機序

B.脳卒中における機能回復曲線

C.脳損傷と運動機能回復(動物実験)

1.脳損傷後の機能回復促進の要素

2.Enriched rehabilitation後に生じる大脳の可塑的変化

【MEMO 1】発症後早期の麻痺肢の過使用は有害?

D.脳損傷と機能回復(ヒト脳卒中)

1.脳卒中における急性期の機能回復の機序

【MEMO 2】ペナンブラ

2.急性期以降の機能回復機序

【MEMO 3】一次運動野以外の運動関連領野の活動は,麻痺側上肢の運動に役立っているか?

【MEMO 4】小児と成人における同側経路の役割の違い

【MEMO 5】central pattern generator(CPG)

2.機能回復の神経機構に基づいた介入とその検証

A.練習量,練習法,環境について

1.課題指向型練習の練習量の確保

2.練習法(context)~運動学習との関連

【MEMO】回転板課題

【MEMO】上肢機能回復モデル(行動強化)について

3.練習環境

4.Neuro-modulation

II 実践篇

3.評価

3-1.神経学的所見

A.神経学的所見の評価

1.意識状態の評価

2.高次脳機能

3.構音・嚥下機能の評価

4.脳神経系の評価

5.運動系の評価

6.協調系の評価

7.感覚系の評価

8.起立歩行能力の評価

9.自律神経系の評価

3-2.リハ評価

A.リハ評価の目的

【MEMO】脳卒中の包活的な重症度評価

B.機能障害の評価

【MEMO】脳卒中後麻痺の評価における徒手筋力テスト

C.ADL(Activities of daily living)の評価

D.筋緊張の評価

E.バランス評価

3-3.高次脳機能障害の評価

A.高次脳機能障害とは

B.高次脳機能障害の評価手順

1.背景情報・全体的行動の印象の把握

2.スクリーニング

3.詳細な検討

【ミニアドバイス】心理検査実施時の留意事項

4.報告書作成

C.各論

1.注意障害の評価

【ミニアドバイス】年齢を統制した指標が算出でき,10分で施行可能な注意課題

2.記憶障害の評価

3.失語の評価

【ミニアドバイス】失語症例の注意力・記憶の評価

4.失行の評価

5.視覚性失認の評価

6.半側空間無視の評価

7.前頭葉機能障害の評価

8.脳梁離断症状の評価

9.外傷性脳損傷の評価

【ミニアドバイス】WAIS-㈽成人知能検査の観察ポイント

4.検査

4-1.画像診断(CT,MRI)

A.CT

B.MRI

C.MR血管造影

D.CT灌流画像,MR灌流画像

E.拡散MRI

F.拡散テンソル画像

G.神経リハに重要な脳部位の同定

1.中心溝・一次運動野

2.言語野

4-2.画像診断(エコー,脳血管造影,SPECTなど)

A.超音波検査

1.心エコー

2.頸部動脈エコー

B.脳血管造影

C.SPECT

4-3.神経生理学的検査

A.筋電図/神経伝導速度検査

B.H波

C.経頭蓋磁気刺激法

D.脳波

E.その他の検査

4-4.摂食嚥下評価

A.摂食嚥下のメカニズム

B.脳卒中による摂食嚥下障害の分類

1.フェーズによる分類

2.病態による分類

C.診察,診断

1.摂食嚥下障害の初期評価前に行うチェック項目

2.ベッドサイド評価

【コラム】 酸素飽和度モニター下でのベッドサイドスクリーニング

D.検査

1.嚥下造影検査

2.嚥下内視鏡検査

E.評価実践のコツ

1.検査法の選択やバイアス

2.安全で妥当な検査のために

3.事例による検査の選択のコツ

4.急性期から回復期の摂食嚥下評価における医師の役割

5.脳卒中の診断(病型診断など)

A.診断手順

B.脳卒中分類

C.脳卒中各論

1.脳梗塞

2.一過性脳虚血発作

3.脳出血

4.くも膜下出血

D.その他の脳血管障害

1.動脈解離

2.もやもや病(Willis動脈輪閉塞症)

3.脳静脈・静脈洞閉塞症

4.脳アミロイドアンギオパチー

6.脳卒中の急性期治療

A.脳卒中の急性期治療の基本骨格

B.脳卒中ユニット,脳卒中ケアユニット

C.病型に即した適切で効率的な治療の選択まで

D.診断別各論

1.脳梗塞

2.出血性脳卒中

E.バイタルサイン管理

7.脳卒中の急性期リハ

A.はじめに ~急性期リハのエビデンス,早く・多く・専門的に~

B.早期離床の考え方

C.早期リハのための医学的管理

1.病態病型別の早期リハ開始までのアセスメントと全身管理

【コラム】持続心電図モニターは功か罪か?

2.急性期リハ処方の要点 ~すべては医師の決断と行動から~

D.急性期リハ管理の要点

【コラム】ROM訓練は能動運動の代わりになるか?

E.円滑な回復期リハへの連携

8.脳卒中リハのリスク管理

A.リスク予測のために ~合併症の特性を知る~

1.合併症の好発時期

2.合併症の頻度

3.患者特性との関連

B.リハ中のバイタルサイン管理

C.リハリスク管理:各論

1.早期離床の上で注意すべき脳卒中の病態

2.血圧管理

3.血糖管理

4.転倒・外傷リスク管理

【コラム】リハ部門の安全管理--医師の役割

9.脳卒中の再発予防

A.再発予防の基本

B.非心原性脳梗塞慢性期再発予防のための抗血栓療法

1.アスピリン

2.チエノピリジン(主にクロピドグレル)

3.シロスタゾール

4.抗血小板薬の併用療法

5.動脈解離に対する抗血小板薬

【コラム】 抗血栓薬の中止・休薬

【MEMO】 抗血小板薬服薬中の頭蓋内出血リスクを減らすために

C.心原性脳梗塞慢性期再発予防のための抗血栓療法

【コラム】 ワルファリンとTTR

D.再発予防としての手術療法

E.危険因子の管理

1.高血圧

【MEMO】高血圧の生活指導のポイント

2.脂質異常症

3.糖尿病(耐糖能異常)

F.回復期リハ病棟で行う生活指導の実践

10.脳卒中の合併症管理

A.脳卒中合併症の疫学

B.合併症の誘因と管理総論

C.神経・精神系

1.脳卒中再発

2.症候性てんかん

3.せん妄

4.脳卒中後うつ状態・アパシー

D.静脈血栓塞栓症

【MEMO】 当院回復期リハ病棟のDVT対策

E.感染症

F.消化器系

G.転倒

H.肩手症候群

11.脳卒中の回復期リハ

A.回復期リハの流れ

1.急性期から回復期へ

2.回復期リハ病棟の医師の役割 ~回復期リハ病棟初日~

【コラム】希望の聴取

3.回復期リハ病棟の医師の役割 ~主な病棟業務~

4.回復期リハ病棟入院中の医師の役割 ~回復期から生活期へ~

5.患者をとりまくチームアプローチ

B.ケア・リハの連動 ~24時間リハめざし~

12.リハ介入

12-1.上肢のリハ

A.脳卒中による上肢機能障害の特徴

【コラム】上肢の近位優位麻痺

【コラム】脳卒中による尺骨神経麻痺症状(偽性尺骨神経麻痺)

B.上肢麻痺の機能回復の評価

C.脳卒中の回復特性

【コラム】臨床評価は上肢機能回復を予測できるか?

D.上肢リハ介入の概要

E.機能障害の特徴や予後をふまえたリハ介入

F.上肢リハ介入効果の促進

G.脳卒中上肢麻痺の装具療法

12-2.運動麻痺:下肢・歩行のリハ

A.脳卒中後の歩行の機能予後

B.歩行のリハ

1.リハの手技について

2.体重免荷下トレッドミル歩行訓練

3.装具

4.内反尖足など痙縮へのアプローチ(ボツリヌス療法を含む)

5.機能的電気刺激

6.反復経頭蓋磁気刺激

12-3.運動失調に対するリハ

A.小脳性運動失調の臨床的評価

B.小脳損傷の機能予後

C.小脳性運動失調におけるリハの方法論

【MEMO】小脳性運動失調患者の運動時脳活動

12-4.ADL

A.ADLへのリハ介入:総論

B.ADLの評価

C.ADLへのリハ介入と退院計画:各論

D.IADLへの介入

12-5.疼痛

A.肩手症候群

B.中枢神経性疼痛

C.治療

1.リハ

2.薬物療法

3.非薬物療法

12-6.下肢装具・車いす

I.下肢装具

A.短下肢装具

1.プラスチック短下肢装具:シューホーンブレース

2.足継手つきプラスチック短下肢装具

3.両側金属支柱付き短下肢装具(コンベンショナルAFO)

B.長下肢装具

C.その他

D.脳卒中片麻痺患者の下肢装具療法の実際

【MEMO】治療用装具とは? 更正用装具とは?

II.車いす・シーティング

A.車いすの分類

B.回復期リハ病棟における車いす調整の実際

12-7.ボツリヌス療法,ブロック,手術

A.ボツリヌス療法

1.薬理作用

2.用量,用法

3.目標の設定

4.変形の責任筋の同定

5.医療費について

6.ボツリヌス療法の効果を高めるために

B.整形外科手術

1.整形外科手術の特徴

12-8.失語症

A.失語症の自然経過

B.評価の時期と介入のポイント

1.急性期

2.回復期

C.介入効果

D.代表的な失語症に対する介入法

1.言語機能の改善を目指した訓練

2.実用的なコミュニケーション能力の改善を目指した訓練

E.心理面へのサポート

F.家人,周囲の人への指導

G.退院に向けて

H.最後に

12-9.半側空間無視

A.半側空間無視の自然経過

B.半側空間無視によるADLの障害

C.半側空間無視の分類

D.半側空間無視の評価法

E.半側空間無視の機序

F.半側空間無視に対するリハ介入

1.急性期

2.回復期

G.退院後への橋渡し

12-10.失行・失認

A.失行とは

1.失行の分類と機序

2.失行患者に対するリハ介入:失行症状の改善を図るアプローチ

3.失行患者に対するリハ介入での注意点

B.失認へのリハ介入

1.失認の分類と機序

2.失認に対するリハ介入

12-11.記憶障害

A.記憶障害の分類と評価

B.記憶障害のリハ介入

C.退院後への橋渡し

12-12.摂食嚥下のリハ

A.摂食嚥下障害と誤嚥性肺炎

B.摂食嚥下障害のリハ介入

1.絶食期間は短い方がよい

【MEMO】bacterial translocation

2.脳卒中発症後の絶食からの食事開始

3.経口摂取が当面困難と判断された患者

【Key word】 栄養剤の半固形化

4.重症摂食嚥下障害の場合

5.直接訓練の展開

C.摂食機能療法のチームアプローチ,医師の役割

D.防御因子の強化 ~誤嚥性肺炎の予防~

1.薬物

2.口腔ケア

3.栄養管理

13.リハに関する医療保険制度

A.脳卒中の社会的インパクト

B.脳卒中ユニットにおける介入効果

C.本邦の脳卒中に対するリハ医療体制

D.回復期リハ病棟に対する質の評価の導入

E.在宅復帰と在宅生活の維持

14.社会保障制度の活用,社会復帰

A.社会資源とは

B.介護保険制度

C.障害者総合支援法

D.その他

1.就業支援・就労支援について

2.成年後見制度

3.経済的な支援に関する制度

4.社会保障制度の活用例:事例紹介

15.ケーススタディ

15-1.上肢のリハ:上肢麻痺の特性を評価しリハ介入に活かした1例

15-2.歩行のリハ:結果フィードバックが歩行転帰をよくした1例

15-3.嚥下障害:遷延する中枢性呼吸障害を合併した延髄外側症候群(Wallenberg症候群)

15-4.健忘症候群:外部記憶の使用により自宅退院が可能となった1例

15-5.Aggressive behavior:患者の攻撃的行動への対処

15-6.ボツリヌス療法,手術

A.ボツリヌス療法(ボトックス)

B.脳卒中患者に対する整形外科手術

15-7.Fecal impaction:見逃されやすい消化器合併症

15-8.慢性期脳梗塞例における手指機能改善の神経基盤

16.トピックスコラム

16-1.機能的MRI

A.BOLD法による機能的MRI

B.fMRIの脳卒中リハへの応用

C.安静時fMRI

D.fMRI撮像上の注意点

16-2.Voxel-based morphometry(VBM)

16-3.機能的NIRS

16-4.rTMSとtDCS

A.rTMS

B.tDCS

16-5.CI療法とtransfer package

16-6.ミラーセラピー

16-7.リハロボット

16-8.BMI

16-9.薬物による機能回復促進

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書籍情報

  • ISBN:9784498067240
  • ページ数:338頁
  • 書籍発行日:2017年9月
  • 電子版発売日:2018年3月30日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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