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- 呼吸器感染症の診かた,考え方
商品情報
内容
序文
現在勤務している石心会狭山病院は当初呼吸器内科のスタッフ2人からのスタートであり,呼吸器疾患の広い範囲をカバーし,そのほかに呼吸器以外の感染症のコンサルテーション業務や感染管理チーム(ICT)を率いての回診などもこなさなければならず,執筆に取り掛かることが全くできなかった.やっと執筆を開始できたのは,企画から1年4カ月が経過した2009年6月からであった.呼吸器内科のスタッフが4人に増えたことが執筆する余裕を自分に与えてくれた.この間,耐えて待っていてくれた担当者には頭が下がる思いである.自分1人での執筆にこだわったのは,1人で1つのポリシーのもとで,同じ文体で執筆することが,読者の方にとっても内容がすんなり入って来やすいものになるであろうとの期待からである.この点,多少内容の逸脱や独りよがりな点などがあることは御容赦頂き,これに対する御意見を賜れば幸いである.繰り返し言うが,自分は決して呼吸器感染症の専門家ではなく,「呼吸器内科」の専門医であり,呼吸器全般の診療を行うことが使命である.それは地域の基幹病院で,地域でほぼ唯一といってよい呼吸器の専門科(日本呼吸器学会認定施設)であるため当然と言えば当然なのだが,多彩な疾患の診療に従事できることは,呼吸器内科医の喜びでもある.近年は呼吸器の領域でも,高度な専門分化が進み,呼吸器の中での特定の分野の診療に特化している医師や施設も少なくないが,自分はあくまでも呼吸器の中のgeneralistでありたいと願っており,特定の分野に特化せず感染症,肺癌,喘息,COPD,間質性肺疾患,アレルギー性肺疾患,職業性肺疾患,気胸や様々な胸膜疾患,睡眠時無呼吸症候群などの異常呼吸,呼吸管理などすべてを診療できなければ呼吸器内科の専門医とは言えないとの信念で診療と教育を行っている.そのため,呼吸器感染症の本でありながら,感染症以外の内容にも触れている.何故なら実際の診療では,患者が「自分の病気は呼吸器感染症ですよ」とは言ってくれないからである.本文中にも繰り返し出てくるが,「感染症であるか否かを診断する」ことがはじめの一歩であり,その目で患者を見られることが呼吸器generalistの強みであり,患者にとっても利益となると信じている.
我々医学・医療の修練を行う者にとって良い指導医に巡り合うことは一生の宝である.その点から言うと私には5人の恩師がいる.最初の2人は虎の門病院呼吸器内科で部長をされた谷本普一先生と中田紘一郎先生である.お2人には,医師として全くゼロの段階から呼吸器の面白さと大変さを教えていただき,呼吸器専門医を目指すきっかけを作っていただいた.3人目は聖路加国際病院呼吸器内科部長の蝶名林直彦先生(私の在職当時は医長)だが,彼には診療および学会活動を自由にやらせていただき,下の者が仕事をしやすい環境を作るために上に立つものは,どのようにすべきか,あるべき上司の姿を教えていただいた.今でこそ一般的になりつつある市中肺炎のクリニカルパスやスイッチ療法は聖路加国際病院時代に手がけた仕事で,日本国内に広がるきっかけを作った先駆者であると自負しているが,それは蝶名林先生が自由にやらせて下さった賜物であると思っている.4人目は杏林大学第1内科の後藤元教授である.後藤先生には新しい時代の感染症学を学ばせていただいただけでなくマネージメントという今まで携わったことがない領域にも足を踏み入れる機会をいただいた.医局の運営や,ベッド管理,危機管理,そのほか大きな学会の事務局として企画から多くの人との交渉,実際の運営や経理など,得難い経験をすることができた.これは現在の副院長という業務にとても役に立っている.5人目は現在勤務している狭山病院の前院長の青山壽久先生で,地域の基幹病院の医師が果たすべき役割,特にすべての患者を受け入れる断らない医療というものを現場での姿から学ばせていただいた.これら5人の先生には大変感謝をしているし,医師は何歳になっても学ぶことができるものだと教えていただき,自分はとても幸せであると感じている.これらの先生方には遠く及ばないが,自分も若い人たちの何かの役に立ちたいと思ったことが本書を執筆する原動力となった.
繰り返しになるが,本書は呼吸器のgeneralistが書いた,呼吸器感染症の本である.「診かた,考え方」というのはいわゆるマニュアル本ではないことを示すものだが,寝転がって読んで「考え方」に触れてもらい,それが診療現場の役に立てばこれに勝る喜びはない.呼吸器感染症の診療で完結するのではなく,呼吸器疾患全般の中でのという立ち位置で呼吸器感染症を診ることが出来る医師が増えてくれることを期待し序とさせていただく.
2010年 9月
青島 正大
目次
第1章 呼吸器感染症は他の部位の感染症とどこが異なるか?
第2章 呼吸器系の解剖と感染部位
第3章 呼吸器感染症の感染経路
第4章 呼吸器感染症を診断する
A.もっとも大切なのは感染による病態かどうかの診断である!
B.原因微生物を診断する
1.検体の採取方法
2.グラム染色と培養検査の見方
3.培養検査と感受性検査の落とし穴
4.抗原検出法
5.抗体検査
6.遺伝子診断
第5章 呼吸器感染症の治療に用いる薬剤
A.抗菌薬
1.ペニシリン系抗菌薬―もっとペニシリンを上手に使おう
2.セフェム系抗菌薬―たくさんある薬剤の使い分け
3.カルバペネム系抗菌薬―カルバペネムが必要なケースを見落とさない!
4.モノバクタム系抗菌薬
5.マクロライド系抗菌薬―耐性菌が増えている現実を知った上で使う
6.テトラサイクリン系抗菌薬
7.リンコマイシン系抗菌薬
8.キノロン系抗菌薬―エンピリック使用における位置づけ
9.アミノ配糖体系抗菌薬―呼吸器感染症における位置づけ
10.グリコペプチド系抗菌薬およびオキサゾリジノン系抗菌薬
B.抗真菌薬
1.アゾール系
2.エキノキャンディン系
3.ポリエン系
C.抗結核薬
1.rifampicin(RFP)
2.isoniazid(INH)
3.pirazinamide(PZA)
4.ethambutol(EB)
5.SM
D.抗ウイルス薬
1.インフルエンザ治療薬
2.抗cytomegalovirus薬
E.ニューモシスチス肺炎治療薬
1.ST合剤
2.pentamidine
F.抗菌薬のPK/PD―実際の診療でどのように活かす?
第6章 病態ごとの診断と治療
A.肺炎
1.市中肺炎
a)耐性菌時代の初期診療
b)画像診断の位置づけ
c)重症度の診断と治療薬の選択
d)キノロン系抗菌薬をエンピリックに使用しない訳
e)治療効果を評価するには
f)原因微生物が判明したときの治療
g)原因微生物が判明せず,治療に反応しない場合の対応
h)肺炎の補助療法
2.院内肺炎
a)日米ガイドラインの比較
b)ガイドラインのうそと本当
3.感染によらない肺炎を見分ける
a)BAC
b)COP
c)好酸球性肺炎
d)薬剤性肺炎
B.気道感染症
1.気道感染症の成立は肺炎とどのように異なるか?
2.急性上気道炎
a)抗菌薬治療の対象となる上気道感染症を見落とさない
b)かぜ症候群への対応
c)インフルエンザ
3.慢性肺(気道)疾患における持続性気道感染症
C.抗酸菌感染症
1.抗酸菌の分類と診断法
2.結核菌感染症の治療
a)肺結核
b)薬剤耐性結核菌の治療
c)抗結核薬使用中の副作用の問題
3.非結核性抗酸菌症
a)治療対象の見分け方
b)肺MAC症
c)肺M.kansasii症
d)肺M.abscessus症
e)肺NTM症の外科治療
D.肺真菌症
1.アスペルギルス感染症
2.クリプトコックス感染症
3.カンジダ感染症
4.接合菌症(zygomycosis)
5.輸入真菌症
E.免疫不全を有する患者の呼吸器感染症
1.大切なのは患者の背景から考えること
2.Pneumocystis肺炎
3.Cytomegalovirus肺炎
4.侵襲性肺Aspergillus症(IPA)
5.肺Nocardia症
6.免疫抑制療法中のリウマチ患者の肺炎への対処法
F.胸膜炎
1.感染が関与する病態かどうかの診断が最初の一歩
2.結核性胸膜炎
3.膿胸
a)難治性膿胸への対応
b)線維素溶解療法の適応
c)外科へのコンサルテーションのタイミング
第7章 呼吸器感染症ガイドライン利用のすすめ
a)ガイドラインはよくできた教科書
b)ガイドラインを上手に使おう
第8章 抗菌薬コントロール
a)抗菌薬コントロールとは
b)抗菌薬使用と院内分離菌の薬剤感受性
c)抗菌薬制限の功罪
d)抗菌薬の適正使用は可能か?
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書籍情報
- ISBN:9784498130005
- ページ数:306頁
- 電子版発売日:2011年5月16日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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