カテーテルアブレーションの真髄

  • ページ数 : 278頁
  • 書籍発行日 : 2010年6月
  • 電子版発売日 : 2012年1月14日
9,240
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商品情報

内容

カテーテルアブレーションを行う際に必要な基礎知識から、実際の疾患ごとの具体的な手法まで、まさに知りたいことを網羅した,カテーテルアブレーションのバイブル!
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序文

監修の序


不整脈の治療が大きな変貌を遂げている.古くは抗不整脈薬による薬物治療が盛んに行われたが,CAST試験に代表される臨床試験の結果を受けて,抗不整脈薬の使用は減った.かわりに登場してきたのが,非薬物治療としてのカテーテルアブレーションである.特に高齢化社会となり,ますます大きな問題となっている心房細動に関しては,薬物治療による洞調律維持には限界があり,カテーテルアブレーションが大いに期待されている.心房細動患者数は年々増加の一途であり,当然カテーテルアブレーションによる治療も今後増加することが予想される.しかし心房細動に限らず,カテーテルアブレーションの方法は未だ確立されていないものも多く,施設により異なっている.したがってどのようにカテーテルアブレーションを行ったらよいのか,さらにはそもそもカテーテルアブレーションとはどのようなものなのか,特に若い医師は知りたいところであろう.

そのような疑問に答えるべく出たのが,本書「カテーテルアブレーションの真髄」である.本書は,カテーテルアブレーションを行う際に必要な基礎知識から,実際の疾患ごとの具体的な手法まで,まさに知りたいことを網羅した,カテーテルアブレーションのバイブルであり,また同時に最高の実践書である.解剖に関しても,単に心臓の部位の説明に終わることなく,CTと心臓標本を並行して説明している.きわめて実際的であり,カテーテルアブレーションの臨床を十分考慮した解説になっている.不整脈の基礎と言えば,イオンチャネルであるが,多くの解説が単なるイオンチャネルの基礎知識の説明であるのに対して,本書ではあくまでもカテーテルアブレーションといった臨床を念頭に置いた解説になっており,不整脈の臨床に携わる医師にとって有用な知識を教えてくれている.心臓電気生理やアブレーションの原理の説明も,カテーテルアブレーションを行う医師にとっては,知っておくべき知識であろう.疾患ごとの解説も必要にして十分な,きわめて実践的な解説がなされている.疾患によっては日進月歩であろうが,現時点では,最新かつ最良の解説といえよう.

これからカテーテルアブレーションを行おうとする医師はもちろん,すでに行っている医師も,本書を読むことにより,カテーテルアブレーションに関する理解が深まり,診療レベルの向上が期待できよう.本書は,カテーテルアブレーションのまさに"真髄"を解説した,待望の書である.


2010年 5月

小室 一成




カテーテルアブレーションの歴史は偶発的な事故から斬新なアイデアを引き出したことから始まる.電気生理検査中に生じた心室細動を直流除細動した際に房室ブロックが発生したことから,電極カテーテルを介して心筋組織の一部を焼灼破壊し不整脈の治療を行えるという着想がなされた.1981年に第1例目が報告され,1990年代には電極カテーテルや高周波発生装置といったハード面での進歩と頻脈性不整脈の機序の理解が深まったことで爆発的普及へとつながった.1998年にはこれまでカテーテルアブレーションが有効な治療法にはならないと想定されてきた心房細動についても画期的なアプローチ法が示された.その後今日まで多くの新しい方法論が提唱され,発作性心房細動を中心に多くの患者にとって福音となっている.

さて,すでに多数の書籍が刊行されているカテーテルアブレーションについて新たに「カテーテルアブレーションの真髄」を加えさせていただいた.“真髄”とはなんとも大仰な命名であるが,筆者を含めた執筆陣の心意気を汲み取っていただけたら幸いである.電気生理検査・カテーテルアブレーションに必要な基礎知識から具体的な頻脈性不整脈のアブレーション治療まで“真髄”といえる必須事項をコンパクトにまとめることができたと確信している.循環器専門医を目指す後期研修医の方々にもあまり辛い思いをせず通読できるテキストになっているはずである.

本書の企画・編集依頼を中外医学社の小川氏から頂いた際にはすぐに本執筆陣の顔が頭に浮かんだ.筆者は2002年に米国から帰国後に関西地区で2つの臨床不整脈研究会(大阪臨床不整脈カンファレンス・臨床難治性不整脈研究会)を立ち上げた.本執筆陣は,筆者が留学した研究室やこの2つの研究会で共に勉強し刺激しあった筆者とほぼ同年代の先生方である.いずれの方も第一線で不整脈治療に邁進している専門家で,行間には現場の活気のあふれた雰囲気が感じられることと思う.編集に当たった筆者の力量不足から至らぬ点が多々あろうかと思うが,“現場の指揮官たち”の力強いメッセージを汲み取っていただけたらと切望する.

最後に,これまで多くの支援・助言を頂いた諸先輩の先生方,大阪臨床不整脈カンファレンス・臨床難治性不整脈研究会に参加し,活発に会を盛り上げていただいている先生方に感謝の言葉をささげたい.この本を読んで多くの若い先生方が心臓電気生理に興味を持ち,より良い医療に貢献していただくことが筆者の希望である.

2010年5月

奥山裕司

目次

第1章 アブレーション治療に必要な解剖学

1.心臓の概観

2.上・下大静脈と右房

3.房室接合部

4.右 室

5.左 房

6.左 室

第2章 心臓電気生理の基礎知識

1.イオンチャネル・イオンポンプ・イオン交換系の概要

a.イオンチャネル

b.Na-Kポンプ

c.Na-Ca交換系

2.心筋イオンチャネルの種類と機能

a.Naチャネル

b.Caチャネル

c.Kチャネル

d.自動能に関係するチャネル

e.ギャップジャンクション

3.静止膜電位の形成

4.心筋活動電位の発生とイオン電流

5.心臓内各部位による活動電位波形の違い

6.心筋細胞間の興奮伝播過程

7.不応期

8.頻脈性不整脈の機序

a.リエントリー

b.自動能亢進

c.撃発活動

第3章 臨床心臓電気生理の基礎

1.頻拍発作時の標準12誘導心電図から

a.狭いQRSの頻拍の鑑別

b.広いQRSの頻拍の鑑別

2.電気生理検査の適応・禁忌

3.基本的な電極カテーテル配置と洞調律時の心内心電図の解釈

4.プログラム電気刺激

5.エントレインメント現象

第4章 焼灼エネルギーについて

1.高周波通電の原理

a.歴 史

b.高周波通電法

2.高周波通電の実際と注意点

a.高周波通電装置

b.アブレーションカテーテル

c.高周波通電における注意点

3.irrigation tipの原理と利点・欠点

4.その他の焼灼エネルギー

a.クライオアブレーション

b.超音波エネルギー

c.バルーンカテーテル

第5章 臨床電気生理・アブレーションに必要な機器と全体の流れ

1.検査室と人員配置

2.カテーテルの操作および配置方法

a.穿刺部位とアプローチ方法

b.カテーテルの挿入と配置方法

3.記録装置・プログラム刺激装置

a.記録装置

b.プログラム刺激装置

4.アブレーション中の全身管理と鎮静・鎮痛

5.合併症とその対策

a.房室ブロック

b.心タンポナーデ

c.血栓塞栓症

d.心房細動に対するアブレーションにおける特有の合併症

6.成功率向上のための工夫

第6章 副伝導路症候群

1.副伝導路の電気生理

2.カテーテルアブレーションの適応

3.WPW症候群に対するカテーテルアブレーション

a.12誘導心電図からの房室副伝導路(Kent束)の部位診断

b.左側副伝導路アブレーション

c.右側副伝導路アブレーション

4.Mahaim線維束に対するカテーテルアブレーション

a.Mahaim線維束の特徴

b.Mahaim線維束に対するアブレーション

5.PJRTに対するカテーテルアブレーション

a.PJRTの特徴

b.PJRTに対するアブレーション

第7章 房室結節リエントリー性頻拍

1.房室結節の解剖

2.電気生理学的検査

a.前中隔に存在する潜在性WPW症候群による房室リエントリー性頻拍(AVRT)との鑑別

b.逆伝導は減衰特性を示すが最早期興奮部位が冠静脈洞入口部(CSos)周辺である場合

c.下位共通路の伝導障害を伴うAVNRT

3.カテーテルアブレーション

a.slow-fast AVNRT

b.fast-slow AVNRT

c.slow-slow AVNRT

d.I度AV blockを合併したslow-fast AVNRT

e.房室ブロック合併を防ぐ

f.アブレーションエンドポイント

第8章 心房粗動

1.心房粗動とは

2.心房粗動に対するカテーテルアブレーションの実際

a.通常型心房粗動のアブレーション

b.非通常型心房粗動とそのアブレーション

c.通常型心房粗動のアブレーションにおける三次元マッピングの有用性

第9章 心房頻拍

1.概 念

2.分 類

3.診 断

 a.体表面心電図

 b.心臓電気生理検査(EPS)およびマッピング手技

第10章 その他の上室性頻拍(洞結節リエントリー他)

1.洞結節リエントリー性頻拍

a.概念,病態

b.心電図,電気生理検査

c.カテーテルアブレーションの方法

d.治療選択の考え方

2.inappropriate sinus tachycardia(IST)

a.概念,病態

b.心電図,電気生理検査

c.カテーテルアブレーションの方法

d.治療選択の考え方

3.房室接合部頻拍

4.心臓術後瘢痕に関連する心房頻拍

a.概念,病態

b.心電図,電気生理検査

c.カテーテルアブレーションの方法

d.治療選択の考え方

第11章 房室ブロック作成術

1.上室性不整脈に対する房室ブロック作成術の適応

2.房室ブロック作成術の手技

a.術 前

b.the standard approach(右心アプローチ)

c.alternative approach(左心アプローチ)

3.difficult cases

4.ペースメーカの植え込み

5.抗不整脈薬の役割

6.房室ブロック作成術がもたらすもの

a.症状とQOL

b.合併症

7.心房細動と心臓再同期療法

8.房室ブロック作成術にかわる治療

第12章 心房細動

1.病 態

a.発生機序

b.リモデリング

c.病 型

d.局所起源AF

e.症状その他

2.カテーテルアブレーションの適応

3.カテーテルアブレーションに必要な検査

a.画像診断

b.体表面心電図

c.心臓電気生理学的検査(EPS)

4.AFに対するカテーテルアブレーションの変遷

a.カテーテルメイズ法

b.局所焼灼法

c.電気的肺静脈隔離術

d.その他のカテーテルアブレーション法

e.AFに対するカテーテルアブレーションの現状

5.カテーテルアブレーションの方法

a.Brockenbrough法と経心房中隔カテーテル手技

b.肺静脈造影

c.肺静脈マッピングカテーテルの留置法

d.電気的肺静脈隔離術の実際

e.非肺静脈AF起源に対するカテーテルアブレーション

f.心房内線状焼灼法

g.AFの維持に関与する不整脈基質を標的とするアブレーション法

6.術後AF再発の診断

7.合併症とその対策

a.血栓塞栓症

b.空気塞栓症

c.出 血

d.心臓タンポナーデ

e.血管穿刺に関連した合併症

f.経中隔穿刺に関連した合併症

g.カテーテルやシース操作に関連した合併症

h.高周波通電中に起きる近傍組織への傷害

i.肺水腫

j.医原性心房頻拍

k.被曝に伴う合併症

第13章 器質的心疾患を伴う心室頻拍

1.病 態

2.電気生理検査で知りたいこと

3.基本的カテーテルの配置

4.カテーテルアブレーションの方法

a.単形性心室頻拍

b.多形性心室頻拍

5.各疾患ごとの心室頻拍の特徴とカテーテルアブレーション

a.心筋梗塞に伴う心室頻拍

b.拡張型心筋症に伴う心室頻拍

c.先天性心疾患に対する手術後の心室頻拍

d.不整脈源性右室心筋症に伴う心室頻拍

e.肥大型心筋症に伴う心室頻拍

第14章 特発性心室頻拍

1.病 態

2.流出路起源心室頻拍

a.臨床所見と機序

b.心電図所見

c.電気生理学的検査とカテーテルアブレーション

3.特発性左室起源リエントリー性心室頻拍

a.臨床所見と心電図所見

b.カテーテル留置とVTの誘発

c.発生機序からみた至適アブレーション部位決定

d.カテーテルアブレーション

e.誘発困難例に対するアブレーション

4.脚枝間リエントリー性心室頻拍

a.臨床所見と機序

b.心電図波形と電気生理検査

c.カテーテルアブレーション


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書籍情報

  • ISBN:9784498136168
  • ページ数:278頁
  • 書籍発行日:2010年6月
  • 電子版発売日:2012年1月14日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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