心房細動治療の真髄

  • ページ数 : 236頁
  • 書籍発行日 : 2012年3月
  • 電子版発売日 : 2012年11月17日
¥8,360(税込)
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商品情報

内容

心房細動の治療戦略はこの10年で大きく変わった。臨床の最前線で心房細動という 〝不思議な〟不整脈とがっぷり四つに組んでいるエキスパートが、単なるエビデンスの解説にとどまらず、臨床の場で会得したまさに真髄をあますところなく解説。
類書にはない、疫学・病因論から、解剖、機序、予防、治療テクニックまで、心房細動に関する重要なことをすべて網羅した心房細動治療テキストの決定版です。

序文

監修の序

循環器疾患において不整脈は重要な,また独特な領域を形成しているが,その不整脈の中にあって,心房細動は最も注目されている疾患であろう.その理由はいくつも存在する.世界でも類を見ない急速な高齢化社会を迎え,我が国で患者が急増している.著名人が発症したこともあり,心房細動を原因とした,脳血栓塞栓症が一般にも広く知られるようになった.また心房細動は,脳梗塞ばかりでなく,最近その患者数の多さと予後の悪さから,注目されている拡張不全をふくむ心不全の原因としても重要である.心房細動になると,通常は頻脈になり,日常生活の質が低下するばかりでなく,拡張機能の低下した高齢者では,心不全を発症することが多い.心房細動を契機に発症する心不全の頻度は,脳梗塞よりも多いといわれている.さらに心房細動が注目されている最も大きな理由は,治療法の進歩であろう.新しい抗凝固薬の登場により,血栓症予防は容易になったが,それ以上に特筆すべきは,頭蓋内出血を含む大出血の減少により,治療対象も広がると予想されることである.またカテーテルによるアブレーション治療が盛んに行われるようになり,その成功率も格段に向上している.このように,心房細動の重要性,話題性は益々増すばかりであるが,そこに登場したのが,本書「心房細動治療の真髄」である.

本書は,類書にはない,いくつもの特徴を有している.本書は,疫学・病因論から,解剖,機序,予防,治療テクニックまで,心房細動に関する重要なことをすべて網羅し,心房細動治療テキストの決定版となることを目指した.さらに教科書的に記述するのではなく,各領域のエキスパートが各々の経験を基にした考え方を前面に押し出して執筆していることも本書の特徴である.必要にして十分,実臨床で本当に知りたいことがもれなく記載されている.患者数の多い心房細動は,ほとんどの医師が診療にあたる可能性があることから,すべての医師にある程度の知識が要求されるであろう.そこで本書は,実際に患者を多く診ている実地医家の先生が読んでもわかり易く,また循環器エキスパートの先生も十分満足できる内容を盛り込んだ.本書が,急増する心房細動患者の診療のお役に立てば,監修したものとして,この上ない慶びである.


2012年 2月

小室一成



心房細動の治療戦略はこの10年で大きく変わった.既に古典的となったAFFIRM試験では,心拍数調節治療が生命予後という点では洞調律維持治療に劣らないということが示されただけでなく,適切な抗凝固療法の継続が非常に重要であることが明らかになった.1990年代前半にfocal atrial fibrillationのアブレーション成功例が報告され,1998年には高名なHaissaguerre 先生の金字塔とも言える心房細動に対するアブレーション治療の論文が発表された.その後このアブレーション治療が世界中で精力的に研究され,広く臨床応用されていることは周知のことであろう.筆者は最近循環器内科医の誰もが持っているBraunwald's Heart Diseaseの最新版では心房細動が独立した章として扱われていることを発見し,驚くとともに大いに納得した.このような扱いの不整脈は他にはない.いかに心房細動が全世界的に注目されているか,また循環器内科医が最も力を入れて取り組むべき疾患であることを示していると感じた次第である.

一昨年上梓した「カテーテルアブレーションの真髄」は幸いなことに好評を持って迎えられた.今回は真髄シリーズの第2弾として「心房細動治療の真髄」を刊行させていただいた.心房細動の疾患としての重要性やその治療戦略が数年単位で大きく変化することなどから,心房細動の治療について最新の知見をまとめた本が期待されていると考えた次第である.新たに一冊を加えるからにはそれなりの工夫が必要であることは当然である.まず臨床の最前線で患者に正面から向き合い,心房細動とがっぷり四つに組んでいる先生方に執筆をお願いした.心房細動治療全体を少数の先生方に分担いただいたため大変なご苦労があったものと思うが,それだけに各章とも整合性が取れ非常に読みやすいものになっている.また単なるエビデンスの解説に留まらず,臨床の場で実際に執筆者の先生方が会得した,まさに"真髄"が随所にちりばめられている.通読しやすい本になっていることはもちろん,日常臨床で困った事象についても多くの場合どこかに何らかの解決手段やヒントとなることが書いてあるはずである.十分に書かれていない点については循環器内科医が今後エビデンスの蓄積をしていくべき重要なポイントとも言えるのではないだろうか.

心房細動は不思議な不整脈である.もし魔法が使えて,心房細動という調律の異常を取り除くことができたとしても,心房細動患者が心房細動を発症していない人と同じにはならない.それは背景が他の不整脈とは大きく異なり,心房の線維化や拡張を始めとする"加齢的な変化"を基盤に発生する全身病の一表現形であることがほとんどだからである."心房細動が心房細動を生む"なる副題が付いた画期的な動物実験報告の後,心房細動によって心房の線維化や拡張が促進されるという側面が強調され過ぎているように思われてならない.今のところ"そもそも心房細動を引き起こすように働いた因子"は取り除くことはできそうにない.WPW症候群の副伝導路アブレーションのように単純ではないのである.

最後に,これまで多くの支援・助言をいただいた諸先輩に感謝の言葉をささげたい.この本によって多くの心房細動で苦しむ患者さんにより良い治療がもたらされることが筆者の希望である.


2012年2月

奥山裕司

目次

1章 心房細動の疫学と病因論

1.一般人口における心房細動の有病率

A.米国のコホート研究

2.医療機関受診者における心房細動患者の頻度と特徴

3.有病率の経年変化

4.新規発症率

5.心房細動の自然経過

6.無症候性心房細動の疫学

7.基礎疾患

A.高血圧

C.心不全

E.アルコール

2章 心房細動治療に関わる心房・肺静脈の解剖

1.心房内で問題となる構造

A.左房前壁における憩室

C.右房の分界稜と左房のtransverse myocardial bundleを連絡するBuchmann束

E.左心耳の特殊性

G.肺静脈に伸展する心房筋

2.アブレーションに関連する周辺構造物

A.食道と左下肺静脈基部の解剖

C.気管支障害の可能性

E.左横隔神経障害の危険性

3章 心房細動の機序

1.基礎研究の観点

A.心房細動の発生機序を理解する上で必要な知識

C.心房細動を引き起こす細胞・組織の機能的・構造的変化(リモデリング)

2.臨床研究の観点

A.心房細動と関連するリスク因子

3.薬物作用機序

A.レートコントロール薬

C.アップストリーム治療薬

4章 心原性脳塞栓予防

1.心房細動に伴う心原性塞栓の機序

2.心原性塞栓の予防の考え方

3.心原性塞栓のリスク評価

4.出血のリスク評価

5.梗塞予測と出血予測の統合が今後必須

6.抗凝固薬の作用機序

7.抗凝固強度の評価

8.ワルファリンによる心原性塞栓予防

9.目標とすべきワルファリン治療の質

10.抗凝固療法導入の実際

11.心房細動における抗凝固療法の落とし穴

12.ワルファリン治療の質を上げるために

13.抗凝固療法の適応についての考え方

14.持続性心房細動のcardioversion時の対応

15.一度でも心房細動が確認されたら抗凝固療法をするのか?

16.出血合併症の頻度と対処法

17.手術時などの対処法,内視鏡検査などに関連して

18.抗凝固療法中の頭蓋内出血に対する対処

19.Sick day ruleについて

20.ダビガトラン(プラザキサ)による心原性塞栓予防

21.リバロキサバン,アピキサバン論文の紹介:活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害薬

A.リバロキサバン

C.エドキサバン

22.経皮的左心耳閉塞デバイスの可能性

23.抗凝固療法の将来展望

5章 リズムコントロール治療とレートコントロール治療

1.発生機序に基づいたリズムコントロール治療

A.抗不整脈薬の分類

C.Sicilian Gambit分類

2.リズムコントロール治療とレートコントロール治療の方針の選択

A.症状の有無(QOL)

C.基礎心疾患・心不全の有無

3.大規模試験のまとめ

A.AFFIRM試験

C.RACE II試験

E.AF-CHF試験

4.欧米のガイドラインと日本のガイドラインからみた実際の治療法

A.レートコントロール治療

5.アップストリーム治療

A.RA系阻害薬

C.スタチン

6章 心房細動のカテーテルアブレーション

1.心房細動アブレーションの歴史と治療法の変遷

A.カテーテルアブレーションによる不整脈治療

C.肺静脈隔離(PVI)の登場

E.肺静脈以外へのアブレーションの試み

2.心房細動アブレーションの適応と必要とされる術前検査

A.心房細動アブレーションの目的

C.心房細動アブレーションの術前検査

3.心房細動アブレーションの実際

A.Brockenbrough法による左房への経中隔アプローチ

C.カテーテルの留置

E.鎮静薬・鎮痛薬の使用

G.肺静脈以外への通電

I.心房細動アブレーションの成績

4.カテーテルアブレーションの合併症とその予防

A.脳梗塞等の血栓塞栓症

C.心タンポナーデ・心液貯留

E.肝動脈閉塞

G.横隔神経麻痺

5.最後に

7章 心房細動の非薬物治療

①直流通電治療,ペーシング,左心耳閉塞デバイス

1.直流通電治療

A.原理

B.電気的除細動と予後

C.適応

D.具体的な方法

E.除細動の合併法

2.ペーシングによる心房細動抑制

A.ペーシング治療の原理と目的

B.心房ペーシングによる心房細動抑制の試み

C.心室ペーシングによる心房細動発生のリスク

3.左心耳閉塞デバイス

A.左心耳閉塞デバイスの概要

B.PLAATO

C.WATCHMAN: PROTECT AF

D.The Amplatzer Devices

②Maze手術など

1.Maze手術開発の歴史

A.1980年代までの心房細動に対する隔離手術

B.隔離手術ではない新たな心房細動手術の開発

C.Maze手術の開発

D.Cox自身のmaze手術の臨床成績

2.1990年代の数々の改良手術

A.小坂井式冷凍凝固多用maze手術

B.Radial手術

C.両心耳温存maze手術

D.左房maze手術

3.2000年以降の各種デバイスの開発と手術の低侵襲化

A.各種アブレーションデバイスの開発

B.双極RF(高周波)クランプを用いたmaze手術

C.各種デバイスを用いた縮小術式

D.付加手術としてのGP(自律神経叢)アブレーション

E.心房細動手術の現状

4.心房細動手術の成績

A.成績を評価する上での留意点

B.(両側)maze手術の成績

C.(両側)maze手術と他の縮小手術との成績の比較

D.Maze手術の成績に関与する因子

E.Maze手術とカテーテルアブレーション

5.Maze手術の適応と心臓外科への紹介のタイミング


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書籍情報

  • ISBN:9784498136267
  • ページ数:236頁
  • 書籍発行日:2012年3月
  • 電子版発売日:2012年11月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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