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- ER・ICU100のピットフォール
商品情報
内容
救急集中治療での日常診療において,誰しもが陥りやすい穴,あるいは自覚がないまま陥ってしまう穴がそこかしこに存在する.本書ではピットフォールに焦点を当て,“落とし穴”に対してエキスパートがどのように対処しているか,14ジャンル,100項目で明快に解説した.穴に落ちないコツや穴の埋め方を理解し,より広い視野で質の高い診療を担保する力を身につけるための必読の一冊である.
序文
穴を埋めること
診療は難しい.いくら頑張ろうとも,下せない診断がある,治せない病態がある.限界を感じながらも,また明日頑張る.それが医療であり,医師の仕事であろう.
限界だけではない.日々の診療には,"落とし穴(ピットフォール)"がある.誰もが陥りがちな穴もあれば,経験や知識不足の人が陥りがちな穴もある.そもそも穴だらけと言っても過言でない複雑系を我々は生きている.
一方で,穴にはまっていることに気づかない場合すらある.穴の中から見る景色を当然として,山の向こうや地平線の存在に気づかないことは,意外とあるのではないか.狭い視野は,よい診療の障害となる.
本書は,ピットフォールに焦点を当てた.臨床医が比較的頻回に遭遇しそうなもの,あるいは,認識できにくいものなどを中心に,達人達の知恵をもとに,穴に落ちないためのコツ,穴を埋めるコツを指南頂いた.
医療は派手なものでなくてよい.地道な努力により,穴のない,隙間のない,切れ目のない診療を目指し,しっかりと守りきること.そしてその結果として,質の高い診療をつねに担保すること.これは救急集中治療医に求められる最重要課題であり,侍ジャパンのスモールベースボールにも通じる,勝利の方程式といえよう.
2019年1月
北山しぐれが近づく,三条大橋の袂にて
志馬伸朗
目次
目次
I 診察
1 診察時の言葉・服装
2 患者ニーズへの対応:意見が医療者と家族で異なるとき
3 専門医・上級医へのコンサルテーション
4 適切なexposure:不必要に長時間裸にしてはいけない
5 本邦のみで保険診療上認められている治療法を日本で行う意義と判断基準
6 集中治療におけるDNAR指示:それって安易な終末期医療?
7 後医は名医か,適切な返書作成
8 重症患者を他院へ転送することは後ろめたくない
II 処置・手技
1 末梢ライン挿入の基本的作法と手技:A,V
2 超音波ガイド下中心静脈カテーテル挿入の落とし穴
3 縫合の基本:糸の太さや材質について知っておくべきこと
4 留置ドレーン・管類の管理:早期抜去に向け考えるべきこと
5 胃管挿入の基本
6 血液検査のルーチンオーダーの功罪
7 血液ガス:定時検査の必要性は?
8 動脈血/静脈血ガス分析でわかること,わからないこと
9 胸部X線写真はICUで毎日必要か?
10 造影CTの目的を明確にしよう
11 救急エコー(FAST/RUSH/BLUE)の正しい使い方
III 気道・呼吸
1 気管挿管前の準備
2 気管挿管デバイスの差異を知る:ビデオ喉頭鏡を使おう
3 緊急患者の気管挿管時の注意点
4 呼吸音の正しい聞き方と表現
5 喘鳴=喘息ではない
6 バイタルサインの適切な評価:頻呼吸評価と対応
7 カプノグラフィの活用:気管挿管時,人工呼吸時
8 非挿管呼吸管理(NPPV/HFNC)の注意点
9 COPD患者の急性呼吸不全に酸素投与を躊躇しない
10 両側びまん性肺病変におけるARDSと非ARDSの鑑別
11 救急・集中治療医のための間質性肺炎の正しい理解
12 結核を見逃さない:疑診例の隔離方策も含める
13 SpO2=100%は正常でも目標でもない
14 理想体重を知ろう
15 人工呼吸管理において常に正常血液ガス値を目指さない
16 人工呼吸管理の落とし穴:強い自発呼吸,非同調の認識と回避
17 SBTを正しく使う:適応患者の選別,過度のウィーニング回避
18 気管切開のタイミング:なんでも早期気管切開?
IV 意識・神経
1 不穏=せん妄と決めつけない
2 人工呼吸中の鎮静中断:とにかく日々の鎮静中断?
3 小児の軽症頭部外傷に対する頭部CT検査:見逃しも医療被曝も減らすには
4 くも膜下出血後のtriple H療法は本当に有益か?スパズム期はあるのか?
5 高浸透圧製剤の功罪
V 循環
1 頻脈の適切な評価と対応
2 頻脈に対する抗不整脈薬の落とし穴
3 ショックの早期評価,血圧以外に評価すべきこと
4 心不全の評価:心収縮が良好な心不全(HFpEF)の評価
5 心不全への介入:クリニカルシナリオとその注意点
6 急性心原性肺水腫の患者に,安易にモルヒネを使用しない
7 急性心筋梗塞を見逃さないために
8 non-STEMIを見逃さないために
9 後壁梗塞を見逃さないために
10 冠動脈ステント留置前の出血検索
11 カテコラミンルートの管理:そのローカルルールはOKか?
12 ICUでのドパミン:とかく悪者にされがちですが...?
13 SGC・IABPの功罪
VI 感染
1 感染防御策を遵守しよう:破綻しないコツ?!
2 末梢動/静脈ライン確保時の注意:感染防御策,皮膚消毒,部位など
3 皮膚消毒薬:ポビドンヨードの問題点
4 耐性菌リスクとは何か?
5 ICU入室患者におけるfever workup
6 グラム染色の適正使用:微生物検査室とのコミュニケーション
7 培養検査結果を一歩先まで読めるようにする:MIC?ブレイクポイント?
8 正しい血液培養採取法
9 抗菌薬はビールではない:「とりあえず○○」はやめよう
10 抗菌薬をde-escalationした患者が再び発熱したとき,抗菌薬を元に戻してはいけない
11 広域抗菌薬は強力でも安心でも安全でもない:カルバペネム薬の出番とは?
12 de-escalationのお作法
VII 腎臓
1 尿量低下を腎前性腎不全と決めつけない:輸液負荷の罪
2 尿量低下あるいは腎機能低下=フロセミドでいいのか?
3 大量輸液と利尿薬(入れて出す)の投与は腎機能を良くしない
4 持続腎代替療法=CHDFではない
5 持続腎代替療法:目的(適応)を整理し,限界を知る
6 腎障害をきたす薬剤に注意
7 サイトカインは除去するもの?
8 造影剤腎症はあり得るか
VIII 体液・電解質
1 体液量評価:in-outバランスor体重測定
2 IVC虚脱の意味を知る(=血管内容量不足ではない)
3 脱水とハイポボレミア:用語の適切な使い分け
4 侵襲患者への低張液
5 熱傷患者へのBaxter公式適応は本当に正しいのか?
6 とりあえず生食,の害:高Cl
7 リフィリング期はあるのか?
8 アルブミンの適正使用:低アルブミン血症,ショック
9 EGDTを見直す:血清乳酸値は循環の指標となりうるか?
10 過剰輸液の弊害
IX 栄養・血糖
1 侵襲期早期の過剰栄養回避
2 早期経腸栄養を妨げる因子:いかに除去するか
3 急性膵炎患者の経腸栄養開始を遅らせない
4 低栄養患者への栄養療法の注意点:リフィーディング症候群と低リン血症
5 抗潰瘍薬は本当に必要か?必要であるとして,使い分けは?
X 血液凝固
1 FDPとD-dimerを同時に測る意義は?
2 各種DIC基準の違いと問題点を知る
3 DVT予防策:適応と使い分け
4 急性出血病態と慢性抗凝固薬中断:中断の問題点,拮抗薬の適応
XI 外傷
1 外傷患者では内因性疾患を検索しよう
2 不穏で暴れる患者への対応
XII 小児
1 子どもは小さな大人である
2 子どもは小さな大人とは違う
3 Not doing wellの見分け方
4 小児の輸液:輸液路確保の問題
5 児童虐待の可能性を忘れない
6 小児の血液培養をちゃんと採る
XIII 体温
1 体温管理療法:目的と適応,管理上の問題,体温以外の注意点
2 発熱=氷クーリングはやめよう
3 解熱鎮痛薬の罪:周術期オピオイドの有効な使い方を含めて
XIV その他
1 ステロイドの適正使用:AERDの考慮,選択肢と用量
2 ステロイドパルス療法は存在するか
3 持続インスリン療法:血糖以外の観察を忘れない
4 隠れた内分泌救急を見逃さない
5 アナフィラキシー:ステロイドではなくアドレナリン投与が優先
6 過呼吸の評価と対応:精神的要因だけではない
7 よくある処方間違い
8 応時指示(発熱時,不穏時など),ドクターコール基準,の問題点
9 何でもかんでも早期離床でいいの?
10 人工呼吸患者は歩かせたらいいの?:その真の意義を知る
11 体位療法は有効なのか:肺炎予防,脳浮腫予防,脊髄損傷
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書籍情報
- ISBN:9784498166042
- ページ数:310頁
- 書籍発行日:2019年2月
- 電子版発売日:2019年3月20日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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