腎臓内科医のための腎移植の診かた

  • ページ数 : 268頁
  • 書籍発行日 : 2015年9月
  • 電子版発売日 : 2016年9月16日
5,280
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商品情報

内容

“脱・腎移植食わず嫌い王”を叶えます!

内科医による初の腎移植入門の書となる本書は、腎臓内科医が泌尿器科医と協力して腎移植患者を診るために必要な知識をまとめた入門書です。
腎移植を受ける患者数は年々増加し,移植前の評価や移植後の長期フォローなど,その内科的管理の重要性が高まっている.よもや腎移植は泌尿器科医だけのものではなく,腎臓内科医が積極的に関わることが必要だ.本書ではそんな現状を踏まえ,腎臓内科医の視点から腎移植患者を診るために必要な知識とポイントをまとめた初めての書である.平易かつ分かりやすい解説で,医師のみならず腎移植に携わる医療スタッフ全てにお薦めしたい.

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序文

序文


腎移植は泌尿器科医だけのものでありました.

しかし,いまや泌尿器科医と腎臓内科医が共有していくものとなりつつあります.そして,今後は今以上に腎臓内科医が腎移植に携わることが求められるでしょう.この本は,腎臓内科医が泌尿器科医と協力して腎移植患者を診るために必要な知識をまとめた入門の書です.初学者を対象として,わかりやすく,そして読みやすくしてありますので医師のみならず腎移植医療に携わるすべての医療関係者の方の役に立つものとなっています.

各章の執筆は,聖マリアンナ医科大学の腎臓高血圧内科と泌尿器科の先生を中心に多大な御協力を頂きました.そして,その内容に関しましては各章でなるべく重複がないように編集させて頂きました.レシピエントとドナーの両者に同じように重きをおき,腎臓内科医が特に重要な役割を果たす術前評価と移植外来を行う上で必要な知識に重点をあてています.

腎臓病の領域の中で何故か腎移植だけは"食わずぎらい"をされていることが少なくありません.米国の腎臓内科フェローも最初は同様です.しかし"慢性腎臓病患者が免疫抑制薬を内服しているだけ(もちろん実際は異なります)"などと指導医より言われて移植外来をするうちに苦手意識を克服していきます.本書をきっかけに腎移植に興味を持ち,腎臓内科医が積極的に腎移植医療に携われる施設にて腎移植の研修を受けられる先生が一人でも増えることにつながれば幸いです.

この本の出版にあたりましては門川俊明先生(慶応義塾大学医学部医学教育統括センター教授)より多大なる御厚意を頂いております.そしてまた,私の所属しております聖マリアンナ医科大学の柴垣有吾先生(腎臓高血圧内科教授)や力石辰也先生(泌尿器科教授)をはじめとした先生方よりこの本の内容には多大なフィードバックを頂戴しました.

最後になりますが,本書の最初から最後までおつきあい頂いた企画部の鈴木真美子氏,そして丁寧に編集をして頂いた編集部の高橋洋一氏に,この場をお借りして御礼を申し上げます.


2015年7月
今井直彦

目次

1章 腎移植とは

腎移植の種類

1.生体腎移植と献腎移植

2.血液型適合腎移植と血液型不適合腎移植

腎移植の成績

1.生着率

2.生存率

腎臓内科医の果たす役割

2章 術前評価

1.生体腎移植ドナーの評価

ドナーになれる人

ドナーの評価

ドナーへの適切な情報提供

1.手術のリスク

2.予後のリスク

ドナーの自発性の確認と自主性の尊重

■ドナーの医学的評価

アムステルダムフォーラムガイドライン

医学的評価の進め方

1.ドナーの腎臓の評価

2.ドナーの腎臓以外の評価

2.生体腎移植レシピエントの評価

移植のオプション提示と術前評価の開始

1.移植のオプション提示の時期

2.術前評価開始の時期

腎移植の適応

1.倫理・社会的評価

2.精神的評価

3.医学的評価

術前評価の実際

3.組織適合性とクロスマッチ

HLAとは

組織適合性検査(HLAタイピングと抗体検査)

1.HLAタイピングについて

2.抗体検査について

3章 先行的腎移植(PEKT)

なぜ先行的腎移植か

本邦および世界での先行的献腎移植の現状

先行的献腎移植はいつするのがよいか

先行的腎移植は誰のためか

先行的腎移植の準備

透析期間と移植後の予後

先行的腎移植の予後はなぜよいか

4章 ABO血液型不適合腎移植

ABO血液型とは

ABO血液型抗原と拒絶反応

ABO血液型のタイピング

ABO血液型不適合腎移植と腎生着率

ABO血液型不適合の術前治療の実際

1.抗血液型抗体の産生抑制:免疫抑制薬,リツキシマブ/脾摘

2.抗血液型抗体の除去:アフェレシス

5章 既存抗体陽性の腎移植

HLAとHLA型

抗HLA抗体の検出:HLAのタイピングと抗体検査

HLAの一致と腎生着率

抗ドナー特異抗体:DSA(donor specific antibody)とは

DSA陽性と腎生着率

既存抗体陽性例の術前治療の実際

6章 免疫抑制薬について

免疫抑制薬の変遷と移植成績

免疫抑制療法の基本

1.導入療法

2.維持療法

各論

1.抗体製剤

2.ステロイド

3.カルシニューリン阻害薬(CNI)

4.代謝拮抗薬

5.mTOR阻害薬

7章 腎移植レシピエントの周術期管理

生体腎移植

1.ABO適合生体腎移植

2.ABO不適合生体腎移植

献腎移植

1.術前の管理

2.術中・術後の管理

8章 移植腎機能障害

移植後の時期および発症様式による分類

1.移植直後(術後〜1週間以内)

2.移植後早期(1週間〜3カ月以内)

3.移植後後期(3〜6カ月以降)に急激に血清クレアチニン値が上昇

4.移植後後期(3〜6カ月以降)で徐々に血清クレアチニン値が上昇

9章 拒絶反応(その治療を中心に)

拒絶反応の分類

T細胞性拒絶反応と抗体関連型拒絶反応

拒絶反応:各論

1.超急性拒絶反応

2.促進型急性拒絶反応

3.急性拒絶反応

4.慢性拒絶反応

10章 移植外来

1.腎移植ドナーのフォロー

増えているハイリスクドナー

ドナー外来での腎臓内科医の役割

1.腎機能障害

2.高血圧

3.蛋白尿

4.糖尿病

5.CVDの予防

6.精神面の健康とQOL

2.腎移植レシピエントのフォロー

a.一般的な内科管理

生活習慣病の管理

1.高血圧

2.新規発症移植後糖尿病

3.脂質異常症

4.高尿酸血症

5.肥満

貧血の管理

CKD─MBDの管理

1.高カルシウム血症

2.低リン血症

b.再発腎炎

原疾患と再発腎炎

■各論

IgA腎症

巣状分節性糸球体硬化症

膜性腎症

膜性増殖性糸球体腎炎

 1.MPGNI型

 2.MPGNII型(DDD)

ANCA関連血管炎

抗GBM型腎炎

ループス腎炎

hemolytic uremic syndrome(HUS)

 1.移植前の介入

 2.移植後の介入

c.感染症

common is common

移植患者へのアプローチ

1.移植後からの期間

2.微生物の曝露源

3.予防内服の有無

■各論

細菌感染症

1.尿路感染症

2.呼吸器感染症

3.創部感染症

ウイルス感染症

1.単純ヘルペスウイルス(HSV)

2.水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)

3.サイトメガロウイルス(CMV)

4.EBウイルス(EBV)

5.BKウイルス(BKV)

6.肝炎ウイルス

真菌感染症

1.ニューモシスチス肺炎

ワクチン接種について

d.悪性腫瘍

疫学

悪性腫瘍の由来

危険因子

発がんリスクと発がん率

予防

早期発見とスクリーニングの重要性

治療

e.腎移植患者の妊娠

妊孕性の回復

妊娠のリスク

1.妊娠が腎機能に与える影響

2.腎機能が妊娠に与える影響

妊娠中の内科的管理

1.高血圧

2.糖尿病

3.貧血

4.感染症

妊娠を許可する条件

妊娠と免疫抑制薬

11章 バンフ分類

拒絶反応の考え方とバンフ分類

最新バンフ分類─Banff 2013─による拒絶反応の診断

1.カテゴリー2:AMR

2.カテゴリー3,4:Borderline,TCMR

拒絶反応と鑑別を要する移植腎障害

1.カルシニューリン阻害薬の腎障害

2.BKウイルス腎症

12章 献腎移植

献腎移植の統計

1.件数

2.成績

3.待機期間

登録の実際について

1.登録の適応

2.献腎移植希望登録の流れ

3.登録申請に必要な検査と医学的情報

レシピエントの評価と検査

献腎移植登録期間中のフォローアップ

レシピエントの選択基準

献腎移植手術前後の流れ

献腎ドナーの適応基準

1.活動性感染症

2.悪性腫瘍

3.腎機能

4.年齢

13章 レシピエント腎移植コーディネーター

まだまだ足りないレシピエント移植コーディネーター

術前の役割:生体腎移植希望の場合

1.情報提供

2.面談

3.検査立案・スケジュール管理

4.各部署との調整

5.患者指導

術前の役割:献腎移植希望の場合

1.情報提供

2.面談

3.検査立案・スケジュール管理

4.各部署との調整

術後の役割

1.問診

2.医師の診察

3.処方監査・服薬指導

4.栄養指導,運動指導

索引


コラム等目次


1章

●臓器移植法の改正で献腎移植は増えたか

●移植患者の生命予後について

●腎移植と医療経済

●腎移植の患者の負担


2章

●ドナー評価の倫理的基準と医学的基準

●本邦における腎ドナーの周術期死亡

●腎提供による腎機能の低下について

●ドナーの予後研究は比較対照群が大事

●評価に伴うリスクについて

●夫婦間の生体腎移植と自発性の問題

●年齢と腎機能のカットオフ値

●高齢化するドナー

●高齢ドナーの問題点

●ドナー交換腎移植について

●オプション提示の時期の実際

●腎移植を受けるにあたって申請しておくべき医療費助成制度

●動脈硬化を有するレシピエントへの腎移植

●CVDのスクリーニングを誰にどこまでするか

●腎移植前のワクチン接種

●CREG(cross reactive group)について


3章

●先行的腎移植の実際

●先行的腎移植のメリットおよびデメリット

●先行的献腎移植 


4章

●A型抗原

●腎移植における血液型の組み合わせ

●脱感作療法について

●抗A・B抗体価について

●腎移植手術前日の抗体除去療法について

●免疫学的順応(accommodation)とは 


5章

●HLA classI,IIとDSA

●ハプロタイプおよび遺伝子型などについて

●抗HLA抗体

●de novo DSA産生の予防

●non―HLA抗体

●MFI値の問題点とMESF

●IVIGによる脱感作


6章

●腎臓内科医ははじめから腎移植に関与していた

●免疫抑制薬の減量

●免疫抑制薬はどこで何を"抑制"しているのかを意識する

●米国と本邦の免疫抑制療法のトレンドの違い

●免疫抑制薬のTDM

●ベラタセプトについて

●タクロリムスの徐放性製剤

●Symphony研究

●CNIの内服ができないとき

●CNIと腎障害について

●食事の影響

●シクロスポリンとの併用

●Symphony試験におけるmTOR阻害薬

●A2309試験とZEUS試験

●免疫抑制薬の共通する副作用/特徴的な副作用

●de novo DSA(新規発生の抗ドナー抗体)を防ぐために 


7章

●大量輸液の注意点


8章

●SGF,DGF,PNFについて

●正常な移植後の経過

●腎移植後は定期的にスクリーニング検査をする

●移植腎周囲の液体貯留

●移植後の血圧目標


9章

●抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(サイモグロブリン)と感染症予防

●なぜ急性T細胞性拒絶反応の予防が重要か

●ボーダーライン変化について

●抗体関連型拒絶反応の診断とC4d染色 


10章

●ドナーを見失わないために

●ドナーのCKDは本当にCKDか

●肥満ドナーについて

●ドナーはいつ妊娠するべきか

●ドナーのデータベースの構築

●スタチン製剤とカルシニューリン阻害薬の相互作用

●ヘモグロビンの目標値について

●腎移植とFGF23

●移植後の骨病変について

●禁煙指導を続ける

●移植後の蛋白尿はどこからきているか?

●FSGSとリツキシマブ

●病歴聴取の重要性

●FSGSの再発とコロンビア分類

●遺伝性FSGSは再発するか?

●Alport症候群と腎移植

●aHUSと補体制御因子

●net state of immunosuppressionについて

●腎移植患者で抗菌薬を使用する際に注意するべきこと

●移植患者の感染症診療の注意点

●2LMNSについて

●CMV感染とCMV感染症

●CMVアンチゲネミア法

●CMV感染症の早期投与法と予防投与法

●late onsetのCMV感染症

●BKウイルス腎症は予防が大事

●BKウイルスによる尿管狭窄

●インターフェロン療法について

●肝炎ウイルスと免疫抑制薬

●PCPの予防

●両側肺陰影をみたらBALをする

●本邦独自のデータベースの重要性

●ドナー由来の悪性腫瘍について

●発がん率と発がんの標準化罹患率について

●透析患者との比較

●移植後リンパ球増殖症(PTLD)について

●データベースについて

●男性不妊について

●避妊カウンセリングの重要性

●免疫抑制薬は本当に安全か

●妊娠中の移植腎生検,拒絶反応とその治療 


11章

●移植後期間と急性・慢性

●移植腎生検から拒絶反応を診断するコツ


12章

●増えない臓器提供

●2種類の臓器提供:脳死下臓器提供と心停止下臓器提供

●臓器提供の意思表示について

●親族優先提供について

●先行的献腎移植の登録

●マージナルドナー

●膵腎同時移植について 


13章

●米国のレシピエント移植コーディネーター

●食事療法について

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書籍情報

  • ISBN:9784498224209
  • ページ数:268頁
  • 書籍発行日:2015年9月
  • 電子版発売日:2016年9月16日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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