絶対成功する腎不全・PD診療 TRC(Total Renal Care)第2版

  • ページ数 : 218頁
  • 書籍発行日 : 2019年10月
  • 電子版発売日 : 2019年10月18日
3,960
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商品情報

内容

慢性腎不全患者の精神心理・社会生活面を支援するための,TRC(全人的・総合的腎疾患医療アプローチ)の実践と考え方を解説する書.
約3年半ぶりの改訂版.


医療技術の驚異的な進歩によって,慢性腎不全患者の長期生存が現実となったいま,医療者には,身体面の治療のみならず,患者のQOL(Quality of Life)を高めるための支援が求められている.本書では,患者の精神心理・社会生活面を支援するためのTotal Renal Care(TRC.全人的・総合的腎疾患医療アプローチ)の実践と考え方を解説した.約3年半ぶりの改訂にあたり,TRC総論の改稿など,各所をリニューアル.

序文

巻頭言

前版は幸いにも好評をいただき,このたび改訂版執筆の機会をいただくことができた.著者を代表して中外医学社の五月女様,上村様,編集部の皆様,そして読者の皆様に感謝申し上げたい.  腎代替療法の技術の進歩により,末期腎不全に至った後も患者の長期生存が可能となった.私たち医療者は,治療技術の提供のみならず,患者および支援者の生活の質を高めるための支援を,長期間にわたり各々の日常の活動範囲にあわせて行う必要がある.

本書ではこのような時代背景から技術面の記載は最小限にとどめ(これについては姉妹書である『腹膜透析・腎移植ハンドブック』などに譲りたい),主に腎不全患者の精神心理・社会生活面を含めた診療の視点を記述することを目的としている.個別性(心)をみる視点として,「人文知や精神医学・神経科学」の知見の導入を試みた.

1章では,全人的・総合的腎疾患・腎不全医療アプローチ(Total Renal Care: TRC)の概念について,本書の全体の展望を示すことができるように改訂を試みた.

2章では,腎不全患者さんの典型例を取り上げた.読者の皆さんはどのように診療していかれるであろうか.

3章では,PD診療の身体管理のポイントである体液管理と感染に絞り記述した.

4章では,疾患ライフの受容段階とそれに基づくアプローチについて記載した.

患者教育は患者の背景(受容段階)に応じて方法を工夫する必要がある.実践に際しては,医師・看護師・栄養士・臨床心理士・運動療法士・社会福祉士などの多職種のチームそれぞれが主体的に関与して情報共有して患者の多面性をカバーするチーム医療が必要となる.医師はチームのリーダーとして全体をまとめることが役割となる.

5章では,腎代替療法選択について,6章では高齢者腎不全医療について述べた.いずれも腎不全ライフの重要局面である.6章では「サルコペニア・フレイル」,「Shared Decision Making」と関連の深い「支援者との関係性とその調整」,「アジアとの比較からみえる日本の課題」,終章では,「個のみかた」について専門家の先生方にご執筆いただいた.

本書が一人でも多くの腎不全医療に携わる医療者のお役に立つことができれば幸いである.


令和元年 夏

石橋 由孝

目次

1章 全人的・総合的腎疾患医療アプローチ(Total Renal Care: TRC)

死の受容から生の受容へ

慢性疾患の診療に必要な医療者の視点

人間の個別性

心のステージ

心のステージと腎不全

絶望の淵から人生の価値へ

価値の言語化(人生の目標を言葉にする)

高齢者腎不全医療

死生観(の形成)

支援者と患者,および支援者間の距離とその調整,そしてAdvanced Care Planning

全人的・総合的腎疾患医療(Total Renal Care: TRC)

2章 こんな患者さん,あなたならどう介入しますか?

3章 PD診療のポイント

1.総論

身体的管理のポイント

PD 離脱原因

2.腹膜炎予防の考え方

① 腹膜炎予防の考え方

腹膜炎制御の重要性―腹膜保護の観点から

原因からみた腹膜炎予防

PDCAを通した当院の腹膜炎予防実践

② 出口部ケアの考え方

① 急性期―A.テンコフカテーテル挿入周術期の管理

① 急性期―B.感染合併時の出口部管理

② 慢性期―C.維持期のケア

3.体液管理

① 食塩制限の重要性

PD患者における体液管理の現状と重要性

体液管理の対策

*食事制限を実生活になじませるまで―患者と家族の手記から

患者(70代男性)の手記

家族の手記

② 体液管理のための食事療法の実際―奪うのではなく人生の楽しみを引き出す栄養指導

味付けを1品のみにする!

副菜は食塩の少ない調味料や薬味を利用して美味しく食べる!

減塩の達人に聞こう!

腎臓食で旅行!

4章 患者教育(自己管理)

1.総論

慢性期腎疾患の診療―なぜ透析患者さんは難しいのか?

急性期疾患と慢性期疾患の視点の違い

PD 患者の2つのカテゴリー

2.心理面

① 受容段階

慢性疾患の受容段階

実臨床での使用方法

症例

② 疾患受容が進まない背景を探る―自己語りという観点から

はじめに―自分を大切にできない子どもたち

受容「しない」のではなく受容「できない」

語ることでしか自己は変化しない

おわりに―「問わず語り」を引き出すために

3.患者指導のポイント

何のために,誰に,何を伝えるか?

誰に教えるか?

患者教育をする人は?

患者教育のポイント

何を教えるか?―指導する技能の種類

患者教育プログラムの作り方と評価

4.減塩指導のポイント

食塩管理とは

栄養指導の実際

5.診療のポイント

受容段階が進んでいない場合の問診のポイント

受容段階が進んでいる場合の問診のポイント

要支援患者

6.院内システム構築

PD診療システム―当院のシステム構築を例に

5章 療法選択

1.総論

我が国の腎代替療法選択

療法選択とは

Narrative-basedmedicine(ナラティブ・ベイスト・メディスン)

ダイナミックな腎代替療法選択プロセス

2.実践

医療者の役割は「意思決定支援」

意思決定のための支援方法

医療者間での情報共有

3.高齢者の療法選択

① フレイルの知見を臨床に活かす

フレイル―高齢者医療とケアの新たな視点

ストレッサーへの脆弱性

透析療法の適否の判断―年齢ではなくフレイルを参照

透析療法の意思決定支援ツール

② 高齢者ケアに必要な視点―人間における倫理の成り立ち《皆一緒》と《人それぞれ》のブレンド

《皆一緒》と《人それぞれ》の並存

現在の結果から遡って,歴史的経緯を推測すると

医療従事者-患者・家族関係における《皆一緒》と《人それぞれ》

質の高い《人間尊重》へ

臨床倫理の基礎となる考え方

6章 高齢者

1.総論

2.基幹病院の実践

基幹病院の役割

高齢者PDの実践

3.その人らしく在宅生活を送るために―退院支援に必要なこと

対象

結果と考察

おわりに

4.サルコペニア・フレイルを中心とした

高齢者の低栄養・身体機能低下

高齢者の加齢に伴う身体機能低下

高齢者CKD特有の病態

PEW・サルコペニア・フレイル

サルコペニアの病態

サルコペニア・フレイルの治療戦略

5.高齢者の心理と介護の問題について

6.地域高齢社会の先進国モデル

超高齢社会に求められる医療

在宅医療を通じた高齢社会への取り組み

ICTを活用した医療介護の情報連携

シンガポールにおける在宅医療・介護の展開

終章 医療現象学―個別化医療に必要な視点

はじめに

疾患と病い

患者の個別性を理解するための現象学的視点

個別化医療の目標としての「安らぎ」

まとめ

■資料集

資料1 救急外来腹膜炎対応マニュアル

資料2 出口部ケアシート

資料3 受容段階ワークシート

資料4 食事記録表

資料5 診療ワークシート

資料6 PDカンファランスシート

資料7 療法選択ワークシート

資料8 高齢者用ワークシート

■索引

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書籍情報

  • ISBN:9784498224292
  • ページ数:218頁
  • 書籍発行日:2019年10月
  • 電子版発売日:2019年10月18日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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