パーキンソン病200年 ―James Parkinsonの夢―

  • ページ数 : 426頁
  • 書籍発行日 : 2020年1月
  • 電子版発売日 : 2020年1月10日
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商品情報

内容

ジェームズ・パーキンソンの“An Essay on the Shaking Palsy”が刊行されてから約200年.この記念すべき節目におくる,パーキンソン病の最新ハンドブック,決定版!

序文

James Parkinson(1755--1824)はロンドンのHoxtonの生まれである.彼の著"An Essay on the Shaking Palsy"が1817年にロンドンで出版されて2017年は200年になる.これを記念して欧米では記念シンポジウム開催や雑誌の特集号が刊行された.日本ではこうした関心は欧米ほどに盛り上がらなかったことは残念である.J. Parkinsonの人とその時代をめぐってロンドンでは講演も行われた.彼の活動は日本でも豊倉らによる詳細な紹介があるが,写真や墓さえも残っていない.J. Parkinsonのパーキンソン病に関する著書は一編のみであり,彼の名前がパーキンソン病となり一人歩きしている病気とも言えるかもしれない.逆説的に言えば私たちは考えているほどにはパーキンソン病のことが分かっていないのかもしれない.本書巻頭の廣瀬源二郎先生の筆になる"パーキンソン病の200年"はその理解への良き手引きとなり,巻頭を飾るにふさわしい名著である.


この200年目の節目にパーキンソン病の過去200年間を顧みつつ,現在と将来を展望する総説集を企画したが,200年を過ぎたのは編者の至らぬことと反省しているが,ここに刊行でき,執筆者・編集者諸氏には感謝したい.各総説の巻頭にはJ. Parkinsonが残した総説関連の一文があれば,これを引用している.J. Parkinsonは何を考えたのであろうか,自分の目で観察し,考えることの重要性に思いを馳せていただきたい.


また,1969年はパーキンソン病治療におけるレボドパによるドパミン補充療法の成功が最終確認されて発表された年であり,2019年はドパミン補充療法が確立した50年目の記念すべき年でもある.こうした点からも温故知新というべき節目の年であり,治療を振り返ってみる良い機会でもある.J. Parkinsonは治療の将来に大きな夢を持っていたようである.


パーキンソン病がなぜここまで神経学の関心事であり続けたのか,革命的とされたレボドパ治療がいまだなぜ完成し得ないかなど,興味が尽きない病気であり,J. Parkinsonの小著は今日なお大きな意義がある.


J. ParkinsonのEssay発刊200年を過ぎて,本書を読んで彼はどう思うであろうか.Parkinson先生の本疾患の将来に対する期待と夢はどれくらいかなえられたであろうか.そして,これからの100年,200年後に何が解明されて,何が未解明であるのだろうかと思いは尽きない.


2019年12月

山本 光利

目次

Part A 総論

1 パーキンソン病の200年

1.James Parkinson(1755--1824)以前のパーキンソン病の記載

2.James Parkinsonの"An Essay on the Shaking Palsy"とJean--Martin Charcot

3.パーキンソン病に関するその後の発展

4.なぜレビー小体は欧米ではドイツ語読みでなくルイボディと呼ばれるのか

5.日本におけるパーキンソン病の歴史

2 パーキンソン病の疫学

1.世界におけるパーキンソン病の疫学

2.我が国におけるパーキンソン病の疫学

3.パーキンソン病の死亡率

3 パーキンソン病の環境因子

1.パーキンソン病の疫学

2.パーキンソン病発症に影響を与える環境因子

4 パーキンソン病の臨床亜型

1.臨床亜型

2.遺伝子による亜型

3.パーキンソン病の臨床亜型に関する最新の研究

5 パーキンソン病の運動症状の発見とその後

1.振戦

2.寡動

3.筋強剛

4.姿勢保持障害と突進現象

6 パーキンソン病の非運動症状の発見とその後

1.非運動症状の種類

2.非運動症状の評価方法

Part B 病理・病態

1 病理からみたパーキンソン病の進展過程(Braak仮説と臨床)

1.Braakステージ

2.病理学的な進展

3.Braak仮説

4.胎児脳黒質移植からの伝播

5.凝集蛋白質の細胞間伝播

2 パーキンソン病の病態生理

1.ミトコンドリア機能障害と加齢変化

2.蛋白分解系とリソソーム機能障害

3.α--シヌクレインとプリオン仮説

4.選択的ドパミン神経細胞障害

3 パーキンソン病における神経回路

1.大脳皮質-基底核のループ構造

2.ネットワークからみた病態生理

3.形態学的変化について

4 パーキンソン病と関連遺伝子

1.常染色体優性遺伝

2.常染色体劣性遺伝

Part C 診断

1 パーキンソン病の診断基準

1.James Parkinson(1817年)とJean--Martin Charcot(1888年)

2.英国ブレインバンク(British Brain Bank: BBB)診断基準(1988年)

3.Wardら(1990年),Calneら(1992年),Larsenら(1994年)の診断基準

4.厚生省特定疾患神経変性疾患調査研究班パーキンソン病診断基準(1995年)

5.Gelbらのパーキンソン病診断基準(1999年)

6.MDS診断基準(2015年)

2 レビー小体型認知症の診断基準

1.DLBの臨床診断基準(2017)

2.DLBの臨床症状

3.指標的バイオマーカー

4.支持的バイオマーカー

3 Prodromal Parkinson病

1.Prodromal PDの概念が確立する上で重要な病変の進展様式の歴史

2.Prodromal PDの診断基準を作成する上での前提

3.MDS prodromal PD研究診断基準

4.Prodromal PD診断基準の感度・特異度

5.Prodromal PD診断基準の課題

4 パーキンソン病の神経形態画像

1.MRIの形態画像

2.神経メラニン画像

3.MRIの定量的評価: voxel--based morphometryなど

4.拡散強調画像

5.Magnetic resonance spectroscopy

6.Functional MRI

7.経頭蓋黒質超音波

5 パーキンソン病の神経機能画像

1.DATイメージング

2.MIBG心筋シンチグラフィ

3.脳血流SPECT 126

6 パーキンソン病におけるバイオマーカー

1.生化学的バイオマーカーの開発

2.疾患関連蛋白などのバイオマーカー候補の検討

3.網羅的解析

4.将来有望であるバイオマーカー

7 パーキンソン病と神経変性疾患のパーキンソニズム

1.多系統萎縮症

2.進行性核上性麻痺

3.大脳皮質基底核変性症

Part D 歩行・姿勢・嚥下

1 パーキンソン病の歩行障害のメカニズム ―歩行発現の生理機構から考える―

1.運動のカテゴリー

2.運動発現のメカニズム

3.姿勢の制御の神経機構

4.歩行運動の神経機構

5.パーキンソン病の歩行障害―生理学的機構の何が障害されているか

2 パーキンソン病におけるすくみ足と転倒

1.すくみ足の機序

2.すくみ足の診察・評価

3.すくみ足の治療

4.転倒の機序

5.すくみ足・転倒の客観的評価(ウェアラブルデバイスの使用)

3 パーキンソン病におけるCamptocormia(前屈症)

1.はじめに: パーキンソン病における姿勢異常

2.Camptocormia(前屈症,腰曲がり,bent spine syndrome,anteroflexion): 言葉とその歴史

3.疫学

4.原因

5.診断と評価

6.関連因子

7.薬剤の影響

8.Bent knee and tiptoeing

9.CamptocormiaがPDに及ぼす身体的影響

10.治療

4 パーキンソン病におけるPisa症候群

1.パーキンソン病の姿勢異常

2.臨床概念の確立

3.頻度

4.臨床的特徴

5.病態

6.治療

5 パーキンソン病におけるdropped head

1.症状

2.診断と定義

3.歴史と疫学

4.危険因子

5.発現機序

6.治療

6 パーキンソン病における嚥下障害

1.嚥下障害の特徴

2.嚥下障害のスクリーニング

3.パーキンソン病の嚥下障害の治療

Part E 非運動症状

[自律神経障害]

1 パーキンソン病と消化管障害

1.消化管症状・検査

2.病態生理

3.治療

2 パーキンソン病と下部尿路機能障害(膀胱機能障害)〈内山智之 榊原隆次 桑原 聡 平田幸一〉

1.下部尿路症状(LUTS)と下部尿路機能障害(LUTD)

2.パーキンソン病におけるLUTS/LUTD

3.パーキンソン病のLUTSについて

4.パーキンソン病のLUTDについて

5.パーキンソン病のLUTSをきたす病態

6.パーキンソン病におけるLUTDの病態生理学的な機序

7.パーキンソン病のLUTDの治療

3 パーキンソン病における起立性低血圧

1.歴史的経緯

2.起立性低血圧の生ずる病態

3.パーキンソン病における起立性低血圧の臨床的な特徴

4.パーキンソン病における起立性低血圧と認知機能

5.起立性低血圧の非薬物療法

6.起立性低血圧の薬物療法

[認知]

4 パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症における認知機能と軽度認知障害

1.初期の検討

2.皮質下性認知症

3.レビー小体病

4.パーキンソン病認知症とレビー小体型認知症の臨床的特徴

5.パーキンソン病における軽度認知障害の位置づけ

5 パーキンソン病におけるアセチルコリンと認知機能・嗅覚障害

1.アセチルコリンの発見

2.中枢神経でのコリン作動性ニューロン

3.認知機能低下とコリン作動性ニューロン

4.パーキンソン病と認知機能低下

5.パーキンソン病のアセチルコリン系神経の機能低下

6.パーキンソン病の嗅覚低下とアセチルコリン

7.パーキンソン病治療とアセチルコリン系薬剤

6 パーキンソン病における運動と認知機能

1.パーキンソン病に合併する認知症の歴史的背景

2.運動の一般的神経保護効果

3.正常高齢における活動度・運動と認知機能の関連

4.パーキンソン病認知機能への運動介入研究

5.運動によるパーキンソン病認知症での異常蛋白蓄積抑制

[感覚]

7 パーキンソン病における痛み・感覚障害

1.疫学

2.臨床症状

3.疼痛の評価方法

4.疼痛の経過

5.疼痛の機序

6.治療

8 パーキンソン病における視覚障害

1.網膜の障害

2.視覚障害と幻視

[精神]

9 パーキンソン病のうつ・アパシー・アンヘドニア

1.パーキンソン病の気分障害

2.パーキンソン病にみられるうつの病態生理

3.アパシーとパーキンソン病の認知機能との関連

4.パーキンソン病のうつの評価

5.パーキンソン病のうつの治療

10 パーキンソン病精神病

1.パーキンソン病精神病とは

2.パーキンソン病精神病の頻度

3.パーキンソン病精神病の症候

4.パーキンソン病精神病の危険因子と病態

5.パーキンソン病精神病の対応

11 パーキンソン病における不安・パニック障害

1.不安・パニック障害の頻度

2.不安・パニック障害の評価尺度

3.パーキンソン病における不安・パニック障害の特徴

4.パーキンソン病における不安・パニック障害の病態

5.パーキンソン病における不安・パニック障害の治療

12 機能性(心因性)パーキンソニズム

1.ヒステリーの歴史的背景

2.ヒステリーから機能的神経症状症(FNDs)への変遷

3.疫学

4.臨床症状と診断

5.治療

6.予後

[睡眠]

13 パーキンソン病における睡眠障害

1.パーキンソン病の睡眠障害の病態生理

2.パーキンソン病の睡眠障害の捉え方

3.パーキンソン病における不眠

4.パーキンソン病における日中の眠気

5.パーキンソン病におけるrestless legs syndrome/周期性四肢運動障害

6.パーキンソン病における睡眠時無呼吸症候群

7.概日リズム障害

14 パーキンソン病とレム睡眠行動障害

1.レム睡眠行動障害とは

2.パーキンソン病でのレム睡眠行動障害の合併

3.レム睡眠行動障害とパーキンソン病の共通性

4.パーキンソン病の診断におけるレム睡眠行動障害の意義

5.パーキンソン病におけるレム睡眠行動障害合併の影響

6.レム睡眠行動障害の治療

Part F 治療

1 パーキンソン病におけるプラセボ効果

1.パーキンソン病治療薬の臨床試験におけるプラセボ効果

2.プラセボ効果の機序

3.Lessebo効果

4.臨床試験からプラセボ効果を排除することは可能か

2 レボドパの歴史:その光と影

1.ドパミン(DA)の発見

2.レボドパの歴史

3.レボドパはなぜパーキンソン病治療のゴールド・スタンダートなのか

4.Cotziasの報告以降のレボドパの歴史: 副作用・運動合併症の克服への道

5.レボドパとレボドパ代謝補助剤の配合薬

6.レボドパ新剤型の開発

7.レボドパの神経毒性に関して

8.レボドパの疾患進行修飾効果の有無

9.レボドパ治療開始時期の考え方

10.レボドパ治療時の運動合併症の治療

3 ドパミンアゴニストの歴史:その光と影

1.ドパミンアゴニストの開発の歴史

2.ドパミンアゴニストの有効性

3.ドパミンアゴニストの副作用

4 パーキンソン病治療補助薬:その功罪

1.カテコール--O--メチル基転移酵素(COMT)阻害薬

2.モノアミン酸化酵素B(MAO--B)阻害薬

3.ゾニサミド

4.イストラデフィリン

5.抗コリン薬

6.アマンタジン

7.L--スレオドプス

5 パーキンソン病に対する脳深部刺激療法(DBS)

1.DBSの歴史

2.DBSの機序

3.DBSの長期効果と有害事象

4.STN--DBSの長期予後

5.GPi--DBS

6.DBSの導入時期

7.ターゲット選択: STNかGPiか

8.今後のDBS治療の展望

6 パーキンソン病における行動障害

1.症状

2.異常行動の評価法

3.頻度

4.危険因子

5.発現機序

6.治療

7.予防

7 Levodopa--induced dyskinesia: 病態と治療

1.Levodopa--induced dyskinesiaの臨床症候

2.Levodopa--induced dyskinesiaの機序

3.Levodopa--induced dyskinesiaの治療

8 パーキンソン病のQuality of Life

1.QOL概念の変遷

2.J. Parkinsonの原著とHRQOL

3.HRQOLの測定

4.運動症状とHRQOL

5.非運動症状とHRQOL

6.その他の因子とHRQOL

7.多職種ケアおよび薬物による介入とHRQOL

8.介護者のHRQOL

9.レスポンス・シフトについて

9 パーキンソン病の腸内細菌

1.パーキンソン病の消化管機能

2.消化管のα--シヌクレイン

3.消化管α--シヌクレインと中枢神経系とのつながり

4.腸内細菌叢との関係

5.腸内細菌叢の解析

6.大腸以外の消化管の細菌の問題

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書籍情報

  • ISBN:9784498328464
  • ページ数:426頁
  • 書籍発行日:2020年1月
  • 電子版発売日:2020年1月10日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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