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本書を手にした方々へ

本書は医療英会話を本気で学びたい方のために作られました．研究留学や臨床留学を目指す医師や看護師をはじめ，すべての医療従事者の方のみならず，医療や医学に関する英会話を習得したいと思う方々にとって貴重な一冊となることでしょう．

最近，日常英会話に堪能な人がたくさん増えてきました．だから，「医療英会話なんて形だけかっこよくて，実は普通の英会話と変わらないんじゃないの？」とか，「専門用語と日常英会話ができれば，簡単にできるじゃん！！」と思っている皆さん，それは注意したほうがいいですよ．

医療英会話ははっきり言って「難しい」のです．実際の医療現場では，専門用語と日常英会話だけ知っていてもあまり役に立ちません．なぜでしょうか．

私の経験から3つのことが挙げられます．

まず医療現場ではいつも日常会話と医療会話が交錯しています．医療のプロと素人である患者が常に存在するからです．そのため，専門用語からlay term（素人でも理解できる言葉）へ変換できる能力が常に求められます．

次に，現場ではいつも専門用語の省略形が多用されているため，それらを知らなければ話についていけません．

さらに，各国で医療システムが違うので，それに合わせた医療従事者の役割を理解しなければ話がわかりません．

このような視点をもとに書かれた本を皆さんは見たことがありますか．
本書はこの3つの点を一緒に学んでしまおうというとても欲張りな本なのです．本を開いてあまりの難しさに尻込みをしないでくださいね．ここに出てくる単語や内容は実際に北米の病院で医師や看護師など医療従事者が日常茶飯事使っているものばかりです．せっかく時間とお金をかけて留学しようと準備しても無駄足だったということがないように，到達すべき目標を明確にしてください．逆に，本書を開いてみてほとんどの会話の単語や内容がわかるという方は，すでに十分な医療英会話の知識と能力が身についていますので，安心してください．しかし，読むと聞くでは大違い！付属CDでリスニングの力をぜひ試してみてください．

というのは，本書ではシャドーイングという新しい学習法を取り入れました．（詳しい方法は後述参照）シャドーイングを使った医療英会話の本を今までに見たことがありますか？英会話は聞いて話せてはじめて意味があります．その効果的な学習方法としてシャドーイングが今，注目されているのです．ですから，付属CDを利用して皆さんに是非このスキルを身につけてほしいと願っています．実際の会話スピードに脳を慣らして一気に自分のものとしてしまいましょう．

でも，難しいだけでは飽きてしまいますし，長続きしません．だから，ちょっとしたジョークを交えて少しでも楽しく学習できるよう工夫をしてみました．

本書では病院を舞台に，医師，看護師，コメディカル，患者などのキャラクターが登場します．それぞれのキャラクターがしゃべる医療会話を通して物語は作られていきます．会話にはたくさんの医療トピックが散りばめられており，英語学習だけでなく，臨床医学でも役立つ知識を身につけることができます．

また，物語を読み終えると1200語以上の医療単語を自然と身につけたことになります．皆さん，どうでしょうか．このように見てみると，本書は一冊であらゆる機能を兼ね備えた万能学習書だということがおわかりいただけたでしょうか．

さあ，私たちと一緒に冒険する準備は整いましたか？難しいなかも「楽しく」冒険し，遊び尽くしてもらえたら，このうえない幸せです．

Good Luck!
伊藤 彰洋
2008年6月