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- 腹腔鏡下肝切除術 DVD-Video付属(術式映像)
商品情報
内容
さらに4症例の術式ダイジェスト映像を収録し、肝臓外科医必携の一冊である!
序文
先進医療として特定施設で実施されてきた腹腔鏡下肝切除が,2010年4月に保険収載されました.今後は多くの施設で実施されるべき手術手技であり,安全に普及されるためにも本手技の定型化・標準化がいま求められます.そこでこの度,肝臓内視鏡外科研究会が監修を行い,腹腔鏡下肝切除の安全な普及を目指して,そのすべてを解説した本邦初のガイド本を刊行するはこびとなりました.
本書では,術式別手術手技についてのカラー写真を数多く用いて,経験症例数の多い肝臓内視鏡外科研究会の世話人の先生方に解説していただきました.また,付属のDVD-Videoには,「腹腔鏡下肝部分切除」,「腹腔鏡下肝外側区域切除」,「腹腔鏡下肝右葉切除」,「腹腔鏡補助下肝右葉切除」のポイントをまとめた手術映像を収録しています.
本書が腹腔鏡下肝切除の安全な普及に大いに役立つことを願っています.
さて,発刊にあたり個人的な思いを少し書かせていただきます.私自身が腹腔鏡下肝切除を始めたのは,今から15年前の1995年7月,慶應義塾大学外科での初めての腹腔鏡下肝切除術です.当時の慶應義塾大学外科は北島政樹教授が内視鏡外科を教室の方向性の一つとして掲げ,故大上正裕先生が中心となり積極的に内視鏡外科手術を行っていました.大上正裕先生は,私が学生時代から敬愛した先輩であり,私も所属した慶應義塾大学医学部国際医学研究会の創始者であります.
国際医学研究会は,医学部の教員を団長とし医学部6年生3~4名で構成する南米派遣団を毎年の夏休みに送り,南米の日系移住地やサンパウロ大学医学部などの施設で活動を行う学生団体です.この国際医学研究会に入会するには医学部5年生までに,主に体育会系のクラブ活動で活躍したことが条件で,前年度の南米派遣団員からの推薦を受けて入会するシステムになっています.したがって,国際医学研究会のメンバーは自ずと積極的で体力と協調性のある面々となり,現在までに慶應義塾大学医学部の教授を含めて全国に12名の教授を輩出しています.故大上正裕先生がそんなことを意図してつくった国際医学研究会ではないと思いますが,故人が慶應医学に残した功績は非常に大きいと考えています.私の場合,1981年に国際医学研究会第4次南米派遣団の団長であった故石井裕正先生(慶應義塾大学名誉教授)と一緒に南米を旅したことが,肝臓外科医を志したきっかけにもなりました.
一方,大上正裕先生が内視鏡外科に与えた影響も大きなものがあります.1990年7月に川崎市立川崎病院で国内3例目の腹腔鏡下胆嚢摘出術を行い,その後は世界最初の動脈管開存症に対する閉鎖術,早期胃癌に対するLesion Lifting法切除術,巨大食道憩室切除術,国内最初の大腸癌切除,経胆嚢管的総胆管結石切石術など,内視鏡外科黎明期において国内で中心的役割を演じたことに誰も異論はないと思います.大上正裕先生は同僚と後輩を励まし,内視鏡外科手術を積極的に導入するように勧めました.大腸外科は渡邉昌彦先生(現北里大学外科教授)に,胃外科は故大谷吉秀先生(前埼玉医科大学外科教授)に,食道外科は小澤壯治先生(現東海大学外科教授)に,そして肝胆膵・脾外科は私にと内視鏡外科手術技術を伝授し,その分野での専心の機会を与えてくれました.「肝臓外科も将来は必ず内視鏡外科手術が導入されるから,おぬし(彼の口癖でした)も準備しておくとよいよ」と励まされたことを今でも鮮明に覚えています.
私たちにとって初めて腹腔鏡下肝切除を実施したのは,渡邉昌彦先生がその1年半前に大腸癌を腹腔鏡補助下に切除したオペラ歌手の患者さんでした.ご本人が腹腔鏡下手術の利点をよく理解しており,肝切除も是非とも腹腔鏡下に行って欲しいと希望されました.転移巣はS3に位置し,比較的切除しやすそうに見えました.当時,東邦大学大森病院の金子弘真先生はすでに腹腔鏡下肝切除を何例か成功させていましたので,以前より懇意だったこともあり,手術ビデオをお借りして十分に手術シミュレーションを行いました.手術は大上正裕先生と島津元秀先生(現東京医科大学八王子医療センター外科教授)にお手伝いいただき,無事に腹腔鏡下に転移巣を切除できました.患者の思いが外科医を動かし,この困難な手術を成功させたのだと思います.術式は外科医の経験とともに,患者や時代のニーズによって変遷するものでしょう.私自身にとって,この手術が定着して広く普及する術式になると確信できたのはだいぶ後のことです.
このような経緯も相俟って,本書は私にとっても肝臓内視鏡外科研究会にとっても,非常に意義深いものになりました.本書が広く流通し,腹腔鏡下肝切除を始める外科医が少しでも増えれば,企画編集したものとして望外の喜びです.
最後に,本書の完成まで滞ることのない編集作業をしていただいた,故石井裕正先生のご子息でもある南山堂の石井裕之氏に心からの感謝の気持ちを申し上げたいと思います.
2010年8月
若林 剛
目次
腹腔鏡下肝切除術の歴史と現況
■腹腔鏡下肝切除術の初期
■腹腔鏡下肝切除術の現況
■腹腔鏡下肝切除術の術式と適応の変遷
■内視鏡下肝切除における手技と器材の歴史
■腹腔鏡下肝切除術の今後
第I章 適応と基本的手技
1.適応─疾患・腫瘍条件・肝予備能─
A 疾患としての適応
1.良性疾患に対する腹腔鏡下肝切除術
2.悪性疾患に対する腹腔鏡下肝切除術
B 腫瘍条件および切除術式としての適応
C 肝予備能
2.アプローチ法
A 定 義
B 適応と方法
1.完全腹腔鏡下手術
2.用手補助腹腔鏡下手術(HALS)
3.Hybrid(腹腔鏡補助下手術)
3.体位とトロッカー挿入位置
A 手術室内での各種器材の配置とセッティング
B 体 位
C トロッカー挿入位置
1.肝外側区域の授動操作を伴う腹腔鏡下肝切除術
2.肝右葉の授動操作を伴う腹腔鏡下肝切除術
3.肝右葉や外側区域の授動を行わない腹腔鏡下肝切除術
4.再肝切除症例に対する腹腔鏡下肝切除術
4.腹腔鏡下肝授動術
A 手技のポイント
1.基本体位は左半側臥位
2.「内側から外側へ」,「頭側から足側へ」
B 手術手技
1.トロッカー挿入位置
2.使用器具
3.外側葉授動
4.右葉授動
5.尾状葉授動
5.肝実質切離に用いる手術器具
A 腹腔鏡下肝切除術における手術器具の重要性
B 手術器具の機能から見た選択
C 低侵襲性肝切除のアプローチから見た手術器具の選択
D 肝実質切離の深度から見た手術器具の選択
E 熱源から見た手術器具とそれぞれの特徴
1.超音波手術器具
2.マイクロ波手術器具
3.ラジオ波手術器具
4.アルゴンビーム凝固装置
6.グリソン鞘と血管の処理
A プリングル法
B 肝門部での各グリソン枝のテーピングと切離
1.尾状葉枝
2.右グリソン本幹
3.左グリソン本幹
4.右前後グリソン枝
C 肝静脈の処理
1.肝内処理
2.肝外処理
第II章 術式別の手術手技
1.部分切除
A 手術適応
B 手術アプローチの選択
C 手術に必要な器材
D 手術手技の実際
E 腹腔鏡下肝部分切除における注意点
F 腹腔鏡下肝部分切除の成績
2.外側区域切除
A 手術適応
B 手術手順
1.体位とトロッカー挿入位置
2.肝外側区域の授動
3.肝切離
4.グリソン鞘と左肝静脈の処理
5.切除肝の回収と止血
3.左葉切除
A 手術適応
1.適 応
2.体位とトロッカー挿入位置
3.超音波検査
4.胆嚢摘出
B 完全腹腔鏡下肝左葉切除
1.肝授動操作
2.肝門部処理操作
3.肝実質切離操作
4.小開腹と検体の回収
C 腹腔鏡補助下左葉切除
1.肝授動操作
2.肝門部処理と肝実質切離操作
3.検体の回収
4.右葉切除
A 手術適応
1.適 応
2.体位とトロッカー挿入位置
B 腹腔鏡補助下肝右葉切除
1.胆嚢摘出術と肝の授動
2.小開腹と肝静脈の露出
3.グリソン鞘と下大静脈前面のテーピング
4.肝離断とグリソン鞘の処理
5.肝静脈の処理
6.切除肝の回収と止血
C 完全腹腔鏡下肝右葉切除
1.胆嚢摘出術と肝の授動
2.グリソン鞘の結紮
3.肝離断とグリソン鞘の処理
4.肝静脈の処理と切除肝の回収
5.腹腔鏡補助下ドナー肝切除
A グラフト選択
B 手術手技
1.腹腔鏡補助下ドナー肝右葉切除
2.腹腔鏡補助下ドナー肝左葉尾状葉切除
C 術後経過
6.ロボット肝切除
A 手術適応
1.肝機能から見た適応基準
2.術式から見た適応基準
3.適応疾患
B 必要器材
1.da Vinci SHD Surgical System
2.エンドリスト
3.VIO電気メスシステム
4.腹腔鏡用超音波探触子
C 手術室のセッティング
D 施行症例
E 症例提示と手術手技
1.症 例
2.手術手技
F da Vinci SHD Surgical Systemの利点
7.その他の手術術式
A 腹腔鏡下後区域切除
1.完全腹腔鏡下手術
2.用手補助および腹腔鏡補助下手術
B 腹腔鏡下前区域切除
C 腹腔鏡下亜区域切除
D 内視鏡下凝固療法
第III章 術中・術後のトラブルと回避法
1.出 血
A 肝切離前
1.標準解剖の把握
2.症例における脈管走行の把握
3.術中超音波検査の意義
4.実際に出血しやすい部位
B 肝切離中
1.Pre-coagulationの意義
2.Inflow,Outflowのコントロール
3.出血時の対応
4.系統的切除の肝静脈露出
5.気腹圧との関係
C 肝切離後
2.他臓器損傷
A 発生頻度
B ポートサイト出血の対策と対応
C 心嚢・横隔膜損傷の対策と対応
D 小腸穿孔の対策と対応
E 結腸穿孔・壊死の対策と対応
F 下大静脈狭窄の対策と対応
3.ガス塞栓
A 腹腔鏡下肝切除術とガス塞栓
B アルゴンガス塞栓
1.アルゴンビーム凝固装置
2.アルゴンガス塞栓症例
C ガス塞栓の回避法
4.自動縫合器関連
A グリソン鞘に対する自動縫合器の使用
B 肝静脈に対する自動縫合器の使用
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書籍情報
- ISBN:9784525313418
- ページ数:118頁
- 書籍発行日:2010年10月
- 電子版発売日:2012年1月28日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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