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- わかる!つかえる!なおせる! 消化管症候への漢方薬
商品情報
内容
全面カラーで患者イラストや漢方薬の特徴を図で掲載!わかりやすい漢方薬の解説に症例を提示することで,どのような患者さんに処方できるかがイメージしやすく,選べるようにまとめた.「食欲不振・嘔吐・下痢・便秘」などに使える漢方薬を解説しているため,内科・消化器領域だけではなく,外科やがん・緩和領域でも使える1冊である.
序文
序
❖ 発刊までの経緯と本書の構成
2010年に上梓した『漢方処方と方意』のコンセプトである「漢方方剤をできるだけやさしく,漢方医学を学んでいない人でも理解できるように」という思いを引き継いで2014年に『症候別漢方治療論』を立ち上げた.好評を得た同シリーズだが,読者に,より親しみを持っていただきたいという思いから,書名を変更することに至った.今回は消化管に注目し,『わかる! つかえる! なおせる! 消化管症候への漢方薬』として発刊する運びとなった.
個々の処方を習得することは一方で重要であるが,実際に患者を目前にしたときに種々の方剤が浮かび鑑別できることも臨床上必須である.『漢方処方と方意』が方剤特徴を個々に明示する経糸とすれば,『症候別漢方治療論』と本書は方剤を類別包括する緯糸に相当するものである.両著を融合して咀嚼吟味すること,すなわち経糸と緯糸が秩序正しく織り重なることで,診療・服薬指導といった臨床力が大きく増進するであろう.
本書は,『症候別漢方治療論』と同様に,総論と各論から構成されている.総論では,まず西洋医学的な疾病のとらえ方を提示した.続いて,初心者にも理解しやすいように漢方医学的なとらえ方を解説し,さらに診療において必要な方剤に容易にたどりつけるよう,症状・病態から方剤を鑑別するチャートを掲載した.
各論では,1方剤を4ページで解説した.1ページ目に,患者の特徴を表したイラストを掲載することで,どのような病態に適応される方剤なのかをイメージしやすくし,その構成生薬の作用を簡潔に解説した.2ページ目の前半では患者の症例を示し,後半には漢方薬を西洋薬でイメージする表を挿入した.ご存じのとおり,漢方薬は複数の生薬から構成されているためいろいろな症状に対応できることが大きな特徴だが,1対1対応の西洋薬の考え方に慣れてしまい,複数の作用を持つ漢方薬の処方・服薬指導を苦手とする医師・薬剤師は少なくない.そのため,普段使い慣れている西洋薬とその作用を有する生薬を表にまとめることで,方剤の効能をイメージできるように工夫した.3ページ目には症例の経過を提示し,4ページ目にはアドバンスコースとして漢方医学的な病態のとらえ方を解説した.
このように,本書は医師・薬剤師が知りたい内容をできる限り簡素に盛り込むよう努力し,「その症候の漢方治療はこの1冊を見れば足りる」といえるようにまとめたものであり,今後も続けて発刊していきたいと考えている.本書が多くの医師・薬剤師のお役に立つならば,これほど嬉しいことはない.ぜひ『症候別漢方治療論』も含めて,すべて通して手にとっていただきたい.
❖ 消化管症候の漢方治療
本書では,消化器,特に上部消化管,下部消化管に関する症候を取り上げた.当初は,上部消化管,下部消化管を各々1冊として発刊することを考えていたが,消化管症候では,胃・小腸・大腸などの臓腑全体のバランスを把握することが大切なため,両者をまとめた構成にした.
消化管症候に対する西洋医学的診断・治療は,急速に発展してきている.器質的病変には,西洋医学的アプローチは欠かせない.しかし,このような治療では十分な改善をみないことも多々ある.消化管機能を改善させる漢方薬は多数あるので,漢方治療も試すべきであろう.また,臨床研究において,消化管症候に対する漢方治療の有効性も多く提示されている.
漢方医学では,虚実・寒熱・表裏など,西洋医学とは全く異なった視点から詳細に患者の病態を把握して治療が行われる.そこには,患者一人ひとりに,よりきめ細かく適する方剤を選ぶという治療者の姿勢がある.エビデンスに対する理解も深めつつ,多くの医師・薬剤師の先生方に本書を活用していただければ幸いである.
最後に,本書は医療法人養生院 清川病院薬剤科科長 吉野佳代子先生と,横浜薬科大学薬学部漢方薬学科漢方薬物学研究室で学んだ学生たちの多大な協力によって生まれたものである.また,渾然とした記述を纏め上げるにあたっては,南山堂編集部の大城梨絵子氏の卓越した能力によるところが多大である.ここに謹んで謝意を表したい.
2017年6月
石毛 敦・西村 甲
目次
第1章 漢方治療入門
1 西洋医学からみた消化管症候
2 消化管症候の漢方治療
3 気血水理論・臓腑理論による漢方薬の選択
『胸やけ』の処方選択
『食欲不振』の処方選択
『悪心・嘔吐』の処方選択
『胃痛』の処方選択
『腹痛・下腹部痛』の処方選択
『便秘』の処方選択
『下痢』の処方選択
『痔』の処方選択
第2章 漢方治療の実際
● 患者イラストの見方
● 病態解説の見方
❖『胸やけ』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
半夏瀉心湯
○患者の特徴:中間証で,上腹部膨満感を伴う胸やけ・呑酸のある人
要因を改善する漢方薬
茯苓飲
○患者の特徴:水様嘔吐,上腹部膨満・胃内停水(胃がぽちゃぽちゃして振水音がある)を伴う胸やけ・胃痛のある人
茯苓飲合半夏厚朴湯
○患者の特徴:喉の異物感や腹部膨満がはなはだしい,または精神状態により影響されやすい人
❖『食欲不振』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
十全大補湯
○患者の特徴:胃腸のみならず,倦怠疲労感などの全身虚弱症状が顕著であり,顔色は青白くて,艶がない人
清暑益気湯
○患者の特徴:気力がなく,疲れやすく,口渇・熱感がある人
大柴胡湯
○患者の特徴:上部消化管の食欲不振や嘔吐,下部消化管の便秘を呈する停滞性病変が同時に発症している人
人参養栄湯
○患者の特徴:顔色に艶がない,胃腸機能の低下に加え不眠,動悸,または慢性の咳,息切れなどの症状のある人
平胃散
○患者の特徴:胃部振水音や上腹部膨満感のある食欲不振,または食べ過ぎによる食欲不振の人
補中益気湯
○患者の特徴:体力が低下して疲れやすい,内臓下垂や慢性下痢・多汗傾向のある人
六君子湯
○患者の特徴:胃腸が弱く,腹部膨満感があり,消化不良や胃内停水(胃がぽちゃぽちゃして振水音がある)になりやすい人
要因を改善する漢方薬
四君子湯
○患者の特徴:疲れやすく胃腸が弱い,消化不良になりやすい人
小柴胡湯
○患者の特徴:諸種の炎症や感染症に伴う発熱・食欲不振・嘔吐,あるいは非感染性疾患でうつうつ気分・胸脇苦満を伴う食欲不振のある人
❖『悪心』『嘔吐』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
茵蔯五苓散
○患者の特徴:勢いが激しい水様嘔吐,口渇があり,尿量減少のある人
呉茱萸湯
○患者の特徴:虚寒体質で胃腸系が弱く,冷えで頭痛が増悪して乾嘔する,またはお腹が冷えて嘔吐する人
小半夏加茯苓湯
○患者の特徴:胸腹部につかえ感があり,軽症なめまいや動悸を伴う突然嘔吐,または胃内停水(胃がぽちゃぽちゃして振水音がある),口渇・水様嘔吐を伴う人
二陳湯
○患者の特徴:平素より唾液や痰が多い,またはめまい・動悸がしやすい,胃部振水音や舌に歯痕を認める人
要因を改善する漢方薬
胃苓湯
○患者の特徴:かぜ,暑気あたり,飲食不節による水瀉様嘔吐・下痢,口渇・尿量減少を伴い,胃内振水音,上腹部膨満感を認める人
柴胡桂枝湯
○患者の特徴:かぜが長引き,身痛や吐き気があり,お腹の冷えを伴う発作的な腹痛のある人
半夏厚朴湯
○患者の特徴:飲み込めず,吐き出せないような咽喉部の異物感があり,多愁訴で,諸症は情緒の起伏により変動するが,飲食は普通に取れる人
❖『胃痛』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
安中散
○患者の特徴:呑酸や胸やけを伴う胃痛・腹痛があり,冷えで症状が増悪する人
黄連解毒湯
○患者の特徴:口内炎や口臭,口渇を伴い,胃内視鏡検査ではびらんや赤みの強い炎症性変化のある人
黄連湯
○患者の特徴:中間体質,冷えのぼせの傾向があり,上腹部のつかえ(停滞感)が顕著で下痢がある人
四逆散
○患者の特徴:胸脇苦満や腹部膨満があり,諸症は精神状態で変動する傾向がある人
人参湯
○患者の特徴:気力がない,手足やお腹が冷えやすい人
❖『腹痛』『下腹部痛』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
桂枝加芍薬湯
○患者の特徴:顔色が悪く,やや冷えを伴い,腹直筋が緊張している腹痛を伴う人
大建中湯
○患者の特徴:気力がなく,腹部の冷えがあり,顔色は青白く,寒冷が上下内外を満たしていて腹痛が激しい人
当帰建中湯
○患者の特徴:腹部の冷え,引きつるような腹痛があり,顔色に艶がない人
当帰四逆加呉茱萸生姜湯
○患者の特徴:虚弱体質で冷え症,冬にはしもやけができやすく,慢性疾患による寒冷で腹痛を発症する人
当帰湯
○患者の特徴:比較的体力の低下があり,顔色が悪く,冷えにより増悪する腹痛・月経痛のある人
要因を改善する漢方薬
小建中湯
○患者の特徴:倦怠無力の虚弱体質で,腹部の痙攣性疼痛を伴う人
大黄牡丹皮湯
○患者の特徴:体力があり,腹部の疼痛・圧痛・抵抗があって,はなはだしい場合は高熱がある人
❖『便秘』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
桂枝加芍薬大黄湯
○患者の特徴:腹部緊張・膨満感が強く,腹部に圧痛がある人
三黄瀉心湯
○患者の特徴:ガッチリした体格で,赤ら顔やのぼせ,便秘傾向の諸出血,頭痛,あるいは焦燥などを伴う人
潤腸湯
○患者の特徴:やや体液が減少傾向の高齢者,または産後の常習性便秘で,硬くコロコロした便が特徴の人
大黄甘草湯
○患者の特徴:体力中等度以上,軽度または中等度の便秘の人
大承気湯
○患者の特徴:体格頑丈で,腹満・腹脹を伴う硬く乾燥した便の常習性便秘の人
調胃承気湯
○患者の特徴:体力は中等度以上で,慢性便秘であり,腹満・腹脹を伴わないコロコロ便または残便感(軽度便秘)のある人
通導散
○患者の特徴:便秘傾向で,気滞または瘀血の疼痛性疾患を持ち,皮膚粘膜が暗紫色あるいは青黒い人
桃核承気湯
○患者の特徴:ガッチリした体格で,硬便または黒便であり,下腹部に抵抗・圧痛のある人
防風通聖散
○患者の特徴:顔が赤く,目が充血しやすく,腹は肥満で充実している人
麻子仁丸
○患者の特徴:便通が数日間もないのに腹満がみられない弛緩性便秘(兎糞状便)の人
要因を改善する漢方薬
加味逍遙散
○患者の特徴:憂うつ気分で,情緒の起伏が大きく,不定愁訴が多い,便秘の人
当帰湯
○患者の特徴:顔色が悪く,比較的体力の低下,冷えと腹痛を伴う便秘の人
❖『下痢』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
黄芩湯
○患者の特徴:口が苦い,テネスムス(しぶり腹)や腹痛を伴う炎症性熱性下痢の人
啓脾湯
○患者の特徴:気力がなく,疲れやすく,食べるとお腹が張り,水様便または泥便のような慢性下痢のある顔色が悪い人
五苓散
○患者の特徴:かぜまたは飲食不節による急激な水様嘔吐・下痢,あるいは尿量減少・浮腫に伴う下痢の人
柴苓湯
○患者の特徴:胸脇苦満や水様嘔吐,尿量減少を伴う水様下痢の人
要因を改善する漢方薬
真武湯
○患者の特徴:虚弱で冷える体質で,平素より慢性消化器系疾患や泌尿器系疾患の持病がある人,または下痢しやすく,尿量減少,浮腫を伴う人
❖『痔』に用いられる漢方薬
適応がある漢方薬
乙字湯
○患者の特徴:肛門部瘙痒,便秘傾向のある痔疾・脱肛の人
桂枝茯苓丸
○患者の特徴:下腹部に抵抗・圧痛を伴う慢性痔疾患である人,または肌はやや浅黒いなどの瘀血傾向がある人
当帰芍薬散
○患者の特徴:色白で,下痢やむくみを伴う痔疾患,特に妊娠,産後,月経期に増悪し,腫れ・疼痛を伴う痔の人
要因を改善する漢方薬
麻杏甘石湯
○患者の特徴:痔の嵌頓,または喘息や咳などの呼吸器系疾患を伴う痔の人
参考文献
付録 漢方用語解説
医療用漢方製剤を取り扱っている主な製薬会社
索引
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書籍情報
- ISBN:9784525470715
- ページ数:250頁
- 書籍発行日:2017年6月
- 電子版発売日:2019年3月8日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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