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京大人気講義シリーズ 健康・医療の情報を読み解く 第2版

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2014年4月
  • 電子版発売日 : 2019年7月5日
2,200
(税込)
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商品情報

内容

ビッグデータの時代、あふれる情報との上手な付き合い方とは?

疫学やEBMの考え方をもとに、身近な実例の紹介を通じて健康や医療の情報の読み解き方をわかりやすく解説。第2版では、全体を見直し加筆・修正し、新たに二つの章と付録を追加した。

■京大人気講義シリーズ
生体リズムと健康
健康心理学 第2版
こころの病理学

序文

プロローグ

私たちは今日、さまざまな「情報」をいろいろな場面で利用して暮らしています。中でも健康や医療に関する情報は、もっとも身近で大切なものの一つです。しかし、一口で情報といっても、さまざまなものがありすぎて、何が正しいのか、何を信じたらよいのか、わからなくなっているのが現代人の共通の悩みです。

健康や医療に関する情報は、「やった・やらない」、「言った・言わない」、または「良い・悪い」というように白黒がはっきりしているものばかりではありません。せっかく情報を手に入れても、適切な判断の役に立てるには、その意味を正しく読み解くことが必要です。たとえば「この治療法はよい」 という情報を聞いたとしても、そのまま鵜呑みにはできません。そうしてよいのなら、世の中は「楽をしてやせられる画期的なダイエット法」や「末期がんでも治る驚異の治療法」がいっぱいで、病気で困る人はいなくなっていることでしょう。

実際のところ、健康情報はその「出所」によって、どれくらい信頼できるかに歴然とした違いがあります。この場合の「出所」とは誰がいっているのか、ということだけではありません。「なぜそういえるの?」、つまりその「根拠」に目を向けることがとても大切です。どんな「根拠」からの話かわかれば、その情報の信頼性、いわば「情報を信じてよい度合い」がおおよそ決まります。信じてよい度合いの高い情報は「質の高い」情報ともいえます。

「健康情報学(health informatics)」は、国内初の公衆衛生領域の専門職大学院(当初は専門大学院)として京都大学医学研究科に設置された社会健康医学系専攻の一教室として二〇〇〇年に発足しました。当時は「医療システム情報学」という名称でしたが、二〇〇三年に「健康情報学」分野へと名称を変更して正式に誕生しました。「健康情報学」は健康や医療にかかわる情報の質、利用状況やその理解、行動や健康への影響を研究し、健康・医療に関する問題解決を支援する情報のあり方を追求する新しい学問分野です。情報を「つくる・つたえる・つかう」の視点でとらえ、より高いレベルの健康、quality of life(QOL:生活の質)を実現する環境整備を目指して、研究・実践に取り組んでいます。その対象は、医療者だけではなく、患者・介護者・支援者などの医療消費者全般を含み、また個人から社会レベルの意思決定の支援を想定しています。健康情報学は、医学、公衆衛生学、情報学、行動科学、コミュニケーション学などを基盤としていますが、中でも人間を対象とした病気や健康の関連現象の解明に大きく役立っている疫学、根拠に基づく医療(Evidence-based Medicine :EBM)、さらにはEvidence-based Health-careと深い関係にあります。

本書では、疫学やEBMの考え方に基づき、身近な実例の紹介を通じて、あふれる情報に振り回されず、よりよい判断の手がかりとするための健康や医療の情報の読み解き方を解説していきます。メディアやインターネットをはじめとする各種の健康・医療情報を適切に利用し、意思決定や問題解決、コミュニケーションに本書を役立てていただければ幸いです。


【第2版によせて】

このたび丸善出版の小林秀一郎氏から、本書の改訂版(第2版)のお話をいただきました。少々時間がかかってしまいましたが、全体を見直し加筆・修正し、新たに二つの章と付録を追加させていただきました。

日々の研究や教育を通じ、「生・老・病・死に向き合うとき、人間を支え、励ます情報・コミュニケーションとは何か?」を問い続けています。本書を通して、そのような取組みを続けている健康情報学の今をお伝えできれば嬉しく思います。


2014年3月

中山 健夫

目次

1章 現代社会に必要なスキル――健康情報リテラシー

1 健康・医療に関する「情報」

2 社会における健康・医療情報の循環

3 健康情報リテラシー

2章 どうしてそれを信じるのですか?――主張の根拠と"3た"論法

1 根拠を見直す

2 人間を対象とした研究

3 "3た"論法の落とし穴

3章 情報の松・竹・梅――研究デザインとエビデンス・レベル

1 エビデンス・レベル

2 研究デザインの基礎知識

4章 症例報告の落とし穴――対照群の必要性

1 お米を食べていると胃がんになる?

2 少年法の厳格化は効果なし?

5章 「代表的な意見」とは何か?――バイアス

1 大統領選挙結果

2 情報を読み解く重要な鍵

6章 私は名医?――分子と分母

1 「私は名医」と医者は信じているが......

2 農業をしていると死にやすい?

7章 運動する人は風邪をひかない?――横断研究と因果の逆転

1 長生きの喫煙家?

2 運動する人は風邪をひかない?

3 「縦断研究」の大切さ

8章 かき回しているのは何?――交絡因子

1 運動する人はどうして風邪をひかない......?

2 どちらがよい病院?

3 「よい」薬のせいで「悪くなる」?

9章 人間の身体は止まらない......――平均への回復

1 両親は背が高くても......

2 身近にある「平均への回帰」の落とし穴

3 集団でみられる「平均への回帰」

10章 「効く治療」が効かない?――絶対リスク、相対リスク

1 「有効率八〇%の治療」はよい治療か?

2 二倍よい治療とは?

3 「示し方」と「受け取り方」

11章 成功率一〇〇%の手術......!?――信頼区間と標本数

1 成功率一〇〇%の手術......!?

2 どのくらい確からしいのか?

12章 ミクロの理論と本当の効果――代理のエンドポイント、真のエンドポイント

1 理論的には効くはずなのに......

2 抗菌薬で虫歯が防げる?

3 治療

13章 意識と暗示で結果が変わる?――新薬の評価とプラセボ効果

1 ホーソン効果、プラセボ効果

2 治験

3 治験や臨床試験に参加すること

14章 データ、情報、そして知識――情報の解釈

1 一般論より私の経験?

2 データ、情報、そして知識

3 疫学データの読み方の注意

4 健康・医療情報を読むときの基本的態度

15章 守る仕組み・使う仕組み――個人情報の「保護」とインフォームド・コンセント

1 逆手にとられるインフォームド・コンセント?

2 質の高いデータを得るために

16章 科学と社会のせめぎあい――利益相反

1 利益相反とは?

2 利益相反の実例

3 タバコ問題について

17章 情報の更新と検索スキル――インターネットの健康・医療情報

1 インターネットの健康・医療情報のポイント

2 情報の更新の重要性

3 情報のインプットとアウトプット

18章 健康情報学と社会の新しい課題――遺伝子情報

1 遺伝子は運命を決める?

2 遺伝子情報は特別?

19章 よりよい判断の手助けに――診察ガイドライン

1 「診療ガイドライン」とは何か?

2 情報源としての診療ガイドライン

3 診療ガイドラインの情報公開

20章 ビッグデータと共通番号――社会の仕組みと新たな情報の形

1 携帯電話を長く使うと脳腫瘍になる......?

2 国民の診療情報データベースの活用

3 薬害問題からの提言

4 ビッグデータと共通番号

21章 情報としての患者の「語り」―ナラティブ情報の可能性と課題

1 医療における「エビデンス」と「ナラティブ」

2 インターネットでのナラティブ・データベースの試み

3 ディペックス・ジャパン

4 それぞれの隣にそれぞれを

22章 情報から行動へ―情報は灰色、意思決定は白黒

1 健康・医療情報を読み解くために

2 好きの反対は嫌い......?

3 ブロードストリート事件の教訓

4 傘をもって出かけますか?

23章 もう少し疫学とEBMを知りたい人たちのために

エピローグ

付録

健康情報見極め術

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書籍情報

  • ISBN:9784621087329
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2014年4月
  • 電子版発売日:2019年7月5日
  • 判:四六判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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