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サイエンス・パレット 016 ウイルス ミクロの賢い寄生体
Dorothy H.Crawford (著) / 永田 恭介 (監訳) / 丸善出版
商品情報
内容
本書では、人類のウイルス観の変遷、感染のしくみ、さまざまな感染症の起源と現状、治療技術の進歩、ウイルスの地球生命圏における役割、そして我々とウイルスとのこれからの付き合い方に関する提言まで、ウイルスの全体像を描き出す。この小さな賢い寄生体がどこから来て、本当は何がしたくて、どこへ向かうのか。それを考えることのできる一冊。
■サイエンス・パレット
・ 029 医学の歴史
序文
監訳者まえがき
本書を読もうと思われた方の根本的な興味、あるいは疑問は、「ウイルスって何?」だと思います。読む前にそう思った方は、本書を読み終えた後に、また同じように考えられるのではないでしょうか。そのような読後感は、ウイルスというものを病気という身近なことから漠然と知りながら科学的にはご存じない方も、ある程度はウイルスについて知識を持たれた方も、等しく抱かれるのではないかと思います。ウイルスのことが理解できなかったということではなく、まだまだ考えなければならないことがあるということを感じられるはずだからです。
本書は、オックスフォード大学出版局の「Very Short Introductions」シリーズの1冊"Viruses"(ドロシー・H・クローフォード著、2011年刊行)を翻訳したものです。最初に原著を手にとったときから、これまでのウイルス学の本とはずいぶん作り方が異なる本だと感じました。ウイルス学に関する多くの成書は、基本的にはウイルスごとにまとめられてきました。確かに、形態や複製様式を基盤にした分類に従ったテキストはある意味では勉学には向いているとも言えます。また、ウイルスに関する学会や研究会でも、ウイルス分類ごとのセッション分けになっていることが普通です。しかし、本書を日本に紹介しようと考えた訳者たちは以前からそういった形式を認めながらも、もう少し丸ごとウイルスについて考え、理解することはできないものかと感じることがありました。さまざまなウイルスを、ウイルスの種類を超えて、言わば「ウイルスはどこから来て、本当は何を起こしたくて、そしてこれからどこへ向かうのか」といったことが簡略に学べ、考える一助になる本があればなあという思いを満たすのがこの本でした。監訳者は、過去に『ウイルスの生物学』(羊土社、1996年)というウイルス分類別ではなく、ウイルスの複製と病原性の観点から構成した本を上梓したことがあります。また、ウイルスを含む微生物に関する最大の学会であるAmerican Society for Microbiology が刊行した『Principles of Virology』(第3版、2008年)もそういった観点を持ったテキストです。しかし、簡潔という点、丸ごと感という意味では本書は秀抜です。
そういった新しい考え方で書かれている本ですので、訳者の間でもたびたび議論がありました。たとえば、virosphereという造語の訳について、「ウイルス生存圏」とするか、「ウイルス圏」とするかといった類の議論です。植物や動物を議論する際には、植生、あるいは植物圏=flora(ある地域もしくは時代におけるすべての植物の種の総体を意味する)、動物ではいまだにうまく定義されていない言葉ですが動物圏=zoosphereなどの言葉があります。このような例にならえば「ウイルス圏」という言葉でよいのかもしれません。しかし、ウイルスはそれ自体では増殖することはできない宿主に完全に依存した寄生体です。つまりウイルスは生かされている存在と考えれば、宿主としての植物や動物を含めた増殖可能な範囲という意味で「ウイルス生存圏」ということになるかもしれません。しかしそうなると、生きにくいウイルス(これが本書の重要な視点のひとつ)を含みにくくなります。本文をお読みになると、このような議論が苦肉の文章となっていることがおわかりいただけると思います。
最後になりますが、本書の訳者たちは文部科学省が支援する新学術領域研究(ウイルス感染現象における宿主細胞コンピテンシーの分子基盤)の日本のウイルス学における先端的な研究者たちです。通常は、ウイルスが感染しても細胞内の防御系とうまくつり合っていますが、このバランスがウイルス側に偏ったときに強い病原性が現れます。このバランスを偏らせるメカニズムを明らかにし、またウイルスが宿主に合わせてどのような生き残り戦略を取るのかを明らかにすることが、私たちの研究の目的です。この研究の目的は本書の考え方に大変よく合致しています。そういう考え方を研究グループ内で討論するだけではなく、広く社会と共有できれば、という思いが本書を翻訳する強い動機となりました。そして、本書を完成させるためには多くの方々の支援がありました。丸善出版株式会社で本書の編集を担当いただいた米田裕美さんの、特に原稿の校正段階での格別の労に深謝いたします。
さて、ウイルスって?
2014年3月吉日
訳者を代表して 永田 恭介
目次
1 ウイルスとは?
病気の原因、「微生物」
「ろ過されざるもの」の正体
ウイルスの構造
ウイルスには宿主が必要
レトロウイルスの戦略
ウイルスでは変異こそが生命線
ウイルスの誕生をめぐる説
ウイルスの分類
2 世界中ウイルスだらけ
地球を席巻するウイルス
生態系における大切なはたらき
持ちつ持たれつ
宇宙にもウイルスはいる?
3 殺すか殺されるか
生き残りのための進化と適応
さまざまな媒介
ウイルスに対する防御戦略
免疫のしくみ
ウイルスが生体防御から逃れるメカニズム
4 新興ウイルス感染症
新興ウイルスの伝播――SARSを例に
HIV制御の問題点
感染までのハードル
エピデミックからパンデミックへ――インフルエンザを例に
動物が媒介する侵入
昆虫が媒介する伝播
社会発展によるウイルスの再分布
5 流行と大流行
農耕のはじまりが流行のはじまり
歴史上最悪のウイルス――天然痘ウイルス
空気感染するウイルス――はしか、風疹、おたふくかぜ
いろいろなかぜ
糞口感染―ロタウイルス、ノロウイルス
完全制圧できない現代の病気、ポリオ
完全制圧された牛疫
院内感染
6 持続感染ウイルス
ヘルペスウイルス科
レトロウイルス科
HIV-1とエイズ
肝炎ウイルス
7 腫瘍ウイルス
ヒト腫瘍ウイルス
発がん性レトロウイルス
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)
ヘルペスウイルス
肝炎ウイルス
パピローマウイルス
ヒット エンド ラン?
8 形勢逆転
天然痘予防とそのウイルスの排除
ジェンナーの革新
パスツールと狂犬病ワクチン
ポリオは根絶できるか?
ワクチンを使うべきかそうせざるべきか
HIVワクチンの試み
抗ウイルス剤
持続性肝炎ウイルスの排除
ウイルス診断
9 ウイルスの過去、現在、未来
歴史を動かしたウイルス
私たちはウイルスの未来に何を期待しているのか?
ウイルスを悪用することもできる
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書籍情報
- ISBN:9784621088166
- ページ数:256頁
- 書籍発行日:2014年4月
- 電子版発売日:2019年1月25日
- 判:新書判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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