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- フローチャートによるトリアージ実践マニュアル
商品情報
内容
どのように思考すれば患者にフィットするトリアージシステムができるか?その時、薬剤師はどのように判断するか?現場のトリアージのポイントとは?フローチャートに沿った様々な表と症例により、日々の現場でご活用いただけます。
序文
はじめに 理論に基づいて的確に判断するために
一般用医薬品(OTC 薬)のインターネット販売に関する議論は記憶に新しいところであるが、その顛末はおくとしても、議論の底流でOTC 薬に関わる薬剤師の姿勢が問われているのは間違いない。これまで多くの薬剤師が真摯に来局者に向かい合ってきたことは疑うべくもないが、これからはさらに「患者をみる力」を高め、その姿勢を一般市民に積極的にアピールして信頼を勝ち取っていく必要がある。薬局薬剤師の「患者をみる力」とは、すなわち「トリアージ」の能力である。薬剤師は来局者の病状を適切に把握し、病院を受診したほうがいいのか、あるいはOTC 薬によるセルフメディケーションでいいのかを、責任をもって判断しなければならない。薬局は単にOTC 薬を販売する場所ではなく、一般市民のセルフメディケーションを安全に行えるようにリスクマネジメントする場所なのである。
トリアージを行なうにあたって、いくつかの懸念を抱く薬剤師もいるだろう。膨大な数の疾患を知らなければ、判断できないのではないか? 身体診察や検査をせずに病状は把握できるのか? しかし、このような懸念はあたらない。医師が診断でもっとも重視しているのが問診であることを考えれば、問診によるトリアージは薬局で十分可能である。また、「診断理論」を理解すれば、限られた数の重要疾患の知識に基づいてトリアージできる。
トリアージは薬剤師個々の経験則でなく、綿密な診断理論に基づくシステム(体系/ マニュアル)でなければならない。そうであってこそ、誰がやっても一定の精度で判断ができるようになり、かつ後進に正確に伝えていくことが可能となる。本書で提示するのは論理的なトリアージシステムであり、本書が目指すところは、このシステムを理解し、実践してもらうことである。トリアージシステムというと大げさだが、OTC 薬に慣れたベテラン薬剤師にとっては、「これまでやってきたことと同じだ」と感じる部分が多いのではないだろうか。ベテラン薬剤師にとって本書がもつ意義は、これまでやってきた自身の経験則が理論的に正しいことを知ってもらい、自信をもって日々トリアージを実践し、また後進を理路整然と指導していただくことである。一方、調剤業務が主体でOTC 薬に不慣れな薬剤師は、このトリアージシステムを「複雑でとっつきにくい」と感じるかもしれない。しかし、その理論背景は「問診と視診で重症度と緊急度を判断する方法」という点で一貫しており、決して膨大な知識を必要とするものではない。まずは内容に一通り眼を通してもらって、とにかく実践することが大切である。その過程でシステムに慣れ、経験を増やしていくと、しだいに自信がもてるようになるだろう。さらなるトリアージ能力向上には、詳細な症候学的知識が必要となるが、その際は、拙著「薬剤師のトリアージ実践ガイド 丸善出版(2012)」を参照していただければ幸いである。
本書の執筆にあたってもっとも骨を折ったのは、「どうすれば、実際の現場にフィットするトリアージシステムになるか?」ということと、「いかにして、医師の診断理論を薬剤師用に翻訳するか?」ということである。現場の実情については、経験豊富な薬剤師である佐々木孝雄氏から貴重なご示唆をいただいた。また、診断理論に関しては、プライマリケアの第一線で活躍する若手医師の観点から佐々木陽典氏に、指導的立場にある医師の観点から瓜田純久氏に貴重なアドバイスをいただいた。三氏に深甚なる謝意を表したい。本書によって「論理的」トリアージがこれまで以上に普及し、薬剤師の真摯な姿勢を広くアピールできれば幸いである。
2014年4月
城西国際大学 薬学部 臨床医学研究室 教授
東邦大学医療センター大森病院 総合診療・救急医学講座 非常勤講師
佐仲雅樹
目次
第Ⅰ章 薬局トリアージの具体的手順
図Ⅰ-1 トリアージフローチャート
1.1 トリアージシステム運用上の注意点
表Ⅰ‐1 問診の基本形(OPQRSTリスト)
表Ⅰ‐2 症状別の急性重症疾患と急性軽傷疾患
表Ⅰ-3 薬局では対応できない症状
表Ⅰ-4 全身状態の評価(現在の患者の状態)
表Ⅰ-5 患者背景(病状が重症化しやすい素因)
表Ⅰ-6 急性重症疾患のレッドフラッグサイン(病歴におけるエピソードあるいは現在の症状)
表Ⅰ-7 亜急性/慢性重症疾患のレッドフラッグサイン
表Ⅰ-8 急性上気道炎(感冒)の可能性
表Ⅰ-9 急性ウイルス性胃腸炎(急性下痢症)の可能性
表Ⅰ-10 急性腰痛症("ぎっくり腰")の可能性
第Ⅱ章 トリアージの概論
2.1 セルフメディケーションとトリアージ
2.2 トリアージの意味
表Ⅱ-1 医療現場の様々なトリアージ
図Ⅱ-1 重症度と緊急度の概念
2.3 全身状態からみた重症度と緊急度
図Ⅱ-2 現時点の患者の状態から見た重症度と緊急度
図Ⅱ-3「現時点」の重症度と「以降」の緊急度
2.4 原因疾患からみた重症度と緊急度
図Ⅱ-4 重症度・緊急度による「教科書的」な疾患分類
図Ⅱ-5 重症度・緊急度による「現実的」な疾患分類
2.5 トリアージレベルの決定
表Ⅱ-2 トリアージレベル
COLUMN1 「何か変だ...」その1 看護師は何を察知したのか?
第Ⅲ章 薬局トリアージの理論背景
3.1 トリアージに重要な視点
図Ⅲ-1 重症度と緊急度の見積もり
3.2 全身状態とショック、呼吸不全、SIRSの病態生理
図Ⅲ-2 安定したガス交換サイクル
表Ⅲ-1 ショック(循環不全)の判断基準
表Ⅲ-2 呼吸障害(呼吸不全)の程度
表Ⅲ-3 意識障害の評価:Japan Coma Scale(JCS)
図Ⅲ-3 全身状態の悪化過程
表Ⅲ-4 全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断基準
3.3 全身状態の症候学
表Ⅲ-5 全身状態(ガス交換サイクルの安定性)
図Ⅲ-4 「前兆」としての精神・身体活動性の変化
表Ⅲ-6 全身状態からみた重症のイメージ
3.4 トリアージに必要な重要疾患の病態生理と症候学
表Ⅲ-7 疾患グループとトリアージ判断
表Ⅲ-8 急性重症疾患(見逃されやすい"危険な落とし穴")
表Ⅲ-9 急性重症疾患のレッドフラッグサイン
表Ⅲ-10 亜急性/慢性重症疾患のレッドフラッグサイン
表Ⅲ-11 薬局で対応可能な軽症疾患
3.5 重症化しやすい患者の素因
表Ⅲ-12 問題となる患者背景
COLUMN2 「何か変だ...」その2 「顔」をみて全身を知る?
COLUMN3 「何か変だ...」その3 軽い意識障害をみつけるためには?
第Ⅳ章 薬局トリアージの実践
4.1 トリアージのための情報収集
4.2 全身状態の評価法
4.3 症状の捉え方
表Ⅳ-1 症状の特徴の考え方
4.4 原因疾患の推定のための診断理論
表Ⅳ-2 OPQRST問診チェックリスト
表Ⅳ-3 発症と経過パターンに応じた解釈
図Ⅳ-1 突発性の発症
図Ⅳ-2 急性の経過
図Ⅳ-3 急性期を超えて悪化するパターン
図Ⅳ-4 慢性反復性のパターン
図Ⅳ-5 慢性持続性のパターン
表Ⅳ-4 急性上気道炎(感冒)の特徴
表Ⅳ-5 急性ウイルス性胃腸炎(急性下痢症)の特徴
表Ⅳ-6 急性腰痛症("ぎっくり腰")の特徴
4.5 薬剤師のトリアージと医師の外来業務の比較
4.6 Safety netting
表Ⅳ-7 急性軽傷疾患と判断した場合のsafety netting
COLUMN4 「何か変だ...」その4 顔色が悪い...?
COLUMN5 「何か変だ...」その5 元気がない?
第Ⅴ章 急性重症疾患の病態と症候学的特徴
5.1 急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome:ACS)
表Ⅴ-1 急性冠症候群の典型的OPQRSTとリスク因子
5.2 くも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage:SAH)
表Ⅴ-2 クモ膜下出血の典型的OPQRSTとリスク因子
5.3 細菌性(化膿性)髄膜炎
表Ⅴ-3 細菌性髄膜炎の典型的OPQRSTとリスク因子
5.4 急性喉頭蓋炎
表Ⅴ-4 急性喉頭蓋炎の典型的OPQRSTとリスク因子
5.5 急性大動脈疾患(大動脈瘤破裂/急性大動脈解離)
表Ⅴ-5 急性大動脈疾患の典型的OPQRSTとリスク因子
5.6 腹腔内出血
表Ⅴ-6 腹腔内出血の典型的OPQRSTとリスク因子
5.7 腹膜炎
表Ⅴ-7 腹膜炎の典型的OPQRSTとリスク因子
5.8 敗血症
表Ⅴ-8 敗血症の典型的OPQRSTとリスク因子
5.9 肺塞栓症(Pulmonary Embolism:PE)
表Ⅴ-9 肺塞栓症の典型的OPQRSTとリスク因子
5.10 糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic Ketoacidosis:DKA)
表Ⅴ-10 糖尿病性ケトアシドーシスの典型的OPQRSTとリスク因子
COLUMN6 「気分が悪い...」には要注意
第Ⅵ章 症例による薬局トリアージのシミュレーション
症例1:「咳が止まらない」と言って午後に来局した25歳女性
症例2:「お腹の調子が悪い」と言って土曜日の夕方来局した74歳男性
症例3:「下痢止めを下さい」と言って夕方来局した66歳男性
症例4:「頭が痛い」と言って開店そうそう来局した48歳女性
症例5:「胃が痛い」と言って昼に来局した35歳男性
COLUMN7 危険な「下痢」
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書籍情報
- ISBN:9784621088395
- ページ数:100頁
- 書籍発行日:2014年6月
- 電子版発売日:2018年3月30日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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