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認知行動療法事典
日本認知・行動療法学会 (編) / 丸善出版
商品情報
内容
◆基礎理論、基礎研究から公認心理師主要5分野の解説までを網羅
◆公認心理師の国家資格化を踏まえ、「認知行動療法」のスタンダードを知ることができる決定版
序文
刊行にあたって
今や「認知行動療法」は,保健医療分野はもちろんのこと,教育,福祉,司法・犯罪,産業・労働などの多くの実践分野において,すでに心理療法のスタンダードとなるべく大きな広がりをみせています。もちろんこの背景には,多くの実証的研究によって蓄積された「エビデンス」があることは言うまでもありません。しかしながら,見方の角度を変えれば,認知行動療法は,そもそも人間の行動や認知の基本的なありように関する行動科学的な理解に基づいているため,これまでにも人間の生活や健康に関わるさまざまな問題の解決に役立ってきたことは,認知行動療法が「新たに広がってきた」というより,ある意味で当然のことと言えるのかもしれません。
また,「認知行動療法」というターム自体が多くの領域において確実な広がりをみせるにつれて,「認知行動療法」の名称を冠した数多くの出版物などが発刊されるようになってきました。一方で,それらの中には,「認知行動療法」の本質的理解とはほど遠い,特定のテクニックの手続きの一側面のみを強調したものが散見されるようになりました。このような社会的背景を踏まえると,表面的に理解されがちな認知行動療法が,実際にはどのような内容を指す心理療法であるのかということを,積極的に発信していくことも本学会の大きな社会的役割であると考えられます。この「認知行動療法事典」が,そのような役割を果たしうる,一つの具体的なツールとして位置づけられることを期待しております。
現在,前身の「日本行動療法学会」時代を含めると,日本認知・行動療法学会は設立以来すでに45年以上,半世紀弱の歴史を重ねています。その間,幾度となく,本事典と同様の趣旨の学会企画・編としての出版物などの企画案がありましたが,残念ながら実現するに至りませんでした。しかしながら,2018年度の終わりに心理技術職の国家資格である「公認心理師」が初めて輩出され,この公認心理師時代を迎えるにあたり,ますますスタンダードとしての「認知行動療法」が着目されるようになることが容易に予想できます。そこで,初めて学会編を冠した出版物として「認知行動療法事典」の刊行に踏み切ることになりました。
この「認知行動療法事典」の企画,編集に際しては,前述のような背景を踏まえて,慎重なプロセスを採用しました。まず,当時の中心的な学会員が携わった『行動療法ケース研究』(行動療法ケース研究編集委員会編,岩崎学術出版社)で扱われている観点や区分,ターム,および「行動療法」あるいは「認知行動療法」を冠した事典などで扱われているタームをすべて収集し,あらためて昨今の認知行動療法を取り巻く情勢からそれらの精査を行い,内容を最新の情報にアップデートしながら,見出し項目の内容に含まれるべきキーワードとして設定しました。
また,事典の章構成に関しては,まず,「基礎理論・総論」の章に加えて,行動療法・認知行動療法が大切にしてきた基盤である「基礎研究」の章を独立して設けました。そして,「認知行動療法の適用範囲」の章でそれらを概観し,主要な「アセスメント技法」の章,「介入技法」の章をそれぞれ設けました。さらに,公認心理師の主要5分野(保健医療分野,教育分野,福祉分野,司法・犯罪・嗜癖分野,産業・労働分野)を扱った章に加えて,歴史的に行動療法の発展の基盤を培ってきた「特別支援教育分野の認知行動療法」の章を独立して設けました。また,近年の大きな社会的関心が高まっている深刻な嗜癖の問題を「司法・犯罪・嗜癖分野の認知行動療法」の章の中で扱うこととしました。そして,認知行動療法のエビデンスを支える「認知行動療法の研究法」の章,昨今の認知行動療法の研究と実践を取り巻く「関連法規・倫理」の章を設けました。「認知行動療法事典」は,初学者はもとより,認知行動療法やその周辺領域の研究者や実践者にも活用していただけるような内容を意図しております。そのため一項目を見開きページでわかりやすく解説する中項目主義の特性を活かして,単なる用語解説などの辞典とも差別化ができる使い勝手のよい事典を目指しました。なお,タームの表記に関しては,今現在もなおさまざまな議論があり,「認知行動療法事典」の中では,可能な限り同一の概念には同一のタームをあてるようにしておりますが,慣例的に使用されているタームとは表記が異なることがあります(例えば,日本行動分析学会用語検討特別委員会の用語リストなど)。適宜,それらの諸資料も参照いただきながら,認知行動療法のさらなる学びに活用していただければ幸いです。
そして,この「認知行動療法事典」の刊行の準備をしている間に,はからずも「平成」から「令和」への改元を迎えることになり,文字どおり時代を越えた新しい時代の幕開けの事典になりましたことを大変嬉しく感じております。最後に,ご多忙の中,多大なエネルギーを割いていただきました編集顧問,編集幹事,編集委員,執筆者の先生方の皆様に深く感謝申し上げます。また,刊行にあたっては,丸善出版株式会社企画・編集部の小林秀一郎さん,安部詩子さん,藤村斉輝さん,加藤祐子さんの献身的なご尽力をいただきました。ここに記してあらためてお礼申し上げます。
2019年(令和元年)5月1日 令和最初の日に
一般社団法人 日本認知・行動療法学会理事長
認知行動療法事典編集委員会委員長
嶋田 洋徳
目次
第1章 【基礎理論・総論】
認知行動療法
認知行動療法におけるセラピスト-クライエント関係
行動療法と行動理論
認知療法と認知理論
応用行動分析の基礎理論
問題解決療法の基礎理論
アクセプタンス&コミットメント・セラピーの基礎理論
マインドフルネス認知療法の基礎理論
弁証法的行動療法の基礎理論
行動活性化療法の基礎理論
メタ認知療法の基礎理論
ストレス-脆弱性仮説
ストレスの生理学的理解
前頭前野と大脳辺縁系
脳の報酬系
モノアミン神経系
うつ病の脳科学
不安症の脳科学
生物‐心理‐社会モデル
1 コラム: 認知行動療法と行動医学
第2章 【基礎研究】
レスポンデント条件付けの基礎研究
オペラント条件づけの基礎研究
恐怖条件づけの基礎研究
マウラーの2要因理論の基礎研究
系統的脱感作法の基礎研究
反応指標間の関連性の基礎研究
情動処理理論の基礎研究
制止学習アプローチの基礎研究
認知情報処理モデルの基礎研究
社会的学習理論の基礎研究
心理学的ストレスモデルの基礎研究
刺激―生体―反応(S-O-R)理論の基礎研究
リラクセーションの基礎研究
バイオフィードバックの基礎研究
マインドフルネスの基礎研究
アクセプタンス&コミットメント・セラピーの基礎研究
学習性無力感の基礎研究
うつ病の行動モデルの基礎研究
うつ病の認知モデルの基礎研究
パニック症の認知行動療法の基盤となる研究
社交不安症の認知行動療法の基盤となる研究
限局性恐怖症の認知行動療法の基盤となる研究
全般性不安症の認知行動療法の基盤となる研究
強迫症の認知行動療法の基盤となる研究
心的外傷後ストレス障害の認知行動療法の基盤となる研究
発達障害の認知行動療法の基盤となる研究
2 コラム:パソコンスマートフォンで不安症が治るのか?
第3章 【認知行動療法の適用範囲】
特定の恐怖症(限局性恐怖症)
パニック症(パニック障害),広場恐怖症
強迫症(強迫性障害,OCD)
強迫関連障害
社交不安症(社交不安障害,SAD)
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
適応障害、ストレス
うつ病
双極性障害
統合失調症
アディクション(依存症)
摂食障害
睡眠障害
心身症、身体症状症、病気不安症
行動医学
高齢期の問題
高次脳機能障害
パーソナリティ障害
司法・犯罪分野
災害支援
産業・労働分野
自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害,ASD)
注意欠如・多動症(注意欠如・多動性障害,ADHD)
知的能力障害
遺伝性疾患
チック症(チック障害)
小児期発症流暢症(吃音)(小児期発症流暢障害)
子どもの不安症
子どものうつ
子どもの心身症
子どもの身体疾患
強度行動障害
反抗挑発症(反抗挑戦性障害)
いじめ
不登校
ひきこもり
3 コラム:認知行動療法の介入対象
第4章 【アセスメント技法】
尺度の分類とその機能、尺度として認めるために必要な特性、使うべき場面と実際の使用法
ケースフォーミュレーション、機能的行動アセスメント、行動観察
症状や問題行動の自己評価
症状や問題行動の治療者評価と診断鑑別
全般的機能のアセスメント
認知症の心理的アセスメント
アディクションのアセスメント
統合失調症の精神症状アセスメント
双極性障害のアセスメント
うつ病や気分のアセスメント
恐怖症のアセスメント
社交不安症のアセスメント
パニック症のアセスメント
全般不安症のアセスメント
強迫症のアセスメント
PTSD, 複雑性悲嘆のアセスメント
身体表現性(疼痛が主症状のもの)のアセスメント
摂食障害のアセスメント
睡眠障害のアセスメント
パーソナリティのアセスメント
知的能力のアセスメント(WAIS, WISC)
自閉スペクトラム症,注意欠如・多動症のアセスメント
限局性学習症・発達性協調運動症のアセスメント
機能的行動アセスメント
保健医療分野のアセスメント
教育分野のアセスメント
司法・犯罪分野のリスクアセスメント
産業・労働分野のアセスメント
家族・夫婦・カップルのアセスメント
集団(認知行動)療法のアセスメント
価値観のアセスメントなど
脳と心の機能アセスメント
忠実性, コンピテンスのアセスメント
副作用・有害事象のアセスメント
4: コラム 産科医療を変えたアプガースコア
第5章 【介入技法】
レスポンデント法
オペラント法
応用行動分析(ABA)
拮抗制止法
心身医学的技法
行動活性化療法(BA)
エクスポージャー法
持続エクスポージャー法(PE)
セルフコントロール法
認知行動療法の発展過程における認知行動変容法
ストレス免疫訓練(SIT)
感情マネジメント訓練
モデリング法
ペアレントトレーニング
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
問題解決療法(PST)
認知行動療法におけるイメージ諸技法
認知療法
認知再構成法
行動実験
Rational Emotive Behavior Therapy (REBT)
スキーマ療法
弁証法的行動療法(DBT)
アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)
機能分析心理療法(FAP)
メタ認知療法(MCT)
マインドフルネスに基づく認知行動療法
コンパッションフォーカストセラピー(CFT)
集団認知行動療法
インターネットを用いた認知行動療法
バーチャルリアリティを用いた認知行動療法
コミュニティ強化と家族訓練(CRA/FT)
動機づけ面接(MI)
うつ病に対する新たなアプローチ
PTSDに対する多様なアプローチ
統合的理論に基づく認知行動療法
行動理論の発展
5 コラム:介入技法のパッケージ化とケースフォーミュレーション
第6章 【保健医療分野の認知行動療法】
保健医療分野の認知行動療法総論
うつ病の認知療法・認知行動療法
うつ病の行動活性化療法
パニック症の内部感覚エクスポージャー(身体感覚曝露)
パニック症の認知行動療法
嘔吐恐怖症の認知行動療法
強迫症の認知行動療法
社交不安症の認知行動療法
PTSDのトラウマに特化した認知行動療法
複雑性悲嘆の認知行動療法
摂食障害の認知行動療法
統合失調症の認知行動療法(急性期)
アットリスク精神状態(ARMS)の認知行動療法
双極性障害の認知行動療法
自閉スペクトラム症の認知行動療法
チック、トゥレット症候群、ADHDなどの行動障害
慢性疼痛の認知行動療法
過敏性腸症候群の認知行動療法
身体症状症、病気不安症などの認知行動療法
うつ不安の疾患横断的な認知行動療法
不眠症の認知行動療法
肥満や糖尿病などの生活習慣病の認知行動療法
ためこみ症、醜形恐怖症の認知行動療法
ニコチン依存、カフェイン依存の認知行動療法
認知症および高齢者うつ病の認知行動療法
高次脳機能障害の認知行動療法
精神科デイケアにおける認知行動療法
地域保健や健康づくりにおける認知行動療法
精神科リエゾンチームにおける認知行動療法
緩和ケアにおける認知行動療法
プライマリケアにおける認知行動療法
救急医療における認知行動療法
小児医療における認知行動療法
6 コラム:英国の認知行動療法教育から見る日本の認知行動療法実践家養成の課題
第7章 【教育分野の認知行動療法】
教育分野における認知行動療法の適用
幼児教育における認知行動療法の適用
小中学校における認知行動療法の適用
高等学校における認知行動療法の適用
大学等学生相談における認知行動療法の適用
子どもの抑うつへの支援
子どもの不安への支援
子どもの強迫への支援
子どもの怒り・攻撃への支援
自殺と自傷行為
子どもの心身症への支援
生活のくせ(習癖)
不登校予防・再登校支援
いじめ防止・対策
非行
体罰学校ストレスとストレスマネジメント
進路指導
行動論的コーチング
健康教育
通常学級でのコンサルテーションとクラスマネジメント
学級単位介入
開発的アプローチ
家族に対する認知行動療法
教育分野における予防
7 コラム:いじめ自殺予防のために認知・行動療法家がすべきこと―法的判定と機能分析によるいじめ代替行動形成
第8章 【発達障害支援と特別支援教育分野の認知行動療法】
自閉症への早期療育
ASDの早期支援としてのJASPER
機能的アセスメントと問題行動への対処
ポジティブ行動支援(PBS)
特別支援教育のSST
アサーショントレーニング
絵カード交換式コミュニケーションシステム(PECS)
トークンエコノミー
教員(支援者)への支援
ペアレントトレーニングと保護者支援
ピアサポート
特別支援教育分野における多職種連携
ADHDのサマートリートメントプログラム
ASDとADHDへの認知行動療法
発達障害のある人へのマインドフルネス認知行動療法
高等教育機関における発達障害学生への認知行動療法
8 コラム:発達障害支援と特別支援教育分野の認知行動療法―行動を記録する行動の制御
第9章 【福祉分野の認知行動療法】
早期療育
虐待
社会的養護
福祉分野での親支援
子どものデイサービスにおける支援
発達障害者の兄弟姉妹支援
介護者のサポート
福祉分野における職員(支援者)支援
成人のADHD
職業リハビリテーション
発達障害者の就労支援
高年齢化したひきこもり
高齢者の支援
認知症
重度知的障害者
重症心身障害
地域生活支援
アウトリーチ(訪問支援)
当事者研究
福祉分野における認知行動療法の応用可能性
第10章 【司法・犯罪・嗜癖分野の認知行動療法】
被害者支援と認知行動療法
成人犯罪・少年非行と関連諸機関
触法精神障害者を取り巻く諸問題
司法・犯罪分野の実践上の特徴
サイコパスによる犯罪とその行動論的理解
依存・嗜癖に関する認知行動理論
否認,治療抵抗と認知行動療法
怒りとアンガーマネジメント
物質使用障害
性犯罪と性嗜好異常
窃盗,万引き,クレプトマニア
ギャンブル障害
ネット嗜癖とゲーム障害
プロセスおよび関係の嗜癖行動
触法行為の生物学的理解と薬物療法
リスクアセスメント
リラプス・プリベンション
グッド・ライブズ・モデル(GLM)
セルフヘルプグループ
環境調整・刺激性制御
渇望と言い訳のモニターと対処
集団認知行動療法(グループワーク)の活用
矯正教育と更生保護におけるSST
少年院における生活指導と認知行動療法
刑事施設における性犯罪再犯防止指導
刑事施設における薬物依存離脱指導
刑事施設における暴力防止指導
保護観察における認知行動療法
医療機関における触法者に対する支援
嗜癖行動についての生物学的理解
犯罪と嗜癖の行動経済学的理解
10 コラム:レスポンデント学習の理解に基づく問題行動の変容
第11章 【産業・労働分野の認知行動療法】
職場のストレスモデル
ストレスチェック制度
リラクセーションを中心としたストレスマネジメント
認知再構成法を中心としたストレスマネジメント
マインドフルネス,アクセプタンス&コミットメント・セラピーを用いたストレスマネジメント
インターネットを用いたストレスマネジメント
復職支援
職リハリワーク
リワークにおける集団認知行動療法
職場復帰困難
新規参入者に対するストレスマネジメント
キャリア支援における認知行動療法
精神障害者の就労支援における認知行動療法
EAP(従業員支援プログラム)
対人援助職のストレス
専門職におけるPTSDの二次受傷
リーダーシップ・生産性向上に向けたコーチング
11 コラム:ポジティブメンタルヘルスと健康経営
第12章 【認知行動療法の研究法】
エビデンスに基づく医療
エビデンスに基づく教育
エビデンスに基づく心理療法
診療ガイドライン
リサーチクエスチョン(研究疑問)の定式化
リサーチクエスチョン(研究疑問)の優先づけ
ランダム化比較試験
クラスターランダム化比較試験
コホート研究
シングルケースデザイン
尺度研究
診断精度研究
横断研究
メタアナリシス
医療経済評価と診療報酬改定
症例レジストリ(臨床データベース)
アウトカムの重要性
有害事象
臨床試験登録
データシェアリング
バイアスの種類と対処法
バイアスへのリスク
報告ガイドライン
臨床試験の粉飾
再現可能性
12 コラム:認知行動療法の研究と人工知能
第13章 【認知行動療法における倫理と関連法規】
認知行動療法を実践する際の倫理
認知行動療法の専門資格
認知行動療法の研究を行う際の倫理
認知行動療法を教育する際の倫理
社会・同僚に対する認知行動療法家の倫理的責任
保健医療分野の関連法規
福祉分野の関連法規
教育分野の関連法規
司法・犯罪分野の関連法規
産業・労働分野の関連法規
認知行動療法と診療報酬
合理的配慮
13 コラム:研究倫理と臨床実践における倫理の関係
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書籍情報
- ISBN:9784621303825
- ページ数:828頁
- 書籍発行日:2019年8月
- 電子版発売日:2019年10月23日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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