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- ビジュアル薬剤師実務シリーズ 4.病棟業務の基本
商品情報
内容
序文
監修の序
2006年に薬学教育6年制がスタートした.以前の薬学教育は,知識重視で,技能や態度教育はほとんど施されてこなかった.病院や薬局に就職した薬剤師は,自己学習や経験によって,足りなかった技能の部分と態度の部分を補ってきた.しかしこのような薬学教育が医療現場で活躍する薬剤師を求める社会のニーズに合わなくなったことから,臨床教育の充実が必要となり,学部の修業年限が6年となった.現在はモデルコアカリキュラムに従って教育が行われている.そして大学には,現場で経験を積んだ実務家教員が多く配属されることになった.しかし技能や態度の教育については,教科書や参考書がまだ少なく,実務家教員といえども大勢の薬学生を教えるのに苦慮している.
私が羊土社から本シリーズの発刊の話をいただいた時,いよいよ薬学も医学と同じような教育ができると確信した.それは羊土社から発行されている医師向けの『臨床研修イラストレイテッドシリーズ』を見た時,医師向けの臨床教育ではイラストを多用した書籍によって手技までもがわかりやすく解説されていたからである.それが大学だけでなく現場の医師に利用されていると聞き,このシリーズが実務中心であり,知識に偏らず細やかな手技にスポットを当てていることに注目した.近年,医学の飛躍的進歩と共に製剤技術や調剤機器も新しくなった.調剤手技もそれに合わせて進化したが,市販の解説書では旧来の調剤方法を踏襲するものでしかない.医師の臨床教育の世界で定評のある『臨床研修イラストレイテッドシリーズ』にならい,ビジュアルを重視し,実務のコツを解説した薬剤師向けの参考書を発刊できることは,この上もない喜びである.
本シリーズは1,2巻の「薬局編」と3,4巻の「病院編」からなる4冊構成であり,薬学生にとってはもちろん,病院や薬局で勤務する薬剤師にとって座右の書となることを希望する.6年制薬学教育では,実務実習前に共用試験が実施される.OSCEは知識ではなく技能と態度を評価するものであるが,本書はそのOSCEにも活用していただけるものと思う.本来ならば,OSCEに合格するためだけの参考書にした方が,薬学生諸君にはありがたいかもしれない.しかし,OSCEに合格するための手技と実際に現場で行われている手技では若干の違いがある.筆者はOSCEに充分活用できることと併せて,将来就職してからも役立つ参考書にしたいと考えた.薬学生や指導薬剤師のためにモデルコアカリキュラムの方略(LS)をリンクして示してある.さらに執筆者の多くは病院や保険薬局で実務をされている薬剤師であるため,手技を写真やイラストを多用してわかりやすく解説することだけでなく,それぞれの作業を行う上での心構えや倫理観についても考慮し,OSCEにありがちなロボットのような画一的な動きではなく,人間としての正しい動作を解説した.
将来薬剤師過剰時代を迎えることになるが,この"ビジュアル薬剤師実務シリーズ"がすべての薬剤師の質の向上に貢献することを願って止まない.最後に,執筆のお手伝いをいただいた阿部宏子先生,伊藤由紀先生をはじめとするすべての執筆者と羊土社の秋本佳子様に心より感謝する.
2008年 9月
上村 直樹
編集の序
医療の高度化と多様化に伴い,病院薬剤師の業務もより専門性が要求されるようになってきました.さらに診療報酬やリスクマネジメントの観点から,チーム医療の一員として薬剤師の活躍が求められています.このようななか,2010年度より6年制の長期実務実習がスタートします.
病院実務実習では,薬剤師が関わるありとあらゆる業務について,さまざまな体験をしながら積極的に学んでいきます.薬剤師が薬物治療に積極的に関わっていることを感じていただくことが大切です.例えば,患者さんの苦痛がほんの少しでも軽減したときには,大きなやりがいと達成感を感じる実務実習でありたいと,指導薬剤師の1人として願うものであります.また,高い臨床能力が身につく実務実習が行われることは,医師,看護師と共にチーム医療を実践する病院薬剤師にとっても意義あることであります.
本書は,特にチーム医療の重要性が指摘されている化学療法,外来化学療法,緩和医療,感染制御,糖尿病領域,精神科薬物療法,栄養サポートチーム(NST)について,薬学的ケアに必要な知識を,わかりやすい写真やイラストで丁寧に解説しています.さらに,医療安全管理,夜間休日体制,治験コーディネーターや治験審査委員会などについても多くの写真を用いてわかりやすく解説しました.病院の機能がまるで現場で体験しているような臨場感をもって理解できるようになるでしょう.薬剤管理指導については,薬物治療の安全性の確認や,副作用モニタリング,検査値等からの情報収集,薬歴の作成と管理,退院時指導,処方支援,お薬手帳の活用などの基本的な業務の説明に留まらず,医療スタッフ同士のコミュニケーションや患者さんとのコミュニケーションについても触れました.それは病院薬剤師にとっても実務実習の指針となるだけでなく,業務の見直しができ,さらなる知識,技能,態度のレベルアップにつながるものと確信しています.
6年制教育は薬学教育モデル・コアカリキュラムに従って進められていますが,本書には実務実習モデル・コアカリキュラムに該当する項目に方略(LS)番号を記載し,大学での講義や実務実習前に行われるOSCEへの対策としても利用できるように配慮しました.指導薬剤師にとっても方略を確認して指導をすることができます.
本書が学生時代はもとより病院薬剤師業務に就いてからも座右の書となり,それによって業務が充実して,国民から信頼される病院薬剤師が大勢誕生することを願っております.
2009年 1月
編者を代表して
阿部 宏子
目次
第1部 基本実務
1.チーム医療へ貢献する病院薬剤師の心得【伊藤由紀】
1.社会における病院薬剤師の役割
2.病院薬剤師のめざすべきところ
3.安全・安心した入院生活を送るための薬剤師の取り組み
* 疑義照会
* 薬剤師による病院内の薬品管理
* ヒヤリ・ハット事例の収集と分析
* プレアボイド報告制度への参加
* 守秘義務
4.薬剤師がチーム医療に参加する意義
* 感染対策チーム
* 褥瘡ケアチーム
* 栄養サポートチーム(Nutrition Support Team:NST)
* がん化学療法チーム
* 緩和ケアチーム
* 治験管理業務
* 市販後調査
* 倫理委員会
2.薬剤管理指導【伊藤由紀】
1.病棟業務の概説
* 医薬品適正使用への関与
* 記録の意味
2.チーム医療への参加
* チーム医療の一員として
* クリニカルパス作成への関与
3.薬剤管理指導業務
* 薬剤管理指導業務とは
* 薬剤管理指導の流れ
4.服薬指導業務
* 服薬指導にあたって
* 服薬指導のテクニック
5.処方支援への関与
3.医療安全事故防止【寺澤雅治】
1.医療安全管理の重要性
2.施設における医療安全の組織
3.院内における医薬品安全管理
4.インシデント・アクシデントの報告
5.薬剤師業務と医療安全事故防止
* 医薬品の管理(薬剤部)
* 調剤業務(内服薬・外用薬)
* 調剤業務(注射剤)
* 与薬業務(注射薬)
* 持参薬管理
* 与薬業務(内服薬・外用薬)
6.薬物の大量服用(急性薬物中毒)
7.薬物乱用における対応
第2部 アドバンスト実務
1.がん治療 1)化学療法【長谷部忍】
1.がん化学療法施行患者に対する薬剤管理指導業務の特徴
2.化学療法レジメン管理の流れ
3.がん化学療法施行患者の治療の流れと薬剤師のかかわり
4.薬剤管理指導手順
* 初回面談準備
* 初回面談における確認事項
* 抗がん剤処方オーダーの指示受け
* 化学療法投与前の確認事項
* 化学療法投与前説明
* 記録
* 副作用および経過モニタリング
* 退院指導
* ファーマシューティカルケアの実践例
5.がん化学療法に携わる薬剤師の情報収集
6.がん化学療法副作用対策における処方支援の実例(服薬指導記録より)
* 悪心・嘔吐対策
* 吃逆(しゃっくり)対策
* アルコール過敏症
1.がん治療 2)外来化学療法【寺澤雅治】
1.外来化学療法
2.外来化学療法のメリットとデメリット
3.外来化学療法におけるチーム医療のなかでの薬剤師の役割
4.外来化学療法室(通院治療センター)の環境
5.外来化学療法の流れ(例)
6.レジメンの選択
7.処方オーダーの鑑査
8.薬剤の調製
9.薬剤についての説明
10.外来化学療法において発現する副作用とその対策
11.心のケア
12.緩和医療とのかかわり
1.がん治療 3)緩和医療【田島紳介】
1.緩和医療の考え方
2.がん患者の痛み
3.痛みのアセスメント
* 初期アセスメント
* 継続アセスメント
* アセスメントツール
4.WHO方式がん疼痛治療法
* 痛みの治療の目標設定
* 鎮痛薬投与法の基本5原則
5.疼痛治療薬について
* 非オピオイド鎮痛薬
* 弱オピオイド(コデイン)
* 強オピオイド
6.鎮痛補助薬
7.緩和医療における薬剤師の役割
* 薬学的管理
* 疼痛アセスメントによる治療薬の効果・副作用の評価
* 服薬指導・患者教育
* 医療スタッフへの情報提供
2.感染制御【影山惠美子】
1.感染制御の基本
* 標準予防策と感染経路別予防策
* 手指衛生・咳エチケット
* 消毒・滅菌
2.感染対策の組織・活動等
* 病院感染対策における薬剤師の役割
* 抗菌薬の投与設計
3.糖尿病領域【寺澤雅治】
1.糖尿病治療における薬剤師の役割
2.糖尿病の療養指導
* 糖尿病療養指導士
* 糖尿病療養指導チーム
3.糖尿病教育入院
* チームカンファレンス
4.糖尿病の基礎知識
* 糖尿病の診断
* 糖尿病の原因
* 糖尿病の症状
* 糖尿病の合併症
5.薬物療法
* 経口血糖降下薬
* インスリンの効きをよくする薬
* インスリン分泌を促進する薬
* 消化管からの糖の吸収を遅らせる薬
* 経口血糖降下薬からインスリン療法への切り替え
* インスリン
6.血糖自己測定(SMBG:self-monitoring of blood glucose)
7.血糖コントロールの指標
8.シックデイの対応
4.精神科療法【阿部宏子】
1.精神疾患の基礎知識
* 精神科病院の入院形態
* 社会復帰促進
2.精神疾患の分類
* 主な精神疾患
3.精神科の薬物療法
* 統合失調症の治療薬と補助薬
* うつ病・うつ状態の治療薬
4.服薬指導
* 統合失調症患者に対する服薬指導
* うつ病患者に対する服薬指導
5.活用できる社会資源
* 身近な社会資源
* 知っておきたい福祉制度
5.栄養サポートチーム(NST)【倉田義昭】
1.NST活動に必要な基礎知識
* 栄養の基礎
* 各栄養素の濃度を表示する単位
* 浸透圧を示す単位
* 輸液組成の配合変化
* 栄養輸液に関連する用語
* 栄養指標
* 栄養補給の方法
* 栄養管理の選択法
2.NSTの実際
* NSTとは
* NSTの実践
* NST認定制度
* NST薬剤師の役割
* TPN輸液の混合調製
6.夜間休日体制【奥山 清】
1.当直薬剤師の業務
2.当直における薬剤師の判断
3.当直日誌と引継ぎ
4.外来救急患者に対する病院の体制
5.病棟の在庫薬品
6.輸血の管理
7.臨床試験【渡部歌織/青木 敦】
1.治験(臨床試験)コーディネーター(CRC)
* 治験開始前の準備
* 患者さんへの対応
* 医師のサポート
* モニターへの対応
2.治験事務局
3.治験審査委員会(IRB)
4.治験薬管理者
5.新薬開発への貢献
8.長期実務実習【明石貴雄】
1.薬剤師養成のための薬学教育への対応
* 実務実習の内容
2.実務実習のスケジュール
3.病院における実習の特徴
4.病院実習の内容
* 調剤業務
* 医薬品情報の収集や伝達(DI業務)
* 注射薬の調剤
* 製剤業務
* 病棟薬剤業務
* 治験管理業務
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書籍情報
- ISBN:9784758109239
- ページ数:211頁
- 電子版発売日:2011年5月31日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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