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- 臨床医が知っておきたい皮膚病理の見かたのコツ
商品情報
内容
皮膚病理学あるいは皮膚病理診断学の初学者に皮膚病理診断の考え方を感じてもらうための本として、日常診療でよく目にする疾患について取り上げ構成しています。
序文
序
本書を手にとってくださった方に,最初に本書のコンセプトについて説明させていただきます.
本書は,いわゆる「皮膚病理学の教科書」ではありません.基本的には標本を目の前にして診断がつかないとき参考にしていただくような本でもありません.皮膚病理学あるいは皮膚病理診断学の初学者に,「cover to cover」(始めから終わりまで)で通読していただき,皮膚病理診断の考え方を感じていただくための本です.そのため,日常診療でよく目にする疾患についてのみ取り上げています.本書は,大きく分けて3つの部分に分かれています.1つめは,正常組織の見方です(Part 1).2つめは,炎症性(非腫瘍性)疾患(Part 2, 3),3つめは腫瘍性疾患(Part 4)についての病理組織診断のポイントです.
正常組織の見方は,多くの教科書でも取り上げられていますが,本書の内容を理解していただくためには是非必要な内容ですので,最初に読んでください.また,疾患の項に読み進んだときにも適宜参照してください.
炎症性(非腫瘍性)疾患については,特に「臨床をみて病理を考え,病理をみて臨床を考える」ということを重視しました,そのため,できるだけ病理所見と臨床症状の対応を明記するようにしました.また,Ackerman先生の提唱されたアルゴリズム診断法の概念を基本に置いた記述をするようにしました.その診断法をさらに深く勉強したい場合には,『Histologic diagnosis of inflammatory skin diseases(A. Bernard Ackerman, et al., eds)』の2nd edition(今はなかなか手に入りませんが),および3rd editionを参照することを強くお勧めします.また,それぞれの疾患について,どの所見が本質的な所見なのかをわかるように記載するべく努力しました.
腫瘍性疾患に関しては,一般的に皮膚病理学の教科書では,出現する可能性のある所見が羅列されていて,どの所見が診断に本当に必要なのか読み取るのが困難なものも少なくありません.そのため,初学者は診断に迷うことも多かったと思います.本書では,それぞれの腫瘍をしっかり定義することにより,腫瘍細胞の分化をはじめとして,本質的に何が診断に必要な所見なのかということを中心に記述したつもりです.
以上のことを頭に入れて,この本を読んでみてください.日常よく目にする疾患の病理診断が,どのような思考過程を経てくだされるかを少しでも理解していただければ望外の喜びです.また,送られてきた病理報告書をそのまま鵜呑みにしないで,「自分で標本をみる」ことによって,少しでも疾患に対する理解を深めていただければ,この本を制作した意味があるのだと思います.本書は,今まで私が皮膚病理診断を一緒に学んできた医師を中心に執筆をお願いしました.彼らは,今まで私が皮膚病理診断する上で考えてきたことを常に説明してきた方々であり,私の考えを一番わかってくれている人達だと確信しているからです.一生懸命症例を集め,執筆してくれた彼らの努力無くして本書は完成しませんでした.深く感謝いたします.また,本書を発行する機会を与えてくださった羊土社の鈴木美奈子さんにも深謝したいと思います.
2016年5月
日本医科大学武蔵小杉病院皮膚科
安齋眞一
目次
序文
Part1 正常構造
0 正常皮膚および皮下脂肪組織の構造
Part2 炎症性疾患
0 炎症性疾患における病理診断の考え方
第1章 湿疹皮膚炎群
1 下肢の鱗屑を伴う紅斑局面(貨幣状皮膚炎)
2 そう痒を伴う四肢の苔癬化局面,紅斑,丘疹(慢性単純性苔癬)
3 顔面に鱗屑を伴う紅斑(脂漏性皮膚炎)
第2章 痒疹・蕁麻疹・紅斑症
1 全身の強いそう痒を伴う紅色丘疹(結節性痒疹)
2 体幹四肢の激しいそう痒を伴う丘疹(多形慢性痒疹)
3 全身の浸潤性紅斑(多形紅斑)
4 全身のびらん,粘膜疹(中毒性表皮壊死剥離症(TEN))
5 頬部の有痛性浸潤性紅斑(Sweet病)
6 全身の鱗屑を付す類円形紅斑(Gibertバラ色粃糠疹)
7 下腿に生じた有痛性紅斑(結節性紅斑)
8 四肢のかゆみの強い紅斑(紅斑丘疹型境界部皮膚炎)
第3章 角化異常症
1 体幹の硬い茶褐色の丘疹の集簇(Darier病)
第4章 炎症性角化症
1 全身の鱗屑を伴う紅斑性局面(尋常性乾癬)
2 急速に全身に広がった紅斑,膿疱(膿疱性乾癬)
3 躯幹・四肢の紅褐色丘疹(慢性苔癬状粃糠疹)
4 四肢にできる扁平に隆起した紫紅色斑(扁平苔癬)
5 上肢に帯状に集簇,癒合する小丘疹(線状苔癬)
6 躯幹や四肢に多発する光沢帯びた小丘疹(光沢苔癬)
第5章 水疱症
1 全身に多発するびらん・紅斑・色素沈着(尋常性天疱瘡)
2 全身に多発するびらんを伴う紅斑(落葉状天疱瘡)
3 緊満性水疱とそう痒を伴う浮腫性紅斑(水疱性類天疱瘡)
第6章 血管炎・類症
1 両下腿の浸潤を触れる紫斑(Henoch-Schönlein紫斑(IgA血管炎))
2 両下腿の網状皮斑と圧痛を伴う皮下脂肪組織の小結節(多発性結節性動脈炎)
3 両下腿に生じた紫斑(慢性色素性紫斑(Schamberg病))
4 臀部から下肢に生じた紫斑(苔癬様持続性色素性紫斑(Gougerot- Blum病))
5 下腿の疼痛を伴う潰瘍(リベド血管症(リベド血管炎))
6 両足趾に生じた疼痛を伴う紫斑(コレステロール結晶塞栓症)
第7章 膠原病
1 頬部と耳介の色素沈着を伴う紅斑(円板状紅斑性狼瘡(DLE))
2 両上腕の陥凹を伴う皮下硬結(深在性紅斑性狼瘡(LEP))
3 筋力低下を伴った全身の紅斑(皮膚筋炎)
4 両前腕までの皮膚硬化(全身性強皮症)
第8章 肉芽腫症
1 顔面の浸潤をふれる紅色局面(サルコイドーシス)
2 手背の辺縁隆起した環状紅斑(環状肉芽腫)
第9章 感染症
1 下顎の紅色結節(非結核性抗酸菌症)
2 背部の遠心性に拡大する紅斑(白癬(皮膚糸状菌症)
3 右手背の暗紅色結節(スポロトリコーシス)
4 体幹の水疱,膿疱,びらん(帯状疱疹)
5 頬部の隆起性角化性結節(尋常性疣贅)
6 足底の角化性小結節(ミルメシア)
7 陰嚢に多発する乳頭腫状丘疹(尖圭コンジローマ)
8 中央が臍窩状に陥凹する半球状小結節(伝染性軟属腫)
9 手掌,足底の角化性局面(梅毒)
10 腋窩のそう痒を伴う紅色丘疹(疥癬)
11 マダニ咬症(マダニ刺咬症)
第10章 毛包炎・毛包周囲炎
1 体幹のそう痒のない紅色丘疹(表在性毛包炎)
2 顔面の膿疱を混じる紅色局面(好酸球性膿疱性毛包炎)
3 顔面に多発する丘疹(顔面播種性粟粒性狼瘡)
Part3 代謝・変性・沈着症
1 左鼻背部の茶褐色斑(炎症後色素沈着)
2 臀部の瘢痕(瘢痕)
3 上背部の褐色斑(斑状アミロイドーシス)
4 下口唇の白色結節(口唇粘液嚢腫)
5 左足関節部の皮下結節(ガングリオン)
6 上下眼瞼の黄色結節(眼瞼黄色腫)
Part4 腫瘍性疾患
0 腫瘍性疾患における病理診断の考え方
第1章 上皮性腫瘍・嚢腫
A.良性病変
1 生来,側頭部にある黄色調脱毛斑(脂腺母斑)
2 上背部の黒点を有する皮膚結節(毛包嚢腫① 漏斗部型)
3 頭部の可動性良好な皮膚腫瘍(毛包嚢腫② 峡部型)
4 左手掌の皮膚結節(封入体嚢腫)
5 耳介後面に生じた軟らかい腫瘍(皮膚皮様嚢腫)
6 左頬部の青灰色皮膚小結節(アポクリン腺嚢腫)
7 左腋窩の皮下結節(脂腺嚢腫)
8 右側腹部の褐色結節(脂漏性角化症(老人性疣贅))
9 鼻下の角栓を伴う隆起性皮膚腫瘍(ケラトアカントーマ)
10 下顎〜頸部に多発する小丘疹(汗管腫)
11 足底の紅色皮膚結節(汗孔腫)
12 左側頭部の隆起性皮膚腫瘍(汗腺腫)
13 右頬部の隆起性皮膚腫瘍(皮膚混合腫瘍)
14 頬の黄白色丘疹(脂腺増殖症)
15 左上眼瞼の黄紅色調の皮膚腫瘤(脂腺腫)
16 鼻部の隆起性皮膚腫瘍(毛芽腫)
17 鼻とその周囲に集簇する小丘疹(毛包上皮腫)
18 左下腿内側の炎症を繰り返す隆起性腫瘤(毛母腫)
19 鼻のドーム状隆起した常色結節(毛包腫)
B.悪性病変
1 右頬部の鱗屑を付す紅斑(日光角化症)
2 背部の紅斑局面(Bowen病)
3 左頬部の紅斑(浸潤性有棘細胞癌① 日光角化症型)
4 右下眼瞼の紅色結節(浸潤性有棘細胞癌② Bowen病型)
5 左下腿の潰瘍を伴う隆起性皮膚腫瘍(汗孔癌)
6 左外眼角の隆起性皮膚腫瘍(皮膚粘液癌)
7 陰部のびらんを伴う淡紅色局面(乳房外Paget病)
8 鼻翼部の隆起性結節(脂腺癌)
9 鼻の黒色結節(基底細胞癌① 結節型)
10 鼻背部のびらん(基底細胞癌② モルヘア型)
11 指背の紅色ドーム状隆起性病変(Merkel細胞癌)
第2章 色素細胞性腫瘍・母斑
1 左眼瞼部の色素斑(太田母斑)
2 右側胸部の色素斑(先天性色素細胞母斑)
3 左手背の結節(通常型青色母斑)
4 鼻背部に存在する隆起性皮膚結節(Miescher母斑)
5 左肩部の茶褐色の隆起性皮膚結節(Unna母斑)
6 右足底部に存在する黒色の色素斑(Clark母斑)
7 左手背の結節(Spitz母斑)
8 周囲に脱色素斑を伴う左頬部の褐色斑(Sutton母斑)
9 左下顎の黒褐色結節(Duperrat母斑/Nanta母斑)
10 足底の黒色班(悪性黒色腫① 末端黒子型)
11 左頬の黒色班(悪性黒色腫② 悪性黒子)
12 大腿部の辺縁不整な黒色斑(悪性黒色腫③ 表在拡大型)
第3章 軟部腫瘍
A.良性病変
1 胸部の紅色結節(ケロイド)
2 左大腿の褐色結節(皮膚線維腫)
3 下腿の皮下結節(結節性筋膜炎)
4 右肩甲部の皮下腫瘍(脂肪腫)
5 両前腕に多発する皮下結節(血管脂肪腫)
6 左頬部の皮下腫瘍(紡錘形脂肪腫)
7 右前腕の青色皮下結節(海綿状血管腫)
8 下口唇の紫紅色嚢腫 (静脈湖)
9 右手掌の有痛性皮下結節(静脈血栓)
10 手指の鮮紅色腫瘤(化膿性肉芽腫(毛細血管拡張性肉芽腫))
11 眉毛部の表面平滑な鮮紅色丘疹(サクランボ血管腫(老人性血管腫))
12 前胸部の紅色結節(動静脈血管腫(動静脈奇形))
13 爪下の有痛性結節(Glomus腫瘍)
14 左外顆の有痛性皮下腫瘍(血管平滑筋腫)
15 背部にある弾性軟,淡褐色調の皮膚腫瘍(神経線維腫)
16 左側胸部のやや圧痛ある可動性皮下結節(神経鞘腫(シュワン細胞腫))
17 臀部の腫瘍(顆粒細胞腫)
18 爪甲下の半球状腫瘤(爪下外骨腫)
B.中間群病変
1 腰部の弾性硬,紅褐色調皮膚結節(隆起性皮膚線維肉腫)
2 右足の紅色腫瘤(Kaposi肉腫)
C.悪性病変
1 頭部の結節,紅斑(皮膚血管肉腫)
第4章 血液リンパ球系腫瘍
A.良性病変
1 右前腕の紅色結節(偽リンパ腫)
2 耳後部の腫脹(木村病)
3 ドーム状紅色結節(黄色肉芽腫)
4 乳児の手背の褐色結節(肥満細胞腫)
B.悪性病変
1 ほぼ全身に鱗屑を伴う紅斑局面(菌状息肉症)
第5章 転移性腫瘍
1 右鎖骨部の紅色腫瘤と発赤(皮膚転移性胃癌)
2 鼻部の紅色結節(皮膚転移性肺癌)
3 左側胸部の浸潤を触れる紅斑(皮膚転移性乳癌)
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書籍情報
- ISBN:9784758117937
- ページ数:294頁
- 書籍発行日:2016年6月
- 電子版発売日:2017年7月28日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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