やるべきことが見えてくる研究者の仕事術

  • ページ数 : 179頁
  • 電子版発売日 : 2011年5月31日
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商品情報

内容

時間管理力・プレゼン力など、10年後の成功を確実にするために必要な心得を、研究者ならではの視点で具体的に解説した「やるべきことが見えてくる研究者の仕事術」の電子書籍版です。

序文

はじめに

"不透明な時代にやるべきことが見えてくる仕事術"

本書は2008年の1月から10月まで『実験医学』(羊土社 発行)で連載した「研究者のためのプロフェッショナル根性論」とそのオンライン・マテリアルをもとに加筆・修正を加えて一冊の本にまとめたものです。この連載を始めたきっかけは、私が終身雇用が前提の大阪の臨床医から、研究費が稼げなければ次の年の職が保証されないボストンの基礎医学研究者への転職を決心する過程で、独学で勉強したキャリア戦略の考え方を同じような問題に直面する方々と共有したかったからです。「プロフェッショナル根性論」連載の過程で多くの方から激励の言葉をいただき、研究者のキャリアとライフスタイルに関する指針を俯瞰できるようなリソースとしての「プロフェッショナル根性論」の必要性を強く感じていました。そして、連載を終える時期と前後して、リーマン・ショックが起こり、未曾有の経済危機のなか、研究者を含めすべての職業人を取り巻く環境がドラスティックに変化してしまいました。終身雇用制度の崩壊が明らかになり、ジョブ・セキュリティーというものが幻想でしかなかったということが完全に明らかになりました。さらに研究者のキャリアの基盤にも液状化が進行していることが明らかになりました。皆が程度の差こそあれ不透明で先の保証もされていないキャリアを、闇の中を全力で突っ走るように進むことを余儀なくされています。状況は私が今生活している米国でも、ふるさとである日本でも本質的にはそれほど変わらないのではないでしょうか。

そのような状況のなか今年(2009年)になって、四十数年の人生で初めてジョン・スタインベックの『エデンの東』(土屋政雄・訳/早川書房)を読む機会がありました(次頁の引用文参照)。そこで50年以上前に書かれたスタインベックの言葉に、"無謀な企て"としての"実験と挑戦"をすることで生計を立てている私たち研究者が、今必要としているものを見つけた気がしています。


いまの世の中から無謀な企てが消え失せたのは、たぶん、人がもう自分を信じなくなったからだ。自分への信頼がなくなれば、あとにはなにも残らない。誰か強い信念の人を見つけ、その信念が誤りかどうかには目をつぶって、その人の上着の裾にしがみつくしかない。

ジョン・スタインベック/著 『エデンの東』より引用(太字は著者による)


本書は「プロフェッショナル根性論」から『やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術』へとタイトルが進化しました。羊土社・編集部の方々がつけてくれた"やるべきことが見えてくる"というフレーズこそ、この時代に求められていることを端的に象徴していると思います。漠然にせよやるべきことが見えれば、研究者は"無謀な企て"をするのに必要な勇気と自信を持つことができるはずです。本書を読んだ後に、うっすらとでも行動の指針が見えてきたと実感してもらえれば、『研究者の仕事術』の目的は達成されたと言えるでしょう。

いかに働き・いかに生きるかということに関しては、「将来楽をするために若いうちに努力すべき」という「先行努力・逃げ切り型」のライフスタイルで一生安定した生活が保障されると信じることができた時代がありました。今までの蓄えをうまく使ってあとは楽して逃げ切りたいという、私が"ヘタレ"と呼んでいるマインド・セットを、私自身を含め多くの人が心の片隅に持っているのではないでしょうか。しかし、本書で私は、研究者がプロフェッショナル/エキスパートとして誇り高いストロング・ライフを歩むということは、「先行努力・逃げ切り型」のライフ・スタイルに相容れないものであるということを主張しています。仕事の報酬がお金だけであるならば若いうちに努力してお金を貯め、後に楽をするということでよいかもしれません。しかし,研究者がプロフェッショナル/エキスパートをめざす過程では、仕事の最大の報酬とは人間的成長なのです。成長に伴いより大きな仕事に取り組むチャンスが巡ってくるので、決して楽になることはありません。楽しいことも増えますが、同時に苦しいことも増えるのです。これがプロフェッショナル/エキスパートとして働き・生きることの醍醐味なのです。自分自身がそうであったように、環境の変化に直面して足がすくみ、"ヘタレ"な選択をしそうになったときに、本書で紹介した先人の言葉が勇気ある選択をする助けになれば幸いです。

最後に「プロフェッショナル根性論」の連載から書籍化まで一緒に仕事をしてくださった編集部の本多正徳さん、本書の制作を担当していただいた山下志乃舞さん、本の帯に推薦の言葉を書いていただいたミューズ・アソシエイツの梅田望夫さんにこの場をお借りして感謝の意を表させていただきます。


2009年 7月

ボストンの自宅にて
島岡 要

目次

その1:プロフェッショナル研究者への成長の道

A Roadmap to an Independent Thinker

1. 研究者の人生はアブストラクトとして数秒で消費される運命にある

2. サイエンスが最も重要だが、今こそ仕事のやり方を学ぶべきとき

3. 何のために仕事をするのか

4. 研究者として仕事をすべき10の原則

まとめ:研究者のキャリアとは人間的成長の追求という終わりなき切磋琢磨の旅

その2:「好き」よりも「得意」にこだわる仕事術

Strengths-based approach(SBA仕事術)

1. SBAとは何か

2. 研究者にSBA戦略を応用す

3. SBA戦略に関する4つの重要な質問

その3:プロダクティビティーを上げる時間管理術

Get Things Done(GTD)

1. 日々の時間管理術

2. 頭の中を空っぽにして爽快に:脳内RAMのフリースペースの最大化を

3. 脳内RAMを空にするストレスフリーの仕事術

4. GTDによるメール管理術

5. To doリストの実行順序

6. 中・長期的な時間管理術

7. 大統領も実践している人生のプライオリティーを決めるテクニック

その4:自分の世界で一番になる

ニッチマーケティングで自分の研究を売り込め―Art of being the best in the world

1. どうしてランキング1位はますます売れるのか

2. 世界とは

3. 自分の世界でトップの研究者になることをめざす

4. 「自分の世界」に関する3つの重要な質問

その5:批判され/批判して自分を磨く「フィードバック力」

Art of Giving Feedback

1. フィードバック力から得られるもの

2. 建設的なフィードバックの与え方

3. フィードバックがもたらす利益と損失

その6:変化に対する苦痛・恐怖を克服する

Change or Die

1. 変化することの難しさ

2. ズーム&[ズーム]plus:小さな変化を日々経験し耐性をつける

3. 変化に関する5つの重要な質問

その7:自分のストーリーを語る「物語力」

Art of Story Telling

1. ストーリーを語ろう

2. 研究者のためのストーリーの語り方:Lively, Authentic, Context

3. 科学の世界に物語力は必要か?

その8:説得力のあるプレゼンテーション

Presentation to Persuade

1. 研究者のためのプレゼンテーションの心構えに関する重要な質問

2. PresentationとはPersuasion

3. メッセージが伝わらない5つの理由

4. 20分で語るストーリーのトレーニング

その9:日本人中年男性研究者のための英語力向上戦略:人間力英語術

王道ではなく覇道を!

1. 人間力英語術とは

2. 人間力英語術の実践法

3.[人間力英語術]PLUS

4. 洋書を読んで世界を広げる

その10:検索される自分:発信力

The Art of Blogging

1. ホームページは退屈なカタログ、しかしブログは人を惹きつける個人メディア

2. 研究者がブログを始めるべき理由

3. 知的生産装置としてのブログ

4. 信用創造装置としてのブログ

5. ブログを始めよう

その11:創造性とは

Creativity and Effectiveness

1. どうして独立した複数のグループから同じような論文が同時に発表されるのか

2. グラハム・ベルが不慮の事故で亡くなっていたら、電話は存在しなかったのか

3. Multiple independent discovery

4. 創造性を高める方法

付録:研究者の自己啓発とキャリア形成のための20冊

1)生産性を高めるための人生管理術の古典的自己啓発書2冊

2)コミュニケーション力とは人付き合いと人柄のことであると理解する2冊

3)プロフェッショナル研究者としての心得を学ぶ2冊

4)学校では教えてくれない"正しい"キャリアパスを知る2冊

5)起業家から失敗を恐れつつも、挑戦する方法を学ぶ2冊

6)一流のサイエンスストーリーテリングを学ぶ2冊

7)メインのメディアでは報道されないアメリカを知る2冊

8)アメリカの医療の問題点を知る2冊

9)自分の考えを人に伝えるための極意を学ぶ2冊

10)不確実な時代を生き抜くための知見を学ぶ2冊

Column

1:35歳からの15年間こそ自分の成長を意識した攻めのキャリアプランを

2:ラボメンバーの「強み」

3:哲学者モンテーニュも400年前にSBA仕事術を推薦?

4:Not to doリスト

5:「自分の世界」を設定する際に犯しやすい7つの間違い

6:自分のキャパシティーを見極める

7:つっこみ力

8:これからの時代のビジネスに必要な学位はMBAではなくMFA

9:「成功する恐怖」

10:変化を促進する米国流研究システム

11:アイディアをスティキーにする方法

12:プレゼンテーションは最低3回リハーサルを

13:うまく質問するために覚えておくとよい10のポイント

14:英語の勉強に役立つインターネットで手に入るフリーのリソース

15:メンタルトレーニング(修練の場)としてのブログ

plus α

ビジネス心理学的な強みの定義

StrengthsFinder®

心に残るプレゼンテーション

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書籍情報

  • ISBN:9784758120050
  • ページ数:179頁
  • 電子版発売日:2011年5月31日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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特記事項

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