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- 精神医学 マイテキスト 改訂2版
商品情報
内容
精神医学の臨床・教育の最前線で活躍している著者たちが、実際に診た症例を豊富に紹介。精神医学の本質と多職種によるチーム医療の重要性をわかりやすく学べる教科書です。
序文
西川隆,中尾和久,三上章良の三氏の編集により刊行された「精神医学テキスト」(2011)は好評で広くコメディカル教育の現場で活用されていると聞く.この度,この三氏を編集者として,書名を「精神医学 マイテキスト」と変更して上梓する運びとなった.三氏は大阪大学精神医学教室で学ばれた優れた精神科医であり,教室にとっても喜ばしいことであり,序文を書かせていただいた.
編集者の一人は,「精神障害は生命の死に直結するものではないが,多くの患者が絶望的に死を願うほど過酷な病である.そしてその苛酷さの一部は私たちの社会が患者に強いているものかもしれない」と記している.本書を手に取る若い人は,この言葉の重みに耐えられるであろうか.希望と夢を抱いて,これから精神障害者に関わる臨床現場に入ろうとしている若い人たちには,余りに苛酷な言葉ではないかとさえ思った.しかしながら,この言葉には,これから精神医療を担当するであろう仲間たちに,正当な精神医学を理解してほしいという本書の編著者たちの願いと真摯さとが込められている.
精神科領域では,精神疾患と呼ばずに精神障害と呼ぶ.これは二重の意味がある.一つは精神障害は極めて心理・社会的であり,単純な生物・医学モデルでは理解ができないということ.
二つ目は,障害を抱えながら人生を生きていくという時間経過の長さの意味が込められている. 精神医療はこのような精神障害者の力になり回復を助ける臨床現場での作業である.
精神医療はチーム医療である.患者の回復を助けるためには,精神科医だけでなく心理療法士・精神科看護師・精神科薬剤師・臨床検査技師・作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・精神保健福祉士など多職種の協力が必須である.これは,先に述べたような精神障害の特徴を考えれば了解していただけるものと思う.
本書はこれから精神医療を担う若い人たちの勉強を助けることを目的として編まれたものである.一昔前の医学部講義では患者供覧が普通に行われていた.私も患者を師として多くの事を学ばせていただいた.臨床は経験することが大切であり,百聞は一見に如かずということわざがあるように,患者を診せていただくことが,百説を聞くよりも大きな力となる.精神医学の領域では,とくに経験が何よりもものをいう.患者を診ずしては何も言うことはできない.
臨床教育の面からみると残念なことではあるが,最近は個人情報あるいは人権などへの配慮から,患者供覧は行われなくなった.時代の流れであろう.
このような教育の状況を突破するために,本書では随所に工夫がなされている.症例の紹介が多いのもその一つである.編著者はいずれも精神医学の臨床・教育の場で活躍している先生方ばかりであり,患者を診ずして書かれた部分は一つもない.このような臨床に裏打ちされた記述は随所に見られて,学ぶ若い人たちに分かりやすい記述となっている.
本書の監修を依頼されたときに,チームとして精神医療に携わるコメディカルスタッフの教育に役立つものと考えた.病気になる,患者になるということは,それだけで大きな心理的ストレスを与えうるものである.したがって,すべての病人・患者には精神医学・精神医療の助けが必要であると思ってよい.本書はこのような精神医学が掲げる目標に沿って,若い人の勉学を助けたいとの希望が込められている.これから精神科医療にかかわる若い人には,本書を通じて精神医学の本質と多職種によるチーム医療の重要性とを学んでほしい.
2014年2月
大阪大学精神医学教室教授
武田 雅俊
目次
1章 序論─ヒューマニズムとしての精神医学─
1 精神医学の重要性
2 精神医学の方法と考え方
3 精神医療・医学の歴史
4 精神医学の諸分野
2章 精神症候学
1 精神機能の諸要素
2 意識の異常
3 知覚の異常
4 言語・行動の異常
5 記憶の異常
6 知能の異常
7 見当識の異常
8 思考の異常
9 気分,感情,情動の障害
10 意欲の異常
11 自我意識の異常
12 状態像,症候群
【Memo】「自己」と「他者」の認識
3章 脳局在症候
1 脳局在症候(神経心理症候,巣症状)
2 失語
【Memo】高次脳機能障害
3 失認
4 失行
5 記憶障害
6 前頭葉機能障害,遂行機能障害
4章 精神疾患の分類
1 精神疾患分類の特殊性
2 身体病理と精神病理
3 ICD とDSM
4 診断の信頼性
5 診断の妥当性
6 診断と分類の留意点
7 まとめ
【Memo】精神疾患は脳の病気か心の病気か?
5章 検査
(1)心理検査
1 心理検査とは
2 実施時の留意点
3 心理検査の種類
4 知能検査
5 性格検査
6 その他のテスト
7 精神状態や心身両面の症状の評価尺度
8 臨床心理学的レポート
(2)生理学的検査
1 生理学的検査とは
2 脳波(EEG)
3 睡眠ポリグラフ検査(PSG)
4 誘発電位・事象関連電位・脳磁図
(3)画像検査
1 画像検査の種類
2 脳解剖画像
3 脳機能画像
6章 統合失調症および関連疾患
Ⅰ 統合失調症
1 回顧
2 原因
3 症状
4 病型と症例
5 経過と予後
6 診断
7 治療
Ⅱ 関連疾患
1 ICD-10 における統合失調症の関連疾患
2 非定型精神病
7章 気分障害
1 気分障害とは
2 歴史
3 気分障害の分類
4 疫学
5 症状と状態像
6 病因と危険因子
7 診断と鑑別診断
8 経過・予後
9 治療
10 新しい考え方と今後の課題
8章 神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害
1 神経症性障害と類縁障害
2 現代社会とストレス
3 恐怖症性不安障害(F40)
4 他の不安障害(F41)
5 強迫性障害(F42)
6 重度ストレス反応および適応障害(F43)
7 解離性(転換性)障害(F44)
8 身体表現性障害(F45)
9 他の神経症性障害(F48)
9章 パーソナリティ障害,行動障害
1 パーソナリティ障害とは
2 パーソナリティ障害の分類
3 疫学
4 病因
5 経過
6 併存性
7 診断
8 防衛機制
9 診断上の留意点
10 主な治療法
【Memo】行動障害
10章 アルコール関連障害と物質関連障害
1 酒は百薬の長
2 健全な飲酒
3 病的な飲酒
4 アルコール依存症者の心理
5 薬物としてのアルコール摂取
6 離脱症状
7 治療
8 アルコール以外の薬物依存
9 物質を使用しない依存症
11章 器質性精神障害(認知症含む),症状性精神病
1 精神障害とは
2 器質性精神障害(認知症含む),症状性精神病の症状
3 器質性精神障害(認知症含む),症状性精神病の原因疾患
4 認知症をきたす疾患
12章 自閉症を中心とした児童期の精神障害
1 多動性障害と学習障害の歴史
2 多動性障害の症状
3 学習障害
4 自閉症(小児自閉症)
5 児童期のその他の精神および行動の障害
13章 摂食障害を中心とした青年期の精神障害
1 青年期によくみられる精神障害
2 摂食障害
3 神経性無食欲症
4 神経性大食症
5 ひきこもり
14章 てんかん
1 てんかんとは
2 てんかんの分類
3 てんかんの発作
4 てんかん患者にみられる精神症状と性格変化
5 診断のための観察ポイント
6 てんかん患者の心理的問題
7 てんかんに伴う社会的な問題
8 てんかんの治療と看護
9 てんかんの包括的治療
15章 睡眠関連疾患
1 睡眠に関連する用語の使い方
2 ヒトはなぜ眠るのか?
3 睡眠のメカニズム
4 睡眠に関連する疾患
5 不眠を呈する疾患
6 日中の眠気を呈する疾患
7 睡眠中に異常行動や異常運動が生じる疾患
8 生体時計の乱れが原因となる疾患
9 精神疾患と睡眠
10 スリープ・リテラシーを向上させよう
16章 治療
(1)身体的治療
1 身体的治療とは
2 薬物療法
3 電気けいれん療法(ECT)
(2)精神療法
1 精神療法とは
2 理論,実践,治療効果研究,実験
3 小精神療法ないし支持的精神療法
4 意識変容・体験的精神療法
5 洞察的精神療法
6 指示的精神療法
7 家族療法
8 リハビリテーション
9 東洋的治療
10 その他
17章 精神医療に関連する法律と制度
1 精神保健福祉法
2 「障害者自立支援法」成立までの精神障害者への福祉サービス
3 障害者自立支援法
4 障害者総合支援法
5 成年後見制度
6 医療観察法の制度
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書籍情報
- ISBN:9784765315944
- ページ数:216頁
- 書籍発行日:2014年4月
- 電子版発売日:2015年1月23日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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