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- 親切な医療統計学
商品情報
内容
必要十分な統計学的知識を身につけて、論文を読んだり、医療研究を行ったりできることを目指した、初学者向けのテキストです。
序文
はじめに
近年,好むと好まざるとに関わらず,情報の洪水が押し寄せるようになりました.真偽の程もわからない情報の濁流に身を任せていては危うい方向へと流されてしまいます.私たちは常に,リスクを最小限にするよう決断を迫られています.情報化社会を生きのびるには,一人一人が統計リテラシー(統計的な考え方)を身に付けなければなりません.
医療分野も例外ではありません.多くの医療施設で最新の高度な医療が行われるようになった現在,医療従事者は,日常的に,専門誌に掲載された科学論文を読まなければなりません.研究が正しく行われたかどうかを判断し,発表された結果を批判的に評価する能力が求められるようになったのです.「客観的な証拠に基づく医療(Evidence-BasedMedicine,EBM)」の考え方が世界的に普及してきたことに伴って,統計学の重要性が広く認識されるようになったのは喜ばしいことです.
残念なことに,医療分野では,研究者の統計リテラシーの不足に加えて,医療研究の特殊性を理解できる統計学者が少ないことも原因となって,他の分野に比べて統計学の誤用が多いことが以前から指摘されてきました.相互理解が不十分なまま,論点がかみ合わない議論の末,さらに誤用を重ねる医療研究者は少なくありません.このような状態が続けば医療研究の発展を妨げることになりかねません.
本書は,医療研究者や病院実務従事者が,十分な統計学的知識を身に付けて,医療研究を行ったり論文を読んだりできるようになることを目指した初学者向けのテキストです.特に薬学部においては,2012年より適用された薬剤師国家試験の出題範囲のなかで,統計学的な知識を必要とする部分を網羅していますので,医療統計学の教科書,あるいは,副教材として利用することができます.
統計ソフトの使用経験のない医療従事者や学生であっても使えるように,主として,表計算ソフトexcelを用いて数値例を説明しました.統計用語はすべて,日本語と英語のいずれからも検索できるようにしてあります.特に重要な用語は「基本的な統計用語」として定義を示しました.また「論文を書く時の注意事項」では,主要な臨床系雑誌の投稿規定に従って解析結果を正しく報告できるよう,注意すべき点を示しました.
最後に,長年にわたって編集を担当していただき,本書を出版するにあたっても有益な助言と励ましをいただいた村上裕子氏をはじめ,さまざまな側面から調査,検討をして下さった金芳堂の皆様に深く感謝の意を表します.
2014 年2 月
奥田 千恵子
目次
1.医療研究を始めるためにまず知っておくこと
1.1 医療統計学とは
1.2 医療研究のデータとは
1.3 医療研究の倫理
1.4 基本的な統計用語
[1] 母集団と標本
[2] 真の値
[3] 誤 差
[4] 確 率
[5] ランダム
2.医療分野の研究デザイン
2.1 研究デザインの分類
2.2 観察的研究の代表的デザイン
[1] 横断的研究
[2] ケース・コントロール研究
[3] 前向きコホート研究
2.3 実験的研究の代表的デザイン
[1] パラレルデザイン
[2] クロスオーバーデザイン
2.4 バイアスの回避手段
[1] さまざまなバイアス
[2] 選択基準と除外基準の設定
[3] マッチング
[4] ランダム抽出
[5] ランダム割り付け
[6] 盲検化
[7] 解析時におけるバイアスの回避
3.統計解析の準備
3.1 コンピュータの利用
[1]統計ソフト
[2]統計ソフトを選ぶポイント
3.2 excelの使い方
[1]データ入力
[2]本書で用いる統計関数
[3]統計関数の使い方
[4]分析ツール(データ分析)の使い方
[5]グラフの描き方
4.データ記述のための統計-記述統計-
4.1 記述統計とは
4.2 連続量の要約
[1]データの全体像を捉える
[2]データの分布が正規分布か否か調べる
[3]データを代表する「中心性」の指標を求める
[4]データの散らばりを示す「ばらつき」の指標を求める
[5]必要に応じて,データをグラフで表す
4.3 離散量の要約
[1]各カテゴリの度数を求める
[2]必要に応じて,各カテゴリの割合を求める
[3]必要に応じて,データをグラフで表す
5.データ解析のための統計-推測統計-
5.1 推測統計で用いる基本概念
[1]推測統計とは
[2]母数と推定値
[3]標準誤差
[4]さまざまな理論的確率分布
5.2 区間推定
[1]信頼区間とは
[2]信頼区間の算出
5.3 統計学的仮説検定
[1]帰無仮説と対立仮説
[2]α過誤とβ過誤
[3]P値の算出
[4]P値と信頼区間の関係
6.推測統計で用いられるさまざまな手法
6.1 検定の前提条件を調べる
[1]正規性の検定
[2]等分散性の検定
6.2 群間でデータを比較する
〔1〕連続量データの比較-パラメトリック検定法
1.対応のない t 検定
2.ウェルチの t 検定
3.対応のある t 検定
4.ボンフェローニ補正法-多重比較法
5.ダネット検定-多重比較法
6.1元配置分散分析
7.2元配置分散分析
◇関連のある手法:反復測定分散分析,共分散分析
〔2〕順序カテゴリデータの比較-ノンパラメトリック検定法
8.マン・ホイットニー検定
9.ウィルコクソン符号付き順位検定
◇関連のある手法:クラスカル・ウォリス検定,フリードマン検定
〔3〕2値データ,および,順序のないカテゴリーデータの比較
10.独立性のχ2検定
◇関連のある手法:傾向性のχ2検定,マクニマ検定,マンテル・ヘンツェル検定)
11.フィッシャー直接確率法
12.比率の比較-リスク比とオッズ比
6.3 2種類の変数間の関係を調べる
〔1〕相関分析
13.ピアソンの相関係数
14.スピアマンの相関係数
◇関連のある手法:偏相関係数
〔2〕回帰分析
15.線形回帰分析-2変量解析
16.線形回帰分析-多変量解析
◇関連のある手法:非線形回帰分析,ロジスティック回帰分析,コックス比例ハザード回帰分析
◇そのほかの多変量解析:多変量分散分析,因子分析,判別分析,クラスター分析
6.4 医療研究で用いる特殊な解析法
17.疫学指標
18.生存時間分析
◇関連のある手法:ログラン検定,コックス比例ハザード回帰分析
19.診断法の有用性の指標
◇関連のある手法:ROC曲線
20.データ数の算出
21.非劣性検定
22.メタアナリシス
医療研究によく用いられる各種統計ソフトに含まれる主な解析手法
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書籍情報
- ISBN:9784765315968
- ページ数:216頁
- 書籍発行日:2014年5月
- 電子版発売日:2014年11月14日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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