- m3.com 電子書籍
- 高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション1
商品情報
内容
序文
出版にあたって
この出版物は,「高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション」に関する研究班の研究事業の一環として,2013(平成25)年4月から2014(平成26)年3月までの成果に基づき刊行する.
近年,リハビリテーション医療分野では,脳障害者の自動車運転に関する諸問題が大変注目されるようになってきた.印象に残った我々の最初の症例は,1990(平成2)年に産業医科大学病院に入院してリハビリテーションを実施した患者で,被殻出血による左片麻痺と半側空間無視を呈していた.退院時に患者と家族より自動車運転再開の質問を受け,半側空間無視があるので運転禁止と説明したが,1994(平成6)年に自動車運転を再開し自損事故を起こしてしまった.そのため試行錯誤の末,1996(平成8)年に自動車運転適性と技術評価プログラムを作成し,「高次脳機能障害と自動車運転」の概要を認知神経科学2007)に投稿した.しばらくして脳外傷の患者会が適切な医療や社会支援が受けられず困窮しているので国の支援を要望し,これを受けて厚生労働省は2001 年に高次脳機能障害支援研究班を設置して支援モデル事業を開始した.この支援モデル事業には,北海道・札幌市,宮城県,千葉県,埼玉県,神奈川県,岐阜県,三重県,大阪府,岡山県,広島県,福岡県・福岡市・北九州市,名古屋市が参加した(岡山県と広島県は2002 年より参加).蜂須賀は研究班班員として,産業医科大学病院は福岡県・福岡市・北九州市の合同体が指定する支援拠点機関としてモデル事業に参加した.2006(平成18)年からはモデル事業を全国規模に拡大した支援事業が始まり,全国各地で高次脳機能障害者に対して障害判定,訓練,生活指導や助言等が行われるようになったが,患者や家族からは社会参加や職場復帰に際し,しばしば自動車運転再開の可否を相談され返事に窮することも稀ではなかった.我々は2006(平成18)年より高次脳機能障害リハビリテーションの一環として,健常者の事故常習者に対する自動運転シミュレーターであるKM 式安全運転助言検査を導入し,これらの成果をもとに2009(平成21)年に高次脳機能障害者を対象とする簡易自動車運転シミュレーターを開発し,臨床的有用性の検証作業を開始した.
これらの経緯のもとで,2012(平成24)年秋に日本損害保証協会の自賠責運用益拠出事業の申請を行い,幸運にも採択されたので2013(平成25)年4月より3年間の計画で「高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション」に関する研究事業を開始することにした.なお,研究体制は厚生労働省科学研究費「高次脳機能障害支援研究班」班長の中島八十一先生を顧問とし,高次脳機能障害者の自動車運転に関する臨床研究に取り組んでいる専門家の方々に班員をお願いした.
顧問:国立障害者リハビリテーションセンター 学院長 中島八十一(医師)
代表研究者:産業医科大学リハビリテーション医学 教授 蜂須賀研二(医師)
分担研究者:産業医科大学若松病院リハビリテーション科 診療教授 佐伯 覚(医師)
産業医科大学リハビリテーション医学 講師 岡﨑哲也(医師),助教 加藤徳明*(医師),
大学院生 松田康父美(医師)
産業医科大学病院リハビリテーション部 飯田真也*(作業療法士)
産業医科大学産学連携・知的財産 講師 橋本正治(コーディネイター)
九州大学 名誉教授 松永勝也(認知科学者)
九州産業大学情報科学部 教授 合志和晃(情報工学者),助手 林 政樹(情報工学者)
福井総合病院リハビリテーション科 部長 小林康孝(医師)
富山県高志リハビリテーション病院リハビリテーション科 医長 吉野 修(医師)
目白大学保健医療学部 准教授 藤田佳男(作業療法士)井野辺病院総合リハビリテーション部 課長 加藤貴志(作業療法士)
横浜市総合リハビリテーションセンター機能訓練課 西 則彦(作業療法士)
千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション療法部 副部長 小倉由紀(作業療法士)
(2013 年4月結成,*は事務局幹事)
この研究班の活動として,1)高次脳機能障害者の自動車運転再開に関する調査研究,2)簡易自動車運転シミュレーターの市販モデル開発,3)「自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会」を年1回開催して情報発信,4)高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーションに関する基準作成を目標に挙げた.
研究班の活動として,第1回自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究会を2013(平成25)年10 月5日(土) 13:00 ~ 17:00,JR 小倉駅近隣の北九州国際会議場で開催した.当初は200 人程度の参加を想定していたが予想を遙かに上回る450 人の参加があり,急遽ロビーと会議室2部屋を追加しケーブル中継をする程の盛況であった.
この問題への関心の高さを実感するとともに,多くの医療福祉関係者がこの問題で苦労していたことが確認できた.このような状況を考慮すると,研究班の研究成果や研究会での発表内容は公開して医療福祉関係者や患者・家族に広く還元すべきと考え,3回にわけてこれらの研究成果を刊行することにした.第一巻は導入として,わが国の自動車運転免許制度,健常者の自動車運転と事故発生,高次脳機能障害者の自動車運転と社会参加の状況を解説し,臨床研究や社会的対応が先行しているてんかんと認知症の自動車運転に関しても論じていただく.さらに,高次脳機能障害者の自動車運転再開に関してリハビリテーション病院の具体的取り組みを報告してもらい,海外論文と簡易自動車運転シミュレーターも紹介する.なお,自動車運転を医療の立場から取り上げている研究会に「運転と認知機能研究会」と「障害者自動車運転研究会」があり,既に活発に活動しているので紹介する.なお2015(平成27)年に第2巻,2016(平成28)年に第3巻を発刊する計画であり,自動車運転シミュレーター,自動車運転再開の判断基準,実車教習導入や評価なども掲載する予定である.
本書が,高次脳機能障害者の自動車運転再開の対応に難渋している医療福祉関係者の指針となり,社会参加や職場復帰の際に自動車運転再開の必要性に迫られている患者・家族の一助になることを希望する.
最後に第1巻の出版に際し,趣旨に賛同しきわめて短い期間で執筆していただいた著者の先生方に深謝する.
2014 年 春
「高次脳機能障害者の自動車運転再開とリハビリテーション」に関する研究班
代表研究者 門司メディカルセンター 院長/産業医科大学 名誉教授
蜂須賀研二
目次
● 出版にあたって
● 序1 「自動車運転再開とリハビリテーションに関する研究班」発足に寄せて
● 序2 自動車運転再開にあたっての課題と展望
Ⅰ.自動車運転と社会参加
1.わが国の自動車運転免許制度
2.健常者の自動車運転と事故発生
3.高次脳機能障害者の自動車運転と社会参加
4.てんかん患者の自動車運転と社会参加
5.認知症患者の自動車運転と社会参加
Ⅱ . リハビリテーション病院の取り組み
1.脳損傷者の運転適性―福井総合病院における取り組み
2.千葉県千葉リハビリテーションセンターの取り組み
3.井野辺病院の取り組み
Ⅲ . 研究および開発
1.高次脳機能障害者の自動車運転再開に関する研究報告:文献レビュー
2.運転と認知機能研究会
3.障害者自動車運転研究会
4.自動車運転再開可否診断用検査システム
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
-
全文・
串刺検索 -
目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
-
PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
-
南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
-
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:21.0MB以上(インストール時:45.7MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:84.0MB以上
-
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:21.9MB以上(インストール時:54.8MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:87.6MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784765316064
- ページ数:100頁
- 書籍発行日:2014年5月
- 電子版発売日:2015年4月3日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍(iOS/iPhoneOS/AndroidOS)が必要です。
※書籍の体裁そのままで表示しますため、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。