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- マイクロサージャリーの基本手技
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内容
この分野の世界的権威である著者が、40年の経験をもって初心者向けに解説。何がスタンダードであるかを明らかにしつつ誰にでもわかるように詳述した。パイオニアが次世代に贈るマイクロサージャリーのA to Z。
序文
序
1972年9月、著者が東京警察病院形成外科において、後に世界で最初の遊離皮弁臨床成功例と言われたマイクロサージャリーによる頭皮皮弁の遊離移植を行ってから、すでに40年以上が経った。時の過ぎるのが、いかに早いかを実感している昨今である。
著者は、また、1972年ウィーンで創立された国際再建マイクロサージャリー学会(ISRM、第1回会長:Millesi H教授、1999年よりWorld Society of Reconstructive Microsurgery-WSRM-と改名)や、1974年発足したマイクロサージャリー研究会(第1回会長:玉井進先生、1987年から日本マイクロサージャリー学会に改称)などにも創立当初より参加し、会長・理事長職なども経験させていただき、若い時から一貫してマイクロサージャリーとともに歩んできた。
すでに多くの雑誌などに書いているが、1970年初頭、東京警察病院形成外科のレジデント2年目の終りに、恩師 大森清一先生に強く勧められて病院の動物実験室で練習を始めたのが、著者のマイクロサージャリーのきっかけであった。当時はマイクロサージャリー用の器具や顕微鏡、針糸なども粗悪なものが多く、手技を詳述した教科書の類もなかったので、Buncke HJ、Cobbett JRなどの論文を参考にしながら独自に手技を開発するしかなかった。卒業後、大学に残らなかった著者にとって動物実験は未知の世界であり、ラットの麻酔など動物実験法を手取り足取り教えて下さった薄 丈夫先生(元大阪住友病院形成外科部長)がおられなかったなら、著者のマイクロサージャリーは完成できなかったと思っている。
このように独自に開発した微小血管外科であったが、幸い臨床例にも恵まれた環境にあったため、3年後の1973年には約40例のfree flapを経験することができた。同年11月、米国形成外科学会のパネルでこの40例の経験を報告した時は、すでに有名であったDr.Buncke HJ、Dr.Daniel RK、Dr.O' Brien BMなどの発表したわずか1~2例程度の経験に比べると圧倒的な違いがあったため、たちまち有名になってしまった。また、後日機会があって、玉井進先生、Dr.Buncke HJやDr.Acland RDの手技も拝見し、自分の開発した手技が大きく異なってはいないことを確信した。そして、大森喜太郎氏、鳥居修平氏、関口順輔氏、中西秀樹氏など多くの仲間とともに東京警察病院を世界のマイクロサージャリーのメッカの一つに育て上げることができた。
1977年11月、著者は東大形成外科助教授(現 准教授)として赴任し、国立がんセンター頭頸科海老原敏先生(後の国立がんセンター東病院院長)他の方々とともに、頭頸部癌切除後の再建にfree flapを用いるようになった。
一方、東大病院では、山田敦氏(元東北大学形成外科教授)、梁井皎氏(順天堂大学医学部名誉教授)をはじめ数多くの若い人たちにマイクロサージャリーを教える機会を得た。東大退官後の最近10年間は杏林大学病院で教えてきたが、この間、著者が目指したものは、安全で確実な微小血管吻合手技の確立と標準的なfree flapの開発であった。これは特に、患者の生命予後を左右する頭頸部癌切除時の再建などには必須であり、最終的に太く、長い血管柄を持つ遊離皮弁を選択するようにもなった。
最近では、皮弁組織採取部の犠牲の少ない穿通枝皮弁なども数多く報告されるようになり、移植組織そのものの選択範囲は大変広くなっている。さらに、より細い血管の吻合にチャレンジする人も多くなったが、十分なマイクロサージャリーの基本手技を獲得し、臨床経験を積んだうえで行うべきであると考える。
本書は、著者が過去に出版した「微小血管外科(克誠堂出版 1977)」と「MicrovascularTissue Transfer: Fundamental Techniques and Clinical Applications(IGAKU-SHOIN1983)」がともに絶版になったため、克誠堂出版の依頼により新しく書き起こしたものである。両書の根底の考え方にもあるように「マイクロサージャリーの基本手技」を詳述する。これからマイクロサージャリーを学ぼうとする若い医師はもとより、より一歩前へ進むことを希望する再建外科医の参考になれば幸いである。
2015年2月
杏林大学医学部形成外科学教授
東京大学名誉教授
波利井 清紀
目次
<<<基礎編>>>
Introduction
1 マイクロサージャリーとは
2 マイクロサージャリーの対象
1章 マイクロサージャリーの器械・器具および縫合材料
1 手術用顕微鏡
本体と支柱/観察鏡筒と顕微鏡の倍率/照明と付属部品/消毒と使用法
2 器具
持針器/鑷子/剪刀/血管鉗子(マイクロクリップ)/その他
3 縫合糸
2章 マイクロサージャリーへの入門
1 顕微鏡のセットアップ
2 手の固定
3 縫合練習 1:器具結紮
4 縫合練習 2:ラバーやシリコーンチューブによる練習
基本セット/顕微鏡下操作の基本練習/縫合練習の開始/
シリコーンチューブによる縫合の基本練習/支持糸の位置と縫合の順序
5 縫合練習 3:鶏肉の血管による練習
3章 小動物を使った基本手技の練習
1 小動物の麻酔方法
ラットの麻酔/家兎の麻酔
2 ラット腹部大動脈端々吻合法の練習
手術準備とラットの固定/大動脈の露出と剥離/
クリッピングと切断/外膜切除/動脈端々吻合法の練習
吻合部のチェック/縫合糸の数
3 ラット総腸骨動脈端々吻合法と端側吻合法の練習
総腸骨動脈の露出/吻合練習
4 ラット総頸動脈端々吻合法の練習
総頸動脈の露出/吻合練習
5 ラット大腿動脈端々吻合法の練習
大腿動脈の露出/吻合練習
6 ラット静脈吻合法の練習
端々吻合法の練習/端側吻合法の練習
7 外径の異なる血管の吻合法
外径の小さな血管を斜めに切る端々吻合法/Fish-mouth法
Sleeve anastomosis/端側吻合法/静脈移植
4章 動物による微小血管吻合の応用練習
ラットによる練習モデル
1 遊離皮弁:下腹壁皮弁の移植
下腹壁皮弁の挙上/同所性の移植/異所性の移植
2 遊離皮弁:胸部皮弁の移植
胸部皮弁の栄養血管/胸部皮弁の挙上/遊離移植/体幹皮筋皮弁
3 切断下肢再接着と異所性移植
切断下肢の作成/再接着(同所性移植)/異所性遊離移植/その他(同種異所性移植)
家兎による練習モデル
1 切断外耳の再接着
手術準備/切断外耳の作成/再接着/術後経過
2 耳介島状皮弁の移植
5章 微小血管吻合の組織学的所見
組織学的所見による開存率の検討/開存率の高い吻合法/その他:動脈の切断について
6章 血管拡張剤と抗血栓剤
1 血管拡張剤
塩酸リドカイン/塩酸パパベリン
2 抗血栓剤
ヘパリン/抗血小板剤
3 血栓溶解剤
7章 末梢神経縫合法の基本手技
1 末梢神経の解剖
神経束 Funiculusまたは Fasciculus/血管系
2 神経縫合法
縫合法の種類/縫合材料
3 自家神経移植
4 ラットでの練習
8章 リンパ管吻合法の基本手技
1 リンパ管静脈吻合法の適応
2 基本手技
3 術後成績
本術式の有効性について/術後成績の測定について
<<<臨床編>>>
1章 切断手指再接着術
1 切断手指の応急処置と搬送
応急処置/搬送
2 術前の評価、適応の決定と術前準備
局所および全身状態の評価/再接着適応の決定/検査とインフォームド・コンセント
3 再接着術の基本手技
麻酔/手技
4 術後管理と血流のモニタリング
固定と包帯/血流のモニタリング/抗凝固剤の投与
5 切断指再接着術の成功率と予後
6 臨床例
症例1/症例2
2章 遊離皮弁の基本知識
1 皮弁の分類と遊離皮弁
血行形態による皮弁の分類/皮弁組織と分類
2 遊離皮弁の基本手技
適応と症例の選択/術前の準備/基本手技/術後管理/合併症と対策
3章 遊離皮弁・穿通枝皮弁移植
I 鼠径皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2/症例3
II 胸三角筋部(DP)皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
III 頭皮皮弁・側頭筋膜弁
頭皮皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
側頭筋膜弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例
IV 橈側前腕皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2/症例3
V 前外側大腿皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2/症例3/症例4
VI 肩甲皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
4章 遊離筋皮弁・筋弁移植
I 広背筋・前鋸筋
広背筋
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈/神経
3 手技
体位/デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/
皮弁採取部の閉鎖/皮弁のmodification/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2/症例3
前鋸筋
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈/神経
3 手技
体位/デザイン/挙上と採取/合併症と対策
II 腹直筋
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈
3 手技
体位/デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/
皮弁採取部の閉鎖/皮弁のmodification/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2/症例3/症例4
III 薄筋
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈/神経
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例
IV 神経血管柄付き遊離筋肉移植
1 特徴と適応
2 筋肉の血管と神経
3 陳旧性顔面神経麻痺
再建法の分類/手技/合併症と対策
4 四肢の麻痺
適応と症例の選択/手技
5 臨床例
症例1/症例2/症例3/症例4
5章 血管柄付き遊離骨・骨皮弁移植
I 骨移植の基本知識
1 骨移植について
2 血管柄付き骨移植について
3 血管柄付き遊離骨移植について
II 腸骨
1 特徴と適応
2 栄養血管による区別
3 深腸骨回旋動静脈柄による腸骨・骨皮弁移植
4 手技
デザインと採取/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
5 臨床例
症例1/症例2
III 肩甲骨
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
IV 腓骨
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈/皮弁への血行
3 手技
術前の準備とデザイン/皮弁の挙上/皮弁採取部の閉鎖/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
6章 足・趾からの血管柄付き遊離移植
I 足背皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
動脈/静脈/神経
3 手技
デザイン/皮弁の挙上/採取と移植/
皮弁のmodification/皮弁採取部の閉鎖と合併症の回避
4 臨床例
症例1/症例2
II 足趾部分移植
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
デザイン/皮弁の挙上と採取
4 臨床例
症例1/症例2
III Wrap-around flap
1 特徴と適応
2 手技
デザイン(母指再建の場合)/皮弁の挙上と採取/移植/
皮弁採取部の閉鎖と後遺障害
3 臨床例
症例
IV 足趾移植
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
第2趾の採取/趾採取部の閉鎖と後遺障害
4 臨床例
症例
V 足底皮弁
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
デザイン/皮弁の採取/皮弁採取部の閉鎖と後遺障害
4 臨床例
症例
VI 合併症と対策
7章 内臓の遊離移植
I 空腸
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
採取/移植/合併症と対策
4 臨床例
症例
II 大網
1 特徴と適応
2 栄養血管
3 手技
デザイン/採取と移植/合併症と対策
4 臨床例
症例1/症例2
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書籍情報
- ISBN:9784771904385
- ページ数:320頁
- 書籍発行日:2015年4月
- 電子版発売日:2019年2月27日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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