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- かわる!わかる!おもしろい! コペルニクスなガス交換
商品情報
内容
前作に引き続き、流体力学・コンピュータシミュレーションに基づき、呼吸の「常識」を覆す! ガス交換の新理論への転回は、埋め込み型人工肺の実現可能性をも秘めていた。
序文
監修者序文
この度、北岡裕子女史が『コペルニクスな呼吸生理』の続編ともいうべき、『コペルニクスなガス交換』を上梓した。
何故、私が女史というかは前作の巻頭の言葉を読んで頂きたい。今回の『コペルニクスなガス交換』も私が監修を担ったが、その役割は、従来の呼吸生理やガス交換の知識に凝り固まっている私をはじめとした呼吸に係わる医療者の代表として、この和服の女史が唱える新しい概念と意見を戦わせることであった。
私はWestなど偉い先生たちが著した呼吸生理や病態生理を何とか理解し、その理論に臨床経験などを加えて理解している、どちらかというと"呼吸理論崇拝者"であるが、北岡裕子先生はまったく違う。流体力学の4次元解析の研究技術をもとに、理論でなく"実際にやってみる研究者"である。だから、先生の文章は確固とした自信に満ちあふれて書かれている。
私も論争しながら北岡理論を徐々に理解していったが、まだ完全ではない。ただ、これまで、これしかないと思っていた考え方に、異なる考え方があることを気づかせてくれた。この本は、従来のガス交換の生理や病態生理を理解していなければ、そのおもしろさは半減するかもしれない。ぜひ、両方を勉強して比較することをお薦めする。
また、私にとってこの本の最も楽しみな箇所は、北岡先生のウィットに富んだコラムである。今回はPPAPも出てくる。1本のペンと1個のリンゴが1体のリンゴペンになるロジックは正しいのか、その危険性は、などが真面目に述べられている。ぜひ、コラムも楽しみにしながら手にとって頂きたい。
北岡裕子女史は、やはり非凡な研究者であるということをこの本を読んで確認した。皆さんも、是非、一読して頂きたい。
2018年3月吉日
岡山大学名誉教授
氏家 良人
序文
3年前の2015年に拙著『コペルニクスな呼吸生理』を上梓させていただいた。本書はその続編である。2014 年夏に氏家良人先生に前著の執筆を勧められたときには、ガス交換のシミュレーションを始めたばかりだったので、「呼吸生理」というタイトルにもかかわらず、ガス交換については触れておらず、換気力学が主たる内容だった。3年を経てガス交換のシミュレーションがほぼ完成し、既存の教科書に書いてあるガス交換理論には、換気力学と同様、重大な欠陥があることが明らかになった。
ガス交換の理論については、臨床医だった頃も漠然とした疑問を抱いていた。しかし、当時は「欧米の高名な専門家が熟慮の末に導き出した理論なのだから、きっと根拠となる論文があり、そこに緻密な考察が述べられているのだろう。今の自分にはそれらの論文を読みこなす能力も時間もないから、とりあえずは、教科書を信じておこう」と思っていた。私だけでなく少なからぬ呼吸器科医の方々がそのように思っておいでだろう。しかし、今回、1940年代の文献までさかのぼって調べたが、根拠となる論文は見いだせなかった。そして、既成概念を排して、肺胞の4次元構造を流体力学と組み合わせて考えると、ガス交換の理論はまったく違うものになること(本書1章、2章)、肺拡散能や血液ガスなどの臨床検査データを合理的に解釈できること(3章、4章)、呼吸管理の方法を改良できること(5章、6章)がわかってきた。さらには、これまで不可能と考えられてきた埋め込み型人工肺も夢ではないと確信するに至った(7章)。
古代ギリシアの哲学者プラトンに「洞窟の囚人」の比喩がある。洞窟の中で鎖につながれたまま暮らしている人々がいる。彼らは前しか見ることができず、後ろから差し込んでいる明かりを見ることはできないので、壁に映る影を観察して、それらの関係を解明しようと努力している。ある日、彼らのひとりが鎖を断ち切って後ろを振り返り、まったく違う世界が広がっていることに気づく。彼は仲間に自分が見たことを伝えるが、目が眩んでよく見えなかったこともあり、信じてもらえない。しかし、だんだん目が慣れてきて、はっきり見えるようになると、彼は自身の使命を自覚する。仲間の目を明かりの方に向けて、鎖を断ち切ることである。
我々は誰しも、多かれ少なかれ、既成概念に囲まれて暮らしている。既成概念のおかげで、やみくもな思考に費やす時間を省略できている。その道の権威が著した教科書は、いわば既成概念の城壁である。既成概念といえども、必要あらば更新されるべきであり、現実との齟齬があれば修正されるべきであるが、呼吸生理学の教科書は、半世紀の間、ほとんど変わっていない。関連分野の進歩にもかかわらず、批判的な論文が皆無だったわけでもないのに、半世紀変わらない教科書は、光の射さない洞窟と同じではないか。
他学部を卒業してから医学部に入学して医師になる人は、さほどまれではない。しかし、医学部を卒業して臨床経験を経た後に工学部に入学し、医工融合研究を行なっている人間はまれだろう。まれな人間の経験を呼吸器の診療と研究に携わる方々に共有していただきたいという思いから、本書の出版を思い立った。
研究者が自説を主張する方法として最も効果的なのは、権威ある国際的な学術誌に原著論文を投稿し、査読を経て掲載されることであろう。ただし、学術誌の編集者と査読者は当該分野で主導的な役割を果たしている人物で、学界の共通認識を擁護する立場にある。定説を理論的に批判する論文が採択される確率はきわめて低い。また、雑誌の原著論文という形式は、複数の現象に対して統一的な理論を展開するには、適切とは言い難い。そこで、日本の臨床家に通読していただくのに最も有効な方法として、和文の単行本という形にさせていただいた。前著に引き続きご監修いただいた川崎大学の氏家先生、克誠堂出版編集部の皆様のご支援のたまものである。
日頃より研究にご協力いただいている大阪大学医学部附属病院呼吸器内科の木島貴志病院教授(現兵庫医大呼吸器内科主任教授)はじめ医員の先生方に感謝する。また、研究環境をご提供いただいている株式会社JSOLエンジニアリングビジネス事業部の皆様に感謝する。
2018年3月吉日
株式会社JSOLエンジニアリングビジネス事業部
学術顧問
医学博士・工学博士
北岡 裕子
目次
第1章 ガス交換、ゼロから考えよう
1 換気とガス交換の関係
2 ガス交換、何が交換されるのか
3 肺胞気式を再点検、なぜに呼吸商?
4 肺胞換気量を再点検、単位を揃えよう!
5 流体力学にもとづいたガス交換理論の再構築
6 死腔を再点検、まぼろしの「生理学的死腔」
7 死腔洗い出し効果をざっくり定量化
COLUMN
1-1 PPAPに学ぶ数式のオキテ
1-2 流量(flow rate)と流速(velocity)は違う
第2章 肺胞で起こっていること
1 肺胞系の構造
2 ガス交換の最小単位は亜細葉
3 肺胞におけるガス分子の移動
4 肺胞の運動によって換気がなされる
5 ガス交換障害の最重要病変は肺胞虚脱
COLUMN
2-1 開閉するのは、管か口か?
2-2 同調圧力
2-3 折り紙による立体認知訓練
第3章 換気と血流のバランス
1 簡単なコンパートメントモデルで考える
〔換気血流比がどちらのパートも等しい場合/死腔効果/シャント効果〕
2 いろいろな換気血流比
3 肺内シャントが換気血流不均等分布の本態
4 肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDo2)の意味するところ
COLUMN
3-1 換気量と気流量の区別
3-2 含気と換気の区別
第4章 肺拡散能を徹底解明
1 拡散能に関する従来の考え方
2 毛細血管通過時間の怪
3 肺拡散能は有効肺血流量の指標
4 間質性肺炎におけるガス交換障害の本態
〔間質性肺炎の「間質」とは/間質性肺炎における肺胞壁の
形態変化/DLCO低下の原因は肺胞虚脱による血流シャント〕
COLUMN
4-1 匂いを嗅ぐときクンクンする理由
4-2 毛細血管の通過時間について
第5章 非侵襲的人工換気:ハイフローセラピーを中心に
1 ガス交換の異常を機械を用いて是正する
2 ハイフローセラピーとは
3 ハイフローセラピー下の気流をシミュレート
〔呼吸器系のコンピュータモデル/計算方法/ハイフローによる
CO2洗い出し/ハイフローによる気道内圧上昇〕
4 呼気中の気道内圧増加の臨床的意義
5 ハイフローセラピーvs.NPPV
COLUMN
5-1 職業としての学問
5-2 「着物ビズ」推進運動、続行中
第6章 侵襲的人工換気:高頻度換気を中心に
1 ARDSと肺保護換気
2 高頻度換気(HFV)に関する従来の考え方
3 HFV中の気流をシミュレート
〔コンピュータモデルと計算方法/計算結果/極小換気量でも換気がなされるメカニズム/1回換気量と換気効率の関係/換気頻度と気道内圧振幅の関係〕
4 換気回路のデザインによる換気効率の向上
COLUMN
6-1 マックス・ウェーバーの死因
6-2 進路指導の思い出
第7章 埋め込み型人工肺は作れる
1 人工肺について
2 肺胞系の4Dモデル
〔亜細葉内気流路生成アルゴリズム/肺胞生成アルゴリズム/肺胞壁に毛細血管を備えた亜細葉モデル〕
3 換気・血流・拡散シミュレーション
〔計算方法/計算結果〕
4 埋め込み型人工肺が備えるべき条件
5 埋め込み型人工肺を作ろう
COLUMN
7-1 諏訪紀夫先生の『病理形態学原論』
7-2 天動説と地動説
付録 肺胞折り紙モデルの作り方
1 折り紙用紙のコピー
2 肺胞モデルの作成
3 胎児肺胞管モデルの作成
4 成体肺胞管モデルの作成
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書籍情報
- ISBN:9784771904996
- ページ数:140頁
- 書籍発行日:2018年4月
- 電子版発売日:2019年3月20日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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