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- 脂肪注入移植術
商品情報
内容
序文
編集にあたって
自分の脂肪を身体の他の部位に移植するという方法は,19世紀末に初めて行われたといわれています。脂肪を塊のまま,または砕いて移植したり,動物の脂肪と混ぜたりと,さまざまな手法が行われてきました。当初は生着のメカニズムも不明で,安定した結果が得られず,標準化した方法が確立するには至りませんでした。その後,1980年代に入って脂肪吸引法が普及するに伴い,吸引した脂肪を乳房に注入する豊胸術について報告されるようになりました。しかし,注入した脂肪の多くは吸収され,脂肪壊死による石灰化や囊腫形成などが問題となり,乳房への脂肪注入についての効果が疑問視され,1987年に米国形成外科学会で否定的な見解が出されました。
筋皮弁移植やマイクロサージャリーが始まって血管吻合などにより大きな組織を安全に移植できるようになると,組織の欠損に対する治療は血管付き遊離組織移植が主流となっていきます。また,顔面の小陥凹の修正などに対しては,コラーゲンやヒアルロン酸などのフィラーを注入する方法が脂肪注入に比べて簡便であることからもてはやされるようになりました。しかし,異物の注入は吸収や異物反応などの合併症が問題になります。
その後,1997年のColemanの論文が報告されて以降,脂肪注入移植後の長期成績についても数多くの論文が報告されるようになり,自家組織のフィラーとしての有用性から近年再び見直されるようになってきました。また,脂肪注入移植後の生着のメカニズムについての基礎研究も進み,採取脂肪の精製法や注入法の最適化およびデバイスの開発などにより一定の成績を収めるようになりました。
ここ数年,脂肪注入の臨床応用の報告が欧米を中心に非常に多く見られます。わが国では現在のところ脂肪注入移植の手術は保険収載されていないためか,多くの施設では行われていません。日本形成外科学会と日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会では増加する脂肪注入の要望に応え,再建を目的とした自家脂肪注入に対する適正施行基準を策定し,保険収載を目指して講習会なども行っています。
本書では,前半は脂肪注入の歴史,基本となる技術,諸外国での臨床応用について「総論」とし,後半は主に顔面領域と乳房領域への臨床応用を「各論」として構成し,脂肪注入移植の臨床経験が多い先生方にご執筆をお願いしました。脂肪注入移植術に関する国内初の成書として,特に各論では基本的な事項から写真とともに詳細に解説していただきました。これから脂肪注入移植を始める先生方,またはすでに臨床で用いている先生方にとって有用な教科書となれば幸いです。
最後に,ご多忙中にもかかわらず本書のご執筆を快諾していただいた諸先生,出版にあたってご尽力頂いた克誠堂出版の堀江拓氏に深謝いたします。
2019年4月
淺野 裕子,関堂 充
目次
Ⅰ 総論
1. 脂肪注入・移植の歴史
2. 脂肪注入移植のための脂肪吸引方法
3. 脂肪注入・移植における脂肪精製・処理
4. 顔面領域への脂肪注入
5. 乳房領域への脂肪注入
6. 脂肪注入−今後の可能性と課題−
Ⅱ 各論 顔面領域への脂肪注入−私の方法−
1. 先天性疾患に対する軟部組織再建
2. 注入法の詳細と症例
3. 再建症例から美容症例まで
4. マイクロファットグラフトとナノファットグラフトによる治療
Ⅲ 各論 乳房領域への脂肪注入−私の方法−
1. ブレスト・インプラントを併用した二期的乳房再建
2. 体外式乳房拡張器を併用した脂肪注入による全乳房再建
3. 脂肪注入を組み合わせた乳房再建法の応用拡大
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書籍情報
- ISBN:9784771905191
- ページ数:144頁
- 書籍発行日:2019年5月
- 電子版発売日:2020年3月4日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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