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- 血管内治療のための血管解剖 外頸動脈
商品情報
内容
本アトラスは著者らが開催する、脳血管内治療のための脳血管解剖のセミナーの内容をベースに作成。
外頸動脈の各分枝の血管造影像と断層像を合わせて提示しており、外頸動脈系の血管解剖の理解がより深まります。
本書は頭頸部における血管造影やIVRの実地臨床に大いに役立つ本であると同時に、臨床画像の読影の際にも座右においても参照すべき一冊となります。
序文
外頸動脈は頸部にて総頸動脈より分かれ,顔面や口腔などの頭頸部の各臓器を栄養するとともに頭蓋底から頭蓋内の硬膜や脳神経にも分布する.CT やMRI の非侵襲的な画像診断技術の進歩により純粋な画像診断としての外頸動脈造影の意義は以前に比べて少なくなっている.しかし一方で,最近の脳血管内治療の普及により,腫瘍やシャント系疾患を対象とした選択的な分枝の造影およびそれらの分枝からの塞栓術や薬剤の動注などの血管内治療は非常に多くの症例で行われるようになっており,安全かつ効果的に血管内治療を行うためには外頸動脈各分枝の走行や支配領域・頭蓋内分枝との潜在的吻合などの画像解剖の知識が従来にもまして重要となってきている.そのため,2 年前より本書の共著者である松丸祐司先生と一緒に脳血管内治療のための脳血管解剖のセミナー(IANS seminar:Interventional Anatomy inNeurovascular System seminar)を開催している.本アトラスは同セミナーの内容をベースに作成されているが,本書の特色の一つとして外頸動脈の各分枝の血管造影像と断層像を合わせて提示していることがあげられる.断層像と血管造影像を同時に提示することにより各動脈枝と周囲骨構造の関係や立体的な認識がより理解しやすく,外頸動脈系の血管解剖の理解がより深まるのでは,と期待している.
本書は共同執筆者である松丸祐司先生や田上秀一先生,IANS セミナーの関係者をはじめとして,多くの方々のご助力により作成された.中でも私の研修医時代からの師であり様々な疾患の診断や治療に血管画像解剖がいかに重要であるかということ教えていただいた森 宣教授,いつも脳血管解剖・発生に関してお教えいただき,かつ刺激を与えていただいている小宮山雅樹先生,本書の企画を仲介していただいた高橋昭喜教授にこの場を借りて深く感謝の意を表させていただく.
本書が外頸動脈系の血管内治療においていくばくかの役に立てば幸いである.
清末一路
外頸動脈の分枝は,頭蓋底の孔から硬膜に到達しそこで方向を変え,同じ孔を通る脳神経を栄養する.
また硬膜上には互いに多くの吻合があり,内頸動脈,椎骨動脈,小脳血管の硬膜枝とも吻合している.また外頸動脈の分枝は,硬膜動静脈瘻,髄膜腫,一部の脳動静脈奇形の流入動脈として重要であり,近年液体塞栓物質による塞栓術の有用性が実感されている一方,脳神経麻痺や塞栓物質の迷入による合併症も懸念される.
頭蓋底部の外頸動脈の軸位断層像は,その理解に非常に有用である.特に最新の血管造影装置による3D 回転撮影の断層像や,cone beam CT のそれはきわめて高い解像度で骨や孔との関係も明瞭に描出されるようになった.以前は潜在的吻合と理解していたものが,明瞭に描出されることがある.脳血管造影は2 方向の時代から,ステレオ撮影や3 次元画像に発展したが,今後は拡大した断層像による詳細な局所解剖の理解へと進化すると思われる.しかし現在までのところそのような視点で作られたテキストが無く,本書はその理解に貢献できると確信している.
松丸祐司
執筆者の一人として顎動脈(本幹および硬膜動脈以外の分枝)の項を担当させて頂いた.外頸動脈の分枝の中では顎動脈は,名前の通り上顎・下顎領域の組織を深部から広く栄養する動脈で,その分枝の大部分は頭蓋外のいわゆる頭頸部領域の組織に関与し,血管内治療の対象となる疾患も頭頸部領域の疾患が多い.顎動脈分枝のうちの頭蓋内へ分布する硬膜動脈は,カテーテルの挿入や治療には注意を払うべき分枝として認識されやすいが,それより末梢の2nd ~ 3rd segment からの分枝に関しては,危険性は低い領域として気軽に考えている先生も多いと推察する.ところが顎動脈の機能解剖に関する書籍や論文報告を調べると,内頸動脈や眼動脈分枝との潜在的な吻合の多さに驚かされる.正円孔動脈や翼突管動脈はいわゆる"dangerous anastomosis"としてよく知られているが,それ以外でも選択的造影をreview すると眼動脈系との吻合枝が描出されている症例が存在し,それらが認識されないまま治療が施行されていることもある.
他の項でも触れられているが,近年のFPD を搭載した血管造影装置の分解能は非常に高く,その断層像の再構成画像は解剖を理解する上で非常に役に立つ.顎動脈の領域においては,特に翼口蓋窩を走行する3rd segment の解剖は複雑で,成書を読んでも立体的な理解は難しい.しかしFPD 血管造影装置の回転DSA からの再構成画像を見ると,翼口蓋窩と周囲との交通する"孔"を介して,狭い領域で巧妙に周囲の腔との交通路が形成されていることが分かり,また神経との走行とも合わせて考えると理解がし易い.
ある高名な先生が,"dangerous anastomosis"というのは決してdangerous ではなく,その存在を知らずに治療する行為がdangerous だと言われていた.顎動脈領域の内頸動脈や眼動脈と複雑に形成される吻合についての機能解剖の知識と,高精細な血管造影像や断層再構成画像を観察することにより,顎動脈への血管内治療が"危険な領域"としての認識を超えて,"危険性を知って治療すれば安全な領域"と認識されるようになることに,本稿がその一助となれば幸いである.
田上秀一
目次
概要 外頸動脈の画像解剖
1章 上甲状腺動脈・舌動脈・顔面動脈
はじめに
1 上甲状腺動脈 superior thyroidal artery:SThyA
1-1 上甲状腺動脈の分枝
2 舌動脈 lingual artery:LA
2-1 舌動脈の分枝
3 顔面動脈 facial artery:FA
3-1 顔面動脈の分枝
2章後頭動脈・上行咽頭動脈
はじめに
1 後頭動脈 occipital artery:OA
1-1 後頭動脈の分枝
2 上行咽頭動脈 ascending pharyngeal artery:APA
2-1 上行咽頭動脈の分枝
3章後耳介動脈・浅側頭動脈
1 後耳介動脈 posterior auricular artery : PAA
1-1 後耳介動脈の分枝
2 浅側頭動脈 superficial temporal artery:STA
2-1 浅側頭動脈の分枝
4章 顎動脈
はじめに
翼口蓋窩 (pterygopalatine fossa)の解剖
顎動脈分枝
1 中硬膜動脈 middle meningeal artery:MMA
1-1 中硬膜動脈の発生と起始部の変異
1-2 中硬膜動脈の分枝
2 副硬膜動脈 accessory meningeal artery:AMA
3 前鼓室動脈 anterior tympanic artery:ATA
3-1 前鼓室動脈のバリエーションと発生
4 下歯槽動脈 inferior dental artery:IDA
4-1 下歯槽動脈のバリエーションと発生
5 中深側頭動脈 middle deep temporal artery:MDTA
6 前深側頭動脈 anterior deep temporal artery:ADTA
7 頬動脈 buccal artery:BA
8 咬筋動脈 masseteric artery:MA
9 後上歯槽動脈 posterior superior dental artery:PSDA
10 反回動脈 recurrent arteries:RA
10-1 正円孔動脈 artery of foramen rotundum
10-2 翼突管動脈 artery of pterygoid canal (Vidian artery)
10-3 咽頭動脈 pharyngeal artery
11 蝶口蓋動脈 sphenopalatine artery:SPA
11-1 外側後鼻動脈 posterior lateral nasal artery
11-2 中隔後鼻動脈 posterior septal artery
12 下行口蓋動脈 descending palatine artery:DpalatA
13 眼窩下動脈 infraorbital artery:IOA
本書の参考文献
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書籍情報
- ISBN:9784059147442
- ページ数:144頁
- 書籍発行日:2013年9月
- 電子版発売日:2015年9月4日
- 判:AB判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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