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- インフルエンザ診療ガイド2019-20
商品情報
内容
どの診療科でも遭遇しうるコモンディジーズであるインフルエンザ。てっとり早く今年の知識をupdateしたい方にオススメです。
迅速診断キットの活用法から、新薬バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ)の耐性菌問題まで詳述。
今冬の診療方針決定、患者さん説明の一助としてお役立て下さい!
序文
日本のインフルエンザ診療
2009年のパンデミックで日本の死亡者数が驚異的に少なかったことは,WHOでも取り上げられ,世界で高く評価されている。日本では,高熱,頭痛,咳嗽などの症状軽減目的に,すべてのA(H1N1)pdm09外来患者に対して早期にノイラミニダーゼ阻害薬治療を実施し,それが結果的に重症化を防止したことが原因と考えられている。オセルタミビル早期治療は,症状軽減効果と同時に,入院防止効果,下気道感染防止効果がRCT(randomized control trial)で証明されている。一方,欧米では,外来患者の抗インフルエンザ薬治療はせず,重症の入院患者に対して多くは発症4〜5日目に,ノイラミニダーゼ阻害薬(主にオセルタミビル)治療を実施したが,多くの患者が死亡した。オセルタミビルのみならず,静注のペラミビルでさえ,発症48時間以降の重症例の治療有効性は証明されていない。日本で確立した,「早期の迅速診断とノイラミニダーゼ阻害薬治療」は,世界に誇るべき先進的な医療である。
迅速診断キットの有用性
わが国のインフルエンザ診療の基礎となっているのは迅速診断の普及であるが,最近,インフルエンザは臨床的に診断でき,迅速診断は必要ないという意見が散見される。迅速診断を軽視する最大の理由は,迅速診断の感度は低いという誤解にある。最近,Ann Intern Med誌(PMID:28869986)に掲載された論文で,日本で使われているのと同じような迅速診断キットのA型の感度は54.4%,B型の感度は53.2%と報告された。しかし,この低い感度は,「米国の迅速診断キットを使用した,米国の臨床現場での結果」であり,日本に応用することはできない。この論文では,気道の検体をいつ採取したか記載されていない。日本では,検体はインフルエンザ発症から48時間以内に採取されることが前提であるが,米国の実情からすると,インフルエンザ発症から4〜5日経って受診しての検体採取,そして検査結果と思われる。WHOは,日本ではインフルエンザ患者はほぼ発症後48時間以内に受診するので,迅速診断キットの感度は高いであろうと推察している。
日本の迅速診断キットの感度・特異度は,各メーカーによる調査では,培養やPCRと比較して,ともに90%以上である。2018-19シーズンに受診し,インフルエンザが疑われた成人において迅速診断キット (イムノエース®flu)の感度・特異度を,PCR法を基準として算出したところ,A型のみであるが,48時間以内では感度97.9%・特異度90.4%であり,高齢者においても感度・特異度の低下はなかった(けいゆう病院・関 由喜,日本感染症学会東日本地方会,2019年)。米国の迅速診断キットの報告よりも感度がはるかに高いが,日本では発症早期に検体を採取していること,検体がnasopharyngeal swabであることが影響していると考えられる。欧米では,迅速診断キットの感度が低いために,PCRの簡易法であるrapid molecular testの使用が勧奨されているが,日本の迅速診断キットは,発症48時間以内に検査を実施する限りは同程度の感度がある。また価格や操作の簡便さ,判定時間の短さ,同時に多数の検体を処理できることなどを考えると,日本で発展してきた迅速診断キットに優位性がある。
バロキサビルの治療上の位置づけ
バロキサビルマルボキシル(ゾフルーザ®)の治療により,高頻度に耐性ウイルスが出現することは,日本のインフルエンザ診療の深刻な問題である。2018-19シーズンはA(H1N1)pdm09とA(H3N2)の混合流行であったが,バロキサビルにより500万人以上の日本国民が治療を受けたと想定されている。半数の250万人がH3N2患者とすると25万人(成人の耐性率10%),残りの250万人のH1N1pdm09患者から7万5,000人(成人の耐性率3%),計30万人以上の患者からバロキサビル耐性ウイルスが排出されたと思われる。しかも,耐性ウイルスは,耐性のない野生ウイルスと同等の感染力を持つと報告されている。
バロキサビルの臨床効果はオセルタミビルと同等であり,高率に耐性が発生するバロキサビルは,季節性インフルエンザの治療に使用すべきではないと思われる。バロキサビルは,新型インフルエンザの出現時に,ノイラミニダーゼ阻害薬との併用で有効性が期待される抗インフルエンザ薬である。
2019年9月
編者
目次
◆chap. 1 インフルエンザ総論
A. これからのインフルエンザ対策
B. ウイルス学的知見
コラム 1 バロキサビルの耐性──基礎から
コラム 2 バロキサビルの耐性──臨床から
◆chap. 2 鳥インフルエンザ
◆chap. 3 予防・治療
A.小 児
B.成人・高齢者
C.妊 婦
D.高齢者施設における感染予防
◆chap. 4 検査・診断
◆chap. 5 脳症の診断・治療
◆chap. 6 インフルエンザ治療薬
◆chap. 7 ノイラミニダーゼ阻害薬の耐性
◆chap. 8 インフルエンザワクチンの効果、有効性
A.現行の不活化インフルエンザワクチンとその効果:小児科
B.インフルエンザワクチンの有効性:内科
◆chap. 9 医療関係者のインフルエンザ対策
◆Q&A
Q01 抗インフルエンザ薬を投与した場合のウイルス排出期間はどのくらいですか?
Q02 発症後、12時間以内の感度は低いので、検査まで12時間以上待つべきでしょうか?
Q03 微熱、あるいは無熱のインフルエンザ患者の頻度は?
Q04 経鼻ワクチンのメリットは?
Q05 まだワクチンを接種していないうちに、A(もしくはB)型インフルエンザ罹患後にB(もしくはA)型インフルエンザワクチン接種を行うタイミングは?また、小児で2回目の接種を受ける前にA(もしくはB)型インフルエンザに罹患したときにはどうすればよいでしょうか?
Q06 気管支喘息患者がインフルエンザに罹患した場合のステロイド吸入・内服投与は?
Q07 血液腫瘍患者、HIV患者など免疫の低下している場合のインフルエンザワクチンの効果は?
Q08 マスク・手洗い・うがい、室内空気を対象とした種々の電気製品のインフルエンザ予防効果は?
Q09 インフルエンザの出席停止基準・期間と、学級閉鎖の判断はどのようにすべきですか?
Q10 国内外で抗インフルエンザ薬のラニナミビルへの評価が違うのはなぜでしょうか?
Q11 院内感染防止対策として、オセルタミビルの治療量を予防として使用するのはどうでしょうか?
Q12 南半球と北半球のインフルエンザ流行の関連性は?
Q13 沖縄でのインフルエンザ流行の特徴は?
Q14 CPT-Ⅱ遺伝子多型とインフルエンザ脳症の関係とは?
Q15 インフルエンザの漢方治療の有効性は?
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書籍情報
- ISBN:9784784954803
- ページ数:248頁
- 書籍発行日:2019年10月
- 電子版発売日:2019年10月9日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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