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- 長引く腰痛はこうして治せ! 患者の痛みから見えてくる腰痛の見極め方第1版
商品情報
内容
序文
序文
腰痛治療が大きく変わりつつあります。それは,超音波診断装置(エコ―)の進歩により,筋肉や靱帯から発する痛みが少なくないことがわかってきたからです。これまで,腰下肢痛は腰部神経根の圧迫によるものが多いと考えるのが一般的でした。その原因の一端は,腰下肢痛を専門としてきた整形外科学教育にあったように思われます。X線の発見で外傷学が飛躍的に進歩したことから,整形外科学ではX線画像が大きな位置を占めるようになり,結果として,画像に映らない骨周辺の筋や靱帯は軽視されることになりました。その後にCTやMRIが開発され,軟部組織の描出が可能になったものの,明らかな組織変化が見られない場合には異常を検出できませんでした。 そこに技術革新で画像解像度が飛躍的に向上したエコーが登場し,筋膜や末梢神経などの組織が綺麗に描出されるようになったため,腰痛治療が整形外科だけでなく総合内科,ペインクリニックにも広がりをみせるようになりました。特に,僻地で運動器疾患を治療せざるをえない状況に置かれていた総合診療医が,エコー画像を見ながら先入観を持たずに,腰臀部の筋膜や靱帯,神経周囲に生理食塩水や局所麻酔薬を注入したところ,軽快する慢性腰痛が少なくないことがわかってきたのです。何と言っても,患者さんとエコー画像を見ながら,被ばくせずに発痛源と治療効果を確認できる手法は患者さんを納得させるに十分な力があり,軽快する腰痛症例を積み重さねるなかで,これまでの常識とは異なった,新たな視点からの腰痛の診断・治療体系が生み出されつつあります。
さらに,このエコーを用いた手技のおかげで臀部痛の病態も明らかにされつつあります。これまで臀部中央の痛みというと坐骨神経痛の部分症状と考えられてきましたが,上・下臀神経の臀部での絞扼性障害が少なくないこともわかってきました。また,仙腸関節や仙結節靱帯,上臀皮神経,椎間関節,椎間板も画像診断では見逃されやすい腰下肢痛の重要な発痛源です。
今,長引く腰痛にどのように対処していくかが問われています。画像が優先され,異常が見つからなければ原因不明の腰痛とされ,改善しない痛みに対してオピオイド系の強い薬が開発され,集学的治療が叫ばれます。しかし,画像所見に乏しくとも触れば発痛源のわかる腰臀部痛が多くあることを知って頂きたいと思います。そして発痛源に対処する治療こそ根本的な治療であり,腰痛の患者さんが満足する結果をもたらすものと考えます。
本書では,典型的な椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による腰下肢痛(神経根圧迫による)への言及が少ない印象をもたれると思います。それは,これらの疾患については多くの書籍が既に発刊されており,本書では「実際は少なくないが,画像診断がされにくいために見逃されて難治性腰下肢痛の原因になっている病態」に力点を置かせて頂きました。今回執筆をお願いした先生方は,"治療効果は患者さんの評価がすべて"との視点で,腰痛治療で成果を上げておられるスペシャリストの方々です。その診断と治療のコツを披露して頂くことで,長引く腰痛に対する新たな視点を読者の方々に提供できるものと確信しています。
2020年2月
JCHO仙台病院 院長
村上栄一
目次
第1章 腰痛診療は進化したか?―現代腰痛診療の落とし穴―
第2章 腰痛診療の新展開
腰痛の実態と診断法
腰痛治療の新しいアプローチ:腰部痛に対するエコーガイド下fasciaハイドロリリース
第3章 画像では診断しにくい発痛源へのアプローチ
見逃されやすい神経根性腰臀部痛
椎間関節性腰痛
椎間板性疼痛
仙腸関節障害の診断とブロック治療
仙腸関節機能障害の画像診断と手術(SPECT/CTを中心に)
リハビリテーション①:AKA-博田法
リハビリテーション②:Swing-石黒法
臀部の靱帯由来の痛みに対するアプローチ
臀部での絞扼性神経障害
上臀皮・中臀皮神経障害の治療
第4章 アスリートの腰痛
アスリートの腰痛に対する評価・診断
アスリートの腰痛に対するリハビリテーション
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