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- ヒヤリハット事例に学ぶ服薬指導のリスクマネジメント (日経DI)
商品情報
内容
事例ごとに、なぜミスが起こったかその原因を一つひとつ分析し、患者に正しく薬を服用してもらうための指導のコツや具体的な指導例を解説。
患者の誤解、服薬ミスによる事故をいかに回避すべきか。これからの服薬指導に欠かせないリスクマネジメントの実践書です。
序文
薬剤師の仕事は、「処方せんチェック」、「薬の調製・調合とそのチェック」、「医薬品管理」、「服薬指導」、「薬歴管理」、「医薬品情報提供活動」など実に様々です。これらの業務に関して薬剤師の責任が問われる場面としては、まず薬を取り違えて調剤するといった、いわゆる調剤(薬の調製調合)ミスがあります。これは何十年も前からある医療ミスであり、今も新聞紙上でよく目にしますが、薬剤師としてきちんとやらなければならないベースラインの業務ができていないということなので、責任を問われるのは当然のことです。
また最近、医師の処方せんの記載ミスに対して、薬剤師が疑義照会をせずそのまま調剤を行い、患者に有害事象が発生したために裁判となった事例が報告されました。この事例では、医師ばかりでなく薬剤師も責任を問われ、患者に対して損害賠償しなければならないという判決が下されたのです。薬剤師にとって極めてインパクトのある判例となりました。
そして、おそらく近い将来、必ず問題になると懸念されるのが、薬剤師の不適切・不十分な服薬指導が原因で患者に何らかの有害事象が起き、薬剤師の法的責任が問われるケースです。例えば、ニトロダームTTS(一般名:ニトログリセリン)という貼付剤を、患者自身の勝手な判断により、本来の狭心症の治療目的ではなく、筋肉痛、関節痛のために全身にべたべた貼って、患者に有害事象が発生したとしましょう。この時、患者が「薬剤師は、薬の説明書はくれたが、正しい使用法については何も説明してくれなかった」と主張して薬剤師を告訴するかもしれません。訴訟まで行かなくても、服薬指導を適切に行わなかったために、患者に誤解や不安が生じて服薬ノンコンプライアンスを招いたり、服用法を誤って十分な効果が得られなかったり、副作用や有害事象を起こしたりする可能性は十分あります。
一方、的確かつ適正な服薬指導を行えば、患者から信頼されてより多くの情報が得られます。それにより医師と薬剤師間のコミュニケーションが充実し、処方せんチェック(処方鑑査・疑義照会)も確実に行えて投薬ミスが回避されます。最終的には薬物治療が成功を収め、患者、医師双方から喜ばれることになるでしょう。
服薬指導を的確に、かつ適正に行うためには、個々の薬剤師の技能・コミュニケーションスキルに加え、その基盤となる「薬学的知識」のブラッシュアップが欠かせません。そのために既に数多くの服薬指導の関連書籍、論文などが著されていますが、その多くは、疾患ごと、あるいは医薬品ごとに服薬指導方法を配列したものであり、知識がすぐに身に付き現場に応用できるような形には必ずしもなっていません。本書は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システムに寄せられた「ヒヤリハット事例」(事故には至っていないものの、ミスに気づいてヒヤリとしたり、ハッとしたりした例)などの中から、服薬指導に問題があった事例に必要に応じて加筆修正を施した上で、カテゴリー分類したものです。様々な「服薬指導ミス」をカテゴリー分類した後に、ミスを回避するために必要な知識を規格化・標準化して習得することが重要であり、このようなシステマティックな理解が、服薬指導ミスによる事故を網羅的かつ完璧に回避する最も効率的な方法だと考えたからです。さらに将来、どのような服薬指導ミスが起こるかを予測し、それを事前に回避するための有用なリスクマネジメント法になるとも思っています。このため本書では、それぞれの事例において、患者の訴えや薬剤師のミスを問題点として取り上げ、なぜミスが起こったかその原因を一つひとつ分析し、最新の薬学的知識に基づくリスク回避のためのマネジメント法を解説しています。
患者さんのために、昼夜を問わず情報収集を重ね、適正で的確な「服薬指導」を実践しようと日々奮闘されている方々に、この本が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後に、本書の執筆に当たり、資料の収集などでお世話になった東京大学大学院薬学系研究科医薬品情報学講座学術研究支援員の三木晶子氏、校正時に細部にわたってチェックしていただきました東京大学大学院薬学系研究科医薬品情報学講座助教授の大谷壽一氏、福岡市博多区薬剤師会理事の森千江子氏、九州大学大学院薬学研究院臨床薬学講座博士後期課程学生の佐田宏子氏、また、編集の労をとっていただいた日経BP社日経DI編集部の大滝隆行氏、そして、服薬指導の経験談などを多数お聞かせいただきました全国の薬剤師の先生方に、心からお礼申し上げます。
2005年 8月
東京大学大学院薬学系研究科
医薬品情報学講座
澤田 康文
目次
第1章 医薬品の名称の説明・確認
一般用バファリンを医療用に誤用
後発品への変更が服薬中断を招く
第2章 薬価の説明・確認
トリプタン系薬の値段に驚く
先発品への変更で負担増
第3章 製剤・成分・包装の説明・確認
普通錠を口腔内崩壊錠と誤解
カプセルの皮がべとべとに
錠剤の色が変化して服薬中止
錠剤の赤い斑点をカビと誤解
粉砕された錠剤を散剤と混同
PTPのミシン目を1回量と誤解
濃度違うのに同量服用し痙攣
錠剤が大きくて飲めない
錠剤が小さすぎてつかめない
服薬後に便や尿の色が変化
錠剤の刻印が変更され不安に
薬の包装中の乾燥剤を誤飲
同じ薬なのに色が変わり不安
便の中に錠剤のかけらを発見
第4章 効能効果の説明・確認
軟便来す薬を便秘の人へ譲渡
未告知患者に抗癌剤と説明
服薬確認せず下剤を漫然と交付
薬の成分を爆弾の原料と誤解
双子の兄弟の処方を取り違え
適応外処方に気づかず誤解招く
そんな病気ではありません!
第5章 用法用量の説明・確認
1日量を1回量と誤解し副作用
飲み忘れ分を後でまとめ飲み
1日1回を1日3回と誤った理由
夜勤時も「就寝前服用」か?
痛みに耐えかね鎮痛剤を濫用
片頭痛治療薬の服用法を誤る
1日1回の点眼剤を1日2回使用
処方変更前の残薬を継続使用
勝手に服用を中止し離脱症状
漸増の指示届かず過小量服用
バイアグラを催淫剤と誤解
検査未実施で処方の誤り発覚
ピロリ除菌でPPIを重複服用
第6章 使用法の説明・確認
舌下スプレー剤がすぐ空になる
強い苦味で服薬拒否した子供
PTPから錠剤を取り出せない
うっかりPTPを誤飲
散剤が入れ歯のすき間に残留
薬剤が食道に滞留し潰瘍発症
服用後すぐ就寝し強い胸焼け
水なしで服薬し食道潰瘍
徐放性製剤をつぶして服用
不適切な自己注射で痙攣発作
カプセルが変形しべとべとに
原液を口に直接入れむせ返る
吸入感がないため不安に
実薬では吸入しても音が鳴らず
幼児が母親の吸入剤をいたずら
吸入後含嗽不足で口内にカビ
点眼剤の溶解液だけを点眼
2種類の点眼剤を取り違え
点眼剤使用後にひどい苦味
複数の点眼剤を連続使用
複数の点眼剤を順不同に使用
点眼剤を1回に4倍量滴下
コンタクトレンズ装用中に点眼
指の痛みで坐剤を取り出せず
1年前の軟膏混合剤を使用
軟膏剤の塗る量がわからない
軟膏の使用順序がわからない
NSAIDs軟膏を密封法で使用
NSAIDs軟膏を頭皮全体に塗布
スピール膏を切らずに貼付
液剤のノズルを勝手に切断
上手に鼻へスプレーできない
冬に冷たい点耳剤で目まい
上澄みは効かないと使用中止
坐剤を車内に放置し使用不能
吸入剤と一緒に虫を吸入
冷所保存の点眼剤を室温下に
外用剤の使用で危うく火災に
服薬時期を故意に変更
硝酸系貼付剤を湿布と誤解
第7章 相互作用の説明・確認
大好物を禁じられてショック
グレープフルーツ禁止を見逃す
服薬に食事が必要と誤解
健康食品で経口避妊剤が失効
ハーブ茶なら大丈夫と誤解
バイアグラの作用増強を試みる
グレープフルーツ果汁で内出血
服薬中の突然の禁煙を見逃す
トリプタン系薬を使い惜しむ
ビタミン剤でも抗菌剤が失効
ビスホスホネートを食後服用
空腹時の方が薬が効くと誤解
抗凝固剤と納豆をずらして摂取
頭痛薬でアスピリンが失効
他科からの併用禁忌薬を見逃す
第8章 疾患の説明・確認
禁忌・慎重投与の疾患を見逃す
健康食品の確認で防げた禁忌薬
バイアグラ欲しさに虚偽申告
眼科でなぜ喘息のこと聞くの?
病名知らせぬ患者に危険な薬が
薬剤師の疾患説明が不安を招く
第9章 生理的擾乱状態の説明・確認
外見から妊娠の確認を怠る
妊娠中の服薬に過剰な心配
授乳中と知らず抗菌剤を投与
服薬終了後いつから授乳可能?
過敏症確認も卵アレルギー見逃す
過敏成分の配合を見逃す
勝手な思い込みが事故を招く
服薬より車の運転を優先
第10章 副作用の説明・確認
光線過敏症を恐れて閉じこもる
筋肉が溶けると説明され不安に
漢方薬は副作用がないと誤解
副作用と気づかず無駄な受診
点眼剤の全身性副作用に気づかず
NSAIDs貼付剤剥離後に水膨れ
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書籍情報
- ISBN:9784822212353
- ページ数:280頁
- 書籍発行日:2005年8月
- 電子版発売日:2012年7月7日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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