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- 誰も教えてくれなかった 高血圧診療の極意 ― 患者さんと治療同盟を結ぶための高血圧医療学
商品情報
内容
医師,特に開業医のもとを訪れる高血圧患者は,来院継続性が危ぶまれたり,服薬アドヒアランスが悪かったりと,診療上様々な問題を抱えていることも多い.それを「患者が悪いから仕方ない」としてしまうのではなく,「医師として,医療をどのように提供すればよいか?」という,ガイドラインでは教えてくれない「極意」を,開業医として多くの高血圧患者を診てきた著者が解説.「明日からでも患者さんに使えるフレーズ集」も収載.
序文
はじめに
高血圧と上手につきあう方法とは,患者さんのみならず医師自身にもあてはまることでしょう.実際の臨床場面では様々な患者さんが存在し,われわれもまた同様に様々です.その幾通りもの組み合わせの中で実地診療は進行していくはずです.そのため,従来のいわば「エビデンス至上主義」の診療展開のみでは,スムーズな治療が困難になります.「Value-Based Medicine」という考えでは,患者さんの多様性を認識し理解した上でその個性に配慮した高血圧治療を実施し,患者さんの臨床的背景や価値に基づく社会的制約に配慮することも併せて求められます.時として医療者は,患者さんの生活実態やその感情を十分理解しないまま,科学的な根拠としての医学的必然性のみで,患者さんの生活に踏み込んでいきます.エビデンスに基づく体系的な学問としての医学だけでなく,医師とメディカルスタッフの実地診療における様々な実体験と知識を集約した「高血圧医療学」として取り組むことが重要と考えます.
実地臨床においては,いかなる手段をもっても患者さんが継続可能な治療法を作り上げることこそが大切であり,それを見出すことができなければ日常診療は成り立たないと言っても過言ではありません.実際には妥協だと思われている診療が行われているからこそ,地域医療は進むのです.血圧測定の実施や測定回数に関してさえも,ガイドライン通りではない様々な対応が実地臨床に存在することになります.
本書に書いてあることは,決してガイドラインを無視しているわけではありません.目的意識が高い患者さんが集まる大学病院や基幹病院などとは異なり,治療意識が低く来院継続性すらも危ぶまれる患者さんをも対象としなくてはならない実地医療の現状を前提にしなければなりません.実際の現場では,患者さんと話し合って,最もふさわしい診療ないし治療を設定しているのです.
本書では,エビデンス至上主義の反省から,患者さんとのコミュニケ―ションの重要性に考慮した,実地臨床における診療の実践について紹介していきます.なお,本文が「です,ます調」なのは,本文中の言葉を患者さんにお話しするときにそのまま使っていただけるよう考慮したためです.患者さんには医学知識を正確に知ってもらうことが大切ですが,それをわかりやすい表現で「意訳」して伝えることは,さらに重要なことと考えます.本書のサブタイトルを「患者さんと治療同盟を結ぶための高血圧医療学」としましたが,その内容はもしかしたら夢のような話かもしれませんが,メディカルスタッフを含めた医療者が患者さんと治療同盟を結んで,「高血圧医療学」として問題解決できればと思います.そして,夢を現実にすることができればと願っております.
本書が少しでも先生方の日常診療にお役立てできれば幸いです.
2017年2月
宮川 政昭
目次
PartI 高血圧診療の基本 ―患者さんを診る前に―
1 患者さんとは?
「患者さんは逃亡者」
2 高血圧とはそもそもどんな疾患か?
「高血圧は高血圧にあらず―治療の最大の目的は心血管イベントの発症抑制にある―」
「ちりも積もれば山となる―たかが4mmHg,されど4mmHg―」
「血圧は患者さん自身にとって意味のあるものだと理解してもらう」
「毎日の家庭での血圧測定は,様々な合併症から逃れる手段になる」
3 患者さんを診察する前の準備─血圧手帳など─
「血圧手帳の選択は,まずは医師から」
「医師は患者さんの味方です―血圧の状況把握は,患者さんと医師の共同作業―」
PartII 初診の実際
1 生活リズムの聞き取り
「患者さんの声・高血圧の声に耳を傾けて―すべての始まりは生活リズムの聞き取りから―」
「高齢の患者さんには元気度チェックを」
2 食生活の聞き取り
「減塩指導の開始は食事パターンの聞き取りから」
「食塩の入口調査と出口調査のススメ」
「サプリメントと健康食品の聞き取りも忘れずに」
3 初診時の患者さんとの取り組み
「鉄は熱いうちに打て ―患者さんとのルールづくり―」
4 初診時の血圧測定
「来院の理由を見極める」
「環境の変化をきっかけとして,新たな治療法を提言」
「継続は力なり ―家庭血圧測定―」
「患者さんに最もふさわしい血圧測定を設定する」
「実地診療ではガイドラインを横目で見て確認する」
5 その他の臨床検査について
「先手必勝 ―早い時期に臨床検査を―」
「治療意欲は臨床検査を受けるハードルを下げる」
「まず,やるべきことをやるために ―データに裏づけられた,言葉の重み―」
「あなたは今,どこの駅にいますか? ―臨床検査の結果を踏まえて―」
「患者さんのイベントに乗じて臨床検査を」
PartIII 再診の実際
1 血圧測定に関する対応
「最初の一事が万事 ―初めての家庭血圧測定―」
「血圧の上下にはワケがある ―メモ書きのススメ―」
2 生活習慣指導について
「トータルでみて病気が減ったことを理解してもらう」
「減塩の一石二鳥 ―血圧低下と体重減少―」
「運動は,日常生活の中に上手く取り込む」
3 薬物治療開始後の血圧測定に関する対応
「家庭血圧値は,降圧薬治療の変更のための重要な情報」
「たとえ血圧コントロールが上手くいっても,勝手に降圧薬を中断させない」
「その一歩手前で,その理由に耳を傾ける―服薬したがらない患者さんには,理由を分かりやすく説明―」
4 薬物治療開始後の再検査について
「患者さんの努力の成果をみるために―再検査のススメ―」
5 薬物治療開始後の課題に対して
「服薬忘れチェックの来院間隔は4週後」
「原則は上乗せ―効果不十分例への対応―」
「どれだけ早い時期から多くの錠剤を処方するか―非常に血圧が高い患者さんへの対応―」
PartIV より良い患者さんとのコミュニケーションを実現するために
「想像力は知識よりも重要である―医師の患者さんへのコミュニケーションのパターンから―」
「サイレント・キラー(Silent Killer)とノイジー・ルームメート(Noisy Roommate)―治療意義に応じたコミュニケーションの違いを理解する―」
「患者さんの『心の声』を聞く」
「患者さんを脅してはいけない」
「患者さんの言い訳 ―指導方法を変えるサインと捉える―」
「『感動』は『行動』と『知識』につながる」
「歩調とリズム ―医師の視点から生まれるジレンマと患者さんの目線から生まれる問題を解消する―」
「夫婦・家族外来のススメ」
「患者さんはもちろん,ご家族への配慮も―ちょっとした一言が大きなきっかけになる―」
PartV 患者さんとともに歩む ―より良いエイジングを目指すために―
「患者さんの個々の病態は十人十色 ―治療選択と患者指導の重要性―」
「患者さんの過去の道のりも十人十色 ―描く未来も十人十色―」
「診療における『ことだま』を大切にする―患者さんのあるべき姿を目指して,患者さんとともに歩むために―」
「病態を的確に見据える」
「将来のために先手を打つ―将来を見据えて,患者さんの行動を変容させるためには―」
「より良い健康設計のために早期介入を」
「最後に ― 一病息災・二病息災・三病息災―」
付録 実地診療に役立つ降圧薬治療の戦略
1 降圧薬治療戦略の考え方
2 降圧薬投与・併用パターン
3 降圧配合薬について
4 ARB配合薬の一覧表
明日からでも患者さんに使えるフレーズ集
・高血圧治療の目的を説明する際に
・毎日の家庭血圧測定の重要性を説明する際に
・患者さんが初めて血圧手帳を記入して来院した際に
・血圧手帳に継続して記入してもらうために
・上下した血圧値の当日や前日に何があったのかを記入してもらうために
・減塩のメリットを説明する場合に
・血圧手帳を確認して,血圧値が改善傾向にある場合
・血圧手帳を確認して,血圧コントロールが上手くいっている場合
・降圧薬を服薬したがらない患者さんに対して
・降圧薬の減量や中止の可能性について
・家庭血圧測定の重要性を説明するために
・診察が終わって帰ろうとする患者さんに
・患者さんに付き添って来られるご家族に
・患者さんに将来を見据えて行動変容を促したい場合に
<コラム>患者さんの一言を受けて,医師が考えること
①どこも悪くないのに,「高血圧」と言われても......
②生活習慣病って......
③締めのラーメンが......
④私って,病気なんですか......
⑤今を続けること......
⑥これからの生活は......
⑦そんなことをおっしゃいますが......
⑧アリとキリギリス
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書籍情報
- ISBN:9784830610226
- ページ数:84頁
- 書籍発行日:2017年3月
- 電子版発売日:2018年11月30日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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