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- 新生児の症状・所見マスターブック
商品情報
内容
いつでも、どんな場面でも、新生児からのサインを適確に受け取り、正しい判断とその対応ができるように構成し、またNICUでケアされる新生児だけでなく、正常としてあつかわれた新生児に隠れている病態把握や家族の不安に対するノウハウについて、第一線で活躍している方々が執筆。
それぞれの症状と所見のポイントと対応・ケアをわかりやすく解説しています。
序文
私は30年以上前に小児科医を志しました.いくつかの専門分野を研修するなかで,「新生児医療の大きな魅力」と感じたことがあります.無論これだけではありませんが,私が新生児医療の世界に足を踏み入れるきっかけになったことはたしかです.
新生児医療の大きな魅力:言葉を持たない赤ちゃんたちのサイン
それは,NICUでは病児や低出生体重児がいつも裸で保育器に収容されており,しかも,付き添いのお母さん方が常にそばにいる乳児や幼児の病棟とは異なり,研修中の新米医師でも,診たいときに,いつまでも赤ちゃんの観察ができることです.状態の安定しない赤ちゃんの保育器のそばに椅子を持っていって,四六時中診ていることもあるし,まだ人工呼吸器がなかった当時,RDSがよくなるまでジャクソンリースで換気するようなこともありました
こうしてじっと観察していると,言葉を持たない赤ちゃんたちが,さまざまなサインを表し,小児や成人では見られない特有の症状や所見を訴えてきます.なかには「これは自分しかわからないぞ」と思われるサインや,赤ちゃんをどうやって救ったらいいかを教えてくれるシグナルまであるという,まさに新生児医療ならではの魅力です.
「みて判断する」能力を磨く
今日,テクノロジーの進歩によって,NICUには多くのハイテクモニター機器が導入され,病める赤ちゃんの管理に大きく貢献しています.しかし,赤ちゃんからの微細なサインを読みとるにあたっては,ヒトの五感に勝るものはありません
もちろん,人間の情報処理には限界もあります.ヒトの感覚受容器では,毎秒109ビットの情報が入力されても,その情報を判断する情報処理能力は,せいぜい102/秒であり,入力情報を1,000万分の1にしぼらなければなりません.われわれが正しい情報を入力し処理するには,われわれ自身が「みて判断する」能力を磨くしかないのです.
この「みて判断する」能力は,なにも病児や低出生体重児などNICUにいる新生児に限ったことではなく,産科施設で生まれた正常新生児についても必要なことは当然です
正常のなかの隠れている異常や異常を起こす可能性を把握する
通常,正常新生児とは,適齢で健康な正常妊娠の母体から在胎37~41週で正常分娩により頭位で出生した児で,1分以内に啼泣し,アプガースコアが7点以上,出生後10~15分に観察したとき,呼吸や神経系等全身状態に明らかな異常のない児と定義されています.しかし,これはあくまで医療者側が出産してまもない新生児を「正常」か「異常」なのかを仕分けるためのものであり,「異常」と判定された児のように細部にわたって検索されるわけではないので,隠れている異常を見落とす危険をはらんでいます.また,正常新生児と評価された両親や家族にとってみれば,身体のわずかな変化や問題にならないことでも,たとえば湿疹や緑便が出ただけでも「異常」と判断し,医療者側の正しい説明がないままに育児不安がつのることもあります.
したがって,正常新生児とは,新生児期はもとよりその後の乳児,幼児,学童そして成人に至るヒト発達過程において健全に発育,発達していくにあたって,「異常」のない児でなくてはならないのです.そのためには,正常新生児といえども隠れている異常や今後異常を起こす可能性のある症状・所見を的確に把握し,家族に正しい情報を提供して安心して子育てができるようにするための医療者側の「みて判断する」能力がより一層求められているのです
本書では,読者のみなさんが,いつでも,どんな場面でも,新生児からのサインを的確に受け取り,正しい判断とその対応ができるように構成し,またNICUでケアされる新生児だけでなく,正常としてあつかわれた新生児に隠れている病態把握や家族の不安に対するノウハウについて,第一線で新生児医療・看護に従事しておられる方々にご執筆いただきました.みなさんにとって,赤ちゃんの症状・所見を最大限に処理できるテクニックを身につける一助になれば,望外の喜びです.そして,本書を通じて,未来ある子どもたちとその家族が身を委ねる大切な時期である周産期が,医療者にとって日々真剣に向き合える最も輝きを持った分野であることを実感していただければ幸いです.
2011年 2月
大野 勉
目次
・序 文
■第1部 Well Baby 編
●第1章 総論:新生児の特徴を理解しよう
・新生児の分類
・正期産児(成熟児)の特徴
・新生児の生理的特徴
・(1)呼吸
・(2)循環
・(3)消化
・(4)黄疸
・(5)体温
・(6)水および電解質代謝
・(7)免疫
・(8)血液
・(9)神経
●第2章 出生直後から生後24時間以内の観察のポイント
・生後24時間という時期の特徴
・診察・観察・ケアのポイント
・出生直後の診察と観察
・その後24時間までの診察と観察
●第3章 よく見られる正常の症状・所見と観察のポイント
・皮膚
・頭部・顔面
・耳・口腔
・頸部・躯幹
・外陰部・臀部
・四肢
●第4章 気をつけなければいけない症状・所見とその対応
・(1)Not doing well(なんとなく元気がない)
・呼吸障害
・チアノーゼ
・無呼吸
・循環異常
・腹部膨満
・嘔吐
・肝脾腫
・黄疸
・(2)貧血
・多血
・出血傾向
・浮腫
・乏尿・多尿
・体温異常
・痙攣・易刺激性
・筋緊張異常
・皮膚の異常
・四肢・脊柱の異常
・外陰部異常
・分娩にともなう損傷
●第5章 顔貌異常・小奇形から気づかれる奇形症候群
・外表奇形・小奇形の意義
・奇形の発生機序
・多発奇形の分類
・外表奇形の診察法
・外表奇形から多発奇形症候群の診断へのアプローチ
・診断後の疾患の情報収集とフォロー
●第6章 退院後,お母さんが心配する症状・所見とその説明
・頭部・顔面・頸部とその症状・所見
・胸部・腹部とその症状・所見
・臀部・泌尿生殖器とその症状・所見
・その他
■第2部 High Risk Baby 編
●第1章 総論:早産児の特徴を理解しよう
・早産児とは
・早産児の形態的特徴
・早産児の生理的特徴
・成熟度の評価
・バイタルサインのチェック法
●第2章 周産期の母体・胎児のハイリスク徴候と新生児の異常
・妊娠・分娩に関する母体情報
・母体の基礎疾患
・母体の感染症
●第3章 おもな疾患・病態からみた症状・所見
1 呼吸器疾患
・呼吸窮迫症候群
・新生児一過性頻呼吸(多呼吸)
・胎便吸引症候群
・慢性肺疾患
2 循環器疾患
・動脈管開存症
・新生児遷延性肺高血圧
・晩期循環不全
3 消化器疾患
・新生児壊死性腸炎
・胎便病
・ミルクアレルギー
4 中枢神経系疾患
・脳室内出血
・脳室周囲白質軟化症
・低酸素性虚血性脳症
5 代謝疾患
・低血糖
・高ビリルビン血症
・低カルシウム血症
6 感染症
・敗血症・髄膜炎
7 その他
・多血症
・貧血
・鼠径ヘルニア
・未熟児くる病
●第4章 各部位(器官)別の症状・所見
1 呼吸・循環器系
・周期性呼吸
・無呼吸
・多呼吸
・呻吟
・陥没呼吸
・鼻翼呼吸
・シーソー呼吸
・あえぎ呼吸
・喘鳴
・ラ音
・呼吸音の左右差
・気道分泌物の性状
・チアノーゼ
・四肢冷感
・心雑音
・徐脈
2 中枢神経系
・痙攣
・易刺激性
・泣き声
・眼球振盪
・落陽現象
3 代謝・泌尿器・消化器系
・黄疸
・嘔吐・胃残
・腹部膨満・腸蛇行
・便
・尿
4 一般症状
・皮膚色不良
・活動性低下
・体温変動
・哺乳力低下
・MRSAを疑う症状
●第5章 治療場面別 観察のポイント
1 呼吸管理
・気管吸引
・通常の人工呼吸器
・CPAP・DPAP
・酸素療法
・抜管
2 光線療法
3 輸液管理(投薬)
4 各種検査
・X線撮影
・眼底検査
●第6章 ケア場面別 観察のポイント
1 ルチーンケア
・清拭・沐浴
・経管栄養
・経口哺乳
・オムツ交換
2 ディベロップメンタルケア
・カンガルーケア
・照度・環境音の調節
・ポジショニング
●第7章 症状・所見観察の落とし穴
・1 気づかれにくいマイナーサイン
・2 痙攣らしくない「痙攣」
・3 心雑音のない「心疾患」
・4 チアノーゼのない「呼吸障害」
・5 血中ビリルビン値が低い「ハイリスク黄疸」
・6 感染症らしくない「感染症」
・索 引
・執筆者一覧
・編者紹介
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書籍情報
- ISBN:9784840436649
- ページ数:304頁
- 書籍発行日:2011年4月
- 電子版発売日:2015年11月13日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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