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- 転移性脳腫瘍 診断・治療・管理マニュアル
商品情報
内容
治療、管理に難渋する転移性脳腫瘍のすべてがわかる完全マニュアル。分野のエキスパートが実臨床に即して具体的かつわかりやすく解説した、明日から現場で使える一冊です!腫瘍内科・外科、神経内科、脳神経外科、放射線科など、がん治療にかかわる全ての医療従事者必携の書です。
序文
脳神経外科医にとって,最もよく出会う脳腫瘍は転移性脳腫瘍かもしれません.私が研修医時代に初めて受け持った脳腫瘍の患者さんも多発性の転移性脳腫瘍でありました.当時の治療手段は全脳照射を中心とした放射線治療であり,何の迷いもなく全脳照射を選択した覚えがあります.
「がんが脳に転移する=末期状態」がごく一般的な捉え方であり,まさしく看取りの医療が実践され,そこにドラマは存在しませんでした.
あれから10年以上の月日が流れ,この間にがん治療は大きな変貌を遂げました.2002年のゲフィチニブの登場はあらゆる面でがん治療を加速度的に進化させ,2006年のがん対策基本法の制定もあり,国をあげてがん治療に取り組む体制が整いました.この結果,これまで限られた治療手段のなかで苦戦を強いられていた進行がんの患者さんにもたくさんのドラマが生まれ,希望という光がたくさん降り注ぎました.一方,皮肉にも進行がんの患者さんの生存期間延長は,より脳に転移する機会を与えることになり,転移性脳腫瘍の存在が重要なターニングポイントとなり得る場面に多く出会うようになりました.
転移性脳腫瘍の治療は解剖生理学的な特殊性もあるため,がん治療のなかにおいて「孤立化」した状況に置かれていたことは否めません.しかし,「孤立化」した状況のなかでも個々の治療手段は着実に進化し,現在ではさまざまな治療選択が可能となりました.また,"転移性脳腫瘍に全身化学療法は効かない"とはもう過去の言い伝えであり,次々と開発される分子標的薬が新たな治療手段として虎視眈々とその座を狙っております.
このように,転移性脳腫瘍の治療は多種多様な治療手段を駆使した多角的治療戦略の時代に突入したと言えます.われわれはこれらの武器を片手または両手に持ち,あるいは背中にも抱えて,転移性脳腫瘍と戦うことができるようになりました.「がんが脳に転移する=末期状態」の時代はもう終わりました.現在は「共存」が適切な言葉であり,決して言い過ぎではありません.
この多角的治療戦略時代のもう一つのキーワードは,チーム医療であります.チーム医療ではあらゆる職種が連携してそれぞれの特技を発揮し,患者中心の医療を提供することが求められております.すなわち,転移性脳腫瘍治療も各専門家が有機的に連携することによってさらに前進し,最大限の力を発揮することができます.「孤立化」したままでは,せっかくの多種多様な治療手段も宝の持ち腐れとなりかねません.がん治療にかかわる医療従事者が職種横断的に一人ひとりの患者さんの全体像と問題を理解し,一体となってベストの解決策を探求することが重要であります.
そして,そのためには専門家同士で多くの議論を交わす必要があります.この議論を行うためにはもちろん「言葉」が必要です.すなわち,転移性脳腫瘍に関する「共通言語」です.これまでも転移性脳腫瘍に関する成書は多数出版されておりますが,あくまで専門家向けの解説書であり,分野の異なる専門家同士の溝を埋める,橋渡し的役割を担うことはできませんでした.しかし,真の有機的連携を得るには,お互いの特技を理解し合う必要があります.その理解が「共通言語」となり,より深い議論を可能にします.そこで,がん治療にかかわるすべての医療従事者が転移性脳腫瘍に関する「共通言語」を理解・習得できることを目的として,本書の企画に至りました.
執筆陣の各エキスパートの先生方には,先端的なものではなく,広く受け入れられているスタンダードな内容を平易にかつ実臨床に沿ったかたちでの執筆をお願いしました.疫学から診断,治療,緩和医療まで,転移性脳腫瘍の診療において遭遇し得る場面はおおよそすべて網羅しております.具だくさんの情報を詰め込みましたが,決してギュウギュウ詰めではありません.このため,胸焼けせずあっさりと一冊読み切ることも可能です.もちろん,部分的に読み散らかしていただいても結構ですが,できましたら全ページ読破していただき,本書のあふれんばかりの魅力的な内容をもって満腹感を味わっていただきたいと思います.そして,本書という「共通言語」で活発な議論が行われることを期待しております.
最後に,私はがん治療にかかわるあらゆる職種の医療従事者に,この「転移性脳腫瘍 診断・治療・管理マニュアル」がお役に立てることを確信しております.そして,本書が患者さんとご家族の大事な人生の1ページにたくさんの幸せのフィードバックをもたらすことができればと,切に願っております.
2014年10月吉日
近畿大学医学部 脳神経外科
奥田 武司
目次
・監修のことば
・序 文
・執筆者一覧
【第1章 転移性脳腫瘍の概要】
【第2章 転移性脳腫瘍の診断】
<1>症候診断
<2>画像診断
【第3章 転移性脳腫瘍の治療】
<1>保存的治療
<2>外科的治療
(1)総論:転移性脳腫瘍に対する外科的治療
(2)開頭腫瘍摘出術
(3)オンマヤ貯留槽留置術
(4)シャント手術
(5)神経内視鏡手術
<3>放射線治療
<4>化学療法
【第4章 髄膜がん腫症の治療】
【第5章 中枢神経系のがん救急】
【第6章 がん種別における転移性脳腫瘍の特徴】
【第7章 転移性脳腫瘍の緩和医療】
【第8章 転移性脳腫瘍の治療指針】
◆道具箱◆すぐに役立つ資料・文献集
<1>生存期間
(1)脳転移出現からの生存期間
(2)予後因子からの生存期間推定:RPA
(3)予後因子からの生存期間推定:GPA
<2>Performance Status
<3>意識評価法
(1)Glasgow Coma Scale(GCS)
(2)Japan Coma Scale(JCS)
<4>髄液検査
<5>Greenbergの頭蓋底転移の5症候群
<6>てんかん発作治療のフローチャート
<7>転移性脳腫瘍に用いられる薬剤
(1)ステロイドの比較
(2)主なオピオイド
(3)静注・皮下注用 非オピオイド薬
(4)せん妄の緩和用薬剤
<8>簡易知能評価
(1)HDS-R
(2)MMSE
<9>重要な文献と解説
(1)疫学,病理,画像
(2)臨床試験
(3)予後予測など
<10>主なウェブサイト
・後書き
・索引
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書籍情報
- ISBN:9784840450072
- ページ数:160頁
- 書籍発行日:2014年12月
- 電子版発売日:2015年3月13日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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