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- 周産期医療と生命倫理入門
商品情報
内容
生命倫理には、完璧な解答は有り得ません。個々の症例で対応も異なってきます。
本書は日頃、周産期医療に携わっている方々の参考になるように、また同じ悩みを共有してもらえるように、多くの方が執筆されています。
序文
はじめに
齋藤 滋
科学の進歩とともに出生前診断が今、大きく変わろうとしています。これまでクアトロマーカーのような血液中のマーカーを測定し、あわせて超音波検査を組み合わせることで、胎児染色体異常を検出することが、一部で行われてきました。一方、母体血中に一部流入する胎児・胎盤由来のDNAを用いて染色体異常を調べるnon-invasive prenatal genetic testing(NIPT)が施行可能となり、現在、日本産科婦人科学会の指針により認定された施設で、その有用性が臨床研究として検討されています。この検査で21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーが検出されますが、これらの染色体異常は全染色体異常の3分の2を占めるため約3分の2の染色体異常を妊娠10~22週で出生前診断できるようになりました。安易に検査をすることを避けるため、検査に対する十分な説明が必要ですし、異常があった場合のカウンセリングも必要となりますが、これらの専門職が少なすぎることも問題点として浮かび上がってきています。
これら染色体異常に加えて、超音波機器の向上により、以前に比し多くの胎児の形態異常も出生前に診断することが可能になってきています。特に、先天異常で最も頻度の高い先天性心疾患では、出生前診断により新生児科医、小児循環器外科医が胎児期から出生直後まで連続して治療できることになり、治療成績の向上にもつながっています。これらは他の小児外科疾患でも同様です。 その一方で、救命困難な症例を出生前に診断することもあります。このような場合、患者は精神的に大きく落ち込み、自分の思い描いていた愛らしい赤ちゃんが一瞬のうちに消えてしまい、むしろ検査してくれなかった方が良かったと医療側を非難することもあります。生命予後が良好な際は、産婦人科医、小児科医、小児外科医、助産師、看護師、臨床心理士のチーム医療が素晴らしく機能し、患者にも満足してもらえ、医療者側でも充実感が得られます。一方、予後不良な場合、医療者側も患者側も、どうすれば良いのか分からないという状況になることがあります。
本書では、日頃、周産期医療に携わっている方々に、少しでも参考となるように、また同じ悩みを共有してもらえるように、多くの方々に執筆していただきました。 生命倫理には、完璧な解答はあり得ません。また、症例や家庭環境も異なり、個々の症例で対応も異なってきます。皆様とともに悩み、少しでも良い解決策が、本書によりもたらせることができたらと祈念しています。
二〇一四年九月
目次
・はじめに
・緒言 なぜ、周産期医療に生命倫理が必要か
◆1 日本文化・価値観をもとに日本の生命倫理を考える
◆2 周産期医療と生命倫理 ― 国際比較
◆3 The fetus as a patient ― 胎児を医療の対象とすることと生命倫理
◆4 周産期生命倫理における胎児緩和ケアの意味
◆5 出生前診断に対する産科医の意識― 意識調査を元に
◆6 NIPT と生命倫理
◆7 周産期医療における遺伝カウンセリングの意味
◆8 臨床倫理委員会のあり方
◆9 出生前診断の光と影
◆10 胎児治療の倫理と胎児治療法の臨床的評価
◆11 出生前診断がついた、まれでかつ重篤な小児外科疾患への対応
◆12 出生前診断がついた重症疾患にまつわる倫理的諸問題
◆13 超早産児の分娩対応:How small is too small ? ― 産科医の立場から
◆14 超早産児の分娩対応:How small is too small ? ― 新生児科医の立場から
◆15 染色体異常を持つ子どもと周産期生命倫理
◆16 重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン
◆17 亡くなっていく赤ちゃんと家族のケア
・あとがき
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書籍情報
- ISBN:9784840450270
- ページ数:244頁
- 書籍発行日:2014年11月
- 電子版発売日:2015年5月22日
- 判:A5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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