ねころんで読める てんかん診療

  • ページ数 : 200頁
  • 書籍発行日 : 2016年1月
  • 電子版発売日 : 2016年2月5日
3,740
(税込)
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商品情報

内容

かゆいところに手が届く、診療のツボが満載!

著者が日々の診療で得た知識を惜しげもなく披露!脳神経外科速の連載記事に加筆された非専門家のための、てんかん診療に役立つ一冊。
本文に加えて「ねころんで」読めるようコラムも掲載、シリーズおなじみ本文中のイラストも健在です。

>ねころんで読めるシリーズは こちら

序文

はじめに


「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」

─井上ひさし/劇団「こまつ座」機関誌「the 座」に寄せて。


「非専門家」が診療する「ありふれた病」

てんかんは100人に1人がもつ「ありふれた病」です。てんかんという病名を知らない医師はおらず、とくに神経系診療科(神経内科、小児神経科、精神科、脳神経外科など)であれば、抗てんかん薬を処方せずに臨床を行うことはできません。

しかし、てんかん患者の診療を担う多くの医師は「非専門家」です。これは専門医などの資格の有無を問わずに共通している真実です。自分は専門医だと信じている医師でさえも、てんかんという多様性に富む疾患のごく一部の領域しか知らないのです。私も、大学病院で初めて「てんかん科」を標榜し、医学部に「てんかん学分野」を初めて創設してはいますが、自分のカバーする領域は広大な「てんかん学」のごくわずかでしかないことを自覚していることに関しては「誰にも負けない自信」があります。

それなのに、なぜ「てんかん学」の本を出そうと考えたのでしょうか。


「専門書」を買う「非専門家」は少ない

てんかんを扱った書物は、世のなかにはすでに数多く出版されています。しかし手にとって読もうとするのは、てんかんの専門家を目指している初学者か、てんかんの専門家だが書物のごく一部に興味がある場合かの、いずれかに属すると思われます。

てんかんに関する学会や研究会にも多くの問題があります。てんかんの専門家を目指している初学者はなるべく多くのセッションに参加して勉強しようとしますが、ある程度プロと呼ばれるようになった専門家は自分の興味のあるセッションにしか参加しませんから、自分の主戦場以外での戦闘能力は相当に低くても、それに対する自覚は足りません。

その結果、専門医の資格があろうがなかろうが、診療経験が短かかろうが長かろうが、てんかん診療を行っている多くの医師は、ある意味、全員が「非専門家」になるわけです。


「てんかん診療はちょっと苦手」と思う方へ

てんかん学を知らないことにかけては「誰にも負けない自信」をもつ私は、どうやったら世の中の患者にベストの医療を提供できるシステムをつくれるかを考え続けています。そして最初に到達した結論は、多彩な「てんかん学」のすべてをカバーする書籍を作ることではなく、患者自身が自分のてんかんに詳しくなるための入門書を作ることでした。幸いにもプロのライターに患者の立場で執筆してもらった図解入りの患者・家族への入門書『「てんかん」のことがよくわかる本』(中里信和監修、講談社、2015年)が完成しました。発売直後より、「本当にわかりやすい」「すぐに読み終わることができた」「漠然とした不安が消えて明るい気持ちになれた」などの好評を得ています。

患者・家族への入門書の次に考えたのは、非専門医のための本です。ちょうどメディカ出版の専門誌『脳神経外科速報』に「知らないと患者もあなたも損をする てんかん診療ABC!」という連載を約2年半、28回にわたって執筆する機会を得ました。この連載記事をまとめ直して、脳神経外科だけでなく、他科も含めて多くの非専門家に読んでもらえるよう加筆したのが本書です。

「ねころんで」読んでもらうためのコラム

「ねころんで」読むにはリズムが必要です。本書では、本文に加えて拾い読みの得意な読者のためにいくつかのコラムを用意しています。

コラム「てんかん診察室より─ありがちなエピソード」では、『脳神経外科速報』の連載「ありがちな症例」をほぼそのまま採用しました。著者が見聞きした症例のなかから、年齢・性別・背景などに少しだけ変更を加え、個人情報が特定できないように工夫していることをお断りいたします。

コラム「Point」も、『脳神経外科速報』の連載では各号の最後のまとめとして設けられたものです。

「こんなとき、ど~する!?」と「患者×中里 つぶやき集」の2つは、単行本化にあたって書き下ろしたコラムです。後者では、著者がソーシャルネットワークを通じて、あるいは日々の診療の場において、患者や医療関係者と交わした会話の一部を取り上げました。こちらもオリジナルの内容を尊重しつつも、個人情報が特定できないよう若干の修正を加えています。


「No Man Alone」

てんかん外科を切り開いた故・Wilder Penfield 博士の自叙伝のタイトルは『NoMan Alone』です。人間は1人では何もできず、これは医療だけでなく本の執筆にも言える言葉でしょう。

本書の執筆にあたっては、東北大学で一緒に働く同僚の力が不可欠でした。脳神経外科の岩崎真樹医師には、外科治療に関する情報や図の提供を受けました。
てんかん科の神 一敬医師にはビデオ脳波モニタリングに関する情報を、同じく柿坂庸介医師には小児神経学の情報を頂戴しています。てんかん科のリハビリテーション心理士である藤川真由氏には心理社会面からの視点を授けてもらい、私の診療の幅が大きく広がりました。毎週開催される症例検討会で議論を交わした多くの医師、臨床検査技師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーにも感謝いたします。

そして何よりも、日々の診療のなかで、あるいはソーシャルメディアを介して私とコミュニケーションをとってくださった患者さん、ご家族、一般の方々、医療者の方々、メディアの方々にも感謝申し上げます。

『脳神経外科速報』の連載当時から本書の完成まで、一貫して私を鼓舞してくれたメディカ出版の岡 哲也氏と細川深春氏の存在がなければ、私の気持ちは書籍としての形をとることはなかったでしょう。お2人にはオフィシャルな執筆依頼の際だけでなく、こっそり私をフォローしてくれたソーシャルメディアのうえでも大きな励ましを頂戴しました。ここに御礼申し上げます。


2015年12月
東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野教授
東北大学病院てんかん科科長/てんかんセンター長
中里 信和



目次


・推薦のことば

・はじめに

【1章 てんかんと問診ー患者と向き合う、患者の話を聴く】

(1)自分や家族が「てんかん」になったとき

(2)てんかん診療の初回の設定

(3)発作症状の聴取

(4)生活歴はなぜ必要か

【2章 診断と検査】

(1)てんかん診断に脳波は必要か?

(2)てんかん診断におけるMRI

(3)人生を変える「ビデオ脳波モニタリング」

【3章 てんかんと薬】

(1)てんかん治療のゴール設定

(2)「とりあえずバルプロ酸」の功罪

(3)カルバマゼピンを使いこなす(前編:最初の3カ月)

(4)カルバマゼピンを使いこなす(後編:長期投与で注意すること)

(5)第二の薬剤を選ぶ、人生を考える

(6)新薬のヒーロー、レベチラセタム

(7)新薬のヒロイン、ラモトリギン

(8)ゾニサミドとトピラマート:医師の技量が問われる「両刃の剣」

(9)クロナゼパムとクロバザム:クロウトが困ったときのレスキュー薬

(10)抗てんかん薬との「別れ方」

【4章 てんかんと手術】

(1)てんかん外科への迷信:術前診断編

(2)てんかん外科への迷信:診療連携編

(3)専門施設に紹介する勇気

【5章 てんかんと生活】

(1)思春期の患者と向き合う

(2)妊娠への備えは初診時から

(3)妊娠、出産、授乳と育児の応援

(4)てんかんでも明るい老後

(5)運転免許対応へのヒント

(6)「てんかんのリハビリテーション」を知っていますか?

(7)てんかん一般診療の品質評価

(8)医師よ弱くなれ!患者よ強くなれ!


<巻末資料>

・てんかん情報を扱う代表的なウェブサイト

・参考図書

・索引

・著者略歴

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書籍情報

  • ISBN:9784840457613
  • ページ数:200頁
  • 書籍発行日:2016年1月
  • 電子版発売日:2016年2月5日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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