はじめに

救急や術後の場面、もちろん呼吸器疾患を扱う病棟などで避けては通れない、呼吸ケア。"たのしイイく"呼吸ケアされていますか？「なんとなく先輩から言われたようにやっているけど......」「以前から同じやり方でやっているけど......」

今のやり方が、本当に正しいのか、根拠がわからない。でもうちの病院には専門の先生がいないから尋ねることもできない......専門の先生はいるけどすごく忙しそうだし、なかなか尋ねられない......。わからなければ、たのしイイく、なんてできません。

私は、メディカ出版さん主催の『急性期・術後の呼吸器ケア』と題したセミナーを長らく担当させていただいております。そのセミナーの、最後の時間に設けている「質問コーナー」では、看護師さんやメディカルスタッフの皆さまからの「よくわからない」「尋ねられない」というお声を、本当にたくさん承るのです。

酸素の投与に始まり、人工呼吸や血ガスもしかり、それに気胸や胸水の時に行われる胸腔ドレナージにしても、ちょっとした（大きな？）疑問を抱えたまま日々の呼吸ケアを行っている方々は、本当にたくさんおられるようです。毎回数多くの質問をいただくのですが、皆さま疑問に思われるところはだいたい同じようなところで、なるほどこういうところがあやふやなのか、こういうところでつまずくのか、とこちらが勉強になることも多々あります。　その中でも、呼吸生理の基礎は理解しにくい、セミナーで初めて理解できた、と多くの方がおっしゃいます。それから酸素療法に関しては、やはり勘違いをされたり、間違った投与方法、機器の使い方をされたりしている現場もよくあるようです。ドレナージに関してはわかる人がそもそも院内にいないというようなことも耳にします。

......ということは、日本全国の施設で、たくさんの方が、同じようなことを日々疑問に思われながら呼吸ケアをなさっているのではないか。そう思っていた折、セミナーでいただいたご質問と回答を文章にしてたくさんの方にお役立ていただきたい、ということから、『みんなの呼吸器 Respica（レスピカ）』誌の前身である『呼吸器ケア』誌で、「素朴なQ にカンペキA！ 長尾先生のやさしイイ 気胸・胸水・胸腔ドレナージ」「素朴なQ にカンペキA！ 長尾先生のやさしイイ 酸素投与のエトセトラ」という2 本の特集記事を執筆させていただきました。

おかげさまで特集が大変好評をいただいたということで、それらの記事をさらに発展させ大幅に加筆して、このたび新しく書籍として発行することになりました。この本を一人でも多くの方にご覧いただき、日本中の病院・医療機関の呼吸ケアレベルが少しでも向上することを願っております。

最後にいつもセミナーでお世話になり、雑誌や本の制作でもステキなイラストやレイアウトで魅力的なものにしてくださる、メディカ出版の皆さま方に厚く御礼を申し上げます。

2020年1月

長尾大志