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- ゼン先生の栄養管理講座(Ⅰ)
商品情報
内容
大阪大学国際医工情報センター栄養ディバイス未来医工学共同研究部門のwebサイトで連載中の「ゼン先生の栄養管理講座」のうち、第1回~第40回をそのまま書籍化。著者の栄養管理にまつわる活動が、豊富な写真とともに書き綴られています。
序文
ゼン先生の栄養管理講座 Ⅰ
発刊にあたって
『ゼン先生の栄養管理講座』は、2013年12月に書いた原稿を2014年1月にホームページ上に掲載するようになって、40回を数えました。実際には、2001年から株式会社ジェフコーポレーションの「静脈経腸栄養ニューズ PEN」に『みんなの栄養管理講座』の連載を始めて、その続きとして『ゼン先生の栄養管理講座』を継続しています。第40回は、『みんなの栄養管理講座』を第1回として計算すると、第190回となります。15年と10カ月です。よくもまあ、ここまで書き続けたものだと、ふと思ったりします。
さまざまな事情で『みんなの栄養管理講座』が終わった時は、気持ちとしても落ち込んだのですが、臨床栄養の領域に小さくてもいいから刺激を与えたいという思いが強く、当研究部門のホームページで掲載するという方法を選択しました。執筆スタイルもほぼ同じですが、字数制限がなくなったため、写真の数はふえ、1回の文字数は1万字を超えるという状況になってしまいました。自分で制限をかけるしかなくなってしまいました。写真の数が20を超え、字数が1万字ということになると、読むのに時間がかかる、と思っておられるかもしれませんが、お許しください。このような事情ですので、読んでいただいている方は非常に少ないのではないかという不安にもかられます。ホームページ上での掲載なので、どのくらいの方に読んでいただいているのか、全くわかりません。時々、読んでいます、というお声掛けをいただくと、非常にうれしく思ったりしております。
会話は、ゼン先生と小越先生の間で行われます。ここで小越先生のお名前をお借りしているのは、私の勝手な意見を、大きく包んでいただける、というイメージがあるからです。小越先生がお亡くなりになって既に4年が過ぎました。臨床栄養の領域で小越先生のことを知らない方も多いと思います。しかし、私自身の中には生きておられます。会話をする中で、小越先生が話しかけてくださいます。小越先生が、この静脈栄養・経腸栄養の領域に対して考えておられた内容を想像しながら、自分はその遺志を引き継ぐのだ、という思いで会話させていただいているように思います。
この臨床栄養の領域は、本当に正しい方向へ向かっているのでしょうか。栄養障害に陥っておられる患者さんの数は減っているのでしょうか。医療者が、真に患者さんの栄養管理について考え、適切な栄養管理をしよう、栄養状態をよくすることによってQOLを上げよう、そういう思いで現場に臨んでいるのでしょうか。そうではないのではないか、そう思わざるをえない現実に突き当たることも多くなっています。輸液製剤、静脈栄養剤、経腸栄養剤、投与器材、非常に多くの製品が開発され、簡便に使えるようになってきています。しかし、その内容や正しい使い方に関する理解度が低くなってしまっているように思います。簡便に使える、それが逆に、医療者の臨床栄養に関する知識レベルや認識を下げているように思います。また、企業が営利優先の開発を行っている部分がかなりあると私自身は考えておりますが、それは当然のことではありますが、それに対し、正しい臨床栄養のあり方という観点から、それらの製品に対して批判できる医療者も減っているように思います。それどころか、企業の方針どおりに動いてしまう医療者が多くなっていることに、医療者のモラルの問題、また、知識レベルの問題があることも感じています。
さらに、最近、ずっと思っていることですが、さまざまな施設における勉強会のことです。院内勉強会、NST勉強会を、輸液・栄養関連の企業に講師を依頼することが多いのではないでしょうか。企業に臨床栄養を教えてもらう、NSTのやり方を教えてもらう、これは、おかしい。企業が教える内容は、どうしても、その企業のためとなります。しかも、よく考えると、企業のMRよりも、その施設の医療者の臨床栄養に関する知識レベルが低いことを認めていることになります。企業のMRが非常によく勉強していることは認めます。しかし、医療者はその上を行くべきです。非常に残念なことです。勉強会は、医療者自身が医療者に教育する、という体制で実施するべきです。医療者が勉強して、それを仲間に伝える、その形式こそが、自分達のレベルアップにつながる、最短距離だと思います。そうすべきでしょう。
この臨床栄養の領域は、1950年頃から少しずつ発達したものと思っております。Greenstein JPがChemically defined diet(CDD)を作成して化学物質から構成された溶液を経腸的に投与することで実験動物が正常な成長・発育を遂げることを示したのは1957年のことです。Dudrick SJが餌で育てたビーグル犬とTPNで育てたビーグル犬が同じように発育することを示したのは1966年のことです。そのダドリック先生が1968年にSurgeryに発表したTPN成功の論文がきっかけとなり、世界中で静脈栄養が実施されるようになりました。もちろん本邦でも静脈栄養が普及し、それに呼応して、小越先生が開発したエレンタールをきっかにして経腸栄養が発達しました。岡田先生の亜鉛欠乏症の発見は、微量栄養素の重要性を知らしめることとなりました。当時、臨床栄養学の領域では、適切に実施するための臨床的・基礎的研究が活発に行われました。そうして、1998年に小越先生が日本静脈経腸栄養学会の理事としてNSTの普及、さらには臨床栄養の普及のための活動を開始し、全国的に臨床栄養の重要性が認識されるようになりました。しかし、本当に臨床栄養の重要性に対する認識が定着しているのでしょうか。臨床栄養が重要だと、本気で思っているのでしょうか。最近の日本の状況を考えると、否定的な見方をせざるをえないように思います。
私の尊敬する先輩が『われわれはダドリックがTPNを開発し、栄養管理の重要性に目覚めさせてくれた1970年代から、日本の栄養管理レベルを上げようとがんばってきた。本当、少しずつ少しずつレベルアップしてきたと思っていたのに、最近の状況はどうだ。真剣に、本気で栄養が大事だと思っている医療者はどこにいるんだ、という感じになってしまっている。レベルが落ちるのは本当に一瞬だな。われわれの苦労はどこかへ行ってしまったんだろうか』と言っておられました。この発言は重い。われわれは真摯にこの先輩のお気持ちを理解し、そうではない、がんばっている、それを示せるような活動をしなければならないと思います。
私自身、正しい臨床栄養法の普及のための活動を、細々ではありますが、続けております。活動としても、非常にやりにくい部分があることも否定しません。しかし、正しい臨床栄養法を普及させなければならない、という強い思いが萎えることはありません。細々ではあっても、正しい臨床栄養法の重要性を理解して実践できる仲間を増やすための活動を、一人でも多く仲間を増やすための活動を続けていきます。この『ゼン先生の栄養管理講座』も、その活動の一環と位置付けて書き続けております。これからも、力の続く限り書き続けたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
平成29年12月
大阪大学 国際医工情報センター
栄養ディバイス未来医工学共同研究部門
特任教授 井上 善文
目次
序 ゼン先生の栄養管理講座 Ⅰ 発刊にあたって
第1回 静脈経腸栄養ガイドライン第3版を買うことから臨床栄養の修行は始まる!-栄養管理は栄養アセスメントから始まる!-
第2回 栄養障害の分類としては、マラスムスとクワシオルコルではもう古い!
第3回 SGAという栄養指標は、栄養障害を見落とさず、拾い上げるために用いるのです
第4回 サーベイランスは、日本の臨床栄養のこれからを考える基本となる大事な仕事!
第5回 栄養障害の新しい分類を提唱しますので、考えてみてください
第6回 PPN 製剤は感染しやすいからできるだけ使わないほうがいい?それは、栄養を知らない素人の言うことですよ!
第7回 胃瘻バッシングの影響は、かなり深刻です。間違った医療が広がっています
第8回 薬剤部ですべてのTPN輸液を無菌調製している病院もあります:本当は当然・・・ですが
第9回 カテーテル感染が克服できたら、もっとレベルの高い栄養管理ができる
第10回 NST加算のおかげでNSTが多くの病院に設立されて、栄養管理レベルが上がった?
第11回 胃瘻の代わりにCVポートの患者がむちゃくちゃ増えているみたい・・・間違いだ!
第12回 栄養管理の経路として医学的に正しい時でも、「胃瘻を造設してもいいですか?」と聞かなくてはならない?
第13回 せっかく留置したCVポートなんだから、便利、便利という考えではなく、もっと大事に扱わなくては
第14回 第30回JSPENの「ためになる講演」は、本当にためになりますよ!
第15回 第30回JSPEN学術集会、参加して、活躍していただき、ありがとうございました
第16回 臨床栄養の領域に学問がなくなっていませんか?
第17回 CLABSIの定義を使うと、カテーテル関連血流感染症は「ゼロ」にできる?
第18回 高齢者に対する栄養管理って、特別? 基本を理解することが重要!
第19回 脂肪乳剤はCVCラインに側注の形で投与してもいいのです ただし、ラインの無菌的管理を徹底してください
第20回 半固形状流動食の使い分けは?胃瘻では高粘度、加水タイプが第一選択でしょう
第21回 NSTをする、のではなく、NSTで何をするか、を考えよう
第22回 NSTが対象とすべき症例は?本来は(特殊)栄養療法実施症例ですよ
第23回 NSTの弊害についても考えながら活動しましょう
第24回 自然に集まったチームで栄養回診をやっています
第25回 やっぱりCLABSIでカテーテル感染の発生頻度を検討するのはおかしい!
第26回 栄養管理を理解せずにカテーテル感染予防対策が語れるはずがない
第27回 栄養管理の専門家らしいPPN を実施しましょうや
第28回 我々が目指すのはMedical Nutritionistです
第29回 カテ感染はカテーテルを抜けばおしまいではない、本気で診断しよう
第30回 TPN とは、組成、投与量をきちんと計算して中身を理解した上で実施すること。「塊」を投与するのではない!
第31回 胃瘻造設や、経腸栄養、在宅に関連した診療報酬が低すぎる!
第32回 安全管理の領域から栄養管理を考える、そっちのほうが栄養管理の重要性が認識されるかもしれませんが・・・
第33回 PICCは普及しつつありますが、その適応をきちんと考える必要があります
第34回 侵襲期に維持輸液だけで管理すると、どんどん栄養障害が進行してしまう、これは重大な問題で
第35回 「缶や紙パックに入った経腸栄養剤をイリゲーターなどに移し替えて投与する方法」を、TTB : TRANSFER-TO-BAG/BOTTLE方式と呼びましょう
第36回 一番大事なのは、PICC は末梢静脈カテーテルではなく、CVCであることを本当の意味で理解すること
第37回 患者さんのことを考えてCVポートを、留置している? 使っている?
第38回 栄養管理の適応を考えて、その後で胃瘻の適応かを考えるべきです
第39回 脂肪乳剤を投与すると感染する? それはフィルターが使えないから?それは間違った考え方です。
第40回 現在のTPNの製品は完成している、だから勉強しなくてもいい、キット製品を使えばTPN は簡単だ、と思っていませんか?
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書籍情報
- ISBN:9784862701664
- ページ数:350頁
- 書籍発行日:2017年12月
- 電子版発売日:2018年8月10日
- 判:A4判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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