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- 精神科 身体モニタリング塾
商品情報
内容
序文
はじめに
精神科医は「こころ」を診るのは得意であるが,「からだ」を診るのは苦手である.からだのことは専門以外なので診ないし,興味もない.かつてはこのことを誇りにしている精神科医が多かったように思う.尊敬できる先輩たちは卓越した精神科診断能力を備えていたが,一方で基本的な身体疾患の見落としも多かったといわざるを得ない.心理的解釈を行うだけで身体的問題を放置する場面をよく見かけた.精神疾患の診断を下すには身体疾患の除外が前提となるのだが,果たして身体疾患の除外診断能力が精神科医にどの程度身についているのであろうか.
精神科医はほかの診療科に患者を紹介するのを嫌がる傾向にあった.身体疾患に苦手意識があり,他科に紹介すると,「なんでこんな基本的疾患を見逃しているのか,こんな簡単な処置もできないのか」と馬鹿にされるかもしれないと思い,尻込みしてしまうのではないか.私が医師になって2年目で単科精神科病院に勤務していたころ,肺炎を疑い他院の内科医に相談した際に「肺炎くらい治せますよね」といわれ突き放された.そこから基本的な身体疾患は診療・治療できるように独学で勉強した.私が医学生の臨床実習で内科・外科を回っていたころは,アブレーションという言葉もなかったし,外傷はイソジン®で消毒していた.現在,幸いなことに私は,医学生や若い研修医と接する機会が多いため,最新の医学情報は彼らから入ってくる.一方,単科精神科病院に長年勤めていると医学の急速な進歩から取り残され,知識や技術が時代遅れになっている可能性がある.さらに,精神疾患で遭遇する身体的問題には偏りがある.たとえば,麻痺性イレウス,けいれん発作,パーキンソン症状などは精神科診療でよく見かけるが,感染性胃腸炎や狭心症などは日常診療では見かけない.これらの疾患は精神科診療で見かける頻度が少ないため,除外診断を行う意識や最新情報を取り入れる意識が低下していると考えられる.
初期臨床研修医制度が始まると,精神科といえども基本的な身体管理ができることが求められるようになった.医師として患者から求められる最低限の技量が高くなったのかもしれない.さらに近年,精神疾患の診療上の問題点が精神面より身体面に移行している.それは,精神疾患患者の平均余命が明らかに短く,適切な医療を受けていないことに注目が集まっているからである.これまで目前で入院患者が突然死して助けられず悔しい思いをしたことが幾度となくあった.今にして思えば急性心筋梗塞か致死性不整脈,あるいは肺血栓塞栓症であったと思われる.残念ながら多彩な精神症状に目を奪われ,そういう視点で患者を診てこなかったことを今日では猛省している.精神科患者さんのいのちと健康を守るために,われわれができることは何か?
本書では著者のこれまでの失敗例を含めた臨床経験と臨床研究で得られた知見を惜しみなく紹介している.身体的副作用をどのようにモニタリングしていけばよいかの指南書として若手精神科医に活用していただきたい.精神科医や精神疾患患者に携わる医療スタッフが,すべての副作用に意識を向けながら診療することで,当事者のQOLが向上し,幸福につながらんことを祈念して本書を執筆した.
2018年5月
古郡規雄
目次
1章 特殊な病態を持つ患者への薬物療法
①小児
②高齢者
③肝機能障害
④腎機能障害
2章 抗精神病薬
①薬剤性パーキンソニズムス
②アカシジア
③ジストニア
④ジスキネジア
⑤悪性症候群
⑥高プロラクチン血症
⑦性機能障害
⑧体重増加
⑨糖尿病
⑩脂質異常
⑪肺炎
⑫心血管性副作用(QT延長症候群を含む)
⑬深部静脈血栓症
⑭過鎮静
⑮低血圧
⑯低ナトリウム血症
⑰クロザピン関連
3章 情動安定薬
①甲状腺機能低下症
②肝機能障害
③腎機能障害
④体重増加
⑤発疹
⑥薬物血中濃度上昇
4章 抗うつ薬
①胃腸障害
②不眠
③抗コリン作用
④セロトニン症候群
⑤性機能障害
⑥出血傾向
⑦心血管系
⑧過鎮静
⑨起立性低血圧
⑩低ナトリウム血症
⑪中断症候群
5章 抗不安薬
①脱抑制
②依存症
③離脱性けいれん
付録 妊娠中の向精神薬治療
①抗精神病薬
②情動安定薬
③抗うつ薬
④抗不安薬
⑤薬剤危険度評価
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書籍情報
- ISBN:9784880024073
- ページ数:0頁
- 書籍発行日:2018年7月
- 電子版発売日:2020年3月27日
- 判:A6変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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