- m3.com 電子書籍
- 発達障害の作業療法 基礎編【第3版】
商品情報
内容
現状に即して発達検査や制度、新たな課題など全般をアップデート !
発達障害の作業療法において著明であり、経験豊富な鴨下賢一氏が執筆陣に参画。日本語版SDQ、日本版Vineland-Ⅱ、日本語版M-CHATを追加するなど、旧版以降、改訂された発達検査や現場で使いやすい検査を新たに追加し、詳細な解説を加えた。主要な検査法については、検査項目一覧を別表として掲載している。また旧版から変更があった法的・制度的内容についてもアップデートを図った。「出生前診断」についても考察を加えるなど、現状に即した内容を心がけ、学生のみならず、臨床4,5年の作業療法士も想定したつくりとなっている。
序文
第3版 まえがき
本書『発達障害の作業療法』第3版は,第2版から4 年を経て出版される運びとなった.第2 版が大幅な改訂であったことに比べると,今回の改訂では修正,補足した部分は量的にそれほど多くはない.しかしその修正・補足は,ほぼ内容の全領域にわたっており,著者としては第2 版の内容のすべてに手を入れ,それを深化させたつもりである.
しかし本書第3版の特徴は,(それが改訂の主要な動機にもなったのであるが)教科書を作り上げていくうえでの大きな方法論的な転換をした点である.第2 版までは,『基礎編』単著,『実践編』2 著者でなんとか教科書に盛り込むべき内容をこなしてきた.それを今回は3 著者で記述することにした.
本出版社の教科書シリーズの一つの特徴は,特定の治療領域を1 人ないし2 名くらいの著者で記述する点にあった.多著者による疾患別,項目別記述式教科書の弱点は,内容の重複,記述スタイルや視点の不統一感,全体の流れの一貫性の欠如などがあり,それを補うためにこの単著あるいは限られた人数による教科書作成が企画されたと聞いている.
しかしこの後者にも弱点がある.独りよがりになったり,書くべき内容のバランスに偏重が出てきたりする可能性があるからである.それをカバーするためであろう本教科書シリーズでは,3 編者によるチェックがかなり厳格に実施されているようである.本書の場合も,初版上梓時に学位論文審査のときのように,事前に原稿を精読した3 編者と対面して,そのフィードバックを受けたことを筆者はよく記憶している.その修正・検討すべき箇所が数ページにもなったこともあった.「臨床に役立つと思われる技法,情報,知識のすべてを網羅する」「著者が実践したことを具体的に記述する」「初心者が理解できるような記述にする」,これらが,本書の初版からのコンセプトであるが,これも編者とのやりとりの中から定まったものである.
この10 年で発達障害領域の作業療法士が扱う領域も多岐にわたり,必要とされる知識や技術の量も,とても一人の著者が経験する範囲を大きく超えるようになってきている.今回著者を1 名増やした理由はそこにある.共著による不統一感を生まないため,著者3 名は何度も会議を重ね,内容はもちろん,その形式,記述のスタイルについても統一感を持たせるべく,意見をつぶさに交換した.そしてそのうえで書き上げた原稿をさらに相互にチェックするという段階を踏んだ.コンセプトの共有,視点と記述方法の統一性が保障されるためには,このくらいの編集上の踏み込みが必要と感じられたからである.
本『基礎編』での大きな変更点は,まず「発達検査」に関する記述が実践編から基礎編に移ったことである(基礎編「Ⅸ.発達検査から学ぶこと」).『実践編』の技術内容が増え,『基礎編』とのバランスをとる必要があったこともあるが,発達検査の解説は「発達」の記述に沿って記したほうが,基礎知識としての位置づけが明確になると思われたからである.2014年以降,改訂になった発達検査やより使い勝手がよいと思われる検査なども新たに追加した.
基礎編「Ⅱ.発達障害児の処遇の歴史と作業療法」の章で,命に対する考え方(出生前診断)を新たにつけ加えた.「Ⅲ.作業療法というアプローチ」「Ⅳ.子育ての援助としての作業療法」の項目では,その限界についても触れた.「Ⅴ.発達障害児の子育て支援の法的・制度的環境」の章では,当然のことながら,2014年以降の法的整備の記述を追加した.「Ⅵ.作業療法士としての成長と学習過程」の章では,治療におけるユーモアについて記述したが,自らのはたらきかけに対して,少し距離を置いて客観視する必要性を作業療法の臨床現場に感じていたからだと思う.
第3 版においても,作業療法を学ぶ学生だけではなく,臨床4,5 年くらいまでの作業療法士を読者として想定したことは第2版と変わりない.あるいは第3 版は重心がさらにそちらにシフトされているかもしれない.
発達障害領域に進まれた方が,本書を臨床でも活用し,手助けとしての機能を果たすことがあるように願っている.
2019年(令和元年)7月
著者を代表して
岩﨑 清隆
目次
第3版 まえがき
第2版 まえがき
初版 編者の序
初版 まえがき
第Ⅰ章 発達障害が意味するもの
Ⅰ-A 発達障害の概念の定義
Ⅰ-B トータル・アプローチの示唆
Ⅰ-C 教育・治療を促す視点の提供
Ⅰ-D 障害構造の理解への示唆
Ⅰ-E 人権思想としての「発達障害」の概念
第Ⅱ章 発達障害児の処遇の歴史と作業療法
Ⅱ-A 学問にとっての歴史の意味
Ⅱ-A-a 人文科学の発展における歴史の意義
Ⅱ-A-b 医学における歴史の意味
Ⅱ-A-c 作業療法学にとっての歴史の意味
Ⅱ-B 発達障害児の処遇の歴史
Ⅱ-B-a 遺棄・撲滅の時代
Ⅱ-B-b 虐待・嘲笑の時代
Ⅱ-B-c 身体的保護の時代
Ⅱ-B-d 教育・治療の時代
Ⅱ-B-e 参加の時代 (昭和60年代以降)
Ⅱ-C 作業療法からの発達障害児への関わり
Ⅱ-C-a アメリカにおける作業療法の発展
Ⅱ-C-b 日本における作業療法の導入・発展の経過
Ⅱ-D 発達障害児への処遇の歴史からみえてくるもの―結びにかえて
Ⅱ-D-a 歴史における必然と偶然
Ⅱ-D-b 引き継がれる先覚者の精神
Ⅱ-D-c 理想と現実のギャップ
Ⅱ-D-d 作業療法士が受け継ぐもの
Ⅱ-D-e 引き継ぐべき命に対する考え方―出生前診断についての考察
第Ⅲ章 作業療法というアプローチ
Ⅲ-A 発達―いる場所に, 人に適応する過程
Ⅲ-B 不適応への二つのアプローチ
Ⅲ-C 作業療法の目的
Ⅲ-D 治療手段としての作業―方法論としての作業療法の独自性
Ⅲ-E 作業療法の対象となる疾患
Ⅲ-E-a 治療の対象となる疾患とその社会的認知
Ⅲ-E-b 多様化する疾患と限られた職場
Ⅲ-E-c 特別支援教育への作業療法士の参加状況と課題
Ⅲ-E-d 作業療法士へのその他の期待
Ⅲ-E-e 臨床的視点からの疾患分類
Ⅲ-F チームワークによる子どもの支援
Ⅲ-F-a チームワークの利点と必要性
Ⅲ-F-b 医療,福祉チームのあり方
Ⅲ-F-c 固有の視点と共有すべきもの
Ⅲ-F-d 職員のチームとしての意思決定過程における問題点
Ⅲ-F-e 発達障害児の臨床におけるチームワークのあり方
Ⅲ-F-f チーム医療の中の作業療法士の役割
Ⅲ-F-g チームワーク―気づきの学習
第Ⅳ章 子育ての援助としての作業療法
Ⅳ-A 養育するものとされるものにとっての子育ての意味
Ⅳ-B 子育てが問われるとき
Ⅳ-C 個別的なものとしての親子関係
Ⅳ-D 親子関係を規定するもの
Ⅳ-E 親と子の自立の過程
Ⅳ-F 父性原理と母性原理
Ⅳ-G 親による子どもの障害理解の過程
Ⅳ-G-a ショック期
Ⅳ-G-b 否認期
Ⅳ-G-c 混乱期
Ⅳ-G-d 再起期
Ⅳ-H 当事者の問題である親の初期の悩み
Ⅳ-I 親の初期の悩みの内容
Ⅳ-J 悩みの構造
Ⅳ-K 社会の価値観に根を持つ不幸感
Ⅳ-K-a 人間―動物でありつつ, 動物を超える存在性
Ⅳ-K-b 人の個別性と共同性
Ⅳ-K-c 生得的な他者の視点の取り入れ
Ⅳ-K-d 羞恥心の基盤となる「内なる他者」
Ⅳ-K-e 社会の中で形成される価値観
Ⅳ-K-f 美意識が成立する基盤としての「人の共同性」
Ⅳ-K-g 人間の動物性に根ざす偏見
Ⅳ-L 二つの障害受容論の限界
Ⅳ-L-a 社会受容論の限界
Ⅳ-L-b 価値転換論の限界
Ⅳ-M 再起への契機
Ⅳ-N 再起期における親の気づき
Ⅳ-O 支援者としての作業療法士の役割
Ⅳ-P 障害児のきょうだいに対する配慮の重要性
第Ⅴ章 発達障害児の子育て支援の法的・制度的環境
Ⅴ-A 障害者総合支援法に至るまでの制度の推移
Ⅴ-B 障害者総合支援法の理念
Ⅴ-C 児童福祉法に一元化された児童の支援
Ⅴ-D 発達障害児・者福祉のサービスの内容
Ⅴ-E 障害支援区分と対象の拡大
Ⅴ-F 障害者の自立と共生社会の実現を目指すその他の試み
Ⅴ-G 障害児福祉の法的整備に関わる基本的問題
Ⅴ-G-a 現金給付方式と応益負担
Ⅴ-G-b 報酬体系―日額制
Ⅴ-G-c 社会保険化する障害児福祉
Ⅴ-H 障害者総合支援法と作業療法
第Ⅵ章 作業療法士としての成長と学習過程
Ⅵ-A 発達障害領域の作業療法士の資質―優しい人より有能な人
Ⅵ-B 能力を培う勤勉さ
Ⅵ-C 学習を可能にするぶれないおとな
Ⅵ-D 良い臨床に接すること―自己変革のきっかけ
Ⅵ-E 自己変革を支えるもの
Ⅵ-F 自己変革の構造―影響を受け, 影響を与える
Ⅵ-G ユーモアのススメ
第Ⅶ章 発達障害の作業療法の基礎となる知識
Ⅶ-A 治療指針としての典型的発達指標
Ⅶ-A-a 典型と非典型
Ⅶ-B 治療を助ける発達の理解
Ⅶ-C 発達の知識の学習の仕方
Ⅶ-D 発達区分と領域
Ⅶ-E 発達段階
Ⅶ-E-a 第Ⅰ期第1段階 (0~4カ月)
Ⅶ-E-b 第Ⅰ期第2段階 (5~7カ月)
Ⅶ-E-c 第Ⅰ期第3段階 (8~10カ月)
Ⅶ-E-d 第Ⅰ期第4段階 (11カ月~1歳6カ月)
Ⅶ-E-e 第Ⅱ期第1段階 (1歳7カ月~2歳6カ月)
Ⅶ-E-f 第Ⅱ期第2段階 (2歳7カ月~3歳)
Ⅶ-E-g 第Ⅲ期第1段階 (3歳1カ月~3歳6カ月)
Ⅶ-E-h 第Ⅲ期第2段階 (3歳7カ月~5歳)
Ⅶ-E-i 第Ⅳ期第1段階 (5歳1カ月~5歳6カ月)
Ⅶ-E-j 第Ⅳ期第2段階 (5歳7カ月~7歳)
第Ⅷ章 発達障害の作業療法の基礎となる手段―遊び
Ⅷ-A 子どもにとっての遊びとは
Ⅷ-A-a 遊びの3要素
Ⅷ-A-b 自発的で自由な活動
Ⅷ-A-c 非実利性・非現実性
Ⅷ-A-d 快の追求とその経験
Ⅷ-B 遊びの発達的意義
Ⅷ-B-a カタルシスとしての遊び
Ⅷ-B-b 生活の準備としての遊び
Ⅷ-C 遊びの楽しさの分析
Ⅷ-C-a <感じる> 楽しさ 感じる>
Ⅷ-C-b <演じる> 楽しさ 演じる>
Ⅷ-C-c <競う> 楽しさ 競う>
Ⅷ-D 遊びの発達
Ⅷ-D-a 感覚・運動遊び
Ⅷ-D-b 構成遊び
Ⅷ-D-c 社会的遊び
Ⅷ-E 遊びの種類と遊具
Ⅷ-E-a 遊びにみられる普遍的形式
Ⅷ-E-b 固有な文化を背景とした遊び
Ⅷ-E-c おもちゃと遊具
Ⅷ-E-d おもちゃとの関わり方の変化
Ⅷ-E-e 遊びの種類とその育てる能力
Ⅷ-E-f それぞれの発達段階で遊ばれる主なおもちゃ
第Ⅸ章 発達検査から学ぶこと
Ⅸ-A 発達検査とは
Ⅸ-A-a 情報収集の道具としての発達検査
Ⅸ-B 発達検査の種類と内容
Ⅸ-B-a 発達検査の概念
Ⅸ-B-b 検査目的に応じた検査
Ⅸ-B-c 知能検査の開発の経過とその種類
Ⅸ-B-d 領域別による発達検査の分類
Ⅸ-B-e 知能検査の分類の基準
Ⅸ-C 発達検査の構成に関する神経心理学的知識
Ⅸ-C-a 行動の五因子と感覚処理過程
Ⅸ-C-b 感覚処理過程の神経心理学的解説
Ⅸ-D 発達検査の実施に関わる問題
Ⅸ-D-a 発達検査の実施に求められる技能
Ⅸ-D-b 臨床推論の基盤としての検査情報
Ⅸ-D-c 発達検査の実施者
Ⅸ-D-d 検査実施の時期
Ⅸ-D-e スクリーニング・テスト
Ⅸ-D-f 子どもの主要な問題に沿った検査の選択
Ⅸ-E 発達学習の道具としての知能検査・発達検査
Ⅸ-E-a 知能検査・発達検査の特徴を知る意義
Ⅸ-E-b 各検査項目の内容の理解
Ⅸ-E-c <病態像> を測定する検査の意義 病態像>
Ⅸ-E-d 医療,教育からみた知能検査,発達検査
Ⅸ-F 発達検査の紹介
Ⅸ-F-a K-ABCⅡ心理・教育アセスメントバッテリー
Ⅸ-F-b WISC-Ⅳ知能検査
Ⅸ-F-c WPPSI-Ⅲ知能検査
Ⅸ-F-d DN-CAS (Das-Naglieri Cognitive Assessment System)
Ⅸ-F-e JMAP〔Japanese version of Miller Assessment for Preschoolers
(日本版ミラー幼児発達スクリーニング検査)〕
Ⅸ-F-f 感覚プロファイル (Sensory Profile : SP)
Ⅸ-F-g JPAN感覚処理・行為機能検査 (Japanese Playful Assessment for Neuropsychological Abilities)
Ⅸ-F-h MCC乳幼児発達検査
Ⅸ-F-i 田中ビネー知能検査Ⅴ
Ⅸ-F-j 新版K式発達検査2001
Ⅸ-F-k 日本版デンバーⅡ (DenverⅡ)
Ⅸ-F-l KIDS乳幼児発達スケール (Kinder Infant Development Scale)
Ⅸ-F-m 日本語版SDQ (Strength and Difficulties Questionnaire)
Ⅸ-F-n 日本版Vineland-Ⅱ (Vineland Adaptive Behavior Scales, Second Edition)
Ⅸ-F-o 適応行動尺度ABS (Adaptive Behavior Scale)
Ⅸ-F-p 日本語版M-CHAT (Modified Checklist for Autism in Toddlers)
Ⅸ-G 発達検査からの学びの応用
Ⅸ-G-a 評価表作成のための基本情報
Ⅸ-G-b 発達の道すじの学習
Ⅸ-G-c 治療的アイデアの創出
別表Ⅸ-Ⅰ~Ⅸ-XII「検査項目一覧」
索引
便利機能
- 対応
- 一部対応
- 未対応
-
全文・
串刺検索 -
目次・
索引リンク - PCブラウザ閲覧
- メモ・付箋
-
PubMed
リンク - 動画再生
- 音声再生
- 今日の治療薬リンク
- イヤーノートリンク
-
南山堂医学
大辞典
リンク
- 対応
- 一部対応
- 未対応
対応機種
-
iOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:24.1MB以上(インストール時:63.3MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:96.4MB以上
-
AndroidOS 最新バージョンのOSをご利用ください
外部メモリ:24.1MB以上(インストール時:63.3MB以上)
ダウンロード時に必要なメモリ:96.4MB以上
- コンテンツのインストールにあたり、無線LANへの接続環境が必要です(3G回線によるインストールも可能ですが、データ量の多い通信のため、通信料が高額となりますので、無線LANを推奨しております)。
- コンテンツの使用にあたり、m3.com電子書籍アプリが必要です。 導入方法の詳細はこちら
- Appleロゴは、Apple Inc.の商標です。
- Androidロゴは Google LLC の商標です。
書籍情報
- ISBN:9784895906708
- ページ数:372頁
- 書籍発行日:2019年11月
- 電子版発売日:2020年2月12日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
お客様の声
まだ投稿されていません
特記事項
※今日リンク、YNリンク、南山リンクについて、AndroidOSは今後一部製品から順次対応予定です。製品毎の対応/非対応は上の「便利機能」のアイコンをご確認下さいませ。
※ご入金確認後、メールにてご案内するダウンロード方法によりダウンロードしていただくとご使用いただけます。
※コンテンツの使用にあたり、m3.com 電子書籍(iOS/iPhoneOS/AndroidOS)が必要です。
※書籍の体裁そのままで表示しますため、ディスプレイサイズが7インチ以上の端末でのご使用を推奨します。